2025/09/17
音響迷宮建築ノイズ
Zach Hill & Lucas Abelaによるデビューアルバム『Bag of Max Bag of Cass』が〈Warp Records〉よりリリースされる。収録曲「Combat Boxes」のミュージックビデオが公開。
Zach Hillは、HellaやDeath Gripsの創設メンバーとして知られているが、その名声にとどまらず、音楽界において圧倒的な存在感を放つ―速度と構築美を極めたヴィジョナリーなドラマー。
Lucas Abelaの表現はフリー・インプロヴィゼーションの世界でもユニークな存在で、増幅されたガラス片から文字通り新たな宇宙を切り拓いていく。
ここにあるのは楽曲というよりも広大で質感豊かな音の地平。ノイズは集中と強度を孕んだ音響環境へと変容する。その爆発的な不安定さの中に、意外なほどの静けさが宿る。Zach HillのリズムはLucas Abelaの持続的で破片のような倍音に屈折し、聴く者を絡め取る迷宮のような音響建築を形作っていく。
Q : どうやって出会ったのですか?
Zach : 約15年前、シドニーでデュオによる即興演奏をする直前、数時間前に出会いました。当時、僕はBoredomsのツアーに参加していて、ちょうどオフの日で。Lucasはシドニー在住だったんです。
Lucas : 最初は2010年、Boredomsがシドニーを通過したときですね。ZachとHishamが彼らのドラマーをしていて、二人が他のプロジェクトもやっているのを知っていたので、僕が企画していたギグのサイドショーをやらないかと連絡したんです。二人とも乗り気で、Zachが「デュオをやらないか」と提案してきて、もちろん承諾しました。そのときの様子は誰かがYouTubeに投稿しています。それから7年後、僕がアメリカツアーをブッキングしていたときに、サクラメントで演奏できるかZachに聞いたんです。すると彼は「そんなの気にするな、それよりDeath Gripsと一緒に録音しに来い」と言ってくれて。なのでツアーの合間に彼らのスタジオに立ち寄り、即興セットを録音しました。それが最終的に『Year of the Snitch』に収録されました。
Q : なぜ一緒にやろうと思ったのですか?
Zach : 不快さ……ジュラシックなデジャヴ。
Lucas : 僕は長い話をしますね。このプロジェクトは、COVIDの時期に僕の音楽が進化していく中で生まれました。ロックダウンが始まると、ライブ配信で演奏してくれと頼まれるようになりました。でもすぐに、自分のスタイルは画面越しには伝わらないと気づいたんです。僕は基本的に「生」でこそ成り立つアーティストで、ガラスの楽器もその場の空間と一体化して響くことで音が成立する。ロックダウン下ではそれができないので、ガラスの処理方法を再考せざるを得なかったんです。以前からエフェクトを二重に並列して使う実験はしていたのですが、ロックダウン中はすべてのペダルを使える環境だったので、最大6系統を絡ませてみたりしました。ある人から「モジュラーシンセ的にペダルを使ってるね」と言われ、調べてみたら、モジュラー機材は合成音楽用だと勘違いしていただけで、実は何にでも使えると知ったんです。しかもエフェクトチェインとしてはギターペダルよりはるかに優秀だった。それからは、エンベロープ・フォロワーを大量に使えば、自分のダイナミクスでモジュラー環境のほぼ全てをコントロールできると気づきました。つまり、ガラスが同時に音も変調も生み出すという仕組みです。これがポストCOVIDの僕のガラス・リグの基盤になりました。実際、パンデミック前と後で聴き比べれば、音源は同じ「ガラス片」なのにまったく違うことが分かるはずです。そしてあるとき「自分自身を変調するのではなく、他のミュージシャンを使って変調したらどうだろう」と思いついた瞬間、真っ先にZachのことが頭に浮かびました。彼のドラムがリアルタイムで僕のガラス信号を引き裂いていくイメージだけで、計り知れない喜びを感じたんです。
Q : 録音の過程と今回のリリースの成り立ちを教えてください。
Zach : 2023年10月末、ロサンゼルスのDavid Scott Stoneの自宅スタジオで、2日間にわたって即興のライブ録音をしました。僕はV-Drums(電子ドラム)を演奏し、それを同時にLucasのガラス・セットアップに通しました。その後、僕が生の録音を持ち帰り、2024年の大半をかけて再処理・プロデュースしてアルバムに仕上げたんです。
Lucas : その2日間、僕がやったのはこういうことです。Zachの電子ドラムの信号を取り込み、僕が開発したスペクトル・エンベロープ・フォロワーにパッチしました。これは10チャンネルのクロスオーバーを持ち、それぞれがエンベロープ・フォロワーにつながって、合計20の制御電圧を周波数帯ごとに出力する仕組みです。それを、僕のお気に入りのMungo D0とG0(ディレイとグラニュラー)の2セットにランダムにパッチし、つまみをいじりながら偶然性に委ねて演奏する。その都度リセットしてまた繰り返す――そうやって『Bag of Max Bag of Cass』は録音されました。実はこの方法での作品は今回が2作目なんです。ロサンゼルスで録音する前に、Zachがステム音源を送ってくれて、それをサンプラーに取り込み、バスドラ・スネア・タム・シンバルをそれぞれエンベロープ・フォロワーに分けて試してみました。さらに「僕のガラス信号でZachのドラムを変調したら面白いかも」と思い、サンプルを極端にスローにしてガラスで再生速度をコントロールしたりもしました。最初はリリースするつもりはなかったんですが、結果をZachに送ったら彼がTikTokで映像を作り始めたので「気に入ってるんだな」と思い、僕のレーベルdualpLOVERから7インチを自主リリースしたんです。面白いことに、その「サンプルの速度を変調する」というアイデアは僕のソロセットにも発展しました。ポップソングのボーカルをスローダウンさせてガラスのカオスと組み合わせるというやり方で、最近はその手法を使ったカバー2枚組アルバムも出しました。
Zach Hill & Lucas Abela – Bag of Max Bag of Cass
Label : Warp
Release date : October 31, 2025
https://warp.net/bag-of-max-bag-of-cass
Tracklist
1. Nephillm P
2. Odlous Again
3. Combat Boxes
4. Hamartia
5. Figment 4
6. Bent on 13
7. Scaredy Cats
8. Divisadero Hero
category:NEWS
2022/04/21
ボーカルSøren Holmの自殺から約1年 ヴォーカリストSøren Holmの死から約一年。Lissがデビューアルバム『I Guess Nothing Will Be The Same』のリリースを発表。アルバムから2つの新曲「Country Fuckboy」「Exist」をMVと共に公開。 「何が起こったのか話すのは難しい。Sørenは自殺で命を落としました。彼は数年前から精神的に苦しんでいましたが、彼の死は周囲の人々にとって大きなショックでした。私たちはまだ何が起こったのか理解することができません。Sørenはとても愛情深く、他人のことをよく気にかける人でしたし、辛いときにはいつも彼を頼りにしていました。彼は、夢見るような最高の友達でした。私たちは毎日彼に会いたいと思っていますし、彼がどんな気持ちだったのかを教えてくれていたら、私たちは彼を助けることができたのにと思います。自殺は、残された人にとって何とも言えない辛いものです。愛する人をそのように失うことは、決して乗り越えられるものではありません。一生抱えて生きていかなければならないものなのです。」 「昨年の春、Sørenが亡くなる前、私たちはリリースに向けてレコードを完成させたところでした。7年前にLissを始めてから、デビュー・アルバムの制作はずっと続いていました。Sørenの家族の祝福と励ましを受け、そこから数ヶ月間で、その音楽を皆さんと分かち合うことを決めました。これらの曲は、私たちが長年取り組んできたものであり、Lissを始めたときからリリースすることを夢見ていたものです。Sørenは私たちが一緒に作ったものをとても誇りに思ってくれていて、音楽に生命と魂を注いでくれました。それは永遠に生き続けるでしょう。」 Liss – I Guess Nothing Will Be The Same Label : Escho / In Real Life Release date : 10 June 2022 Format : LP / Digital Pre-order : https://linktr.ee/liss.music Tracklist 1. Country Fuckboy 2. Nobody Really Cares 3. Sure 4. We’re Toxic 5. Boys In Movies (feat. Nilüfer Yanya) 6. We Made It 7. Exist 8. Dead Flower 9.
2023/06/06
10年代インディブログ文化の影響 ダラス出身のマルチ・インストゥルメンタリスト兼プロデューサー、Nick Dasによるポスト・ポストロック・プロジェクト。10年代に大きなムーブメントとなったインディブログ文化からの影響も受ける、dreamTXがデビューアルバム『living in memory of something sweet』を発表。閉塞感とカタルシスをテーマにした2ndシングル「In Too Deep」をリリース。 疎外感はポジティブな生命力に。沈黙は教師。 眠りの論理、壮大な南の空。26歳の頃からアメリカ各地でレコーディングやパフォーマンスを行い、エレクトロニクスやシューゲイザーグループKrausのギター、時にはMaggie Rogersと共同作曲を行ってきた。19年、彼はテキサスという新しいフロンティアから離れ、Drag Cityの崇拝から離れ、最初の偉大な目覚めの精神的根拠地であるウッドストックへと向かう。人生は密度の高い渦巻きになった。ハドソンスクールの色調、砂をかけた茶色、松の緑、虫と熱、激しさ、運動、山登り、本当の自由、孤独、幸せ、エアコンなしの7月の太陽に狂わされたのかもしれない。 「曲は100回書き直したらどうなるんだろう?この後、1曲ごとに、より長い時間をかけて制作しました。1曲で9カ月近くかけたこともあります。その曲がどのように展開するのか、自分の手がどれだけ触れるのかを知りたかったのです。私たちの印象、耳、知覚は常に変化しています。私の中にある静かで、不規則で、生々しく、内向きで、不明瞭で、奔放なパワーが伝わってくるような、そんな曲全体を作りたかったんです。その変化に気づき、それを記録したかったのです。最高の曲は15分で書けると考えるアーティストもいるが、僕にはそうとは思えない。」 – dreamTX dreamTX – living in memory of something sweet Label : Memorials of Distinction Release date : July 26 2023 Stream : https://memorialsofdistinction.bandcamp.com/album/living-in-memory-of-something-sweet Tracklist 1. Get Around 2. Elated 3. I Tried 4. In Too Deep 5. Live Without 6. Cannot Believe 7. You See Me When I Don’t 8. How To Be 9. I Could Face
2025/06/20
インターネットで育った少女が世界中のクラブを揺らすまで 昨年AVYSSサポートで初来日したオーストラリア・セントラルコースト出身のプロデューサー/ソングライター/DJ、Ninajirachiが8月8日に〈NLV Reocrds〉からリリースされるデビューアルバム『I Love My Computer』からリードシングル「iPod Touch」のMVを公開。2010年代の煌めくサウンドを再構築、アイデンティティ形成や創造性の源の象徴と共に切り開く個人的な旅。 「私はこれまでの人生で、どんな人よりもコンピューターと多くの時間を過ごしてきました。コンピューターは、私が自分自身を見つけるサポートをしてくれた……私の音楽は全てコンピューター・ミュージック。コンピューターは私の楽器であり、それなしの自分なんて想像できません。」 「”iPod Touch” は、12歳のときにオンラインでお気に入りの音楽に偶然出会い、それが私の世界を一気に広げたという話です。学校の友だちは誰もエレクトロニック・ミュージックが好きじゃなかったので、秘密みたいに感じていました。たくさんの夜をコンピューターの前で過ごし、できる限りのことを吸収しようとしました。でも、その偶然の発見と好奇心がこんなにも自分の人生を形作るとは思っていませんでした。この曲は、ゴスフォードの高校時代、Supréのショートパンツ、こっそり抜け出してタバコを吸ったこと、放課後にバスで海へ行ったこと、買い物に行ったこと、第2世代のiPod Touchのこと……。あの人生の大切な時期に、私がきっと大好きだったであろうサウンドで、それを思い出すとすごく幸せな気持ちになります。」 Ninajirachi – I Love My Computer Label : NLV Records Release date : August 8 2025 Stream : https://ninajirachi.ffm.to/ilmc Sept 5 San Francisco, CA Sept 6 Los Angeles CA (low tickets) Sept 10 Salt Lake City, UT Sept 11 Denver, CO Sept 12 Minneapolis, MN Sept 13 Chandler, AZ Sept 18 Las Vegas, NV Sept 19 Vancouver, BC Sept
6曲入りデビューEP『EQ』をリリース
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〈SONICMANIA〉Official Repost by AVYSS
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20年代型ネオ解釈邦楽カバーコンピLP版発売
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