2024/01/17
迷宮作品群を解読するコンピレーション
90年代から00年代初頭にかけ、竹村延和のChildisc等から作品を発表した大阪出身のクリエイター、ジャンルの拘束から超越してきた謎の音楽家。Hyuの迷宮作品群を解読するコンピレーション作品『Inaudible Works 1994-2008』が〈エム・レコード〉よりリリースされる。
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Hyu(ヒウ)は「エレクトロニカ」という曖昧な言葉で括られてきた世紀末世代の音楽家の一員で、その実体はほとんど謎のままだった。しかし、彼の作品は多くの点で際立っており、微分音のユニークな探求、音楽テクノロジーを人間化する能力、軽快さと遊び心とコンセプチュアルな厳密さを併せもつ独特の創作物は、時間の風雪をものともしない。
本コレクション 『Inaudible Works 1994-2008』 は未発表曲と過去にリリースされた諸作の再編集版で構成され、新作とアーカイブの中間のような存在となっている。楽曲は多岐にわたり、微分音ドラムンテクノもどき、人声合成技術の疑似ロボ・ポップ、ヴォイスと発電機のドローン重奏、破砕し分裂したファンク、感覚過多のスイングするサンプルの集合体、サイン波を単子とする構想、常軌を逸した倍音の追求、文学にインスパイアされた無調ピアノ曲、自己言及性の極に生まれたJポップ……と目も眩むユニークな作品がひしめく。すべてが特徴的で知的、その多くに先見の明があり、ジャンルの拘束から超越している。こうしたHyuの音楽は魅力的で楽しいが、それは音楽を創造するだけでなく、音楽を創造する方法も創造したいという欲求に突き動かされている。この願望と探求心は本作のすべてに、そして彼の音楽全体の素晴らしさの中にはっきりと聴き取ることができる。
2LP版にははっぴいえんど「風をあつめて」のカヴァーをボーナス収録。本人による楽しく啓発的な解説も必読。装丁は虚木へずが担当。
「強烈なエクスペリメント、にもかかわらず堅苦しさとは無縁の自由奔放でキュートな魅力、まるでHyuさんの笑顔のようです。音楽が一人の中の絶え間ない相克と実験から生まれることに改めて気付かせてくれます。」―aus
「全国Hyuが世界中の人に聴かれないと困る協会に入っています。」
―suppa micro panchop
「Hyuさん、おかえりなさい。
懐かしい未来の音がしたよ。
傑作。待ってた甲斐がありました。」
―グーテフォルク/西山豊乃
アーティスト:Hyu
アルバム題名:インオーディブル・ワークス 1994-2008 (Inaudible Works 1994-2008)
フォーマット:CD / 2LP / Digital
カタログ番号:EM1211CD/DLP/DL
制作発売元:エム・レコード (EM Records)
発売日:2024年2月16日(金)
装丁:虚木へず
解説:Hyu(日本語と英訳版を掲載)
2LP版: https://emrecords.shop-pro.jp/?pid=178689112
CD版: https://emrecords.shop-pro.jp/?pid=178689221
=2LP版仕様=
+ BioVinyl™ 使用
+ DLカード付き
+ シュリンク封入+ステッカー
=CD版仕様=
+ 12pブックレット封入、帯付
+ 通常ジュエルケース
Side A
1. 五度圏のゲーデル、エッシャー、バッハ [2:31]
2. 奇妙な雷竹の舞 [5:42]
3. 茄夢 [4:58]
4. WigWig [4:44]
5. みなれぬものたち [3:22]
Side B
1. ぎゃ・ダイナモ・ジェネレータ [17:28]
2. どんな音でも二度繰り返すと音楽に聞こえる [3:34]
Side C
1. Robotomy Mam [2:24]
2. 離散とグリッドのインベンション [4:17]
3. 風をあつめて [2:39]
4. 猫屋オドレミ [6:36]
5. 7Upとガラパゴスポップ [4:40]
Side D
1. ガムランに憧れて [5:34]
2. 帰ってきたすごいヨッパライ [3:16]
3. 1000万年後の子供たち [6:10]
4. 音の散逸構造 [6:00]
=作品出典に関する補足=
未発表曲:A1, B1, B2, C3, C4, C5, D1, D3, D4
新バージョン: A5
それ以外は既発表曲の再編集
category:NEWS
tags:Hyu
2024/02/23
迷宮作品群を解読するコンピレーション 「今、目の前の面白いことをなにかの手段だと考える人が多いでしょ? でも結局、人間って死ぬわけで。目的やコスパを突き詰めると虚しくなる。だから無目的で、いかに目の前のことに夢中になれるか?が重要で。音楽を作ることもそうで」。 これは雑談中のHyuの言葉。今作の、好奇心溢れるミュータントな作家性を表す至言かもしれない。 Hyuがアルバム『Inaudible Works 1994-2008』をリリースする。Hyuは、90年代の最後に竹村延和によって運営されたレーベル、Childiscからの2枚のアルバムで知られた大阪出身のアーティスト。今回、大阪のエム・レコードからリリースされる本作は、未発表の新曲と既発曲のリワークによって構成された全15曲(LP版は、はっぴいえんど「風をあつめて」のカバーを収録し全16曲)。 ポップもノイズもドローンも、とジャンル不問は当たり前。いわく「音楽の作り方も作りたい」。あらためて“エレクトロニック・ミュージック”と書いて、「遊び」の延長にある実験とひらめきの冒険だと読み替えてみたい。 Text : Yusuke Nakamura ーー今作『Inaudible Works 1994-2008』、初期の楽曲はHyuさんが20代の頃に制作されたものですよね? Hyu:一番古い曲は94年なので19歳の頃かな。 ーーそれ以前の音楽活動としてはバンドを組まれていたり? Hyu:大学時代はスカムというかノイズのようなバンドをやってましたね。10人くらいのメンバーで。大名行列というバンド。(難波のライブハウス)BEARSに出たり。 ーーバンドは高校生の頃から? Hyu:いや、高校はバレー部だったんで。当時、高校生がやる音楽ってボウイとかB’zで。自分とは合わない感じで。大学で軽音部に入るんですけど、そこでも音楽の話ができる人はいなくて。最初は孤独やったな(笑)。自分はエイフェックス・ツインとかを聴いてましたね。シンセが好きで。 ーーシンセサイザーに目覚めたのはどんなきっかけで? Hyu:子どもの頃に親がYMOをリビングで流していたので興味を持って。シンセはどんな音でも作れる楽器だと教えてもらったけど、よく分からない謎の機械という感じで。 ーーよく分からない、というのは? Hyu:子どもの頃は、YMOのような音楽も人が作っている、ってことがあんまり分かってなかったんですね。それから興味を持って、高2の時にバイトしてシンセを買って。大学時代はスカムのバンドをやりつつ、シンセを触って曲を作ったりしてました。 ーー今作『Inaudible Works 1994-2008』、アルバムとしては『Randam Walkers’s Delight』(2002年)以来のリリースとなります。きっかけはレーベル、エム・レコードからオファーがあって? Hyu:そうですね。今になってそんなことがあるんだ、と驚きました。良い機会をいただきましたね。 ーー(同席していた)エム・レコードの江村さんは今回なぜHyuさんの作品をリリースしようと? 江村:ただ、リリースしたかったから。 Hyu:(笑)いい答えですね。山に登りたいから登るみたいな。 江村:(笑)Hyuさんのことは、Childiscからのアルバムやコンピ『Sortie』(1998年)で知って。 Hyu:(『Sortie』は)ビーイング系のレーベルからリリースされたコンピで。半野(喜弘)さんや和泉(希洋志)さんが入っていて。 ーーStyling Recordからのコンピレーションで、松岡成久さんやサイケアウツも収録されていますね。 Hyu:松岡さんは今なにをされているんでしょうか。気になりますね。 ーー今作『Inaudible Works 1994-2008』は既発曲と未発表曲が再構成された編集盤で、“未発表曲集とベスト盤の中間のような雰囲気”とセルフライナーノーツに書かれています。 Hyu:まぁ、供養みたいなもので(笑)。自分の昔の曲を自分で供養するような感じで。(未発表の楽曲は)大阪の実家に録り溜めていたDATが20本くらいあって、それを元に。 ーー再編集する際は懐かしい気持ちになったり? Hyu:懐かしい、というより、もう忘れている曲も結構ありましたね。でも聴いていると、“ああ、こういうことを考えて作ってたな”と思い出したり。 ーー振り返ると、どんな考えで制作していましたか? Hyu:まず強い目的意識があったわけではなくて。自分が作った音に、さらに音を足していったり。それをぐるぐると繰り返している感じですね。飽きたら終わり。自分のアイデアを試すように作っていたので、なにかの音楽を参照としていないですよね。 ーー始めから型に嵌らないものを、と? Hyu:要はパーソナルなもので。音楽って何かしらの作り方があるんですよね。ロックならロックらしいコード進行があって、というような。レゲエが好きだからレゲエを作る、というような人は多いと思いますけど、そういう感じでは作ってない。 ーーヒップホップのトラックはまずビートから作る、のような? Hyu:そうですね。そんなセオリー通りに音楽を作るのはつまらない、とずっと考えていて。 ーーライナーノーツには“音楽も作りたいが、音楽の作り方も作りたい”と。そう考えられたのはなぜでしょう? Hyu:うーん、なんだろうな。音楽の裏にある法則自体を自分で作ってみたくて。自分なりの音楽理論、制作方法を追求していたような気がします。 ーーでは今作はHyuさんの当時の実験結果がまとめられた作品? Hyu:そうですね。実験というと言葉は堅いけど、遊びと悪ふざけ(笑)の間くらいじゃないかな。(今作に収録された楽曲は)江村さんに選曲してもらったんですが、そのままだとすごく長くなってしまうので、短く編集して。それでやっと聴けるようなものになった感じで。それが良かったですね。 ーー今作は楽曲タイトルの付け方も特徴的ですね。1曲目は「五度圏のゲーデル、エッシャー、バッハ」。 Hyu:今回、既発の英語タイトルの曲も、新しく日本語のタイトルを付けてみました。『ゲーデル、エッシャー、バッハ』という、ゲーデルの思想が一般向けに分かりやすく書かれた本があるんですが、それがまたよく分からない本で。面白いんですけど。「五度圏のゲーデル~」はゲーデルの再帰性に興味があって。 ーー音楽で再帰性を試みる? Hyu:だいたいの音楽には中心となる調があって、転調しても最後には戻ってくる。でも、主たるキーがなくて、どのキーも同じ関係で、ずっーと周り続けていたらどうなるのか? シェーンベルクと同じような考え方かもしれませんが、十二音技法は自分としてはあんまり面白いとは思っていなくて。「五度圏のゲーデル~」は音楽として聴けるけど、よく聴けば変、というようなものを考えていて。バッハのフーガを自分なりに拡張してみた感じで。 Inaudible Works 1994-2008 by Hyu ーー今作には、微分音や倍音に基づいて制作された楽曲も収録されています。「WigWig」や「ぎゃ・ダイナモ・ジェネレータ」は倍音に魅せられて? Hyu:「WigWig」は倍音のファンクみたいな。「ぎゃ・ダイナモ・ジェネレータ」は倍音のドローンのような曲で。友達に20回くらいコーラスを歌ってもらって、そこにサインウェーブを入れたり、いろんな音を組み合わせて。倍音だけで作曲したらどうなるか?という試みで。ラ・モンテ・ヤングみたいなものかな。楽譜にしたら、Cの音がずーっと鳴っているだけ。虚無ですよ(笑)。「みなれぬものたち」は倍音と基音の区別を無くすと、どうなるのか?を試した曲ですね。 ーー「みなれぬものたち」(「INDiRECT」。1998年リリースのコンピレーション『Childisc Vol.2 AO』収録)は当時、ジム・オルークがをダビングして周りに配っていたという。 Hyu:勝手に配ってくれてたみたいですね。竹村さん経由で知ってくれたのかなと思いますね。 Inaudible Works 1994-2008 by Hyu ーー「奇妙な雷竹の舞」はライナーノーツで“平均律を拡張、あるいは破壊したい”と。とはいえ“現代音楽みたいな辛気臭いのがイヤ、ポップで可愛い音楽が好き”と。この考え方はHyuさんの作曲の肝のような気がしますね。 Hyu:「奇妙な雷竹の舞」はチャールズ・アイヴズとかダリウス・ミヨーのような多調で、キーがCのものと、キーがAのものが一緒になっているんですね。例えば、CとC♯の間の音を使っているんですよね。多調なんだけど、少しずらしたものを使っていたり。そんなに複雑なことはやっていないんですけど、曲の中にもうひとつ曲があるみたいな。要は、倍音の曲も含めて、西洋の音楽のシステムでは採譜不可能なことをずっとやっているんですね。 Inaudible Works 1994-2008 by Hyu ーーそれはエイフェックス・ツインのような、いわば奇妙だけれど美しい、そんな音楽からの影響でしょうか? Hyu:エイフェックスからは、通常の音楽からかなり逸脱したことをやる遊び心というか、その姿勢に影響を受けましたね。どこまでも果てしなく、訳の分からんことをやってもいいんだ、という。音をそのまま模倣する気持ちはなかったですけどね。 ーーLP版には、はっぴいえんど「風をあつめて」のカバーも収録されています。 Hyu:単に細野さんが好きだったので作ってみたという感じですね。まぁ習作という感じで。 ーー「風をあつめて」と同じく、「Robotomy Man」「離散とグリッドのインベンション」はボーカロイドの元祖、と言えそうなVocalWriterのソフトが使用されています。 Hyu:初期のVocal Writerのぎこちなさがが面白くて。 ーー初期の人声合成技術の歪さや無感情な声の面白さ? Hyu:そうですね。人間の脳って、人間検出機のような機能があって。例えば、風が吹いてなにかが揺れているだけなのに、そこに人の気配を感じ取ってしまうような。それはアニミズムの森羅万象に魂が宿る、というところにつながるのかもしれませんが。音もそうで基本波形にフィルターをかけただけで人の声に聞こえるのが面白くて。 ーーそれをひとつのアイデアとして? Hyu:人間なのか、よく分からない声でポップスを作るとどうなるだろう?という試みで。今で言うとボカロPみたいな感じかもしれないですね。 ーー「どんな音でも二度くり返すと音楽に聞こえる」はタイトルが示唆的というかシニカルで。 Inaudible Works 1994-2008 by Hyu Hyu:規則性が生まれて、脳が音楽と感じる。それが面白いなと。 ーーあと、某バンドへのボツになったリミックスを元にした楽曲も今作には収録されていますね。 Hyu:ノイズを入れたらボツに(笑)。分かってないな(笑)と。 ーーアートワークは虚木へず、という方の作品ですね。 Hyu:毎年、東京のいろんな美大が集まって行われる卒業展に友達と行ってるんですけど、そこで出合った方の作品ですね。 ーーイラストのコラージュのような? Hyuさんの音楽と共通しているようでもあります。 Hyu:自分で描いたパーツを貼り合わせて切り絵のように成り立ってる作品で。違うコンテクストのものがいろいろと混じっていて面白いなと。縮尺が違うものが入っていたり、色遣いも良いなと思って。漫画家の林田球が好きだったんですが、虚木さんも好きだったみたいで。『ドロヘドロ』という作品がNetflixでアニメ化した時はびっくりしましたけどね。 ーーあらためて、今作を聴いていると、インターネットがなかった時代の音楽への向き合い方が思い出されるようで。渾然一体というか、今思えば当たり前のクリエイティブというか。90年代の大阪ならでは、なのかもしれませんが。 Hyu:たしかに、あの時代の大阪は先カンブリア時代のような(笑)。むちゃくちゃでしたね。 ーーエレクトロニカという言葉でカテゴライズされる少し前の頃ですね。 Hyu:ジャンル名もそうですが、言葉は大雑把がゆえに機能するものなので、それが利点でもあるし、ダメなところでもある。ジャンル名が付いて単純化されると、こぼれ落ちていくものがあるわけで。 ーー混沌の豊かさというか。それが整備されフォーマット化すると途端にシラける? Hyu:自分が作っていた頃はエレクトロニカという言葉はなかったし、もちろんそれを作ろうとも思っていなかったわけで。エレクトロニカというジャンルができてから、“エレクトロニカ”を作ろう、という人たちが入ってきて、急に面白くなくなってきた感じはありますね。 ーー言葉といえば、HyuさんはYouTubeで小説家の円城塔について語っていましたね。驚きました。 Hyu:円城塔はすごく好きで。技巧的な文体で変なこと書くので、訳が分からな過ぎて。SFと文芸を一緒にやってると言われてる。変わったものが好きな人には勧めるんですけど、みんな挫折してる。でも、なにを言っているのか?が理解できると面白くなってくる。突然、扉が開くように。一種の宇宙論というか。ぶっとんでて。ゲーデルと円城塔は再帰性というところでは一緒だと思ってます。 ーー今、その円城塔など、新たなアイデアやインスピレーションから音楽を作ろうとは? Hyu:今は東京に住んでいて、周りに音楽を作る人が多い場所でもあるので、誰かとやってみたい気持ちもあります。自分ひとりでやっていると飽きがくる。自分でひとりでできることはいろいろやってみた、ということもあって。今作には、人と一緒にやってる曲もあるんですけど、やってるとすぐに終わってしまう(笑)。継続して誰かと音楽を作ることをやってみたいですけどね。 ーー今作にコメントを寄せている、Childiscのレーベルメイトsuppa micro panchopさんやグーテフォルクの西山豊乃さんとは現在も交流はありますか? Hyu:会いますね。飲んだくれてるだけですけど(笑)。スッパさんはよくライブをやっているので。幡ヶ谷のForestlimitに見に行ったり。Forestlimit、いろんな人が来てて面白い空間ですね。 ーーでは今作をリリースしてライブをするような計画は? Hyu:今作はライブで再現できないので、もしやるとしても誰かとぜんぜん違う形でやることになると思いますね。 Hyu – Inaudible Works 1994-2008 Label:エム・レコード Release date:February 16 2024 CD版:https://emrecords.shop-pro.jp/?pid=178689221 LP版:https://emrecords.shop-pro.jp/?pid=178689112 Bandcamp:https://emrecords.bandcamp.com/album/inaudible-works-1994-2008 Side A 1. 五度圏のゲーデル、エッシャー、バッハ [2:31] 2. 奇妙な雷竹の舞 [5:42] 3. 茄夢 [4:58] 4. WigWig
2021/10/28
「Year to Year / 29」|MV公開 YaejiとHYUKOHのメンバーOHHYUKによるコラボレーション・シングル「Year to Year」と「29」がパッケージリリース。ミュージックビデオも公開。 互いのスタイルに影響を受けた2人の新しいダブルシングルは、それぞれのアーティストの個性的な表現が全体的なバランスを保っている。「29」では、OHHYUKの脈打つようなドラムと、ボサノヴァ調のギターに合わせて、Yaejiがトランスのような、彼女独自のスタイルでラップを披露している。一方、「Year to Year」は、ドラムンベースにインスパイアされたブレイクダウンが入っているが、比較的シネマティックな仕上がりになっている。これらの最新曲で、Yaejiはまたしてもポップの境界線を探っているが、OHHYUKの独特なオルタナ・インディの影響を受けていることが、これらの楽曲を特徴付けている。「Year to Year」を監督したのは、YaejiとOHHYUKのコラボレーターであり、ソウルを拠点に活動するDQMで、「29」を監督したのはdada.serviceのクリエーターであるNam Eunuk。また今回の両A面シングルは2022年2月11日に7インチ・シングルとしてもリリースが決定。本日より各店にて随時予約がスタート。 「私が音楽に少し行き詰まり、停滞を感じていた時、彼は創造することの喜びを再び思い出させてくれた。音楽を介して、これほど親密にコラボレーションしたのは初めてのことだった。私たちは、ソウルのスタジオで何日も一緒に過ごし、時には音楽を作らないで、ただ、お互いの子供時代についておしゃべりしたり、一緒に食事をしたりしていた。そうやって2人の友情が深まり、音楽的なコラボレーションが花開していった。」 – Yaeji 「Yaejiと僕が最初にジャムを始めたのは、昨年の夏に彼女がソウルを訪れたときだった。当時、僕は「ミュージシャンの壁」みたいなものを経験していたんだけど、Yaejiとのジャムがきっかけで、音楽制作の喜びを再び感じられるようになった。ジャムを通して多くの曲が出来あがり、Yaejiは「Year to Year」の構成を考え始め、僕は「29」の構成を考え始めた。曲のビデオに関しては、僕たちの親しい友人であるDQMとNam Eunukにそれぞれ監督してもらい、一緒に制作をした。多くの友人たちからの愛とサポートがあったからこそ、ミュージックビデオに命を吹き込むことができた。彼らに心からの感謝を送りたい。」 – OHHYUK Yaeji & OHHYUK – Year to Year / 29 Label : XL Recordings Release date : 27 October 2021 Stream : yaeji.ffm.to/ohhyuk Tracklist 1. Year to Year 2. 29 Yaeji & OHHYUK – Year to Year / 29 Label : XL Recordings Release date : 11 February 2022 Pre-order
2019/12/19
昨日リリース 2018年7⽉にリリースされたbutajiの2ndアルバム『告⽩』は、その楽曲の完成度はもちろん、メロディのその粒一つ一つの優しさにとてつもない包容力があり、聴くものに寄り添い肯定してくれるような力強さもある。ジャケットのbutajiの姿や目線も、それらの楽曲の物語を表しているようだ。自分の周りのエレクトロニックミュージック / クラブミュージックを普段から愛聴しているような人からの絶賛の声も多く聞いた。荒井優作とコラボレーションしている文脈を知っている人が多いからかもしれないが、実際に要所要所に垣間見える音の構造や感触は、味気ないポップ・ミュージックのそれとは明らかに違う深みがある。「秘匿」のストリングスとピアノのリフレインが重なる3:52〜は儚さと高揚感が重なりなんとも言えない気持ちになるし、「someday」のピアノや「あかね空の彼方」のギターの空間を想像できる響き方、「予感」のラストの展開、「EYES」の特徴的なシンセ、一番好きな「花」など、容易に聴き取れる歌詞も合わさって全ての曲が視覚性が強い。もう勝手に物語を脳内で再生できてしまう。 『告⽩』のリリース・パーティーではbutajiが敬愛してやまない七尾旅⼈をゲストに招き、⼤盛況のうちに終えた。また、今年の4⽉、butajiによる初企画「VARIANT」で曽我部恵⼀抱擁家族とツーマンを⾏い、 新たなフェーズへと向かう。そして、2019年12⽉18日にニューシングル「中央線」をついにリリース。 ”君を愛している” “急げ 急げ 社会が変わる 世界が変わる” エモーショナルで切実な想いは、まさに、J-POPの新たなスタンダードとなり得るだろう。2曲⽬の「same things, same time」は、ファルセットで歌う壮⼤なコーラスとハーモニー、 トランペットやストリングスのアレンジが光る未来への歌。 butajiの楽曲に初参加であり、鮮やかな情景を表しているのが徳澤⻘弦を擁するカルテット、 また、ピアノに槇原敬之や⼟岐⿇⼦などのアレンジャーを務めるトオミヨウの存在だ。 butajiバンドの樺⼭太地(Gt/Taiko Super Kicks)、⼭本慶幸(Bass/トリプルファイヤー)、 坂⼝光央(Pf)、岸⽥佳也(Dr)、⾼橋三太(Tp/1983)も信頼と鉄壁のメンバーである。 レコーディング・エンジニアに、スカート等を⼿がける葛⻄敏彦、マスタリング・エンジニアに星野源 等で知られる内⽥孝弘を起⽤。 写真は、『ワンピースの⼥』(2009-現在、『暮しの⼿帖』連載中)等で知られる宇壽⼭貴久⼦、 ジャケットデザインは『⽂藝』など数多くの書籍を⼿がける佐藤亜沙美(サトウサンカイ)が担当した。 -butajiコメント- 「中央線」は、昨年のアルバム『告⽩』に宛てた1つの答えです。初めて曲を作るような衝動で、「いま」を⾒つめました。「same things, same time」は⼦どもに宛てて書いた「未来」への曲。2019年の末に是⾮聴いていただきたいです。
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