食品まつり a.k.a foodman|インタビュー

今年名古屋に戻ってきたfoodman。2016年の『EZ Minzoku』から2年、ニューアルバム『ARU OTOKO NO DENSETSU』がついにリリースされる。

 

 

食品まつり a.k.a foodmanは樋口貴英のソロ名義である。2012年にOrange Milk Recordsから『Shokuhin』をリリースして以降、数々の作品を世に送り出している。唯一無二のキャラクター(とサウンド)は国内外問わずあらゆるシーンやミュージシャンからリスペクトされており、そのサウンドはジューク/フットワークを軸にハウス、エクスペリメンタル、ヒップホップ、J-Pop、アンビエントなど様々なジャンルをごちゃごちゃに混ぜたり混ぜなかったりする。せっかく混ぜたのにほとんど削ぎ落としたりもする。紙を擦ってカサカサと音を立てているだけでも、無音の中で怒号のように叫びまくっても、彼の事を知っている人は食品まつりっぽいと言う。ただ単にアンダーグラウンドヒーローな音楽家とは違い、必ずポップであることも彼の特徴だ。ノイジーでブルータルなテクノプロデューサーContainerのレーベルPlastic Bagsからカセットをリリースしたかと思いきや、世界のトップDJであるDiploMad DecentのサブレーベルGood Enoffからもリリースを行う。横の層はもちろんのこと縦の層も巻き込める稀有な存在、食品まつり a.k.a foodman。名古屋は大須の某タコス屋でタコスを食べずに話をした。

 

 

– もう定着しすぎて逆にそのインパクトある名前の由来を知らない人もいるかと思うので、よかったら教えてください。

 

食品まつり a.k.a foodman(以下foodman) – 最初、本名の樋口貴英でやってたり、釣心会って名前でやってたりしてたんです。ちなみに釣心会っていうのは僕がやってた釣りのサークルからきてるんですけどね。それで10年ちょっと前に、名古屋にドラびでおさんが来るイベントがあって、その日はちょっと違う名前でやりたいなって思って近所歩いてたらナフコ(名古屋ローカルのスーパーマーケット)があって、食品まつり開催中って旗がなびいてて、これだ!と思って使用して、そのままダラダラ続いてるっていう感じです。

 

– a.k.a foodmanはいつ付いたんですか?

 

foodman – 2012年ぐらいにTwitter上でJuke/Footworkの方々とやり取りしてて、僕Traxman好きなんで「〜マン」っていいなって呟いたら、広島のCRZKNYさんが「フードマンが良いんじゃないですか」って言ってくれまして。「あ、イイっすね!」って言って、そのまま合体させたっていう。まぁポリシーもなんもないっていう。それが定着しちゃったんですよね。なんか食品に詳しいんじゃないかって思われたりするんですが、ただ成り行きと思いつきで来ちゃったっていう感じです。

 

– 今となってはモーニング娘。以上に何も違和感を感じませんね。

 

foodman – 未だに自己紹介するときに、なんでこんな名前にしたんだろうって思うんですよね。

 

– え、まだ思うんですか?

 

fooman – ゲシュタルト崩壊っていうか、毎回「食品まつりです」って言う度に、俺は何言ってるんだろう?って思いますよ。もしかしたらいつか名前変わるときがくるかもしれませんけど。

 

– 何に変わりそうですか?

 

foodman – 最近、ヒーリング樋口って名前がいいなって思ってて。樋口ヒーリングとか。あと、電子けんじとか。

 

– けんじは誰なんですか(笑)

 

foodman – けんじは意味ないですね(笑)

 

 

– 食品さんって今音楽以外の仕事を持たずに生活してます?普段どんな生活サイクルなんですか?

 

foodman – ライブとか自分の音楽の制作もしてるんですけど、広告系の音楽制作が今はメインですね。朝9時とか10時に起きて、メールチェックして、昼ぐらいから制作を始めて、夜飯食って、20時ぐらいから夜中12時〜9時ぐらいまで寝るっていう。ライブあるときは準備してますね。ちょっと前だと、地元の近くの春日井駅のサイネージの音楽作ったりとかしましたね。

 

– そのときはどんなの作るんですか?

 

foodman – 自分の音楽とは全く違いますね。注文内容も色々あって、リファレンスの音が送られてきたりとか、何回か修正して形にしていく感じですね。

 

– ちゃんとクライアントワークですね。

 

foodman – その仕事は10年ぐらい前からやってたんです。今年まで横浜に4年間居たんですね、で2014年までは名古屋のカラオケの音を作ってる会社で働いてたんですけど、そのときから副業でCMの仕事もしてたんですよ。横浜に引っ越してから海外ツアーとか増えてきたんで、思い切ってフリーランスになろうかなと。なので、仕事の量に波がありますよね。

 

– 時代を遡りますが、子供の頃は名古屋で育ったんですか?

 

foodman – 名古屋で育ちました。母ちゃんが石垣島の人で、1年ぐらい沖縄に住んだりとか、また戻ったりとか、小学校のときに何回かありましたね。

 

– 音楽に目覚めたのはいつですか?

 

foodman – 目覚めたのは高校三年生ぐらいですね。それまで全然興味なくて、アニソンとかゲーム音楽とかいいなって思うぐらいで、CDも買わないし、プレイヤーも持ってなかったですね。高三のときにたまたまHMV行ったときにたまたま試聴機で聴いたのがドラムンベースで、めちゃくちゃかっこいいなって思って。それで自分で色々調べたらクラブミュージックが存在してて、テクノとかがあるんだってわかって、そこから本買って調べて出してって感じですね。そっからクラブ行ってみたいなとか、自分で曲作ってみたいなとなりました。

 

– 名古屋、横浜、名古屋と移住してますが、住む街が作る音楽に影響を与えることはありますか?

 

foodman – 名古屋にいたときから色々な国の音楽とか東京のアーティスト聴いたりしたんですけど、やっぱ現地じゃないとわからない人もいっぱいいて、ネットがあるけど行かないと本当に感じれないものってあるじゃないですか。例えば東京だとフォレストリミットとか。行かないとあの独特の雰囲気はわかんないですよね、こんな人たちがいてこんなコアなシーンがあるんだみたいな。そういう影響を受けて作る音楽や聴き方も変わることはありますね。

 

– 前にMASSAGEのインタビュー(前編後編)で制作環境の話をされてたじゃないですか。あれから機材変わりました?

 

foodman – ちょっと変わりましたね。基本はAbelton liveとElectribeを併用したり、片方だけ使ったり。それにAbleton Pushを導入しました。ライブは8,9割Electribeから音が出てるという感じですね。最近また新しい感じにしたいと思ってるんで、今色々考えてますね。

 

– 以前から1曲毎の制作に時間をかけないと仰ってましたし、Zaytovenの制作スピードに関する発言にも共感してるようでしたが。

 

foodman – やっぱ作り手の気持ちとして勢いが出るというか。あと今の世の中の流れ的にもポンポン出してくし、同じような曲が出てくるのもあれだけど。それはそれで面白いんじゃないみたいな感じです。それをやってくうちに突然変異的に変なものが出てくる可能性もあるし。一概に量産することが悪いことじゃないし、量産することによって、いきなりわけのわかんないものが出てくる気もするんですよね。

 

– ハプニング大好き?

 

foodman – ハプニング大好き。ほんともうハプニングしかないですね。全てにおいて。

 

– ハプニング待ち?

 

foodman – ハプニング待ち。なんかクラブ行っても予定調和になるよりは、なんか変な酔っ払いが寄ってきたりとか、そういうことが起きたほうが俺は好きです。変な状況の方がなんかワクワクするんですよね。みんな仲良くよりかはいきなり喧嘩始まったりとか。さすがに喧嘩は怖いですけど(笑)それぐらいのが面白いんじゃないかなって。もちろん毎回それだと疲れるんですけどね(笑)

 

2017年にテレビ神奈川で特集された映像。自身の事をエラーが起きやすい人間だと分析している。ゲップのくだりやコロッケのくだりなどの発言と、アナウンサーの綺麗なナレーションとのギャップがシュール過ぎる映像。

 

 

– 以前カトーマサカーで、紙をカサカサやるだけのライブやってましたよね。

 

foodman – あれは最初弾き語りのライブをやるってなってて、家でウクレレ弾いたら、なんか違うなってなって、紙でやったらいいかなって、、

 

– ウクレレから紙ってだいぶ飛びましたね(笑)。

 

foodman – どっちもマイクを使うじゃないですか。なのである意味生コラージュですね。突拍子もないことをやったつもりはないんですよね。リアルタイムで演奏してるぐしゃぐしゃっとしたノイズミュージックのようなイメージです。

 

#katomassacre #foodman

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– パフォーマンスを考えてのことじゃないんですね。

 

foodman – 元々パフォーマンサーとしての器が小さいんですよね。人を楽しませようとか喜ばせようとかがあまり無いんですよね。

 

– 意外ですね。

 

foodman – 自分だけが良ければいいみたいになっちゃうタイプですね。みんなと一緒に楽しもうっていうのも好きなんですけど、そういう才能あまりないんですよ。ライブにパッと出されて、面白い感じになれって言われても、緊張しちゃって‥。いつもすぐ緊張しちゃうんですよ。いつも下向いちゃって。マイクでMCやろうとしても声が小さくなっちゃう。さっきまで、やりますわー!カマしますわー!みたいに言ってたのに、いざライブになった瞬間シュンッてなっちゃうときが多々あるんです。で、俺はそんな感じじゃないなって思って。根暗だし、引っ込み思案なんですよ。だからそういうときは頑張ってるんですよね。普段はあんま外でないし、いつも家でボソボソしてるだけなんで(笑)現場でお酒飲むのは大好きですよ。いわゆる躁鬱が激しいんですよ。

 

– 躁状態の食品さんのヴァイブスはすごいですよね。

 

foodman – あれね、病的だと思うんですよ(笑)ああいうときはガッといっちゃうんですよ。でも基本は僕、銭湯とかでまったりしたいんですよね。チルアウトするほうが好きというか。

 

– その流れでいくと最近ずっとサウナって言ってますよね。

 

foodman – なんで僕がサウナにハマったかっていうとこからですね。2016年ぐらいかな、気分が優れないときに、なんとなくネット見てたらヨモギーさんっていうサウナーの方の記事を発見して、読んでみたんですよ。ヨモギーさんも鬱状態だったけど、サウナに入ったら解消されて、ハッピーみたいなことが書いてあったんです。それでサウナ入ったら変わるのかなって思って。サウナと水風呂がセットっていうのもあんまりよくわかってないぐらいだったんですけど、ヨモギーさんのオススメの入り方で近所の銭湯で入ってみたんです。サウナの後に水風呂入ってみたら、なんかいきなり理解できたっていうか、サイケデリックな状態になったんですよ。もう変な映像が見えるぐらいの。これはヤバイなってなって。それを何回か繰り返したら、超ディープリラックス状態になって、ある意味ドラッグに似たような状態ですね。そっから色んなサウナに行くようになったんです。

 

– オススメの店ありますか?

 

foodman – 東京だとマルシンスパですね。全国から人が来るぐらいの店ですね。そこはセルフロウリュなんですよ。他だと店員さんがやるんですけど、そこは自分でやれるんですよ。それが良くて。でも俺、水かけ過ぎて、蒸気発生させ過ぎて、死ぬかと思ったことはありましたけど。あと店が11,12階にあるんで景色が良いんですよね。ちなみに水風呂は水温と水質も重要なんですけど、深さも重要なんですよ。深ければ深いほどいいんですよ。あとユーランド鶴見っていうスーパー銭湯があるんですけど、関東圏で一番冷たいんですね。普通は水温17,18度なんですけど、そこは水温9度なんですよ。もう冷たすぎて、10秒ぐらいしか入れないんですよ。で、冷えた体が常温に戻るときに一番サイケデリック状態になるんです。イメージとしては煮物を煮て、冷えたときに味が染みる感じです。

 

– 意外とわかりやすい例えですね。

 

foodman – 佐久間さんも一緒にどうですか?

 

– 行きましょう。

 

foodman – なんかね、みんな行かないと何言ってんだこの人みたいになるんで。

 

– 前もhakobuneさんや、DJ NOBUさんと行ってましたよね。

 

foodman – お二人もサウナや銭湯が大好きなんですよね。サウナって音の聴こえ方変わるんですよ。サウナと水風呂の繰り返しで、ディープリラックス状態になるとですね、5.1チャンネルのサラウンドシステムで音が聴こえて、音が異常にクリアなんですよ。カランの水の音とか、上質なアンビエントを聴いてるみたいになりますよ。最近知ったんですけど、コーネリアスの小山田さんも「水風呂の後のあの感じヤバイよね」ってインタビューで言ってたんですよ。音好きの人はハマると思いますよ。

 

食品まつり a.k.a foodman Boiler Room New York Live Set

 

 

– 今でも食品さんの軸はJuke/Footworkなんですか?

 

foodman – 基本はそうですね。自分の中ではジャンルじゃなくてエフェクトに近い感じなんですよね。発想の一部みたいな感じです。女神転生の悪魔合体と似たような感じで、ラテンとジュークを悪魔合体させたり、ムーンバートンと演歌を合体させたらどうなるんだろうとか、まぁ失敗することもあるんですけど、そういう実験をずっとしてるんですね。その実験をやろうって思わせてくれたのがジュークなんです。

 

– なるほど。

 

foodman – ジュークってサンプリングも多いじゃないですか?サンプリングミュージックってサンプリングすれば、どの時代の音も自分の音にできますよね。この先、いろんな音楽が廃れたり流行ったりって浮き沈みがあってもサンプリングすることで常にリアルタイムに自分の音にできるっていう。それってすげぇなって思って。いつだってリアルタイムになれんだと思って。サンプリングミュージックについて改めて考えさせられましたね。

 

– 新作についてはどうですか?

 

foodman – 今色々用意してて、年内にポンポンと出る予定です。

 

– 今話せる範囲でいいですが、どんな感じになりそうですか?

 

foodman – 『EZ Minzoku』の延長線上のものを作ろうと思って作ってたんですけど、コンセプトも色々考えたりとか、でも途中からコンセプト考えるの面倒臭くなってきて(笑)。で、絵本を付けたくなってきて、絵本のテーマと音楽が噛み合うようなものを作ろうとしたんですがちょっと抽象的な感じにはなりましたね。日記みたいな感じで日々の生活で思ったことを曲にしたり、あとメロディアスになってエモいやつもあります。

 

ニューアルバム『ARU OTOKO NO DENSETSU』からの先行シングル『MIZU YOUKAN』と『SAUNA』

 

 

– 楽しみですね。最近は何聴いてます?

 

foodman – ヒップホップだとケンドリックラマーとか、6ix9ineとか、チャイルディッシュガンビーノとか、テクノやアンビエントも表層的に聴くし、J-Popも。あと昔の曲も聴きますね。ナンバーガールとか。

 

– ナンバーガール好きっすね(笑)。

 

foodman – そう、ナンバーガール大好き。今日も聴いてきました。(笑)色々なんとなく聴くのが好きで、僕Twitterで6000人ぐらいフォローしててJ-Popからノイズの人までいろんなジャンルの人フォローしてるから自動的にいろんな音楽が流れてくるんですよ。あとResident AdvisorとかTiny Mix Tapesとか見たりしてますね。ランダムに聴いてますね。面白きゃなんでもいい感じあるんですよね。だからリスナーとしてはすごく薄っぺらい聴き方してると思いますよ(笑)。そこまで深く掘り下げたりもしないですしね。表層的な感覚のチャンネルといいますか。さっきのZaytovenの話じゃないですけど、音楽を疎かにしてるっていう発想も今っぽいじゃないですか?ああいうのを面白いって思えるか、それはダメじゃないかって思うかでけっこう変わってくると思うんですよ。これから音楽の流れがどんどん変わっていって、価値観も変わると思うし、今までいいと思ってたものがダメになったりするし、その逆のことも起こるんですよね。トラップだってダサい音楽になる可能性が余裕であるし、だから複数チャンネルって必要だと思うんですよね。

 

– そうですね。新しい波を柔軟に吸収していく術は必要ですよね。

 

foodman – 佐久間さんもいろんなタイプの音楽聴いて、アウトプットしてますよね。同じ年代だからそういうのがあるのかなって最近思うんですよね。WWWの海法さんもそうですし。僕らの世代ってインターネットの時代もそうじゃない時代もどっちも知ってるってのがあるかもしれないですよね。

 

 

 

<Release info>

 

 

食品まつり a.k.a foodman
『ARU OTOKO NO DENSETSU』
リリース日:2018/9/21
※LP国内発売日未定

 

トラックリスト

 

1. KAKON
2. PERCUSSION
3. 337
4. AKARUI
5. FUE
6. BODY
7. MIZU YOUKAN
8. CLOCK feat. MACHINA
9. TATA
10. TABIJ2
11. SAUNA
12. MOZUKU feat. PILLOW PERSON

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