人情とベースライン、そして #RILLA節 |RILLA interview

West Harlemと京都コミュニティ、SVBKVLT

 

 

現在、京都を拠点に活動するDJ/プロデューサーのRILLA。その男のバイオグラフィーは「嗚呼、人情とベースライン」という強烈な一言から始まる。DJとして長年のキャリアをレコードバイヤーならではのセンスで積み重ねつつ、日本国内におけるダブステップ黎明期に名を残すパーティー・ALMADELLAのオーガナイズ、東京や京都のローカルな遊び場をアンダーグラウンドに深く広がるダンスミュージックシーンをかたち作ってきたうちの1人をかたどるにふさわしき見出しだ。

 

とある屈強な霊長類を彷彿させる風貌にふさわしき無類の強さと頼もしさを秘めながら進化を遂げてきたRILLAだが、一時的な活動休止からの復帰後はDJ/プロデューサーであり世代を超えた音楽仲間のToreiが主宰するレーベル・Set Fire To Me、上海のSVBKVLTから楽曲リリースを経てプロデューサーとしてのキャリアという新たな道を歩み始めつつある。先日もSet Fire To Meより新作EP『SFTM10』をリリースしたばかりのRILLAに、レーベルオーナーのToreiを交えこれまでの進化の軌跡をRILLA節全開で語ってもらった。

 

Text : yukinoise

 

ー RILLAさんはDJとして長年のキャリアがありつつ、2020年からトラックメイカーとして新たな活動を歩み始めてますが、まず音楽を始めたきっかけはなんですか?

 

RILLA:18歳で上京してひとり暮らしを始めたくらいに、学生パーティーを主催してる友達からDJをやってみないかという誘いを受けたのがそもそものきっかけかな。当時、なぜかターンテーブルを持ってないのにダンスクラシックやソウルのブラックミュージック系のレコードを集めたり、家で大音量の音楽を聴いたりするようになったらある日隣人から苦情が来ちゃって。なんとその隣人がDJ KENSEIさんの追っかけだった人で、自分がDJをやってることやターンテーブルを持ってない話をしたら「うちに練習しに来れば?」って流れになったんだけど、そこで聴かせてもらったKENSEIさんのミックステープに電流が走るくらいの衝撃を受けたんです。ダンスクラシック、ソウルのネタ使いやスクラッチの織り交ぜ方…今まではBGMとしてただかっこいい程度に楽しんでた音楽への価値観が変わってしまうほどのインパクトでした。

 

ー 当時の時代感ならではのご縁ですね。

 

RILLA:学生時代にDJを始めた仲間はほとんどやめてしまって、音楽好きの友達もそこまでいなかったからトラックメイクをしようと思いMPC60を買ったんですが、サンプリングタイムがたしか10秒くらいしかなくてかなり難易度が高くて。ラッパーのバックDJをやってみたりスクラッチの練習して大会に出てみたりしたものの結果は振るわず、一度挫折しそうになったタイミングでちょうどレコードショップ・CISCOがエレクトロニカ、アブストラクトヒップホップ系のジャンルでバイヤー募集をしてたんです。レコードバイヤーが人気職な時代でラッキーなことに受かり、CISCOでバイヤーとして働き始めて現・京都West Harlemのシローさんと出会って高円寺のGrasrootsに遊びに行くようになったんですが、そこでもDJとして大きな衝撃を受けました。Grassrootsに通い始めてからは平日にオープントゥラストでDJしてみたり現・東間屋のKAMO君(KAMO氏離脱後はDubinch)と2人で回したりと、気合い入れたコンセプトとかもなしに友達を誘いこんで日頃から音楽を楽しむパーティーをやってました。週末だからパーティーに行くと気張るわけじゃなく、仕事帰りでも他のパーティーのついでに寄ってくれるのも良し、みたいな。

 

ー カジュアルなパーティーがある日常もクラビングのひとつですよね。 平日だからこそ音楽で遊び方の自由度を拡張できる瞬間があると思います。その頃にはもうRILLAという名義があったのでしょうか。

 

RILLA:そうですね。そろそろ本名で活動するんじゃなくかっこいい名義がほしくなって色々なキーワードを出していった結果、顔がゴリラに似てるってのとヒップホップの名残でILLというスラングを混ぜてRILLAになりました。

 

ー 名義の由来にオリジナリティとルーツがしっかり現れてますね。

 

RILLA:CISCOに入って本格的に遊び始めたくらいの頃、日本ではアンダーグラウンドヒップホップシーンではTHA BLUE HERBが出てきたり電子音楽だとBoards of Canadaの影響で国産エレクトロニカが流行ったりといろんな化学反応が起きてた時代だったんですよ。その一方でグラスルーツで音楽の自由度を知り、少しずつダンスミュージックに寄っていきながらもさまざまなジャンルに影響されて、自分なりのDJスタイルを確立していったと思います

 

 

 

Designed by CONOMARK

 

ー CISCOでのバイヤー時代にはALMADELLAというパーティーをKEIHINさんと主催されてましたよね。ダブステップが誕生し日本国内のベースミュージックシーンにおいて功績を残した印象ですが、当時のダンスフロアに新しいシーンを取り込むのは大変でしたか?

 

RILLA:かつて流行っていたBoards of Canadaのようなエレクトロニカ系の勢いが衰えてきたのをバイヤーとして体感する中で、UKでダブステップが盛り上がってる噂が届き実際に買い付けるようになって。同時にGOTH-TRADのパーティー・Back to Chillも始まった頃だったかな、当時の自分はどちらかといえばテクノやハウス、イーブンキックのサウンドが好きだったけどダブステップの知識だけはあったからDJでもそっち方面に駆り出されるようになり、自らが担当した売り場のコーナーから音源を漁ってダブステップもプレイするようになりました。その後スタートしたALMADELLAでは、共同主催のKEIHIN君もダブステップとテクノ(やノイズ)をミックスしたスタイルでブッキングの方向性はほぼ彼が決めていましたね。あとModuleにはYusaku Shigeyasu君が居て上手く調整してくれてました。初回はGOTH-TRAD君にGonno君、2回目はTHA BLUE HERBのO.N.O、3回目はShackletonをゲストに呼んで流れを作っていった。その時の国内シーンではベースミュージックって言葉がまだ浸透すらしてないし、きらびやかなニューディスコやハウスが主流なのもあって音的にもディープな新しいジャンルを提示するのは難しかったけど、カウンターとしてパーティーの享楽性をキープしつつも未来を見据えてやってこうとしてました。

 

 

 

Design by QOTAROO

 

ー カウンター的な立ち位置だからこそ生まれる結束力や挑戦する意義はありますよね。その後、東京から京都に移住されたのもカウンター的な試みだったのでしょうか。

 

RILLA:カウンター的な意味合いはなかったけど、東京での活動がマンネリ化しつつあったのでもういっそのこと環境を変えて自分を見つめ直してみようと思って。京都ではCISCOでの経験を活かしてJETSETで働きながら、夜はシローさんのとこに行ってWest Harlemで遊んだりたまに手伝ったりする生活をしてました。West Harlemができたのも移住してちょうど1年後のことで、DJやオーガナイズ、たまにグラス洗いを手伝いつつその土地での方向性を模索してたかな。

 

 

ー 京都に移住したことによってマンネリを感じてた部分から抜け出すことはできましたか?

 

RILLA:やっぱり環境を変えるだけじゃ抜け出せないというか、DJ自体はそこまで変化することはなかったです。ただ移住して戸惑ったこととして、当時の京都には風営法の影響もありクラブカルチャーやダンスミュージックの土壌自体が一度リセットされた後で、そもそもカウンターであることすらできないという問題に直面しました。東京でALMADELLAのような試みをできたのも、自分らしくいられたのも実は今まで恵まれた環境にいたおかげだったとも気づきました。

 

ー 東京を離れてローカルから俯瞰してからこそ分かるありがたみがあったんですね。Toreiさんとの出会いもWest Harlemで新しいシーンの土壌を耕していた頃ですか?

 

RILLA:West Harlemでハウスのパーティーをやっていたら、大学生くらいのToreiが遊びに来たのが最初かな?すごい若い子が遊びに来てるなーって思ったのを覚えてる。

 

Torei:そうですね。当時クラブにあまり行ったことが無かったんですが、初めて行ったWest HarlemでRILLAさんが話しかけてくれたのが初対面。替え玉を2玉ずつ頼むタフな漢で、すぐに親しい存在になりました。一晩の流れを作るDJのプレイや雰囲気の掴み方をRILLAさんを含む先輩達のDJを聴いて学んだし、今のWest Harlemや京都のシーンに確実に引き継がれていると思います。

 

RILLA:活動休止してた時期もあったからそれほどの功績を残せたわけじゃないけど、京都のダンスミュージックシーンを作ることに貢献できたのなら、今までやってきたことが成功したのかな。

 

ー たしかに。近年では京都のシーンが盛り上がってますし、自分と同世代のDJだとKotsuをはじめNC4KやMAVE、PAL Soundsなど様々な世代が交わる新たな遊び場が生まれてるように感じます、そういったシーンや場が今こうしてあるのもシローさんやRILLAさんたちがローカルを深く広げていくというカウンター的な試みが功をなしてると思いました。

 

RILLA:僕というよりシローさんの力が大きいかも(笑)。当時からシローさんは尖ってる若い世代を強くエンパワーメントしていて、続けていった結果E.O.Uみたいなアーティストも突如現れたし。

 

Torei:当時からシローさんは先見の明があり、広い視野で若いアーティストのフックアップに努めていましたもんね。でも自分は特にRILLAさんから影響を受けていますよ。本当に色々。

 

ー京都は他のローカルとはちょっと違う独特な文化圏が存在してる街ですし、音楽やパーティーだけでなくカルチャーそのものを新たに築こうとしても参入が難しいイメージがあったので、今日のシーンやコミュニティを思うとなんだか感慨深いですね。RILLAさんから見た新しい世代のToreiさんはどのような存在ですか?

 

RILLA:West Harlem黎明期は京都だけでなく東京でもクラブに30代以降の世代しかいなくて、ダンスフロアの高齢化が進んでたんですよ。自分としては若手がシーンを引っ張っていくと考えてたんですけども人材がそもそもいない、そんな状況でToreiのようなスキルフルな天才が現れた。当時大学生とは思えぬほどクオリティの高いパーティーを彼らがやってるのを目の当たりにした時は、クラブカルチャーの将来に希望が持てましたね。バイヤーやDJとして長年のキャリアがある自分と対等に話せる知識も持ってるし、耳もいいから音作りやプラグインについて彼から学ぶことも多い。

 

Torei:RILLAさんにはデモをよく送ってもらってますが、音作りやプラグインについて、具体的な処理の方法など細かいやり取りをいつもしてますね(笑)。

 

RILLA:Toreiは本当に素晴らしい音楽仲間ですよ。

 

 

ー音楽仲間、お互い切磋琢磨しつつサポートし合うコミュニケーションが込められた関係ですね。Toreiさんの自主レーベル・​Set Fire To MeからRILLAさんの作品をリリースするようになった決め手は何かありましたか?

 

Torei:このレーベルは特にビジョンも無く面白い音楽を発表していこうぐらいなんですが、RILLAさんはオリジナリティ溢れる音を作るので、リリースすることでレーベルとしても個性が出るというか。毎回とても楽しみにしてます。

 

RILLA:Toreiにそんなこと言ってもらえるなんて感動で泣きそう(笑)。Set Fire To Meから出すのは今回で2作目なんですが、前回のEP『SFTM002』の楽曲は約6年間の活動休止からの復帰作でもあるんです。あの曲はたしか自分が初めてちゃんと完成させられた作品で、レーベル始動のタイミングが一致したことや音楽仲間のToreiがリリースしてくれたからこそ活動に復帰できたのもあってすごい思い出深いです。その後、上海のSVBKVLTからEPをリリースしたのもToreiが助言してくれたからで。

 

 

ー SVBKVLTから日本のアーティストがリリースされたのはRILLAさんが2人目で、プロデューサーのPrettybwoyさん以降初の快挙ですよね。

 

RILLA:国内でのリリースを経て、次は海外に挑戦しようといろいろなレーベルにデモを送ったんですがかなり苦戦しました。連絡が返ってこずともめげずに曲を作りながらスキルを上げても、ヨーロッパのレーベルからは曲自体はかっこいいけどうちのカラーじゃないというような返信ばかり。迷走していた時期に最新のデモをToreiに聴いてもらったところ、サウンド的にヨーロッパ以外のレーベルにアプローチしてみたらどうかと助言を受けたんです。

 

Torei:6年のブランクを感じさせないRILLA節。類人猿が太鼓を叩く楽しさに出会ったかのような感覚?とにかく流行とは別世界の独特な音楽ですね。

 

RILLA:楽曲のテイストが今のシーンでどう受け入れられるかとバイヤー時代の知識にギャップがあったから苦戦してたんだと今でこそ思います。自分を客観視しきれてない感覚をToreiが指摘してくれてからSVBKVLTに連絡してみてからは、すぐにいい反応が返ってきてそトントン拍子でEP『遊光』『遊撃』2作のリリースが決まっていきました。

 

 

 

ー 活動復帰後に国内、国外からのリリースを重ねる中で音楽との向き合い方や心境の変化はありましたか?

 

RILLA:向き合い方自体は変わってないけど、やっぱり自分を1番興奮させてくれるのは自分の曲しかない。楽曲制作はどれだけ自分を満足させられるかというとこを突き詰めてやってるから。でも、復帰後初のパーティーでは世代ごとに色があるローカルアクトのクオリティに衝撃を受けたし、下北沢SPREADでのリリースパーティーには東京時代の友人だけでなく若い世代のオーディエンスも多くて、かつて悩んでいたクラブの高齢化問題はどこへやらってくらいどのシーンもフレッシュで嬉しかった。だからこの先もさらに若手が参入して、今の先輩たちを追い抜けんばかりにまた面白いことが始まればいいなと思ってます。

 

ー まさに新作EP『SFTM10』収録曲の「Rain Dance」はこれまでの作品に比べ新しいダンスフロアに接近したサウンドで、復帰後のパーティーやさまざまな現場で培ったエッセンスが反映されているような印象でした。

 

RILLA:復帰して現場に出てみると120〜130BPMあたりのダンスミュージックをプレイするDJって意外といまだに多いと体感したんですよ。そういう人たちにはこれまで現場に出てなかった時期に作った自己満の前衛的な曲はかけづらいなと思って、プレイできたとしてもCOMPUMAさんや¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uさんぐらいじゃないかな(笑)。そこでもうちょっとダンスフロアに寄ったDJでも使えるようなBPM120台の曲と、同時並行で作ってた曲をToreiに聴いてもらったところリリースの話が進み、さらにイーブンキックのRemixバージョンも作ったので今までに比べてかなりフロアライクな作品に仕上がったと思います。

 

 

ー今までのキャリアを総括しつつ現代的なダンスフロアの身体性も持ってますよね。この曲が今後現場でプレイされた時、どんな風に盛り上がるのか気になるところです。

 

RILLA:これくらいのBPMは普段あまり自分じゃプレイしないし、もしやるとしたらハウス寄りになりそう。誰がどんな風に料理してくれるのか楽しみにして作った曲でもあるんです。

 

Torei:フロアでどのように機能するのか気になりますね。作曲とDJのバランスは多くのDJにとって悩みですが、RILLAさんの中にある正解の1つがこのリリースになるのだと思います。

 

ー日本のシーンの面白いところでもあるんですが、DJとトラックメイクを並行しながらダンスミュージックの現場で活動しているアーティストはわりと貴重な存在なので、この作品をきっかけにトラックメイクに関心を持つDJが少しでも増えたらいいなと思いました。

 

RILLA:そうなったら素晴らしいですね。特に今作は四つ打ちでも最近のトレンドとは乖離してるサウンドだけど、そこが自給自足的なトラックメイクの面白さでもある。自分の曲が1番興奮できるのもやっぱりDJとして自分の音を信じて進んでいった結果だから。

 

ーRILLAさんにとってグッとくるサウンドを一言で表すなら?

 

RILLA:なんだろう…呪術的な感じかな?Shackletonのような秘密の儀式っぽい音。

 

Torei:自分の中でRILLA節といえばEdwardの「Giigoog」ですね。時代やトレンドに左右されない普遍的なグルーヴ、バイヤーやDJとして培ってきた感覚、そして何より根底にあるRILLAという人間性、それらがあわさって唯一無二のかたちがあるのかと。

 

 

ーこれからのダンスフロアでRILLA節が全開になることを楽しみにしてます。最後になりますが、今後の活動のビジョンや挑戦してみたいことがあれば教えてください。

 

RILLA:国内外のレーベルからリリースを果たしましたが、まだ国外でDJをしたことがないのでいつか海外の現場でもプレイしてみたいです。

 

直近のスケジュールです。掲載ありがとうございます!

 

 

7/21(Fri)

感謝gratias

at Pure’s Sound Market (Asakusa)

20:00-midnight

adm 1st drink 1500JPY

 

music by

RILLA

adak7

naotsun

midfielder

Dubinch

 

 

7/22(sat)

BLACK SMOKER RECORDS presents

『BLACK GRASS – Torei / 蚕食鯨呑 – Release Party』

@GRASSROOTS (Higashi-Koenji) 23:00

 

DJ:

Torei

RILLA (SVBKVLT / Set Fire To Me)

KILLER-BONG

 

 

8/4(Fri) 

T.B.A @West Harlem (Kyoto)

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