意図と結果のあいだに存在する裂け目|Max Devereauxによる『CHASM』がリリース

断片と未完のアイデアで作られる

 

 

《Chasm》は、断片、ボツになったアイデア、途中で止まったプロセスを素材に組み上げられた作品集。サウンドは何かを加えることと同じくらい、削ぎ落とすことによって形づくられている。アルバム 全体を通じて、人間的なパフォーマンスとメカニカルな反復、記憶と異常、静かな表層と暗い底流——そうした対極が共存する領域が掘り下げられる。タイトルが示すのは物理的かつ心理的な裂け目、すなわち意図と結果のあいだに口を開く深い溝。

 

サイドAは、削ぎ落としと再構築のプロセス、そしてオーガニックな要素とメカニカルな要素の緊張関係を通じてアルバムのコアテーマを提示する。「N1」はNocturnal Technologyのサウンドスケープへの応答として書かれながら、確固たるアーティスト性を保っている。「Lion in the Machine」と「Dark Shift」は、脆くて不完全な出発点を、レイヤーの剥ぎ取りと積極的な加算によって、密度と重みのあ るサウンドへと変容させる。

 

「Procession」では大幅に加工された雅楽を素材に、複雑なリズム構造のなかへ混乱が流れ込み、不安定で霊的な躍動感を生み出す。「Pause Menu」は2021年に行われた大規模なセッ ションから切り取られた一片で、ミニマルなリピートと微細なデジタル・デグラデーションによって宙吊りにされた時間を呼び起こし、断片化したエコーと記憶のなかへと少しずつ溶けていく。

 

サイドBは記憶、場所、心理的な風景へとフォーカスを移す。「Weird Walk」は未完成のシンセポップ 録音の断片を、よろめくような方向感覚を失ったモーションへと作り直す。「The Melting Hall」はヴィンテージの雅楽音源を素材に、その儀式的な起源を解体しながら、新たなリズムとトーンの形式へと変えていく。

 

実在の水中軍事施設からインスピレーションを得た「The Redondo Beach Submarine Canyon」は、ギター・インプロヴィゼーションと電子音・アンビエント・サウンドを組み合わせ、深海への降下と空間の探索を想起させる。クロージング・トラック「Fading Glow」では、シンプルなリピート・メロディがゆっくりと浸食され、安定性と親しみやすさから少しずつ漂い離れていく。これまでのリリースと同様、本作もカセットテープという媒体を通じて音楽を物理的に手元に置く喜びを大切にしつつも、テープはリサイクル・プラスチックから製造されており、サステナビリティへの意識も反映されている。

 

 

Max Devereaux – CHASM

Label : Nocturnal Technology

Release date : March 5, 2026

https://nocturnaltechnology.bandcamp.com/album/chasm

 

Tracklist

1. N1

2. Lion in the Machine

3. Dark Shift

4. Procession

5. Pause Menu

6. Weird Walk

7. The Melting Hall

8. The Redondo Submarine Canyon

9. Fading Glow

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