理性が焼き切れる瞬間まで|FELINE interview

1/20 SPREADにて初ワンマン開催

 

 

1月20日にキャリア初となるオープンtoラスト、つまりワンマンDJに挑戦するFELINE。11年に差し掛かる経験の中でも前代未聞の超ロングセットで下北沢SPREADを彩る。今回、開催を控えたFELINEへとロングインタビューを決行。サポートを務めるmelting bot・解放新平も交え、DJ of DJでありながら、生粋のクラバーでもある氏に当日への思いや魅力を、キャリア2年に満たない新参DJ・NordOstが伺った。

 

Text by NordOst

Photo by Kazufumi Matsukura

 

―オープンラスト、すごく楽しみです。本日はよろしくお願いします!

 

FELINE:ありがとうございます、よろしくお願いします(笑)。

 

―まず、いわゆるワンマンを10年以上にわたるキャリアの中で初めて開催することになったきっかけや経緯から伺えればと思います。

 

FELINE:理由には色々あるんですけど、まずは10年という節目を一区切りする挑戦、のような意図はあるかな、と思います。といっても、きっかけは3,4ヶ月ほど前に解放さん(melting bot)とクラブで喋っていたときに「やりましょう!」となっていったノリのような感覚も大きいんですけど。あとは、よく色々なパーティに出させていただく中で、朝方に終わらないからクロージングアクトをそのままやり続ける、みたいな機会もたびたびあったんですが、そういったときの最長も3時間程度だったので。単純に6~7時間の超ロングセットに取り組んだら、なにかが起きるかな?って興味もあって。まあ、たぶん大きな変化は起こらないと思うんですけど。粛々とやるだけです。

 

―キャリアの円熟期を迎えるきっかけにはなりそうな予感もあり、一ファンとしてワクワクします。10年の中で言えば、特に2020年代以降の動き方やムードなど、FELINEさんの中で生じた変化はありましたか?いわゆるコロナ禍以降の流れ、というか。

 

FELINE:うーん、コロナがあったから何かが変わったようなことは、自分のなかでは特に無いですね。ムードの変化などは確かにあったと思いますけど、どちらかと言えばそれは多分、来てくれてるフロアの皆さんが肌で感じてくれてるところだと思うんですよ。そういう意味では、返ってくる反応なんかは従来よりも縦ノリにシフトしていって、足を細かく動かしたり、膝の関節をよく使ったりするような踊り方がフィットする曲が多くプレイされるようになったんじゃないかな。

 

―ブレイクビーツ~ドラムンベースなどのリズムやハードテクノ、あるいはジャージークラブなど、リズムに多様性が生じ、かつ速めのテンポが求められるような雰囲気はある気がしますね。

 

FELINE:そうですね。ドラムンもブレイクビーツも本当に前からあるものだったんですけど、より脚光を浴びる機会が増したような気はします。前だったら面白いな、と思ったトラックをかけてみた時に、フロアからは「えっ?」と困惑するような反応が多かったんですけど、ここ最近は結構変わった感じの楽曲も楽しんでもらえる瞬間があって。

 

―時代の空気感やトレンドが移り変わってもなお第一線で活躍し続けているDJだからこそ見える景色というか。僕自身その点で言えばまだ到底力は及ばないな、とも思いますし、とにかく続けることの凄さを感じます。

 

FELINE:松島さんにもしかしたら前お話ししたかもしれないんですけど、本当に続けた方がいいなって思ってるんで。 私も全然まだまだひよっこなんですけど、でもやっぱり続けていって回数こなすと、勝手に説得力みたいなものも生まれてくるのかな、とは思うので。

 

解放:もちろんFELINEさんが取り組んでいるアプローチ自体変わってきたと思うんですけど、やはりどちらかといえば「周りが変わった」っていう感覚もあるんですか?

 

FELINE:周りが私をどう捉えてるかで言えば、何なら月単位とかで変わってるんじゃないかっていうのは思ってて。それはすごく嬉しいですね。ずっと同じ印象で捉えられてるよりは、毎回違う印象で感じてもらってた方が私もやりやすいし、面白いことを毎回提示できる気がするので。 

 

解放:単純に自分もいっぱいいろんなパーティー行くんですけど、特にFELINEさんの現場に行ってる人で、そのすべてを知ってる人はおそらくいないんだろうなとも思いますね。たとえば「AVYSSのパーティには行かないけど、club asiaのパーティには行く」ってタイプのお客さんも、その逆の方もいると思うんだけど、その両面を見てるのは他ならぬFELINEさん自身ただ一人なんじゃないか?という。(DJとして)特殊な立ち位置だからこそ、自分がそういう多面性を見てみたいっていうのもあって、それはワンマンだったら体験できるのでは?と思い今回の企画を打ち立ててみた節はありますね。どういう形で各シーンのお客さんが入り混じって、パーティの雰囲気が作られていくんだろうか、と。

 

FELINE:それは個人的にも感じるというか。現場によって、今日はこの感じの雰囲気かな、という線引きはあるじゃないですか。例えば「ヒプノティックなテクノが今日は合いそうだな」と思ってドロッとしたテクノとかベース・ミュージックとかだけやってた日に、フロアで踊ってくださっていたお客さんに楽しかったです!って言ってもらえて、「直近の現場を教えてください」と言われたとき、ゴリゴリのハッピーハードコア現場とか、それこそナードコア現場とかだったとして、「多分来たら楽しめるとは思うけど今日の感じとは異なるので、それはあなたの好み次第ですね」といった感じになることが結構多くて(笑)。

 

解放:FELINEさんの場合はプレイするジャンルや質感の距離がすごく離れてるから。それがお客さんにとっては面白いと思う点だろうし、特殊な存在に感じるのかな、とは思いますけどね。

 

FELINE:なんか個人的には…そんなに離れてることをしてると思ってなくて。自分から見る世界では別にそんなに変わってるとは思わないんだけどな…っていう(笑)。単純に私ってフィルターが1枚噛んでいる状態で、その時その時に合わせて選別した好きな音楽を届けてるところはあるので。好きなものって言っても、私の中では幅が広いわけじゃなくて。だから、あんまりやってることや意識は変わってないんですけど、たまたま出力先がおそらく広くなっちゃってるんで、捉える側のお客さんからはギョッとすることもあるのかな?とは思います。私自身の好きなノリとか音楽的な好みも人より狭い方だと思うんですけど、その狭い中でのストライクゾーンみたいなのがたまたま他の人より広かったのかな、とかは思います。

 

解放そういう感覚を言葉で表すとしたらどういう形になるんでしょうか?幅が広いって言われる理由って何なんだろうなみたいな。前に擬音の話をしたじゃないですか、たとえば「ゴリゴリ」とか(笑)。別に擬音に限らず、自身を規定するとしたら思いつく言葉ってあったりします?

 

FELINE:うーん…ちょっと考えますね。何だろうな。 よくDopeとか言ったりすると思うんですけど、それは自分にはあんまり関係ないかも。あくまで個人的な感覚ですけど、「これはDopeだから好き」みたいな捉え方は間違ってないかな、と思ったり。私EDM超好きで、本当にUltraとか行きたいな、出てみたいな、って常々思ってるんですけど、そういうパワー感というか…なんて言えばいいんですかね(笑)。アンビエントとかも好きだし…。

 

―あくまでも、パーティの中の流れだったり、フロアの空気感だったりを重視しつつ、FELINEさんならではの感覚でさまざまな音をミックスして組み立てていくようなスタイルを追求されてるわけですね。

 

FELINE:そうですね。自分でも腑に落ちたんですけど、普段からジャンルで音楽聞くことがほぼなくて。たとえば 「次の現場はテクノっぽい感じの音が好まれそうなパーティだからテクノいっぱい聞こう」みたいなことはなくて、基本的には音像などの雰囲気から関連する作品群を掘っていくとか。ジャンルで聞いてないから、結果として広範囲にわたっているんだろうなって思いました。 

 

 

―もうそれはまさしく、DJですよね…!

 

FELINE:そうですね。DJあるあるっていう感じがするんですよ。

 

解放:例を挙げるとokadadaさんのようなタイプというか、自分がどうとかっていうよりは本当に現場、フロアが最優先事項、というような。いわゆるアーティスト的な主体性のある表現とかではないっていうところは、DJ of DJって感じがしますね。

 

FELINE:私もその方が(DJを)やってて楽しくて。もちろん続けたもの勝ち、とは言いつつ、DJの気持ち良さとか楽しさを感じるには歴なんか全然必要ないっていうか。自分にとってのフィーリングの重視もひとつの正解だと思います。私も気持ち良さで曲と曲繋いでる時の方が圧倒的に多いですし、「この曲とこの曲混ぜたらめっちゃ良さげじゃない?」みたいな予感がマッチした瞬間って相当ヤバいじゃないですか。異常な量のアドレナリン的なものが出るというか。それで11年くらい続けられてるところがあるんで。

 

解放:やっぱりDJを始める最初の頃はプレイリスト的なものとかから始まるわけじゃないですか。 自分の好きなものをとにかくかけていくことがジャンル的な統一感になってったり。現場がこの10年ですごい変わっていって、(WWWβを)始めたての頃はアンダーグラウンドのものとメインストリームなものは交差しなかったんですけど、10年前くらいからそれがちょっとずつ距離が縮まっていき、いわゆる脱構築的な、アート的な視点で斜めから見ていた感じがあったと思うんですよ。そういう選曲感がアート視点からスタンダードなものになってきて、FELINEさんがやってきたことにある種他の皆さんも追いつくってわけじゃないですけど、(そういう切り口を)見つけるみたいな感じですかね。  

 

FELINE:私それで言うと、一番最初からプレイリストぐちゃぐちゃで…。一番最初から雰囲気でやってて、最初は本当に笑われてたんですよ。「この曲は合うわけないよ」みたいな(笑)。でも、とにかく一番最初だったら好きなものをやりたいじゃないですか。当時から四つ打ちも好きだけど、ベースミュージックもエレクトロニカも好きだし、ただ踊る場では極力チルアウト気味の、ディープリスニング系のやつはあまりプレイしないようにしよう、ぐらいの意識はあったんですけど。

 

解放:そうなんだ(笑)。十数年前のシーンの状態で音楽的な体系みたいなのがとっ散らかってるっていうのは、もしかしたら特殊だったのかもしれないですね。  

 

FELINE:今思い返すとJamie XXとHABANERO POSSEとDiploと、あとエレクトロノリが若干残った四つ打ちとかが全部一体になったようなことを初めからやってた気がするんで。初期のエピソードだと、茨城・水戸にgranmaって箱があって、今もたまに遊びに行ったりするんですけど、平日の深夜とかに「みんなで音遊びしようや!」みたいな感じでそこに集まったりしてて。始めて間もない頃には技術とかも当然不足してて、(ジャンルやサウンドの質感が)離れたところをうまくつなげられないわけじゃないですか。「これどうやったらうまくいくんだろうな…」 みたいな感じで悶々としてたら、店長のカジさんって方がバーってきて「基本なんでもつなげるから、 DJなんて!」みたいな感じでやってくれたんですけど「うーん…やっぱこれ無理だわ(笑)」みたいなことになりまして。

 

―匙を投げられてしまう…(笑)。

 

FELINE:それ結構覚えてて、「まあそうだよね…」と。 そもそも音像が違いすぎることは今ならわかるんですけど、ノリとかも含め。

 

解放:例えば10年前とかだったらもうちょっと箱ごとにジャンルの線引きがあったと思うんです。 ここだったらちょっとテクノっぽくて、ここだったらハウス寄りで、みたいな。  今でもあるっちゃあると思うんですけど、やっぱそういう場で変わったアプローチに取り組もうとすると、あまり良くは思われないことって多分あったと思うんですよね。もちろん呼んだ人が呼んだわけだから…っのはあるんですけど、箱側が打つパーティでガチャガチャしてたりしたらどうなの、とか、やりすぎて先輩が出てきちゃうような…(笑)。 そういう、昔のシーンだと注意されるようなこともありましたか?矯正されちゃうみたいな感じの。  

 

FELINE:それも今思えば、いい方に矯正しようとしてくれてたんだろうなって思いますけど。多分みんな親切心から「ジャンルを絞り込んだ方がいいよ」みたいなアドバイスをくれてて。まあ確かに、当時の自分を今振り返るとアプローチも拙いし、今だったらあまりにもまとまりが無いようなことは多分やらないだろうなとは。

 

解放:言い方は良くないですけど、統一した方がトーンコントロールみたいなものは簡単っていうか…言ってしまえばDJっぽくはなるじゃないですか(笑)。

 

―そうですね。ジャンルにある程度の統一感があれば、どういう道を敷いているのか、みたいな意図の部分も伝わりやすくはなりそうですし。自分はまあ…全然そういうことが出来ていないのが課題かなとようやく思えるようになりましたね…(笑)。

 

FELINE:たぶん、私があまりにも別のところでの努力をしてて、雰囲気をごちゃ混ぜにしていくようなことを頑張ってたんで。でもそれって、DJ始めたての状態で取り組むことじゃないっていうか…(笑)。

 

解放:(笑)まあそうですね。

 

FELINE:やってもいいんだけど初期段階を飛ばしすぎてるみたいな。普通だんだん基礎から広げていくものですし。いろんなジャンル、たとえば始めはハウス~ディスコから始まって最終的にテクノになったとかっていう人とかは多いと思うんですけど、私は初めからどうにかして「合わせづらい接点を成立させること」にこだわっていて、それを10年間やり続けてだんだんスキルがついていくと、現場によってはスキルでカバーしていけるようになっていきましたね。そこは非常にユニークな成り立ちなのかなと思います。あと、その頃はまだ10代後半で、今よりもめっちゃプライド高いみたいな時期だったんで、セオリーに従ったら自分が死ぬとか思ってたんですよね、きっと。 誰に強制されて始めたわけでもないのになんで強制されなきゃいけないんだろう、みたいな気持ちがあって。今ならそうは思わないですけど、当時はなんか反骨精神みたいなバイブスが強かったなあ…ちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。

 

―正に自分がつい最近までそういう感じだったので、共感がありすぎて耳が痛いような気持ちです…(笑)。

 

FELINE:まあでも、雰囲気をどうやったらごっちゃにして人に提供できるかみたいなのを考えるのが本当に楽しかったんで。当時働いてたクラブが平日深夜とか空いてる日の夜、ブースのあるフロアを一晩中私だけに貸してくれたりとかしてて。そこで一生DJの練習っていうか好きな曲かけ続けるみたいなのをやってたんで、基本的な技術的なのはそこで身についていったのかもなっていう感じはしてますね。 

 

―練習といってもクラブはクラブで、とにかく最初から現場に立って一つひとつ回収していったような感じでしょうか?

 

FELINE:そうですね、うーん…たぶん、「特訓するぞ!」みたいな感覚はあんまり無かったですね。あと「これを教えてください!」とかすぐに聞けるような師匠的な人間がいなかったので、結果こうなったみたいなところはありますね。合ってるんだか合ってないんだか、分かんないですけど(笑)。

 

解放:自分も現場を長いこと見てて  先輩がいるかいないかっていうのは結構大きいよね、って感覚はありますね。FELINEさんの持ってるスタイルに近い、okadadaさんみたいなタイプもいましたけど、先輩っていうか先人がいるかどうかは結構すごい大きいなっていつも思ってます。例えば中国のシーンとか、自分がその場に行ってみて驚いたのは「先輩たちがいないから何でもアリ」みたいなスタンスで。面白ければオッケーみたいな、横のつながりだけでシーンが出来上がっていくような感じのエネルギーがあって。それはそれですごいユニークになるし、時間が経てばそれがスタイルになるっていう。  

 

―個人的な印象ですが、そういうジャンル主体というか、音楽性マターみたいなアプローチをシーンがこうなる以前からとっていたのが、先ほどからお名前が挙がっているokadadaさんやFELINEさんなのかな、と思います。ある種先駆者であるような。

 

FELINE:いやいや…私は絶対に先駆者じゃないですよ。もっと上がいますよ(笑)。ワイパ(DJ WILDPARTY)さんとかも。私が知らないだけで(折衷的なアプローチをするDJは)もっといるだろうし、多分同時多発的なものだと思うんで。  私が上京してきて自分のスタイルがすんなり受け入れられたのも、先にやってきてた人たちが道を作ってくれたおかげなんで。特にここ3,4年でベースミュージックと四つ打ちが一緒になることが多くなる流行りというか、シーンの流れもあって、私がいろんなところにお声がけいただけるようになったのも、先人たちあってのことで。だから、結構環境には恵まれていたな、とも思いますし、時の運ありきみたいな感覚を常々感じてるところもあって。

 

―なんというか、少し変な質問にはなるんですけど、一曲一曲の選定しかり、大局的な流れを読んだりする行為には波に乗るようなバイブスがあると思うんですが、仮にDJをサーフィンや遠泳のようなものと仮定するとしたら、FELINEさんのスタイルはどのような形になるでしょうか?選曲や雰囲気作りの方法やスタイルはもちろん数あれど、

 

FELINE:うーん…ちょっと難しいですけど、それで言うと私はサーフィンをあんまりしたくないんで、ゆったりボートで漕ぎ出してくような感覚ですかね、いつも。気持ちの面も含め、常に余裕を持ってやってたいなみたいなところはあるので。

 

―メンタル面のセッティングはかなり大事な気がします。

  

FELINE:そうですね。自分の感情的なところで余裕がないと、考えたことを出力した際にもそれが伝わっちゃうかなって思ってて。あと 焦っていたりするとプレイ中の思考パターンが増えない感じがするので、力みすぎたり、慌てたりするとなんも良いこと無いな、みたいなのが常々感じてるところなので。気持ち的な余裕と思考の余地みたいなのを常に残して現場にはいつも臨んでるんで、そういう安定感が良い方向に働いてるのであれば良かったかな、っていう感じが今のお話を聞いてて思いました。

 

―分かりづらい例えですみません…(笑)。ちなみに、ハイペースで出演を重ねる中で、一定のトレンドが見えてくることもあると思うんですが、そういった波を意識することはありますか?

 

FELINE:無意識です。音楽聞くのが本当に好きなので、逆に聴かない日を絶対に決めてるぐらいなんですが、何かを先んじて追いかけるようなことは無いですね。だからこそ、たとえば「これが最近めっちゃ盛り上がってるからちょっと距離を置こう」っていうのも特に無くて。色々聴いていれば勝手に流れに乗ってると思うので、トレンド的な感覚でコンテンツを見てないですね。  

 

―たとえばここ最近、レゲトンなどのリズムがトレンド化していると思うんですが、そういった流れも特に意識されているわけではないんですね。FELINEさんのセットにたびたび採用されることがあるので、一種のアンサーなのかと勝手に思い込んでいました…。

 

FELINE:えっ、そうなんですか?今初めて知りました。びっくりした…(笑)。確かに私、ここ2年くらいでレゲトンかかる機会が増えたな~となんとなく思いましたし、自分でもかけてたから、今教えてもらって初めて自分が流れにノレてたんだな、って…。

 

解放:トレンドが出来てって、周りがどう見てるかの視点によって無意識的にプレイスタイルが変わるだけ変わっていく…みたいな(笑)。 作為がないっていうのがFELINEさんの底力感じますね。

 

FELINE:なんかちょっと流行らせたい音楽使ってDJやろうかな…。冗談ですけど(笑)。

 

解放:仕掛けてやろう!って(笑)。

 

FELINE:いやまあ、別にそれが出来るポジションじゃないと思うんですけど(笑)。でも、「ここに来てこれ!?」みたいな、もう一回リバイバルが来たら面白いだろうな、みたいなことを考えてみてもいいかな、とは思いましたね。

 

解放:とにかく、フロアをすごくピュアに見てるっていうことなのかな。自分の話しちゃうとあれですけど、僕はオーガナイザーって仕事柄、市場とかマーケット的な目線でトレンドを見たり、人を入れたりする役目になってるから。だからどうしても、ピュアじゃない部分もあって。だからこそ、DJってどうやって現場の空気感とか、そういうムードみたいなものの推移を見てるのかなっていつも気になってます。

 

FELINE:ピュアって私あんまりいい言葉だと思ってないです…(笑)。なんていうのかな、一応考えてはいるんですけど特に意識はしてないっていう。結構考え始めると考えすぎる性格をしてるので、下手に意識しちゃうとそっちのことばかり考え込んでしまうような気がして。

 

―だからこそ、今回のワンマンという試みがより面白く感じられた、というのが個人的な感想ではありまして。常に場のトーンに意識して、空気読みのようなDJをしていくタイプの方が、オープンtoラストという6時間以上にわたるソロプレイで、どんな景色を見せてくれるんだろう?と本当にワクワクします。

 

FELINE:そうなんですよね。素敵な言い方をしてくれてめっちゃ嬉しいです。確かにおっしゃる通り、前後のバランス調整とか含め、一夜の演出を全部自分でやるみたいな試みは今まで無かったので、本当にどうなっちゃうんだろう?みたいなハラハラ感もあったり。パーティの流れを最初に作るのがオープンDJだと思うんですけど、それともまた違うじゃないですか。(一番手の場合)前の人がいないけど、そういうときは後続の流れも考えながらDJするし。でも続くのも全部自分、っていう… これはちょっと蓋を開けてみないと、私でもどうなっちゃうかわからない。

 

 

―その不確定性みたいなものに期待して足を運んでくれる方も多そうです。FELINEさんを知っていればいるほど、まったく予想できない一夜になるような。これもまあ、一種の文脈性みたいなものではありますけど。

 

FELINE:そういう点にワクワクして遊びにきていただけたら、という気持ちが私もありますね。もちろん準備は十分しますけど、オープンtoラストといえ普段通り直前までなんも考えない無の境地で臨んでみたくて。それで当日、自分がどういうテンションになるのかが気になりますね。

 

―このように大々的にクローズアップされる機会も、長いキャリアのなかで年々増加しているように思います。今回の試みをバネに、さらなる高みに登っていくことにも期待出来そうですが、それとともにプレッシャーも増していきそうですね。そういう意味では、初のワンマンに際して緊張などは感じていますか?

 

FELINE:それで言うと、私は普段からあんまり緊張を感じなくて。この間、昨年だとSTAR FESTIVALのように大きな看板をずっと掲げてやっているフェスのような場に出た後に「緊張したでしょ?」とか結構言ってもらえるんですけど、その感覚自体にあんまりピンとこなくて。そもそも、緊張状態って自分で認識してないことが多いですよね。緊張と興奮を分けて考えてるというか。DJ中、瞬間瞬間で「今めっちゃアドレナリン的なものが出てるな」と感じたりすることはあるんですけど。 でも緊張というような緊張は自分には無くて。とにかく、めっちゃ楽しくやれそうだな~みたいな気分ですね。  

 

―僕も緊張したことはほとんどないですね。とにかく楽しみが勝りますし。でも中には常にプレッシャーを感じて、ヒリつきながら毎回ブースに向かうタイプの方もいらっしゃいますし、そういう方は焦ってる自分をあえて落ち着かせるため、鉄板のキラーチューンとかを織り交ぜたりするのかな、なんてことも思うんですけど。

 

FELINE:「今ちょっと自分がやばそうだから、自分を沈めるための曲をかけよう」みたいな認識も今までしたことがないですね。 あんま自分のコンディション調整だったりとか、そういう観点で曲を選びはしないかもって感じで今思いました。

 

解放:だから、本当に今回は特別ですよ。なんか大変なことになりそうな。楽しみですね。

 

―逆に、自分のなかでフロアの反応だったり、パーティ全体の空気感だったりも含め、自他ともに最高のコンディションに達したな、と思うことはここ最近ありましたか?

 

FELINE:自分の出来はとにかくその日のお客さんのノリ次第なので、この回はうまくいったな、とかは特にないんですけど。あえて言うなら、AVYSSのサウンドクラッシュのパーティー…何だっけ。

 

―AVYSS Cupですね!

 

FELINE:あ、そうですそれです!あと、渋谷asiaでのサウンドシステム入れたベースミュージックのパーティーと京都west harlemでの「MAVE」2周年パーティはDJやってて昨年印象的だった現場でしたね。もうブチ上がりすぎて、脳が焼き切れてしまうんじゃないか、って感覚でした(笑)。

 

解放:焼き切れる…ってヤバいっすね(笑)。

 

FELINE:どちらもお客さんの反応がすっごく良くて、それで私は完全に…ここ2年でよくあるんですけど、もう収集つかなくなるみたいな(笑)。でもギリギリのところで冷静さはキープしつつ。特にAVYSS Cupのときなんてラストだったんで。

 

―AVYSS Cupのナードコアsetは相当衝撃を受けましたね…。これだけバリバリ現場から求められるDJから、自分がたまたま趣味で集めてたようなニッチすぎるレア音源なんかも含め完璧な精度と感覚でどんどん楽曲が飛び出してく感じは本当に凄かったです。選曲も、ただJ-COREとかネタものを並べるだけじゃなく、smooooch・∀・(beatmania IIDX+インターネット的アンセム)などを織り交ぜてくハイブリッドな解釈の面白さもあって。

 

 

FELINE:ありがとうございます(笑)。基本オンリーセットで何かをやること自体あまりないんですけど、その中で分かりやすくナードコアっていうものをかなり多めにかけてみて。あれは本当に前知識あっての音楽じゃないですか。自分が呼んでいただける場所ってそこら辺の前知識がある方が多数派、というわけではないと思うんですけど、AVYSS Cupはもう「存分にやってください!」っていう日だと思って臨んでみました!

 

―僕はもちろん、遊びに来てたTelematic Visions君みたいなさらなるユース層だったり、同じく出演していたY Ohtrixpointnever君だったりと、本当に色々な人に面白さがしっかり届いていて、すごい盛り上がりに達してたなと思います。

 

FELINE:へえー!嬉しいです。そうなんですね。一応その日はバリバリにナードコアだけど、知らない人でも楽しめるようなビート配置だったり選曲だったりも考えてみて。あとはAVYSS Cupの出演者さんたちに近い質感の曲を中心に選んでいって。ネタの持つ文脈的な面白さはもちろん、そうじゃない音的な解釈の楽しさも伝わればいいな、と。ナードコアを真剣にプロでやってる方たちからしたら本当に畏れ多い取り組みだったんですけど…。

 

―ナードコアのプロってあって無いようなものですよ(笑)。でも、本当にFELINEさんからあの解釈がもたらされた、ってことはそっち側の自分にとってもかなり刺激的で。観る人が観たら、そちら方面のオファーも急増しちゃいそうです。

 

解放:専門的なジャンルってあるじゃないですか、なんだろう、Core系っていうか。ハードコアテクノのようなジャンルだと、やっぱり1ジャンルの求道者的な方々がひたすら道を開いていって今があるような感じだと思うんですが、以前は排他的な感じ、ハードルが高い印象を与えるジャンルでもあって。まあ前よりは柔和になった感じはしますけど、環境が変わっていくにつれ。だからさっきFELINEさんが、やってる人たちにちょっと引け目を感じるっていうのは、年々薄れていってる感覚だろうな、と思いますね。良くも悪くも(笑)。

 

FELINE:まあ…それで言うなら、私はこれからもずっと引け目を感じながらやっていくと思います(笑)。自分がやってて楽しい方がこのスタイルだなって思ってずっとやってるんで。でもやっぱり別のやり方、ワンジャンルで一本でやってる方のアプローチも勉強できたらなと常々思って、それでいろんなクラブに行ってるってところもあるんですけど。

 

解放:ここも印象的ですよね。DJだけどすごくクラブに行くっていう。 

 

FELINE:私、クラブ大好きなんで(笑)。

 

―DJでありクラバーでもある、信用が段違いです…!色々観るとなると、普段は複数のパーティに顔を出すような遊び方もされるんでしょうか。

 

FELINE:いえ、私は基本ハシゴしなくて。私多分ハシゴって向いてないんですよね。行きたいパーティー2つあってどうしても!ってときとか、デイとナイトで、とかはやるんですけど。でもやっぱり、移動中とかの間に気持ちが切れちゃう瞬間があったりとか。あと私は、パーティー全体の文脈が見たかったりするので。だから一人のDJだけ聞いて帰るとかはあんまりしないですね、基本的に。時間が無かったら前後のちょうどいい時間に行ってみるとか。アクト前後のバランスとかも含めて聞きたいな、っていつも思ってるところなので。それはとにかく流れとか、空気を感じて自分のプレイに還元するやり方をずっと続けてるからかも。だからミックスとか作るのは苦手なんですけど…(笑)。

 

 

―DJmixって、そこにあるのは自分と機材とトラックだけ、という、ある意味FELINEさんのスタイルとは対極的な表現フォーマットですよね。そこの作り込みに全力を賭けて輝くタイプのDJももちろんたくさんいますが。それはやっぱり、オープンtoラストにも言えることで、前後の流れが無い、自分で作らないといけない、という状況下で何を届けてくれるのか、というのはやはり楽しみなポイントかな、と思います。

 

FELINE:そう、オープンtoラストって独りきりなんですよね。大変なことですよ、これ(笑)。 まあ、さっき話したような「理性が焼き切れる瞬間」が来ても自分に冷水を浴びせる必要はないので、あとは一晩の流れをどうやって作るかな、ってことぐらいですかね。とにかくフロアの体力重視なんで、あまり序盤からアクセル踏みっぱなしでも仕方ないし、どっかで多分冷静にはなれるんですけど。 

 

解放:一回ぐらいアクセルしか踏んでないFELINEさんも見てみたいですけどね。

 

FELINE:そうですね(笑)。あと結構私が期待してるのは、そういうフロアの熱狂に私も連れてってほしいなと。いつも理性焼き切れ状態のときって、完全にフロアの人たちに連れてってもらってる感じなので。だから、今回も「一緒に良いとこまで行きたいですね!」っていう気持ちがありますね。来てくれてる方と一緒に。 一人で作れるものじゃないですしね、パーティーなんて。あ、そんな気合い入れてこなくて大丈夫なんですけど、普段来るパーティーと同じ感じで顔を出しに来てもらえれば。いろんな人がいつも通りの感じで来てくださって、私は私で面白いことになればいいなぐらいのテンションでいるんで。

 

解放:でもアレじゃないですか?一応ここまで行きたいですっていう感じのラインとかあれば良いんじゃないかなと(笑)。

  

FELINE:うーん、いや…めちゃくちゃなったら最高ですよね。もう色々超えちゃうみたいな、それぐらいの(笑)。

 

 

―もうSPREADが壊れるんじゃないか、という盛り上がりとか、長尺だからこそのラストスパートの爆発とか、色々なことに期待できそうですね。さて、こうして10年という節目を迎えたわけですが、大箱の閉店なども迎え、今後ますます時代の感覚やトレンドが目まぐるしく変化し続けていくと思いわれます。その中で、変わっていくことに対する不安などはありますか?

 

FELINE:不安を感じることは特になくて。今もすごくいい流れで楽しそうですねっていう感覚で。たぶん今後もパーティなどはどんどん分離していくだろうし、逆に一個に集約化するところもあると思うんですけど、その最初の段階でこれだけ花があるのは素敵なことじゃないですか、って思って。これまでのクラブカルチャーって、そもそも入り口が狭かったと思うんですけど、コロナを機に無い道を自分たちで作っていく子たちもいるし、第一線で戦い続けてくれている先人たちもいるし。入り口が本当に広がったのは良いことだな、と率直に思います。特に私が茨城県出身で、こうなる(DJを始める)までインターネットでしか音楽聞いたことなかった経験もあって、家でしか音楽聞いたことない子たちが「自分の好きな音楽がかかるクラブ、どこにもないじゃん!」ってなりにくくなったのは、素晴らしいことですよ。これは都内だから言えることかもしれないんですけど。

 

―僕自身、コロナ以降のゴタゴタに乗じて遊びに行っていたら、気づけばこうなっていましたし、周りにもそういう人がすごく多くて。なので、色々あれど希望は持っていたいな、と思います。

 

FELINE:もう、純粋に自分の好きな音楽が大きい音で鳴るって本当に面白いことなんで、それを最初から味わえるってかなり素敵なことだと思います。しかもそれを20歳前後の子たちがやってるのが最高で。それってめっちゃいいじゃんって思ってるんで。うらやましさすら感じますね。めっちゃうらやましいなって思いますよ、本当に!

 

―もちろん、いわゆる「先輩」の不在によってカオスな状況にもなりかねない危うさはあるかもしれませんが。クラブの入り口としてはかなり理想的な状況で、本当に恵まれているなと思います。

 

FELINE:そうですね。今二十歳前後の子たちについて話してましたけど、自分がいろんな場所に呼んでもらっている中で、結構40代ぐらいからDJデビューする方もいらっしゃって。そういう人たちからしたら、クラブカルチャーって全てが新鮮に感じて見えるみたいです。なので、あんまり勢い的なところで「新世代の流れ」と年齢でくくるのもな、って今言っててちょっと感じましたね。

 

―よく言われるのが、日本に足りないのは「めっちゃ楽しそうにサッカーをする下手なおっさん」というような話で。つまりは新しい楽しみにチャレンジする土壌が、世代によっては閉ざされていて、だから文化的な発展が芳しくないのでは、というような内容だと勝手に咀嚼してしまっているんですけど、技術の進歩とかも含めて、どんどん誰でも気軽にチャレンジできるような空気になっていけばいいな、と思います。

 

FELINE:ほんとそうですね。DJなんて私、全人類やった方がいいと思ってるんで。めっちゃ面白いんで。これを機にプレイヤーが増えてほしいし、その方が私が単純に面白いし(笑)。あと普通にプレイヤーじゃなくても、クラブで遊んでる人の母数が増えたらアプローチの仕方もパターンが増えると思うんで、より混沌として面白くなるんじゃないかと思いますね。選択肢多い方が絶対いいんで。 それは最近の空気を見て思ってるところでもあります。 私は自分の知らない曲がかかってた方が面白いと感じるタイプなんですけど、DJをやっていくとそれは意外と少数派だということに気づく瞬間が来るじゃないですか。

 

―確かにそうですね…。だからこそナードコアsetで感動させてもらった、というのはあるかもしれないです。

 

FELINE:まあ、みんな知ってる曲がクラブでかかった方が面白いんだろうなって思うんで。ただ、知らない曲がかかる面白さも同時に提供できたら理想かなと。たとえばTikTokの流行とかで、かつてそこまでアンセムじゃなかった曲が大アンセム化するような状況も珍しくなくなったと思うので、そういう価値転換を楽しめるのもいいところですね。もう、本当に続けてると何があるか分かんないんで。あ、そうだ、前にアンセムをかける流れで自分の中でこれだ!って曲をかけたのに全然盛り上がらなかったことがあって…それは結構ヤバかったですね(笑)。これ私の地元で流行ってただけだったんだ…ってびっくりしました。

 

―長く続けられてきた分、離れていった方も少なくないとは思いますが、そういった方々に思うところはありますか?

 

FELINE:できれば周りの人にも私以上にDJ続けてもらえたらな、とは思うんですけど、もちろん色々な理由から離れざるを得ないこともあるし、体力も要る職業なのでなかなか難しい話だとは思うんですけど。でも皆さん、誰に強制されて始めてたわけでもないんで、好きな時にじっくり休憩して、全部落ち着いたあと何歳になっててもまた戻ってきてくれたら素敵なんじゃないか、って思いますね。DJ、やりましょう!

 

 

FELINE – open to last –

2023/01/20 FRI 23:00 at SPREAD

ADV/U23/Before 24:00 ¥1,500 / DOOR ¥2,000

ADV Ticket Link 🎟 https://ra.co/events/1630172

 

photoMiyu Terasawa

Hair & MakeArisa Suzuki

DesignYusaku Kato

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