食品から風土へ、Foodmanによる日本の環境音楽の継承と更新

サウナ / 水風呂プレイリスト公開

 

 

Text by 解放新平 (melting bot/ Local World / WWWβ)

Visual by naka renya

 

2012年にNYCの〈Orange Milk〉からデビューして、本年Foodmanの活動10周年を密かに迎えている。そのこともあって今回はFoodmanの現在に至るまでの文脈を改めてざっくり遡ることにした。

 

Foodmanはダンス・ミュージックが史上始めて過去を振り返るきっかけとなった10年代前期の80年代リヴァイヴァル(80年代初頭のポスト・パンク~インダストリア等のニューウェイヴやディスコ含む)を背景としたシカゴ・ハウス再興の起爆剤となったジューク/フットーワークを出自としながらも、当時のクラブ・シーンへコミットというより、日本ではジューク全体がオルタナティブなインディ・シーンに浸透し始めたことから、クラブ系から見るとかなりの際物として存在し、実際初めて出会ったのも新宿LOFT企画のSHIN-JUKEで開催したフットワークのオリジネーターの一人RP Booの初来日イベントである。その流れから当時の初期衝動をまとめた初期作品のコンピを〈melting bot〉からリリースしているので改めて聞いてほしい。

 

 

 

デビュー当初から”Kawazakana”のようなベースのない脱構築的なアプローチやジューク/フットワークのようなダンス・ミュージックからインスパイアをされたものの低音を強調しない、ユーモアな遊びあるアンビエントの指向性を持った作風で、本人曰く ”気弱な” 日本人の性格や ”環境”(空気を読むコミュニケーション含む)への調和を重んじる日本の土壌を表し、またそこへの反動も同時かつ自然に兼ねそなえている。

 

一方、エレクトロニック・ミュージックは80年代ニューエイジ・アンビエント/環境音楽再興の文脈がヴェイパーウェイヴと相まって活性化(ニューエイジ復権とは一体なんなのかOneohtrix Point Neverが時代を牽引する大きな存在へ成長、このポスト・インターネット期(10年代初頭から半ば)のアカデミックなエレクトロニック・ミュージックと一世風靡をしたトラップ含むローカルなダンス・ミュージックの2つの大きな潮流が交わる場として、2010年代に多くの電子ヘッズを魅了した媒体「Tiny Mix Tapes」(2020年年明けにクローズ)がある。このTiny Mix Tapesのテイストを完全に体現したアーティストの一人がFoodmanであり、媒体のプッシュを通じてグローバルな認知へ押し上げるきっかけとなり、2016年にはジューク/フットーワークの日本の第1人者でもあるD.J.Fulltonoとシーンの最重要フェスティバル、ポーランドはクラクフのUnsoundへ出演を果たしている。無論、僕も本媒体AVYSSTiny Mix Tapesの影響を受けてきている。2010年代全体を振り返るのであればTiny Mix Tapesの2010年代のフェイバリット100を是非見て欲しい。

 

https://www.tinymixtapes.com/

 

Foodman @Unsound Festival 2016

https://www.instagram.com/p/BLziBYlg04R/

 

Foodman、D.J.Fulltono、melting bot @Unsound Festival 2016

https://www.instagram.com/p/BLzSacGAe1K/

 

その後(10年代後期)もFoodmanは、リヴァイヴァルの文脈が90年代へとシフトしながらアートからダンス・フロアへと色濃くなって行くエレクトロニック/ダンス・ミュージックのモードやレイヴ再興への道筋を辿り、その時折のバイブスとノリを軽快に作品へと織り交ぜながら更新を続け、シーンの中で著名なレーベル〈Orange Milk〉(Giant Claw & Seth Graham主宰)、〈Sun Ark〉(Sun Araw主宰)、 〈Mad Decent〉(Diplo主宰)、そして今回の〈Hyperdub〉(Kode 9主宰)にまでリリースが連なる。

 

 

Foodmanを振り返った時にもう一つ特筆すべき点として、本人のツイートに散見され、ユーモアの部分でもある世界でウケる”日本的”なオリエンタリズムがある。10年代ではこれまでエレクトロニック・ミュージックの更新の発信源であった欧州からアメリカへのシフトは新しいクリエイションにおいてアート、ダンスどちらも顕著で、メインストリームではEDMやトラップの世界的流行、アンダーグランドでは脱構築のセンスの源でもあるクィア・カルチャーの台頭(その後一部テクノやハイパーポップへ転化)から、そこから平等性=多様性を訴えるリベラルの社会運動を背景に、ディアスポラ含むアジアやアフリカの経済的発展による音楽市場拡大と共に勢力を増したことによって欧米ではない非中央集権主義的な世界観が構築される中、これまでのステレオタイプなオリエンタリズム自体が崩れ始め、ハイエンド的に表現/紹介されることが多かった日本的なものをFoodmanは日常+伝統的なストリート目線のローエンドで素朴に表現している。ただこのオリエンタリズムは非常に根深く、ハイエンドでもローエンドであっても他国から求められる日本的なものを表現するにあたっては”伝統”や”観光”的なレトロやノスタルジアへの逃避や傾倒する状態は、革新へと向かう中国を筆頭に他のアジア諸国を見たときに寂しさもあるが、大きな流れとして見たときにその段階にある日本を受け止めなければならない現実もある。

 

 

本リリパのリリース作品『Yasuragi Land』ではFoodmanのこれまで以上に日本の風土への思いがより顕著に散りばめられた、もはや食品のフードではなく文化全体の下地にある”風土”へと変化した、日本の環境音楽の最新版であることに間違いはない。リリパではサウナ通でもあるFoodmanになぞらえた温泉的な世界観を想定し、前売特典にオリジナル・サウナ・タオルが付き、クラブ・ナイトでは暖房強めのサウナ@SPREADと冷房強めの水風呂@HANARE(SPREADから徒歩5分内)の2会場に別れ、様々な食品が集まる道の駅をコンセプトとしたアルバムを反映し、ラインナップには京都からNTsKiと荒井優作、名古屋からNEXTMAN、長崎からPower DNA、大阪からD.J.Fulltono、札幌からMidori (the hatch)、兵庫からhakobune、今回のアルバム参加のTaigen Kawabe(ロンドンより帰国)やcotto center、これまでにFoodmanとの共演、共作、リミックス、地元の仲間、ゆかりのある関連アーティストからフレッシュなアーティストを土着、素朴、憂い(潤い)をテーマに全国各地から集めたシンプルかつスペシャルな構成となっている。少しでも『Yasuragi Land』が放つバイブスをデイではゆったりとナイトでは汗をかきながら肌で体感して欲しい。

 

🥵サウナ・プレイリスト

 

「サウナの中の灼熱のイメージ、そして水風呂に入る前のワクワク感をイメージしています。最近サウナのセットはサウナ、水風呂、外気浴とそれぞれの時間を短めにセット数を多くしてミニマルに高みに登るようなスタイルが好みです。」- Foodman

 

 

🥶水風呂・プレイリスト

 

「水の波紋を感じながらリラックスしているイメージです。サウナの入り方を知ってから初めて水風呂の中で、それまで体感したことのない感覚に包まれた時に水風呂入りながら一人で爆笑してしまったのを思い出しました。」- Foodman

 

 

 

 

 

Local World x Foodman – Yasuragi Land –

SAT 13 NOV 18:00 – 06:00 12H at SPREAD + HANARE

ADV ¥2,850+1D@RA w/ special gift: Yasuragi Land sauna towel *LTD100

DOOR ¥3,000+1D / U23 ¥2,000+1D

ADV/前売 https://jp.ra.co/events/1474555

 

🍱DAY CONCERT@SPREAD 18:00 – 

 

LIVE:

cotto center

Foodman

NTsKi

Taigen Kawabe – Acoustic set –

Ultrafog

DJ: noripi – Yasuragi Set –

 

🥵CLUB NIGHT – SAUNA FLOOR@SPREAD 23:00 – 

 

LIVE:

Foodman

JUMADIBA & ykah

NEXTMAN

Power DNA

 

DJ:

Baby Loci [ether]

D.J.Fulltono

HARETSU

Midori (the hatch)

バイレファンキかけ子

 

🥶CLUB NIGHT – COLD BATH FLOOR@HANARE* 22:00 – 

 

LIVE:

hakobune [tobira records]

Yamaan

徳利

 

DJ:

Akie

Takao

荒井優作

artwork: ssaliva

 

– 前売特典*100枚限定: やすらぎランド・サウナ・タオル *会場にて受け渡し / ADV special gift *Limited to 100: Yasuragi Land sauna towel *pick up at the venue

– 再入場可 *再入場毎にドリンク代頂きます / A drink ticket fee charged at every re-entry

– HANARE *東京都世田谷区北沢2-18-5 NeビルB1F / B1F Ne BLDG 2-18-5 Kitazawa Setagaya-ku Tokyo

category:FEATURE

tags:

RELATED

FEATURE