「OK Warriors」ゲーミングイメージの可能世界に生きるフェティッシュな民族

現代美術家・町田太一による個展

 

 

町田太一は1992年生まれ、群馬県伊勢崎市出身の現代美術家。ゲームのイメージとセクシャリティの可能世界を描き出す作風で、幼い頃の触覚的な記憶や、ゲームや映画から着想を得た非現実的なイメージを巧みに表現する。社会生活における理想的な循環や、自身の分身を象ったミュータントたちの生活様式を、絵画、3Dプリンターを使って具現化するマルチメディアな美術作家として知られる。

 

初個展「Normal Mutant Daily」(TAV GALLERY, 2019)では新作のキャンバス作品を中心に、主観的な倫理規範に従って、ミュータントたちの単純化された日常を描いた。管理社会に適応したミュータントたち「Fit Jail」シリーズは、身体の形に合った刑務所にぴったりとフィットするミュータントの姿を描いている。タバスコの栄養を吸って成長したミュータントは、吸引口の触手とは対照的に、体が非常に小さい。これらの表現から明らかなように、町田太一は自身のフェティッシュと現実の多面性を混在させ、様々なフェティズムが許される新たな社会生活のイメージを提示するアーティストである。

 

初個展と同時開催された二人展「KAZUKI &TAICHI」(Kg corner printing,2019)では、アーティストKazquizと共に、初のインディーズゲーム作品「KAZUKI & TAICHI」を発表した。プレイヤーは町田太一の制作した主人公に成り代わり、一人称視点で巨大なオフィス空間を徘徊するこのゲームは、特殊な移動プロレスを通じて、町田自身の青年期の歴史に触れることが可能となっている。

 

近年の技術革新は圧倒的で、OpenAI社によるLMM、MetaHuman、MegaScansなど、言語学習や”呪文”、一般化された高度な3Dモデルをベースに、誰でも現実と区別のつかないCG、ゲーム作品を制作できる時代が到来した。新しい技術による副次的、二次的なイメージは格子状のグリッドの羅列──に過ぎなかったとしても、都市空間における分断統治以降のグリッド上に整備された都市構造そのものよりも、自由とリアリティが担保された世界として成立している。高いレベルで再現された擬似現実を、フィクションとして定義できる時代が事実上終わりを迎えた。現実の諸関係から離れ、自由に満ちた可能世界へ「プラグ」を差し込むことを望むのは、この文章を読んでいる読者、そして私自身も含めた多くの人々ではないだろうか。

 

Techniques for Existence」は直訳すれば「存在のための技法」となる。存在できなかった者への慰労、現実に対する問題を抱えつつも、町田の主観的な審判、フェティズムの浸食によって、主観と客観が混ざり合ったメタフィクションの世界で生きる「OK Warriors」たちが何と向き合い、何と闘わなければならなかったのかを、約4年ぶりとなるTAV GALLERYで開催される町田太一個展「OK Warriors – Techniques for Existence」にて、その全てを解き明かしてほしい。

 

佐藤栄祐

 

 

名称:OK Warriors – Techniques for Existence

会期:2023年6月16日(金)- 7月9日(日)

会場:TAV GALLERY(東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F)[080-1231-1112]

時間:13:00 – 20:00

休廊:月、火

レセプションパーティ:2022616日(金)19:00 – 21:00

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