2020/02/02
未来から来た印象派
上海から世界へ発信を続け、アジアを代表するクリエイティブコレクティブとなった〈Genome 6.66Mbp〉のメンバーであるDJ / プロデューサーDirty K。
Dirty Kは昨年11月に、2017年作『Exsiccation』以来2年ぶりの新作『Panorama』をリリース。複雑で繊細なサウンドデザインと東洋のメロディーが融合した傑作をひっさげ、3月1日に開催される「CHEMICAL MONSTERS」での来日が決定。「Panorama」の世界観を反映したビジュアルと共に恒例の質問を投げてみた。
– まずは簡単に自己紹介お願いできますか?
Dirty K – こんにちは、Dirty Kです。本名はKeyi Xu。南京に住んで25年、学生時代もここで過ごして、今年カレッジを卒業したばかりなんだ。
– 曲を作るようになったきっかけってなんだったんですか?
Dirty K – ずっと音楽制作に関連することを専攻してきた。学部ではレコーディングの勉強をしていたんだけど、その頃の仲間とは音楽についての関心の方向が違ってた。彼らの関心はもっぱら技術面に向いてたからね。だから大学院では楽曲制作に専攻を変えたんだ。デモンストレーションはまだ未熟だったけど当時すでにDJを始めたり曲を作ったりはしていたからね。
– 今回のEP 『Panorama』について詳しく教えてくれますか?
Dirty K – 未来から来た印象派ってところかな。このEPでは多彩な風景を様々な楽曲・サウンド制作のテクニックを使って描写して、いろんな物の本質にある美を表現しようとしてみたんだ。岩肌や水、シーンごとの色の移り変わりなんかの美しさをね。ちょうど1900年代の印象派の音楽みたいなんだけど、僕が音を使って表現したいのは感情というより感覚によってとらえられるものなんだ。僕の以前の作品には感情がいっぱい込められていたから今回はそれを変えてみたかった。このEPではいろいろなデジタルサウンドも使っているんだけど、そこに僕はある種の「未来」を感じるんだ。もう一つ僕が自分の音楽でやりたいのは、観念とモノを弁証法的に統合すること。価値観やアイデンティティに背負わされた重荷を忘れて、静かな気持ち、開かれた心を持とうよって音楽を使ってみんなに言いたいんだ。印象派の音楽の特徴の一つは西欧的なハーモニーと5トーンスケールの組み合わせだけど僕はこれをもう一度使ってみたかった。西欧的な心と東洋的な心を美で結ぶ懸け橋みたいな響きだからね。
– 収録曲で行われているChamsやLJCとのコラボレーションはどうでした?
Dirty K – Chamsを知ったのはEP『Lettre d’Amort』で。そのカバー(美しい風景画) を見て彼とは趣味が合うって分かった。シングル「panorama」を送ってみたら彼もそれを気に入ってくれて、一緒に何かやろうってことになったんだ。LJCとは彼が南京で学生だった頃から一緒に楽曲を作ってきた。彼はとても印象的なメロディや美しいシンセサウンドを作るすごいセンスの持ち主さ。彼らと一緒にやるのはとても楽しいし、彼らから伝えられるアイデアも素晴らしいものなんだ。
– 制作プロセスについて教えてくれますか?
Dirty K – タイトル曲「Pamorama」がEP全体の出発点だった。当時ビジュアルアーティストiranacredi (Johanna Invrrea) の作品にインスピレーションを受けたんだ。彼女の撮影した風景を見て感じた気持ちは今でも覚えてるよ。彼女に連絡してプロジェクトに参加してタイトル曲の映像を作ってくれないかって聞いてみたら、すごくラッキーなことに興味を持ってくれた。EPの制作は結構大変だったよ。GRM Toolsで 808drum loop に何回も何回も修正をかけて岩肌の感じを出したり滑らかなリードサウンドメロディで川を表現したりした。あとは、いろいろなやり方でよくある音楽の構造を打ち壊そうともしてみたんだ。このEPの一部ではbpmを数えることもできないぐらいだよ。
– 〈Genome 6.66Mbp〉とはどんな関係にありますか?
Dirty K – Genomeのことはみんな知ってるよね。3年もその中心メンバーでいられて本当に嬉しいよ。大変な時期もあったんだけど、今回またこのEPをGenome からリリースできて本当によかったと思ってる。
– あなたのいる音楽シーンつまり上海、ALL、Genomeなどについてはどう感じてます?
Dirty K – このシーンは僕にとっては一種のシェルターなんだよ。だけどシェルターはいつも僕を守ってくれるわけじゃない。自分の方がシェルターに貢献しなきゃならない時もあるよね。僕にできるのはみんなにとってより価値のある音楽を作ることだけだね。
– 将来に向けての希望や想いは?
Dirty K – 死ぬまであきらめないで音楽の次のレベルに上がっていくこと、だね。
– Can you tell me about your personal history?
Dirty K – Hi , I’m Dirty K ,the real name is Keyi Xu, i have based in Nanjing city for 25 years, study and living here. I was just graduated from my college this year.
– How did you get into making music?
Dirty K – My major always related to the music production. At the beginning I just learn the music recording when i was undergraduate. but I always don’t like the music taste from my college mates in that period, cuz they are more concentrate on technique things.So I change my major to music producing when i was in postgraduate. For reason that I have start to DJ and try to make some music before, although the demos are all not mature enough.
– What is the concept behind your EP “Panorama” ?
Dirty K – I think it’s a kind of impressionism from the future. In this EP I try to use different music and sound design technique to describe many kinds of landscape view to emphasize the beauty from the nature of things. like the texture of the rock. and water, the colour change between different scene. Same as the impressionism music in 1900s ,I prefer use the sound to express the sense perception rather than the emotion. there are lots of emotional thing in my music before so I want to have a change this time. There are also have different kinds of digital sound in my EP so why i can feel it’s a kind of ‘future’ On the other side, I want to use my music to express a dialectical view between ideology and substance , appeal ppl forget the burden from their value and identity and have a peaceful heart and open mind. For instance, Impressionism music has the kind of character which combine the western harmony system and five-tone scale, for the reason I try to bring it back cuz it sounds like a aesthetic bridge which connect the western mind and eastern mind.
– How did you like work with Charms & LJC?
Dirty K – I know chams because of his EP ‘Lettre d’Amort’ , when I first saw the cover (beautiful landscape picture) I know we would have the common taste. And I also send my single ‘panorama’ to him, he was really like it. So we decide to do something together. As LJC , we make music together since he was study in Nanjing, He always has a great sense to make very impressive melody and beautiful synth sound. I always feel enjoyable to work with them, I really love the idea they gave me.
– Please tell me the process of production of “Panorama”?
Dirty K – The track ‘panorama’ is the starting point of my whole EP project. The inspiration comes from the work from visual artist iranacredi (Johanna Invrrea) . I always recall the feeling from the landscape shot by her. It’s very lucky ,when I ask iranacredi if she is willing to join the project and make the visual for this track, she is interested. They production also not very easy, I spend too many times using GRM Tools modulate a 808drum loop get the texture of rocks and using smooth lead sound melody create the theme of river. Meanwhile i also try different ways to break the common structure of music. U can not even count bpm with this track at Some part.
– Can you tell me about Genome 6.66Mbp? What kind of relationship do you have with Genome 6.66Mbp?
Genome as everyone known, and I’m really glad to be a core member of them for 3 years. Although we are all have some tough period, but thanks god finally I can release this EP at genome again.
– What do you think about the scene that you’re a part of? Shanghai, ALL, Genome..
Dirty K – This scene is the shelter for me. But the shelter can not always protect me. sometimes ppl also need contribute to the shelter, but only thing I can do is create more valuable music for everyone.
– What are your hopes and thoughts for the future?
Dirty K – Step to the next level of music until dead, never give up.
March 1st (sun) 2020
“CHEMICAL MONSTERS” -SPRING FESTIVAL 2020-
at LOUNGE NEO
OPEN 17:00 CLOSE 23:00
DOOR 2500JPY/1D
W/F 2000JPY/1D
U23 1500JPY/1D
Dirty K (Genome 6.66 Mbp)
HABANERO POSSE (Hiro “BINGO” Watanabe & Gunhead)
GQOMZILLA (KΣITO & DJ MORO)
Double Clapperz (UKD & Sinta)
KojiKoji (CHEMICAL MONSTERS | Demian)
WRACK (CHEMICAL MONSTERS | NAAFI | Absurd TRAX)
category:FEATURE
tags:Dirty K
2022/04/07
90年代初頭の東アジアのDJセット Dirty KによるDJミックス「けいこmegamix」がAVYSSのSoundCloudにて公開。アートワークはTsui Honagiが手掛けている。 「稽古(けいこ)とは?けいことは日本の武道。古文書を読んで古代のことをよく知ること、また武道家の日々の修行のこととも訳されています。1990年代初頭の東アジアのDJセットを徹底的にリサーチし、当時のDJが使っていたメガミックスの素晴らしい技術を取り入れ、当時のハイパーテクノを25分の絶妙なミックステープに仕上げているのです。」 Dirty Kの「Tokyo Renaissance / 東京ルネッサンス」は、インターネットによってもたらされた均質化に対抗して、東アジアのクラブカルチャーをローカルで特殊な視点で捉え直すプロジェクト。90年代のレイヴカルチャーと東アジアの地域的変異、日本のハイパーテクノシーンを探求し、過去を掘り下げ、未来を形作る。90年代初頭、日本のバブル経済はピークに達し、最終的に崩壊していく中で、多くの人がクラブカルチャーに傾倒し、明るい光の中に身を置くようになった。ヨーロッパでユーロビートとイタリアンディスコが衰退した後、J-Raveは多くのプロデューサーに第二の風を吹き込んだ。やがて、日本はこれらの影響を受けながら、独自のクラブサウンドを作り上げていった。ハイパーテクノは、「ジュリアナ東京」という東京の象徴的なクラブで神話的な地位を確立した。その余波は、アニメ、コミック、ゲーム、ギャル、パラパラにまで広がっていく。そしてavex trax及び、avexが手掛けるシリーズ『SUPER EUROBEAT』は、この類のサウンドをメインストリームに押し上げ、浜崎あゆみなどのポップスターを生み出した。 「Tokyo Renaissance」は、J-Raveのパイオニアの一人であるJohn Robinsonのサンプルを基にアシッドシンセのラインが湧き出るサイレンコールである。同じく中国のプロデューサーであるLJCは、東京湾の海岸線をなぞる夕日のようなアルペジオと、空中に手を置いたようなピアノのコードで構成された、陶酔感溢れるトラック「Kazumi」を提供。また、日本のプロデューサーWRACKとT5UMUT5UMUによるリミックスも収録。アートワークはJACKSON kakiが手掛けている。 Dirty K & LJC – Tokyo Renaissance / Kazumi Label : Eastern Margins Designed by JACKSON kaki Release Date : 11 February 2022 Bandcamp : https://dirtykkkk.bandcamp.com/album/tokyo-renaissance-kazumi Tracklist 1. Dirty K – Tokyo Renaissance 2. LJC – Kazumi 3. Dirty K – Tokyo Renaissance (Wrack & Dirty K VIP Mix) 4. Dirty K –
2020/02/02
3月1日開催 3月1日(日・デイタイム)、渋谷LOUNGE NEOにて「CHEMICAL MONSTERS -SPRING FESTIVAL 2020-」が開催。 今回、中国 / 南京に拠点に活動し、上海のレーベル/コレクティブ〈Genome 6.66 Mbp〉のメンバーDirty Kの再来日が決定。Dirty Kは、これまでに〈Genome 6.66 Mbp〉から2つのEPをリリースしているだけでなく、Bulma、Chams、LJCとのコラボレーションや、Mobilegirl、Knophaへのリミックス提供、Jerome、Rinse France、Free Collision、The Levels Are Very Highなどへのミックス提供など幅広く活動を展開している。そんなDirty Kが昨年11月にリリースした『Panorama』をひっさげて、「Dark Jinja」以来となる来日。迎えるのはHABANERO POSSEをはじめ、GQOMZILLA、Double Clapperz、KojiKoji、そしてWRACKの超攻撃型ラインナップ。会場もDimensionからLounge NEOに移り、勢いに乗る「CHEMICAL MONSTERS」の2020年第一弾となる。 ※新型肺炎の影響によりDirty Kの来日がキャンセルになる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。 March 1st (sun) 2020 “CHEMICAL MONSTERS” -SPRING FESTIVAL 2020- at LOUNGE NEO OPEN 17:00 CLOSE 23:00 DOOR 2500JPY/1D W/F 2000JPY/1D U23 1500JPY/1D Dirty K (Genome 6.66 Mbp) HABANERO POSSE (Hiro “BINGO” Watanabe & Gunhead) GQOMZILLA (KΣITO & DJ
2024/02/16
日本ユーロダンス、台湾EDM、韓国ボッコダンス 妙義山は、群馬県甘楽郡下仁田町・富岡市・安中市の境界に位置する日本三大奇景(奇勝)の一つとされる山。 Dirty Kは、東アジア固有のエレクトロニック・ミュージックの突然変異から生まれた、ターボチャージされたレイヴ・ミュージック・マニフェストを提示する。今作は、Dirty Kが東アジアのレイヴ・ソニックを探求し、再生させた最新章。『東京ルネッサンス/Kazumi』に続き、Dirty Kは日本のハイパーテクノ、台湾のEDMダンスホール、韓国のボッコダンスから、東アジアのレイヴ・カルチャーをローカライズした独自視点で表現。 東アジアには、世界的な影響力を持つ土着文化の豊かなタペストリーがある。今日、世界中の外国文化を消費する重要な市場であるにもかかわらず、東アジアのレイヴ・カルチャーのユニークなサウンドは見過ごされる。Dirty Kの前作『東京ルネッサンス/Kazumi』で紹介された90年代のJ-Raveカルチャーやパラパラなど、東アジアの音楽ジャンルやそれにまつわる文化現象は、かつて世界的に大きな波紋を呼んだ。しかし、その影響はしばしば世界的なエレクトロニック・ミュージックの言説では見過ごされ、ハイパーポップなどの不定形な概念に信用されずに包摂されてきた。 『Myogi 妙義』では、日本のユーロダンス&ハイパーテクノから台湾の90年代EDMダンスホール・カルチャーまで、この豊かな文化のタペストリーにDirty Kが飛び込む。DJ Jerry (罗百吉) のようなアーティストは、90年代に西洋のエレクトロニック・ミュージックを台湾に移植した。「Taipei Prince」のようなトラックは、このサウンドを体現しており、シュールなサイレンのようなシンセサイザーと、わかっていながら不愉快なボーカルリフレインが特徴。 『Myogi 妙義』の中で、Dirty Kは東アジア内および国際的な異文化受粉にも焦点を当てている。「Intro (Live my Life)」と「Taipei Prince」には、韓国のボッコダンスからヴォーカル・サンプルが使われている。日本のパラパラに影響を受けたボッコダンスとは、振り付けを多用したダンスで、4×4の電子音楽に合わせて2人以上のグループが協調して踊るのが特徴。これと並行して、Dirty Kがイギリスに住んでいた頃に浸透していたアマピアノやドリルといった、世界的なエレクトロニック・ミュージックのサブカルチャーからインスピレーションも得ている。 この異文化交流に欠かせないのが、東アジアのアンダーグラウンドで活躍するT5UMUT5UMU、WRACK、pìccolo、Sonia Calicoの参加。アートワークではJACKSON kakiと再会し、日本の90年代のクラシックなレイヴ・スリーヴの夢を明晰に表現している。DJ Jerry (罗百吉)がDirty Kに与えた影響から、現代の台湾エレクトロニック・シーンのリーダーによるトラックの再解釈まで、音の受粉の輪が完成した。 Dirty K – Myogi 妙義 Label : Eastern Margins Release date : Feb 21 2024 https://lnk.to/dirtyk-myogi Tracklist 1. Intro (Live my Life) 2. Taipei Prince 3. Myogi 妙義 feat. T5UMUT5UMU 4. Hello Hurray 5. Tokyo Sturdy 6. Taipei Prince (WRACK Remix) 7. Hello Hurray
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