2024/04/02
自宅、機材、本、母校、シークレットレイヴ
松永拓馬。現代的なアンビエント・ミュージックの新鋭としてパンデミック下に登場した彼は、誰しもが内省を深めた2020年代初期を象徴する次世代の音楽家だ。その姿を初披露した相模湖でのエシカルなシークレットレイヴのイメージを持つ人も多いだろう。松永拓馬が描くパーソナルで生々しい世界観には、あやふやのようで時に鋭く映る瞬間がある。まさしくリアル、写実的に軌跡を辿る彼の現在地点はいまどこにあるのだろうか。1st Album『ちがうなにか』から約2年ぶりのリリースとなる本作『Epoch』のリアルを、アートワークを手がけたKenta Yamamotoが撮りおさめた写真を通して紹介する。地元から離れた自宅、機材、お気に入りの本、母校の音楽室などから相模湖でのシークレットレイヴまで。松永拓馬のとある1日を切り取ったフォト・ダイアローグ。
Text:yukinoise
Photo:Kenta Yamamoto
Support : Masayuki Okamoto
#0 │2022/05/07@相模湖某所
1st Album『ちがうなにか』のリリースパーティーは、自分が生まれ育った地元、藤野で開催することに意味があった。
#01 │ イン・マイ・ルーム
いま住んでいる家の中。『Epoch』の制作はここかミルくんの家のどちらかだった。小学生の頃やってたバイオリンの音も今回1曲だけ取り入れてる。ライブで実際に演奏するとなるとちょっと面倒。でもバイオリンにマイクやエフェクターを付けたらもっと遊べるかも。
#02 │ 若い時にしかヤングな音は出せない
アルバム制作のために、去年他の機材を売ってまで買ったUDO AudioのSUPER6。デザインも90年代チックで手で触れるソフトシンセって感じ。割と新しいメーカーのシンセサイザーで、Juno-106とかをリバイバル的にオマージュしている感じが面白くて今は現行の機材を使って、後々ちょっとクラシックなシンセサイザーを買う方がいいなと思ってる。若い時にしかヤングな音を出せないから。年を重ねれば他にもっといい機材を買えるようになるだろうから、逆に今しか買わないような機材を選びたかった。
一方、ミルさんは今作でProphet-10っていうシンセサイザーを使ってる。あっちはアナログでモノラル。俺のはデジタルでステレオって感じで、お互い異なるもの同士で相反する音のうねりや交わりが生まれたのが楽しかった。
#03 │ Everyday 正月
Carsten Nicolaiがデザインした日めくりカレンダーはミルさんからもらった誕生日プレゼント。剥がすがもったいなくて1月1日で止まったまま。Everyday 正月ってことで、めでたくやらせてもらってます。
#04 │ はじめてのLP
今年アンコールプレスされたから、初めて買ってみた坂本龍一の『async』のLP、EP『SAGAMI』の頃から影響を受けてる教科書的な名盤。盤を見開くとアートワークが正方形じゃなくて長方形になるデザインで、サブスクで聴いてるだけじゃ気づけなかった。生産時に排出された二酸化炭素量も坂本龍一の植林プロジェクトから賄われてる作品。ちなみにリスニング環境はまだない。
#05 │ Epochの解像度を高める1冊
この本はやまけん(Kenta Yamamoto)がプレゼントしてくれたもので、大切なことがたくさん書いてある。
*焚いてる人が 燃えてる火
*美しものしかない みにくいものはまよい
*自分であればあるほど 自分はひとだ
*なんという今だ 今こそ永遠
なんてね。
#06 │音楽の原体験だった小学校の音楽室にて
小学生の時に獲得した音楽に対する身体性が今の制作にもすごく生きている。小さい時に何に触れてきたかってとても重要で、過去のトラウマとかも含めて、自分を構成する要素というか、制作の源流になってくる。
銅鑼みたいなタムタムはドイツの職人がこだわって作った打楽器。叩くといろんな振動が同時に起きて、色んな帯域で空間全体を揺らす極上の音が出る。ピアノや鉄琴の他にも、キャッチボールみたいに投げたり転がしたりして音を鳴らすような、身体性を音で拡張させる楽器がたくさんあった。
#07 │ i_want_
不安定な社会や、広すぎるSNSの反動とかで実際に会えるってことがすごく貴重に感じる。みんなそれぞれのコミュニティを持って、それを大事にするようなムードがある気がして、そういう時代に生まれた『Epoch』のコミュニティは補完関係じゃなく、同じ時間を生きてる中で、リズムがシンクロした点が繋がっていく感じで始まった。今回は自分が思い描いてることがいろんな人のタイミングと重なった結果、『Epoch』という概念が立ち上がっていき、松永拓馬を起点に共鳴していったことが最終的に一つのアルバムという形になった。みんなそれぞれ、日々の暮らしや遊びの中で新しい答えを様々な角度から探す、みたいな。
だから、完成したアルバムそのものよりかたちになるまでのプロセスが大事だったし、リリースした後もまだ完成してないというか、広がっていく余白がある。余韻や音の波紋が広がるように、ここから始まる新しい流れや、出会いに身を任せたい。
松永拓馬 – Epoch
Release date : Jan 31 2024
Stream : https://linkco.re/7ZGheQBx
Tracklist
1. July
2. Oh No
3. u
4. 森
5. もっと
6. Boys Lost in Acid
7. Owari
8. いつかいま
Written + Produced by Takuma Matsunaga & Miru Shinoda Mixed by Miru Shinoda(1-5,7,8) & Atsu Otaki(6)
Vocal Recording by Atsu Otaki (EVOEL Studio)
Mastered by Wax Alchemy
Art design by Atushi Yamanaka
Artwork by Kenta Yamamoto
category:FEATURE
tags:松永拓⾺
2024/01/30
日常性の中に恍惚や陶酔を宙吊りにしようとする 松永拓馬が2nd アルバム『Epoch』を2024年1月31日にリリースする。本作はyahyelのメンバーとしても知られるMiru Shinodaをプロデューサーに迎えて約一年半の時間をかけて制作。アルバムに登場する大部分の音は、アナログ・シンセサイザーによってゼロから作成され、リアルタイムでの操作に よって録音された。 epochの語源であるギリシャ語のepokhe(= エポケー)は「判断を保留し、一時停止すること、上(epi)に保持すること (ekhein)」を意味するが、『Epoch』はまさしく日常性の中に恍惚や陶酔を宙吊りにしようとする。それは日常であって非日常であり、現実であって夢であり、あるいはそれらのどれでもない。『Epoch』はそれら全ての中にあって宙吊りにされたものであって、それらを往還する松永拓馬の音響的な軌跡。ミックスはMiru ShinodaとAtsu Otaki、マスタリングはWax Alchemyがそれぞれ手がけた。アートワークはKenta Yamamotoが担当し、デザインはAtushi Yamanakaが手がけた。 松永拓馬 – Epoch Release date : Jan 31 2024 Stream : https://linkco.re/7ZGheQBx Tracklist 1. July 2. Oh No 3. u 4. 森 5. もっと 6. Boys Lost in Acid 7. Owari 8. いつかいま Written + Produced by Takuma Matsunaga & Miru Shinoda Mixed by Miru Shinoda(1-5,7,8) & Atsu Otaki(6) Vocal Recording by Atsu Otaki (EVOEL Studio) Mastered by Wax
2024/09/19
日常性の中に恍惚や陶酔を宙吊りにしようとする 1999年に生まれ、幼少期からクラシック、ブラックミュージック、そしてアンビエント、電子音楽など多種多様な音楽に触れて育ち、2021年から本格的に活動を始めた現在東京を拠点とする音楽家、松永拓馬。彼がyahyelのメンバーとしても知られる篠田ミルをプロデューサーに迎え、約一年半の時をかけて制作した最新アルバム『Epoch』をCD/LP/カセットの3形態で同時発売。アルバムに登場する音は、アナログ・シンセサイザーとデジタル・シンセサイザーを使用しながらリアルタイムでの操作によって録音されており、アンビエント、電子音楽をベースに、ヒップホップのエッセンスも足された嘘偽りのないピュアな唯一無二の作品となっている。CD/LP/カセットのアートワークはジャケットを担当した山中アツシ、松永拓馬、篠田ミルによる拘りが集約されたものとなっており、Kenta Yamamotoが撮影したオフショットを多数使用。 CDは封筒型特殊パッケージ仕様、LPはWax Alchemyによるリマスタリングが施されている。各フォーマットの詳しい仕様やアートワークは今後順次公開予定。 “epoch”の語源であるギリシャ語の“epokhe(=エポケー)”は「判断を保留し、一時停止すること、上(epi)に保持すること(ekhein)」を意味するが、『Epoch』はまさしく日常性の中に恍惚や陶酔を宙吊りにしようとする。それは日常であって非常であり、現実であって夢であり、あるいはそれらのどれでもない。『Epoch』はそれら全ての中にあって宙吊りにされたものであって、それらを往還する松永拓馬の音響的な軌跡なのだ。 松永拓馬 – Epoch レーベル:P-VINE フォーマット:CD / LP/ カセット 発売日:2024.12.4 品番:CD PCD-18914 / LP PLP-7492 / カセット PCT-47 定価:CD ¥3,500(税抜¥3,182) / LP ¥4,800(税抜¥4,364) / カセット ¥2,750(税抜¥2,500) Pre-order : https://anywherestore.p-vine.jp/collections/matsunaga-takuma Tracklist 1. July 2. Oh No 3. u 4. 森 5. もっと 6. Boys Lost in Acid 7. Owari 8. いつかいま LP/カセット SIDE A: M1-M4/ SIDE B: M5-M8 Written + Produced by Takuma Matsunaga & Miru Shinoda Mixed by Miru Shinoda(1-5,7,8)
2023/04/12
プロデュースはMiru Shinoda プロデューサーにyahyelのMiru Shinodaを迎え、松永拓馬が2ndシングル「Vivid Days」をリリース。 世界と繋がってるようで、掴もうとすると遠のいてしまう…。社会の雑音を捉えるも、相反して時代の波に漂い揺れることを本作は許容する。喧騒の中に身を置くことよりも、宇宙を捉え繋がることや身を委ねる感覚が人間としての正しい営みであると訴えるように、歌い手の声はこの世を憂いながら原始に立ち還る感覚を呼び起こさせる。 サウンド面では、制作中にベランダでフィールドレコーディングした素材、拾い物のギターループ、レコーディングスタジオに置いてあったスティールパン、Prophet10によるシンセシス、プラグイン上の処理を重ねて生成したノイズなど、それぞれ由来やテクスチャの全く異なる音の素材を持ち寄りながらも、パーソナルで親密感のある音像にまとめあげた。松永拓馬とMiru Shinodaの共作過程の初期段階に着手した楽曲で、2人の創造性が大いに盛り込まれている。 松永拓馬 – Vivid Days Art work by Reina Kubota Release date : April 12 2023 Stream : https://linkco.re/QaVYS8tg
出会いからEP『Soul Kiss』に至るまで
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