2021/03/26
最新アルバム『Believer』でコテージコア、テクノラスト、2000年代のラップを融合
Media : The Face https://theface.com/
Text : Davy Reed and Ivan Guzman
Photography : Ivar Kvaal
Smerzのニュー・アルバム『Believer』の予告動画の中で、二人はノルウェーのヴィニエにある人里離れたコテージで作業を終える。メンバーの一人であるHenriette Motzfeldtは、洗濯ロープに洗濯物を干し、井戸から水を汲み、一方もう一人のメンバーCatharina Stoltenbergは、湖で水浴びをし、手で木靴を掘っている。そしてCatharinaは、Eckhaus Lattaの最新コレクションに登場しそうな格好で山登り。作品は、コテージコアのファッションフィルムのようでもあり、ちょっと変わった『大草原の小さな家』をも思い起こさせる内容だ。
「私たちは、今回のアルバムの予告動画を、その奥により大きなストーリーが隠されているような作品にしたかった。皆が目にしているのは、そのストーリーのほんの一部なの」とCatharinaがZoom画面の中から説明する。「参照の数々や各時代に行われていた様々な活動を全て混ぜ合わせて、それが一体何なのか判別ができないようにしたのよ。」
動画のティーザー(ニューヨーク在住の写真家Benjamin BarronとデザイナーBror Augustとのコラボレーションで制作された)では、『不思議の国のアリス』の実写版に出てきそうな、現実では見ることのないランプシェードの形をしたドレスがフィーチャーされ、ショットやサウンドのいくつかは、Ari Aster監督のホラー映画をほのめかす。未来感を出しつつも、参照の多くが19世紀から集められているようにも感じる予告動画。それはどことなく、Smerzが生み出す広大で殆ど不可解な音の世界への完璧な入門書のようだ。
2017年にEP『Okey』をリリース後、続く2018年には『Have Fun』を発表し、Smerzは二人の道を切り開いた。彼女たちのサウンドは、内向的でもあり、女の子っぽくもあり、そしてダークなダンスフロアを感じさせる部分も多い。『Believer』は、故郷のオスロの高校で出会い、2011年からコペンハーゲンで暮らしている28歳の二人にとっての新しい領域を感じさせる作品である。16曲を収録したこのアルバムは、彼女たちがこれまでに作った中で最も長いレコードであり、リスナーたちにとっては、もしかすると最も難解で興味をそそる作品と言えるかもしれない。
会話の中で、CatharinaとHenrietteは彼女たちが使う言葉に細心の注意を払っていた。私が小規模ながらも熱狂的で献身的なファンたちについて話をし始めると、彼女たちは気まずそうにしていた。ある熱狂的ファンは、SmerzのYouTubeのコメント欄に、”アルバム・オブ・ザ・イヤーの到来”と書き込んでいる。「私は地味な女子の一人。新しいSmerzが見れて、私は幸せよ」とコメントするファンも。彼女たちの存在は、一見カルト的熱狂を引き起こしているように感じるが、この控えめなデュオは、自分たちが大勢の前で演奏することよりも、スタジオで音楽を作っている方を好むこと繰り返し述べている。
『Believer』は、ノルウェーにある様々な人里離れたキャビンでプロデュースされ、歌詞のいくつかは森の中で書かれた。彼女たちがこれまでに製作したEPのように、この新たな作品は、時にクラブ・ミュージックに近い物を感じさせる。しかし彼女たちのサウンドは、少年合唱団の稽古と伝統的なノルウェーのフォーク・ダンスからインスピレーションを得て、より予測不可能に、そしてよりオーケストラっぽく進化。サウンドの殆どは、コンピューター化されたストリングス、ハープのアレンジメントを中心に作られており、不気味とも言える人口水晶体を通して牧歌的感覚を呼び起こす。そして「The Favorite」では、Henrietteが自身の見事なオペラの声域をより深く探索している。
一方で、彼女たちの参照の中には、よりコンテンポラリーなものもある。Smerzの音楽には、彼女たちのヒップホップとR&Bに対する愛が染み透っているのだ。「私たちは、50 Centを沢山聴いてた」とCatharinaは説明し、そこに「あと、Cassieもね」Henrietteが付け加える。「Rap Interlude」で、Catharinaはよろめくようなスポークン・ワードを披露。そして「Grand Piano」では、”I just need someone to be the one I’m about”と弦楽四重奏の上にラップを乗せている。
Smerzの二人は、大学へ通いながら『Believe』の制作作業を行なっていた。Catharinaはオスロ大学で数学の博士号を取得中であり、Henrietteはコペンハーゲンにあるリズミック・ミュージック・コンサバトリーで作曲を学んでいる。「私たち、二人ともちょっと数学的なところがあるの」とHenrietteは言う。「だから、最初は、厳密なテクニックを使って作業することをすごく楽しんでいた。でも、そのあとはそのアプローチからは離れていったの。」
実際CatharinaとHenrietteは、楽器初心者のためのYouTubeチュートリアルを見るという共通の好奇心を発見した後、一流の学究的環境から可能な限り遠く離れていく自分たちに気がついていた。「このお馴染みのシンプルさ、全てを剥ぎ取った表現というものに魅力を感じたの」とCatharinaは熱く語る。「簡潔さというものを取り入れて作業するのはすごく楽しかった」。学位というプレッシャーからかけ離れ、補足的なギターコードやピアノのメジャー/マイナーキーが段階的に説明されていくのを視聴するのは、ある種の喜びであっただろう。しかし、彼女たちは、そこにより深い何かを見出そうとしているわけではなさそうだ。「何か役立つことを学ぶためにチュートリアルを見ることは絶対にない」とHenrietteは主張している。
https://www.youtube.com/watch?v=YC0fA-OTeqA&feature=youtu.be
ジャーナリストとして、アーティストに”あなたの音楽はどんな音楽か説明してもらえますか?”と聞くのは不精だと感じるが、『Believer』の不思議な魅惑の要素を知るべく、私はこの質問を彼女たちに聞いてみる価値があると判断した。
「それは私たちが説明するべきではないの」と二人は一緒に答えた。「それは、あなた自身が見つけ出すことなのよ。」
Smerz – Believer
Label : XL Recordings
Release date : 26 February 2021
Order : https://smerz.ffm.to/believer
日本盤 : https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11668
Tracklist
01 Gitarriff
02 Max
03 Believer
04 Versace Strings
05 Rain
06 4 temaer
07 Hester
08 Flashing
09 The favourite
10 Rap interlude
11 Sonette
12 Glassboard
13 Grand Piano
14 Missy
15 I don’t talk about that much
16 Hva hvis
category:FEATURE
tags:Smerz
2020/10/09
『Have fun』に続く新作 Catharina StoltenbergとHenriette Motzfeldtによるノルウェー拠点のエクスペリメンタル・ポップ・デュオSmerzが、2018年の『Have Fun』以来となる新プロジェクト『Believer』を発表し、トレイラー映像と2年半ぶりの新曲「The favourite」と「Rap interlude」をリリース。 今回の新曲2曲と、Benjamin Barronがディレクションを担当し、Bror Augustが衣装を担当した映像作品を合わせて『Believer』に向けたトレイラーシングルと言った内容となっている。『Believer』の詳細は明らかになっていないが、2021年に前作に引き続き〈XL Recordings〉からリリースされるようだ。 Smerz – “The favourite / Rap interlude” Label : XL Recordings Release date : October 9 2020 Stream / Doanload : https://smerz.ffm.to/believer
2022/04/26
5月27日 WWW 昨年、名門<XL RECORDINGS>からデビューアルバム『Believer』をリリースした、Henriette MotzfeldtとCatharina Stoltenberによる北欧ノルウェーの先鋭電子デュオSmerz(スメーツ)。表題曲「Believer」は不穏にシンコペートするビートと甘美なストリングス、醒めたヴォーカルが強烈な印象を残し、ビデオではノルウェーの民族的伝統と緑豊かな風景を絵画的スタイルで表現し、北欧が生んだ鬼才ラース・フォン・トリアー作「ドッグヴィル」のようなミニマルな演出を引用。夢と現実の狭間のような彼女たちの音楽を見事に映像表現に昇華した。 オスロの高校で出会い2011年にコペンハーゲンに移住してから共に音楽制作を始めた彼女たちの音楽は、コペンハーゲンのシーンと交わりながら(2019年に初来日したErika de Casierとも親交が深い)、ヒップホップやR&B、トランス、そして北欧の伝統的な民族音楽、オペラ、クラシックがシームレスに織り込まれ、最終的に全く未知の不思議なものに仕上がっている。その不穏と甘美が混交する未体験の快楽を生むSmerzがついに日本へ。5月28日-29日に長野県「こだまの森」で開催される野外音楽フェスティバル「FFKT」出演前夜の5月27日、WWWにて行われる初来日公演。 日程:2022年5月27日(金) 出演:Smerz 会場:渋谷 WWW 時間:open 18:30 / start 19:30 料金:¥4,800(税込/ドリンク代別/スタンディング) 問合:WWW 03-5458-7685 一般発売:4月26日(火)19:00 販売URL:https://eplus.jp/smerz0527/ 公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/014475.php 主催:WWW 協力:FFKT / BEATINK
2021/01/14
2月26日リリース 2017年にデビューを果たし、翌年にリリースしたEP『Have Fun』で世界を震撼させたCatharina Stoltenberg(カタリーナ・ストルテンベルグ)とHenriette Motzfeldt(アンリエット・モッツフェルト)によるノルウェーのデュオ、Smerz(スメーツ)がデビューアルバム『Believer』を〈XL Recordings〉より2021年2月26日にリリースする。同作よりタイトル曲がMVと共に先行リリース。 不穏にシンコペートするビートと白昼夢のように美しいストリングス、そして完成までに2年を要したリリックをSmerzらしい醒めたヴォーカルでなぞった「Believer」のMVは、Benjamin Barron(ベンジャミン・バーロン)が監督を務め、Bror August(ブロール・オーガスト)が衣装を担当。2020年に発表されたアルバムトレーラー、先行シングル「I don’t talk about that much/Hva hvis」に続いて、北欧の民族舞踏ハリングダンス、ノルウェーの田舎の緑豊かな風景をピーター・グリーナウェイの演出のような絵画的なスタイルで表現する一方で、ラース・フォン・トリアーの映画『ドッグヴィル』のミニマルな演出を引用するなどアルバムの一連のヴィジュアルとしてノルウェー文化と芸術の歴史におけるノスタルジーとロマン、そして狂気を築き上げた。 近年、盛り上がりを見せるノルウェー地下のクラブ・シーンとも共振しながら、トランスやヒップホップ、R&Bと自身のバックグラウンドである北欧の伝統的な民族音楽、オペラ、ミュージカル、クラシックのハイブリッドとして産み落とされたデビューアルバム『Believer』は、2021年2月26日に世界同時リリース。日本盤CDには解説及び歌詞対訳が封入され、ボーナストラックとして人気作「Have Fun」収録の全8曲が初CD化音源として追加収録。輸入盤CD/LPとともに本日より各店にて随時予約がスタートする。 Smerz – Believer Label : XL Recordings Release date : 26 February 2021 Pre-order : https://smerz.ffm.to/believer 日本盤予約 : https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11668 Tracklist 01 Gitarriff 02 Max 03 Believer 04 Versace Strings 05 Rain 06 4 temaer 07 Hester 08 Flashing 09 The favourite 10 Rap interlude 11 Sonette 12 Glassboard 13 Grand Piano 14 Missy 15 I don’t talk about that much 16 Hva hvis
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