2022/03/31
不和の時代を打ち破る「全員友達」という必勝法
残念ながら、2020年代を迎えた我々を待っていたのは、圧倒的な閉塞感と慢性的な憂鬱だけだった。hyperpopの持つどこか病的なアッパー感の裏で流行したサウンドの最大勢力は #depressivebreakcore や #weirdcoreといったジャンルであり、繁華街の片隅にも、アルコールの空き缶や処方薬のシート、不織布マスクなどのゴミが漂う。我々はいくら待っても過ぎない嵐を前に、ひたすら耐え忍ぶばかりの暮らしを半ば強制されている。 ただ、そんな地獄を詰め合わせたパンドラの匣にも、希望は確かに残されている。それは案外笑えるようなものだったりする。そんな希望、つまりは枯渇寸前のポジティブな感情を”VICTORY”の名の下に異常増殖させ、愛知から地球全土に向けて放つのが、”VICTORY HARDCORE”ユニット・BBBBBBBだ。
EBMのBはBBBBBBBのB。VICTORYとは勝敗に非ず。それは例えば勝ちに行く気持ち、諦めない心、努力、友情、勝利、根性、気合、青春、愛、ロック、虹。そして美しい花々。俺とお前、全員で岡崎から突き抜ける”最強のふたり”に、アルバムリリースを記念して1万4000字超えのロング・インタビュー、とは名ばかりの「語らい」を敢行した。
文・取材・勝利:NordOst
―最強のアルバムリリース、本当に嬉しいです。おめでとうございます!
西園寺流星群:ヨンキュー♪
―昨年ぐらいから、現場を中心にpowwwerrrなどWeb上での活躍もあり、水面下で確実に支持を集めて来た印象です。その流れが結実したような作品になりましたね。
西園寺:いやあ…嬉しいです。ヨンキューです…!(小声)
―せっかくの初インタビューなので、作品について掘り下げる前に、まずはBBBBBBB結成や”VICTORY化”までの経緯などをお聞きしたいです。インタビューというよりは、無限に脱線し続ける”語らい”みたいな感じでお願いします♪
西園寺:了解♪ 某NOOZERみたいな感じにしてください!
「メン募サイト」で20人超のバンドセットへ。”初期B”の変遷
西園寺:活動自体は2016年の春ごろに、黒井マラ夫と二人で始めたんですよね。アイツは唯一のオリジナルメンバーです。そもそも、最初はBじゃなくて、二人だけでカントリーをやろうとしてたんですけど。
―カントリーですか?
西園寺:カントリーハマってたんで。まあ、お互い楽器できないから普通に無理だな、って気づいて。スカムとかノイズも好きだったし、バイブスだけでもやれそうな気がしたんで、そういうスタイルに即切り替えました。初期はCDR焼いて勝手にCD屋さんに置いたりしてましたね。で、急にメンバー増やしたくなったんで「メン募サイト」で愛知在住のアカウントに片っ端からメッセージを送って、メンバーを際限なく増やし続けて。夏頃には20人以上いましたね。
―Pファンクとか、人生(電気グルーヴの前身ユニット)みたいなスタイルですね…。
西園寺:あとボアダムスね。来れる人が来るみたいなスタンスだったんで、出席率の良し悪しでメンバーが固まっていって、自然とバンドになっていきました。それが2017年ぐらいの頃。
―ちなみに、現在相棒として重要なポジションを担っている澤君はどのタイミングで合流しましたか?
西園寺:あれ、澤君入ったのっていつ頃だっけ?
澤:2018年ぐらいじゃないっすかね。
西園寺:そうだっけ?ま、いっか♪ それで、ノイズバンド化していく中で、デジタル・ハードコアを人力でやりてえな、ってノリになって。たまたまライブに当時高校生の澤くんが来てくれて、「自分、ソロでノイズやってます」ってCDを渡してくれて。面白そうだったんで、そのタイミングでメンバーに誘いました。
―出会いから加入までには少しタイムラグがあるんでしょうか?
西園寺:そうっすね。実は加入前にも色々サポートしてもらってて。YouTubeに上がってる「Live at ホトトギス」ってライブを演ったときに、澤くんが鳥を飼ってたんで「ちょっと鳥、借りてもいいですか?」と機材のレンタルをお願いしたり。鳴き声の音にエフェクトかけたら面白いかな♪ って思って借りたのに全く鳴かなかったんで、自分で叫んだんですけど。
―ハートフルな交流の中でメンバーになっていったんですね。
西園寺:で、澤君の加入から少し経って、バンドという形態に行き詰まりを感じ始めて。そもそも僕が楽器出来ないので、メンバーにイメージを上手く伝えられなかったんですよね。だからソロ活動をスタートさせたりしつつ、Bの第一期を終了させました。2019年ぐらい。
澤:イメージ……(笑)。まあ僕もちょっと、その頃メンバー間のモチベーションの違いを感じて。バンドやっても何も面白くないな、って思ってましたね。
西園寺:僕自身バンドサウンドにも飽きてて、エクスペリメンタルなものに興味が向き始めてて。その頃に現行の音楽の話が出来たのが澤くんだけだったんですよね。どっちが二人でやるって言い出したんだっけ?
澤:そうっすね…西園寺さんとバイト先のバーで「二人でやりたい…」って話はしましたね。KK mangaみたいなことをやってみたくなって。
西園寺:当時いた他のメンバーは普通に楽器やりたい感じだったんですけど、それを全員シンセでやってみない?って提案してスタジオ入ってみたりして。black diceとかみたいなことしたかったんですけど…全然伝わらなくて、普通にウンコみたいになっちゃいました。
澤:早く終わんねえかな…みたいな感じでしたね。テンションも高くねえし、ちょっと酷すぎて。
西園寺:逆に今やってみたらヒントあるんじゃない?
澤:いやそれはもう金返せじゃなくて、時間返せ系みたいなスカムになっちゃうでしょ…それはヤバい。だから二人でやりたくなったんですよね。
西園寺:トラックとかも作ってたんで、「じゃあ二人でガバの上から奇声発したらイケるっしょ!」って気づいて。(今のスタイルが確立されたのは)そこからですかね。
VICTORY前夜と第二期BBBBBBBの夜明け、そして”powwwerrr”爆誕
―僕は「VICTORY化」して以降のお二人しか知らないんですが、突如誕生した「VICTORY」という概念を経て表現のスタイルに変化は生じましたか?
西園寺:変化は大きかったかもしれないです。2020年頃、スタジオで「勝つっしょ?」「勝ちに行くしかないっしょ!」って話題が挙がるようになって。そこから、”VICTORY HARDCORE”って概念が先に産声を上げました。powwwerrrもちょうど2020年の1月にスタートして。
―powwwerrr ZINE(※2021年7月に開催された12時間超の配信イベント”GATE x powwwerrr”開催時に刊行されたZINE)を見てみると、第一回はHAIZAI AUDIOさんなどが出演してたようですね。
西園寺:まあでも、1~2月ぐらいはまだVICTORY化してないですね。初回はBじゃなくてそれぞれイタリア人、G.R.D.Vとしてソロで出演して。2月はBとして出演したけどVICTORYじゃなかった。3月もソロかな。
―その後配信に移行していく中で、アメリカのGroomingと繋がったり、シーンを超えて国内のさまざまなアーティストとコラボレーションしていって。結果的に、ひかりのラウンジから全く異なる空間にアクセスしましたね。nu DERORI氏のアートワークもかなり印象的で。
澤:nu DERORIは大学の1個上の先輩で。江戸時代の事件をイベントフライヤー調にした、みたいな作品があって、それがヤバかったんでデザインをお願いする流れになりました。Groomingはインスタで向こうからDMで僕のソロライブに反応をくれて。「いい人だなあ…」って思って、ちょうどその頃powwwerrrを組んでるタイミングだったんで、そのまま出てもらいました。
西園寺:ガバでパワエレで、本当に最高っすよね。アメリカのダチです。あと一人超ヤバい奴がいて、その人も澤君が見つけて来たんですけど、powwwerrrの投稿に全部「いいね!」押して来たり、「フライヤー書いてるのは誰なんだ!?」とかコメントしてくれたりして。でもアカウント消えちゃった。
澤:ナイーブなんすかね?
ーnu DERORIワークスの唯一無二感が伝わるエピソードですね。そういう流れを繋いだのも澤君で、ここはやっぱりユニットの良さが存分に発揮されてるような。
西園寺:やっぱり澤君やマラ夫が参加してくれてるからこそ、今がありますね。なんか恥ずかしくなってきたな…やめときます♪
―VICTORY化を遂げたのは、やはり4月以降配信イベントへ移行してからなんでしょうか?
西園寺:そうっすね。配信に切り替えてpowwwerrrを続ける、ってなったときに、画面の向こう側にいる人たちにポジティブなことを一方的に伝えたら面白いし、元気出るかな?って思って。とりあえず「頑張れ!」「真ん中空けろ!」ってエールを「贈り」まくりました。あの頃観てくれてた人、マジでヨンキューです!
―「VICTORYという概念」の原典と思われる西園寺さんのツイートを参照すると、完全に言語化は出来なくても「これってVICTORYだな」と思わされるようなイメージが湧いてきます。
Winはただの戦績
VICTORYは勝ちに行く気持ち、諦めない心、勝つ為の努力、友情、根性、青春、虹、たんぽぽ、筋肉、初恋、初めて好きな子と手を繋いだ時、夕日、カレー、しょうゆラーメン、サイゼの天井の絵、富士山、デカい木、デカい岩、川、翼、親父の背中、愛、自由、希望、夢、俺、そしてお前— 西園寺流星群 a.k.a. Psychedelic on "G" (@saionjistar) May 21, 2020
西園寺:僕、ギターウルフが本当に好きなんですよね。同じことだけを繰り返して、ポジティブでストレートな表現を突き詰める感じが。歌詞に「信長」とかが普通に出てくるんですけど、それってロックじゃん?って伝えてくる説得力がヤバくて。だから「たんぽぽってVICTORYじゃん?」って気づいてからは、僕もそうしてます。あと、花も本当に好きなんですけど、そこでマリメッコっていうブランドの魅力も再発見して。「この柄ヤバ過ぎだろ…」って衝撃を受けましたね。
―デジタル・ハードコアやガバのような攻撃的なサウンドに、努力、友情、気合、初恋、花、みたいな、ポジティブな優しいメッセージが融合してること自体、ありそうで何処にも無いスタンスです。
西園寺:ネガティブなことに興味無いっすからね。内省的でナイーブな表現に触れる機会も勿論ありますけど、自分でやるなら元気っしょ!って。IQゼロみたいなのが好きなんで。Tame Impalaみたいな音楽も好きっすけど。
―この時代にも関わらず元気な感じをキープしてる人って、かなりヤバいですもんね。
西園寺:そう、元気な人の方がヤバい。危ない人って元気だから。あと、青春パンクとかの無責任さも好きですね。VICTORYって言い出す直前に「青春パンク、ヤバいな」って思ってた時期があって。10代とか20代前半の何も分かってない奴が、お客さんとかリスナーに「頑張れ!」って伝えてるのが最高ですよね。無責任すぎる。
―”VICTORY”には他者への攻撃や、競争的な要素が皆無なところも最高で。漫画の男塾みたいな感じで、己にやれんのか?って問い続けるだけな感じが好きです。
西園寺:男塾のバイブスは僕らと近いっすね。益荒男なんで。ラッパーだとACE COOLさんとか、Power DNAさんみたいな人が好きで。元気さというより、渋さですけど。Power DNAのEPを聴くのが、ひかりのラウンジ周辺で流行ってた時期もありましたね。fri珍さん(ひかりのラウンジ店主/NEXTMAN)が教えてくれて。今は消えちゃってるんですけど、初期のEPがメチャクチャカッコよくて。トラックとかフロウの感じが凄い絶妙で、ギリギリを攻めてるみたいな。
澤:Ann Tapes2でしたっけ。Power DNAのあの感じ、好きっすね。任侠的な渋さとか厳つさがある。
―逆にVICTORYと遠いのは?
澤:Instagramの「親しい友達」リスト。あんなん差別じゃないですか。
西園寺:使ったこと無いっすよ、あんな機能。最もVICTORYから遠い。
澤:大体、選ばれても嬉しくないっすからね。むしろ恐ろしい。
西園寺:まあ(リストに)入れてもらってると、普通に見ちゃいますけどね。てか脱線しまくってますけど大丈夫ですか?
―今日は語らいみたいな感じなのでたぶん大丈夫です!そういえば、(Zoomミーティングを)分割せず延長できそうな感じなんですが、逆にこのまま続けて大丈夫ですか?
西園寺:朝までやりましょう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
シンゲリのゲは元気のゲ。BBBBBBBの音楽的背景とサンプリング
―(文面に出来ない話題でしばらく盛り上がった後)ここからはバイブス面だけじゃなく、音楽の話も伺っていきたいです。
澤:そろそろ音楽的な話、したいっすね。
―そもそも、毎回のライブアクトも決して同じことをやっているわけでは無く、実は微妙な差異がありますよね?オープニングとクロージングは同じでも、その過程が結構凝った構成になっていたり。
西園寺:実は曲の展開とかアレンジを少しずつ変えたり、構成に変化を付けたりしてるんですよね。本当は僕らもちょっとずつ進化してるんですけど、大枠がVICTORY過ぎて一緒に聴こえちゃうから伝わってないのかも。
―今はまだ、VICTORYというイメージだけが独り歩きしてしまっていますよね。ただ、ライブやリリースを経て、HIPHOPヘッズやギャルなんかも確実に反応してる感じもありますが。この前、Contactでお爺さんがBBBBBBB最前で観てましたし。
澤:おったな~お爺ちゃん…。(色んな人に聴かれるのは)嬉しいっすね。
西園寺:若い人から意外と反響あって良かったです。ラッパーの子もSNSで反応してくれたり。ヨンキュー♪
―老若男女に浸透してますね。アルバムを聴き返すたびに、サンプリング主体なのに強烈なオリジナリティがあるの、凄いことなのでは?とも感じます。
西園寺:サンプリングしまくってます♪ ”元気なVaporwave”って感じですかね?たとえば「Wild Flowers」のイントロの”あのメロディ”とかって、やっぱ面白いじゃないですか?そういうヤバい面白いフレーズとかは、やっぱサンプリングしたくなりますね。あとはリバーブをかけるのも好きですね。音にリバーブかけるの、面白くないですか? あと、なんか恥ずかしいからあんまり言ってないんですけど、僕Tame Impalaが凄く好きで。ああいうサイケ感、トランス的な文脈じゃないサイケロックみたいな音楽。これもひかりで遊んでたときの話なんですけど、fri珍さんと二人きりでTame Impalaの『’Cause I’m A Man』って曲を聴いてたら「アッ♡」ってボーカルに乗ってるリバーブの気持ちよさに夢中になっちゃったことがあって。
―ひかりのラウンジでリラックスしながら、二人きりでTame Impalaですか…。
西園寺:そういう経験、やっぱ活きてますからね。
澤:どういう?
―Wild Flowersの”あのイントロ”を耳にしたとき、マジで衝撃を受けました。「面白いから」リバーブをかける、という話題も挙がりましたけど、思いついたことを本当にそのまま実行する人ってほとんどいないんじゃないか…と。
西園寺:基本的にその感覚で全部作ってますからね。VICTORYの名の元に「とりあえず全部やっちゃお♪」みたいな。最近僕の中でシンゲリが熱くて、アレを”VICTORY SINGELI”にしたらどうなっちゃうのかな?って思いついて。最近はそういう曲をたくさん作ってますね。シンゲリって、あれだけBPM速いのにMCがステージに居るじゃないですか。あの感じでポジティブなこと言いまくったら面白そうだな~、とか。大体そういうノリっすね。
https://www.youtube.com/watch?v=vT7fEMHyGs4
―シンゲリのライブ動画、何言ってるか分からないけど間違いなくブチ上がるメッセージを発してるんだろうな…って感じですね。VICTORY HARDCOREとの相性は最高かもしれない。
西園寺:だから僕らもシンゲリのリズムに乗せて「頑張れ頑張れ!!!」って叫びまくろうかなって思ってます。音速で。あと。シンゲリ以外だと、マスロックに可能性感じてますね。マスロックの複雑なリフにアッパーなメッセージが乗ってたら面白くないですか?
―完全にヤバいですね。間違いなく誰もやってないでしょうし。
西園寺:まあ、試しに究極のマスロックを作ろうとしたら普通にウンコみたいになっちゃったんすけどね。
テンポも拍子も全く違うシーケンスを数種類作って無理矢理くっつけたら人力では不可能な究極のマスロックが生まれると思ってやってみたら、ただのウンコが出来上がった
— 西園寺流星群 a.k.a. Psychedelic on "G" (@saionjistar) February 15, 2022
―アルバムにはViolet陰陽師氏、woopheadclrms氏がそれぞれミックスで参加されていますが、その他の楽曲制作やマスタリングはご自身で全て担当されていますか?
西園寺:そうっすね。基本的には僕が全部iPhoneで作ってます。一部MIX作業でwoop君の力を借りたり、ボーカル録りとか細かいエフェクトとか、iPhoneでやりきれない部分を陰陽師にお願いしたり。Violet陰陽師は影のメンバーで、スカム時代から長年色々な形で裏方的にサポートしてもらってます。
―そう言えば、アルバムで素晴らしかったのが全体を通した音の良さですね。そこはHexD等との圧倒的な違いで。謎多き存在ですが、Violet陰陽師さんの力を感じます。
澤:(Violet陰陽師の仕事について)本当、めっちゃ音良いっすよね。プラグインとかめっちゃ持ってそう。
西園寺:基本的に僕じゃ無理だな、って所をお願いしてますからね。「これにこういうエフェクトかけといて!iPhoneじゃ無理だから!」って。昔からGaragebandで制作してるんですけど、(iPhoneでのトラックメイキングを続けている)uamiさんともこの前「やっぱAbleton憧れるよね」って話とかをしました。ついでにiOS Gangってユニットで曲も作りました。このアルバムでメイクマネー出来たらちゃんとAbleton買います♪
地球一ポジティブな究極のアルバム『Victory Hardcore』全曲解説
―せっかくの機会なので全曲解説をお願いしても良いですか?各曲から制作スタイル全体を掘り下げていくイメージです。
西園寺:是非是非♪
1:Road Of Victory
―これはもう、説明不要な感じです。
西園寺:アンセムっすよね。二人になってから一番最初に作った曲。デジタルハードコアを目指す上で、「ガバキックを三三七拍子にしたら面白いんじゃね?」って気づいて、ポジティブとポジティブをくっつけた感じの作り方をしました。
―やはり「面白そうだから」という動機が。スタイルがリアル実験音楽ですね。実際、三三七拍子のガバキックにはやられました。VICTORY化のスタート地点がこの曲だと考えると、実は超コンセプチュアルなアルバムなのかも知れませんね。
西園寺:このアルバムは僕らのライブ感をそのまま詰めた感じっすからね。ちなみにボーカル以外ほぼ全部サンプリングです♪
2:Obrigard In My Head
―ライブの流れそのままに、パワー全開な感じがパッケージングされていて嬉しい感じです。
西園寺:これもマジで無限にサンプリングしたものをコラージュ的に組み合わせて作った感じですね。Garagebandだけだとどうしても限界あるんで、他の助けも借りたりしつつ。キックとかはやっぱり良い音が中々作れないんで。
―逆に、キックは自作なんですか?
西園寺:そうっすね。TR-909のIQ足りてない感じのガバキックとか、超好きで。基本的にキックだけは自家製で、他は9割サンプリング。サンプリングのやり方も最近知ったんですよね。今ってiTunesライブラリの音源ファイルをGaragebandに取り込めるじゃないですか。たしか、前はそういうことも出来なかったんで、しょうがないからパソコンでYouTubeとかの好きな曲再生して、スマホ近づけて直録りしたやつを使ってました♪
―直録りサンプリング…そんなことあり得るんですね。凄すぎる。
3:G.N.B Rave
―初めて聴いたとき「リバーブ!?」「時雨!!?!?!?」って感じで混乱しました。ヤバ過ぎます…。
西園寺:メチャクチャにディストーションかけたら審査通っちゃいました♪ 実はアルバムの録音作業の完結後に、全曲を1本wavにしてGaragebandのディストーションを通してるんですよね。本当はfri珍さんに全曲マスタリングをお願いしてたんですけど、聴いてもらったら「これマスタリング終わってるじゃん」って言われちゃって…。その後も、色々お願いはしましたけど、本人は「プラグインに突っ込んだだけだから」って言ってて。クレジットされるのを辞退されちゃいましたね。
4:Stay Gold Sex
西園寺:この曲はHAIZAI君のコンピレーションに提供したトラックを若干アレンジした新録です。タイトル通りの感じ。大暴れ。
https://haizaiaudio.bandcamp.com/album/v-a
―暴動ですね。お二人とHAIZAI AUDIO君の交友は長いんでしょうか?
澤:長いのは僕っすね。何やかんや高校ぐらいのときから仲良くて。4〜5年とか?僕は彼の一個下ですけど。
西園寺:年の差婚なんすよね、僕と澤君。とりあえず僕もZ世代ってことにしといてください。
5:Happy
―このタイトルなのに、一番バイオレンスな音ですよね。デジタルノイズゴアグラインドって感じで。めちゃくちゃアイロニカルな表現をサウンドでやっているような雰囲気です。
西園寺:実は、アルバムが某ディストリビューションサービスの審査に1回引っかかってるんですけど、原因がこの曲で。他にもっとあるだろ…って感じですけど。すっごいハッピーな曲ばっかり作ってる人のトラックをそのまま使ったら普通に審査落ちちゃいました。でも、とりあえずピッチ下げてフランジャーかけまくったら通りました♪
―(クリアランス的に)明らかにダメそうな曲って幾らでもサブスクで見つかりますしね。HexDとかブレイクコアみたいな力技での回避策、個人的にツボなのでそのエピソードでブチ上がりました。
西園寺:VICTORY HexDっすね。HexD別に通ってないですけど…。ただ、ありがたいことにアルバムリリース後そこそこ反響があって…某所から「ラジオで流しても良いですか?」とか連絡が来たり。とりあえずオッケーしましたけど、どの曲流れるのか分かんなくて。
―Wild Flowers以外だったら大丈夫そうですけど。
西園寺:あとG.N.B Raveもダメっすよね。ラジオだと。
―ダメでしょうね…(笑)。
6:Into To The Fire
―このリリースタイミングであのHIPHOPグループをサンプリング…絶対に交わらない感じを無理矢理融合させるのがヤバいですね。それをVICTORY翻訳した上に、展開もめっちゃダウンテンポみたいな感じになってて…聴いてて激情ハードコアすら感じました。
西園寺:これもラジオでは流して欲しくないっすね、怖いんで。(サンプリング元に対して)これ聴いてストレートエッジになってもらえたら嬉しいんですけど。
澤:最近メンバーの人が名古屋遊びに来てたっすよ。客演か何かで。
西園寺:マジで!?
7:Fleh Fleh Fleh
―ここからアルバム第二部が始まるような雰囲気を感じます。トライバルな雰囲気のトラックに、グライムっぽい質感の応援歌を載せるのもヤバ過ぎて…。もしかして、いつもライブ冒頭のMCで絶叫してるワードって「Fleh! Fleh! Fleh!」だったりしますか?
西園寺:実はそうっすね。皆気づいてないけど。基本的に楽曲のタイトルは全部その場のインスピレーションで適当に付けてるんで、この曲も最初は「ハイパーエール」みたいな感じでした。ちなみに、アルバム自体は2020年に実は出来てて、ホントは2021年に出すつもりだったんですよね。後はボーカル録りだけ、って状態を前にして…ダラダラしちゃいました♪
澤:その時期、まあ今もですけど…とにかく本当に元気が無くて。僕の方が。ほぼ鬱状態でライブとかしてました。
西園寺:全然VICTORYじゃないじゃん。
澤:いや…負けてからがVICTORYでしょ?負け続けないと意味無い。
西園寺:勝つために負ける…ってコト!?
8:On My Mind Jr.High school, Dancing To The Shinning Bicycle
―青春感全開の長尺タイトルから轟音へ…このスケール感にragebeat的なtrapの要素が加わり、しかも「好きな子に思いを伝えろ!」みたいな青春パンク感も…。
西園寺:これは完全に某fxサンプリングですね。VICTORYメロコア。実はとあるレーベルに提供したものの、事情によりお蔵入りしかけていたので、ようやく陽の目を見た、ってエピソードもあって。
―最近やたらとリバイバルの波が来ているEmo~Goth的なバイブスとも、何故か奇跡的に共振してますよね。
西園寺:確かに。全然考えてなかった。そういえばこの曲、K/A/T/O MASSACRE初主演(5GLIVE)のときにも演ったんですけど、それを観た佐久間さんがTwitchのチャットで急にメチャクチャ反応してくれて。絶対ハマんなさそうだったのに…。それまで一切面識も接点も無かったのに、この曲のおかげでダチになれましたね。僕らとCVNを繋いだ、思い出の曲です。ちなみに、お互い名古屋に住んでるのに東京とひかり以外では全く会う機会ないです♪
9:GOD
―BBBBBBBのサウンド的魅力を感じさせる、ゲトーレイヴからdeconstraction clubを経て元気なtrapになる…といった、凄すぎる構成で。3分間の情報量が凄くて、世界一短いDJmixみたいな印象さえ受けました。そこに雄叫びが重なり…。無茶苦茶ですよ。
西園寺:基本的に曲作るときにはモチーフが幾つかあって。大体1曲につき2,3曲理想が挙がるんですけど、毎回とりあえずそれを全部くっつけてから練ってますね。もちろんそのままリリースすることは無いんですけど。とりあえず合体させるのが大事。
―そういう制作プロセスも、澤君と二人三脚で進めているんでしょうか。
西園寺:いやそういうのは一切無いですね。僕がトラックをほぼ全部作りきってから、「ここが澤君のバースだよ、後は好きな感じで♪」って投げてます。
―澤君としては、そこに異論があれば投げ返したり?
澤:いや…大体良いんですよね。てか、そもそも普段聴いてる音楽も割と近いんで、僕の中の善し悪しも分かってくれてますし。<Orange Milk>的な質感にバカっぽさが融合した絶妙なラインを突いてくれるんで。「あ、西園寺流星群節が完成されてんな」って思います。ONJIBEATS。
西園寺:今お互い何聴いてるのかは共有してますけどね。基本はONJI製です。一番自信あるトラックなんで、褒めてくれた人ヨンキューです!
10:Rainbow Action
―ハードコアテクノ…じゃなくてハードコアパンク感が全開ですね、もはや。エコー/リバーブからエンジン音がガンガンに鳴ってるのは何故ですか?
西園寺:ああ、それもエンジン音が普通に好きで、エンジン音入ってたら面白いかな?って思ったからっすね。あの音、デカくてカッコ良くないですか?
―楽器では出せない音ですからね。
西園寺:まだ実現できてないんですけど、いずれはバイクのエンジン音でアーメンブレイクとかも作っていきたいなと考えてます。
11:Wild Flowers
―あの伝説のイントロをモロ使いし、某eath Gripsと某ラゴンフォースが同居し…これも説明不要ですよね。もはや語るべくもないほど。
西園寺:これも完全にアンセムですよね。クライマックス感はあると思います。
―ただ、ここでもやっぱりサンプリングセンスの異常さが光っていて。<Orange Milk>の名前が出たとき、謎の納得感がありました…。
西園寺:(Orange Milkも)好きですからねえ。そういう音楽に出会えたのもひかりのラウンジのおかげですね。ひかりでいつでも待ってるから。
12:We Are Victory Boyz
―クライマックスを超えた先にあるのがこの作中最長ナンバーですが、大丈夫なのかな…と心配になるぐらいの力み具合で。「俺らと一緒に友達になろうぜ」に始まるMCの応酬とか、ライブを意識した楽曲にも感じられます。
西園寺:そうです。けど、ぶっちゃけどこに入れたらいいか毎回分かんなくて。ライブも大体Wild Flowersで大団円を迎えちゃうんで、結局<AVYSS GAZE>の時しか演ってない。レアっす。
澤:中々やんないですよね、やろうとはしてるんですけど。評判はやたら良いんですよね、なんか。完全にDeath Gripsサンプリングだけど(笑)。
西園寺:シリアスな感じの曲ですよね。ロックだし。Death Gripsは本当に好きなんで、ほぼ全曲に何らかの形で使ってます♪
澤:MURDER CHANNELの人にも、「今まで色んなDeath Gripsサンプリング聴いて来たけど、BBBBBBBが一番良い」って言ってもらえて。
西園寺:本家のDeath Gripsに褒められるより嬉しかったっすね。
13:MINNA
―伝説の12時間配信イベント<GATE x powwwerrr>のラスト、シークレットアクトとして披露されたのが初出でしたね。あの時は素朴な感じのtrapだったのが、アルバムではビートが一変していて。
西園寺:アルバムに1曲歌モノ入ってる構成にしたくて、徳利さんやGoblin Landの感じを参考にしました。リリック込みで。
―最近のトランス・リバイバルの先を行くような最新のサウンドに驚きました。
西園寺:この曲だけサンプリングはしてないんですよね。プリセットの音とかで頑張って作った後に、woop君にミックスを協力してもらって。「音はプリセットなんだけどミックスがメチャクチャ高級」って質感のラップに食らって、そういう感じを表現したかったんですけど、頼んだらそれが1日で出てきたので、やっぱり彼は天才ですね。澤君はこの曲一番嫌いでしょ?
澤:自分で作ってないんで何も言いたくないですけど…気に入ってはないですね。てか、あんま聴いてもない。ネタに寄り過ぎ…。まあ何でもいいですけど。特に批判とかも無いし、皆さんが良いなら別に。
―(笑)。逆に、澤君が好きな曲は?
澤:GODとObrigard In My Headっすね。
―その突き放し感がまた絶妙なバランスをユニットに与えてる感じですね。俯瞰視点のような。
澤:文句言ってるだけですけどね。今思うと、皆反応してくれてるし、分かりやすくBBBBBBBのことが伝わるんじゃないかな~って感じで、(ボーナストラックとして)結果的に入れて良かったな、とは思いますね。まあMINNA、聴いてないんですけど(笑)。
―そう言えば前、澤君が『ジョジョの奇妙な冒険』のセッコとチョコラータ※ の画像のツイートしてましたけど、あれも最高でしたね。
※ジョジョの奇妙な冒険5部「黄金の風」の敵キャラクター。人体実験が趣味のサディスト医師と従者のコンビ。ローマ全土をスタンド能力で地獄に一変させ、最終的には主人公に7ページに渡って成敗される。
BBBBBBB pic.twitter.com/1EewVVpsKW
— 澤 (@grdv_sn) January 11, 2022
澤:マジでアレでしか無いですからね、僕らの関係性。アレが全てです。どっちもカスだし。共依存ユニット。
西園寺:元気って文脈だけど、共依存って病み系の関係性。fri珍さんってボスもいるし?
澤:ディアボロだからね。
EX:BBBBBBBと秘境・ひかりのラウンジの蜜月、そしてTwitter
―ただ存続しているだけで伝説が生まれ続ける場所、ひかりのラウンジについても少々お聞かせください。12月に僕も遊びに行きましたが、本当に凄かったです…しかも出音が信じられないぐらい良くて、お酒も美味しくて…。
西園寺:僕らとひかり、そしてfri珍さんは、やっぱ切っても切れない関係ですね。ヤバい人やエクスペリメンタル音楽の存在はあそこで知ったし。
澤:ていうか、あそこしか行ってないっすからね。あそこでしか遊ばない…。
西園寺:マジでひかり以外行かないっすね。ひかりで遊ぶようになってから一気に電子音楽に興味が湧いて。最初はソロでノイズとかをやってて、出演しつつ遊びに行ってたんですけど、fri珍さんもそうだし、woop君とかガーデンさん(スポーツガーデンひ)とかの存在を知って、ヤバい人しかいないな、って衝撃を受けて。ギター・ベース・ドラムとかでは絶対出ない帯域の電子音に惹かれるキッカケでしたね。元々Death Grips好きだったし。
―本当に好きなんですね、Death Grips…。
澤:僕は2018年ぐらいにG.R.D.Vとして突然(ひかりの)忘年会に呼ばれて。高3ぐらいの頃だったんで、クラブカルチャーなんかも当然知らないし、最初は「なんかよく分かんないな…」って感じで。途中で帰ろうとしてたんですけど、”ここでは話せないような出来事”が急に目の前で起こりはじめて。色々と衝撃的すぎて、帰りの駅でも特急に乗れないぐらい疲弊しちゃって…。今思うとあれがショック療法的な感じで今に繋がってたのかな、とかは思いますけど。
西園寺:ガーデンさんとかエスリー(speedy lee genesis)さんとか最高だったよね。
澤:そうすね。その頃は全然知らなかったけど、初めて「DJってこんなにやべえんだ」って思った。冷静に考えると、めちゃくちゃ豪華っすね。
西園寺:正直ガーデンさんにはかなり影響受けてます。前はクラブとか全然つまんなかったんですけど、あの人のDJ観てから価値観が一変して。実験的だしスカムなのに、基本的にはめちゃくちゃ繊細な音系のDJで。有り得ないっすよね。
澤:あんな空気を作れる人はいないっすからね。芸術の域に達してる。
西園寺:めちゃくちゃ発見がある。毎年「ひかりの大忘年会」で、「あ、この人って今この辺を面白がってるんだな」って確認するのが習慣になってますね。早い・早くないとか、そういうレベルの話じゃないんで。
―もう神話の世界ですね…東海近辺でそういう奇跡を求めようとすると、場は「ひかり」しか無いんでしょうか。どれだけヤバいか、どれだけ面白いか、って過剰な刺激とかも。
西園寺:そうかも。名古屋とかだと、皆なんか真面目すぎるんですよね。
澤:東海ってか地球規模レベルじゃないすか?あそこしか無いじゃないすか、楽しい場所って…。音楽聴いて笑ってる奴らが集まるのも、あの辺だとひかりのラウンジぐらいですし。
―fri珍さんとの師弟関係も、そうやって育まれていったんですか?
西園寺:そもそもひかりの「いつメン」って、澤君が来る前はマジで僕とwoop君しかいなくて。今でこそスカスカおせちさんとか、ind_frisさんとか、E.O.Uとか色んな人たちが来てくれるようになりましたけど。そんな感じで、fri珍さんには初期の頃に「九州」って中華料理屋に急に呼び出されて、なんか色々熱い話とかされて。
fri珍さん「あのな、これから毎週イベントやるから」
西園寺「毎週って…出来るんですか…?」
fri珍さん「出来るとかじゃねえよ、やるんだよ」
…みたいな。マジです。
―最高すぎますね。映画じゃないですか。
西園寺:僕がソロやり始めた頃、毎週木曜だっけな?fri珍さんと二人でひたすらDJしたり、曲作ったり…みたいな時間を過ごしてました♪
ー(更に脱線を重ね続けた後)長時間語らい合えて嬉しかったです。ありがとうございました。最後の質問ですが、今後はどんなことに挑戦したいですか?
西園寺:マラ夫をドームに立たせたいですね。あとは、最近ギターとか入れたいんですよね。ガバに合わせて速弾きできる人とか。逆にメン募サイトで募集してみようかな?面白そうだし♪
澤:マジで終わってる人とかに応募してほしい。おっさんとか。そこから這い上がるのってガチVICTORYなんで。
西園寺:約束とか守れないタイプの人でも大丈夫です。約束守ってたら生まれないモノがあるから。色々終わってる奴でも大丈夫だよ!!(※審査アリ)
powwwerrr BBBBBBB – Victory Hardcore –
2022/04/09 SAT 20:00 – 05:00 at SPREAD & ILLAS
Early Bird ¥2,300 / ADV ¥2,800 +1D – 限定早割/前売特典:オリジナル・ハチマキ*
早割/前売 : https://t.livepocket.jp/e/20220409spread
@SPREAD 20:00 –
LIVE:
ACE COOL
なかむらみなみ
BBBBBBB
没 aka NGS
HAIZAI AUDIO
KK manga
moreru
sato♡shin
DJ:
DISTEST
emamouse
noripi
sudden star
@ILLAS 23:00 –
LIVE:
emeraldclitoris *
seaketa
DJ:
Dirty Dirt
Ichiro Tanimoto
mostin + dreamweaver *
Lil涙 *
山ちゃん (FIRE BOYS)
artwork / exhibition: nu DERORI
*映像出演
(A to Z)
– 限定前売の特典(ハチマキ)は当日受付にてお渡しします。特典がなくなり次第、通常の前売(同額)に切り替えます/ Limited ADV tickets with a special gift: original hachimaki will be handed out at the reception on the day of the event. (The limited advance ticket will be switched to regular advance tikcet as soon as the special gift runs out)
– 全てのエントランス料金に別途ドリンク・チケット代¥600がかかります / All entrance fees plus a ¥600 drink ticket fee.
– 再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter
BBBBBBB – Victory Hardcore
Release date : 16 February 2022
Mixed by Violet陰陽師, woopheadclrms
Art by nuDERORI
Stream : https://linkco.re/mpcb2MbE
Bandcamp : https://bbbbbbb1.bandcamp.com/album/victory-hardcore
Tracklist
01 Road Of Victory
02 Obrigard In My Head
03 G.N.B Rave
04 Stay Gold Sex
05 Happy
06 Into The Fire
07 Fleh Fleh Fleh
08 On My Mind Jr.high School,Dancing To The Shining Bicycle
09 GOD
10 Rainbow Action
11 Wild Flowers
12 We Are Victory Boyz
13 MINNA
category:FEATURE
tags:BBBBBBB
2022/02/15
4/9(ヨンキュー)にリリースパーティ開催 愛知県岡崎市を拠点に活動するVictory HardcoreユニットBBBBBBBがデビューアルバム『Victory Hardcore』を2月16日にリリースする。発表に合わせてアルバム収録曲から「Road Of Victory」のミュージックビデオが公開。 Victory Hardcoreとは文字通りデジタルハードコアやガバ、トラップを織り交ぜたサウンドを、”努力”、”青春”、“夢“、“花”、等の言葉と共にアップデートした音楽である。 今作『Victory Hardcore』のプロデュースはメンバーの西園寺流星群が手掛けており、一部ミックスはViolet陰陽師とwoopheadclrms、アートワークはnu DERORIが担当している。また、4/9(ヨンキュー)に下北沢SPREADとILLASの2会場を使用したリリースパーティの開催を予定している。詳細は後日発表。 Yon Q(ヨンキュー) is Japanese slang for “Thank you” BBBBBBB – Victory Hardcore Release date : 16 February 2022 Mixed by Violet陰陽師, woopheadclrms Art by nuDERORI Stream : https://linkco.re/mpcb2MbE Bandcamp : https://bbbbbbb1.bandcamp.com/album/victory-hardcore Tracklist 01 Road Of Victory 02 Obrigard In My Head 03 G.N.B Rave 04 Stay Gold Sex 05 Happy 06 Into The Fire 07 Fleh Fleh Fleh 08 On My Mind Jr.high
2020/06/14
6月3日K/A/T/O MASSACREにて 6月3日に開催された人気パーティー「K/A/T/O MASSACRE」に初出演したヴィクトリーハードコアBBBBBBBのVICTORYライブ映像がYouTubeにて公開された。 愛知県を拠点にするBBBBBBBのサウンドを平たく言ってしまうと、Atari Teenage Riotが提唱したデジタルハードコアがそれに近い。だが、それを”努力”や”青春”といった言葉と共にアップデートさせ、新しい概念を作り出しているように見える。そのフレッシュな概念も彼らの魅力の一つとも言えるだろう。熱く、押し付けがましく、何かこみ上げてくる本映像はひかりのラウンジで撮影され、Keishi Kondoによってドキュメンタリーフィルムのような仕上がりにもなっている。
2024/03/21
大事なことはアメカジから学んだ 2020年のパンデミック禍にVICTORY化し、以後未踏の地をひたすら突き進み続けるVictory Hardcoreユニット・BBBBBBB。 2022年には1stアルバム『Victory Hardcore』をリリースし、その後2ndアルバム『Positive Violence』を筆頭に複数の作品がフィラデルフィアの〈Deathbomb Arc〉より、Dos Monos以来2組目となる日本人リリースが決定。ほか大規模フェスなどへの出演も重ね。着実にレベルアップを続けてきた。 そんなBBBBBBBが今見据えているのは、プログレッシブ・ロックの圧倒的な技術に裏打ちされた過剰な実験性と、スカムのプリミティブな発散に由来する実験性のミクスチャー。最新作『SHINPI』は、まさにプログレの神秘性に真逆の方向から迫った怪作に仕上がった。 今週金曜に渋谷WWWにて開催されるリリースパーティーにはオシリペンペンズを筆頭に、日本国内でも類を見ないエッジーな表現を展開し続ける鋭いアクトが集った。そんなBBBBBBBは今、何を見聞きし、何を考え、何を(アメカジを)着ているのか。より深化した、誰も付いていけないエクストリームな美学に迫る。 TEXT: NordOst ──前回、約2年前には1stアルバム『Victory Hardcore』がリリースされたタイミングでインタビューさせてもらったと思うんですけど、それ以降飛躍していったような印象があって。あの頃から変わったことはありますか? 西園寺:そんなに環境は変わってないかな。でも、去年代官山UNITで開催された「DOME’23」に出たときは若者から同世代ぐらいまでお客さんがいっぱいいて、みんなスマホのライトをつけてて、何故かBBBBBBBがラッパーみたいな感じになってたんですよね。そのときには「俺らこうなの!?」と思いました。今まではお客さんも顔見知りみたいな感じだったんですけど、全然知らない人が観てくれる機会は増えたのかな? ──BBBBBBBのことを追いかけてる人でなくとも、初めての人をライブの各回で取り込めるようになってきているのかもしれないですよね。 西園寺:そうだと嬉しいっすね。そういう意味では大きいイベントは確かに増えたかも。最初はひかりのラウンジ(*2024年3月末で閉店)かフォレストリミット、AVYSSぐらいだったんで。 ──活動規模が拡大していきましたが、愛知ローカルでの動きはあまり変わらなかったですか? 名古屋にめっちゃ呼ばれるようになったりとか。 西園寺:ほぼまったく無いですね。ちょっと呼ばれそうだったりもしてたんですけど、仲間っしょ? みたいな感じであんま知らない人からたくさんブッキングをもらってよく分かんないから断ってたら…..一切来なくなりました♪ ──これだけ愛知をレペゼンしてるのに(笑)。東海圏の大きなイベントは「森、道、市場」ぐらいだったんですね。 西園寺:全員友達のつもりなんですけど誰とも仲良くないし。相変わらず地元だと澤君としか会ってないよね? 澤:相変わらず。 ──2年経った中でひかりのラウンジ閉店が確定するとか、大きなトピックもBの活動に限らずありましたけど。その影響は大きいですか? 西園寺:powwwerrr(*コロナ禍にひかりのラウンジで始動した主催イベント。現在は終了)も完結したし活動についての影響はないけど、単純に遊ぶ場所が1個減ったなっていう。まぁそこでしか遊んでなかったんで、遊ぶ場所がゼロになりました! ──ファンとしては少しpowwwerrr復活にも期待をしてしまったんですが、そうしようとは思わなかったんですよね。 西園寺:最初はさすがにやっといた方が良いかと思ったんですけど、なんか全然そういう気分じゃなくなっちゃったのでやらなかったですね。別に嫌とかじゃないんですけど。 ──powwwerrrって、だいたいコロナ禍が一番大変だった頃と重なってるじゃないですか。やっぱりその前後でBのモードもかなり変わっていったのかな、と思ってまして。リリースされる楽曲の質感も徐々にソリッドになってますし。心境や作風の変化はありましたか? 西園寺:そのへんはpowwwerrrはあんまり関係ないっすね。2枚目のアルバム『Positive Violence』以降はトラックを結構しっかり作るようになったし、まあ普通にすごい頑張ってたって感じですかね? ──具体的にはどのような作り方になっていきましたか? 西園寺:コンセプトってほどじゃないですけど、『Positive Violence』には一応コンセプトがあって。とにかく1枚目よりうるさいものを作ろうと思ってました。その時期、個人的にすごいグラインドコア~ゴアグラインドとかにハマってて。まあその後プログレにハマったので、今は別にうるさくなくても全然大丈夫なんですけどね。プログレ最高! ──制作中はグラインド、制作終盤以降はプログレですか……。ふたつが融合した『Positive Violence』はX(Twitter)を介してDeathbomb Arcの元に届き、同レーベルからのリリースも決定したわけですよね。 西園寺:そうっすね。音速でリリースが決まってって。きっかけは「SHIN GOD」のMVを没 aka NGS君にお願いしたことで、公開した当初はそんな反響無かったんですけど没君がツイートしたことでDeathbombの人が聴いてくれたみたいで、気づいたらDeathbombファミリーになってました。2日ぐらいで全部の話が決まってったところにグラインドっぽい速さを感じましたね。 ──ツイッタードリームですね。西園寺さん自体、モードの移り変わりがかなり早そうだなと思うんですが、そういう意味では過去の話を今されてもキョトンとした気持ちにはなりそうですよね。 西園寺:まあ嬉しいは嬉しいんですけどね。 ──最近ハマってるものってありますか? 西園寺:引き続きプログレを聴いてますね。あと僕はアメカジにハマってます。なんだかよく分かんない音楽とかは相変わらず好きです。なんとも言えないやつとか結構あるじゃないですか。一応、今まではハイパーとか言われるものとかも聴いてたんですよ。もちろんそこに好きな人とかもたくさんいたんですけど、だんだん聴かなくなってって。 ──理由とかあるんでしょうか? それとも飽きちゃったとか。 西園寺:まぁ飽きちゃったのが大きいですけど、もともとスカムとかが好きだったけど一応作る人間としてなんとなくハイパー追ってた方がいいのかな、って感じで無理して聞かなくていいやと思って(笑)。ハイパー聴いてても別にああいう音像のは作れないし。 ──西園寺さんは一貫して初期衝動感があるものが好きなんだと思ってて。いわゆるハイパーポップの流れが発生したコロナ前夜ぐらいの時期は、とにかく音楽をやってみたくなった人たちが頑張って作っていった感じがあったと思うんですけど、いまは洗練されたというか全体の平均値が上がった感じがあって。衝動的な部分が薄れたのかもしれないですね。 西園寺:最初期の頃って思いついたアイデア全部突っ込むみたいな感じがあって、それが面白かったというか。「別にそんなことしなくてもいいのに……」みたいなことを1曲のなかでいっぱいしてて。でも成熟したのか、当初はアイデア合戦だったのが今は別にそうではないのかな? と感じて。そういう意味では、やっぱプログレってアイデアの宝庫なので最高ですよね。 ──やっぱりプログレなんですね……。あのジャンルって技術的な制限があったなかでどこまで突き抜けられるか、という感じの技術対決のような雰囲気もなんとなくあったような気がします。 西園寺:もう良いとか悪いとかじゃなくて、良くなくてもいいやって感じでアイデアを入れる感じとかがすごい面白いなと思って。本人たちは真剣に良いものを作ろうとしてるんだろうけど、とにかくアイデアを入れちゃうみたいなスタンス自体が面白いな~って感じます。あと単純に変拍子も良いアプローチなんですけど、変拍子って意味わかんないじゃないですか。一定のほうが気持ちいいはずなのに抗う、みたいなのはヤバいっすね。 ──しかも尋常じゃない量の練習が必要じゃないですか、ああいうプログレみたいな音楽って。 西園寺:要するにノリにくい音をわざわざ練習して、人力ですげー時間かけてやってるっていうのがプログレの最高なところで。なんでそんなことしてるの? ってところにグッと来ますよね。あと、プログレって1回しか流行ってないんですよ。それもヤバくて。 ──それはプログレッシブ・ロックが誕生したリアルタイムの時期って意味ですかね? 西園寺:そう、今ってなんでも1回きりじゃなくて大体リバイバルとか起きるじゃないですか。すべてがリバイバルされてく中で、唯一リバイバルされてないのがプログレ。 ──それで言うと、脱線になっちゃうんですけど西園寺さんのソロワークとして、〈Nyege Nyege〉のDUMAのボーカルのLord Spike Heartにビートを提供されてたじゃないですか。アフリカのダンスミュージックって大陸の外の音楽とは全く違うもので、技術がもたらされたのも近年のことなので、アフリカ大陸全体で当時のプログレ的な過剰実験精神が爆発してるからヤバいのかな、と思うんですが。 西園寺:確かにそう言われると、最初のプログレって楽器を始めた人たちが楽器とかバンドヤバい! ってなって始まっていったような気がします。特にヨーロッパ圏のプログレって、もともとクラシックの素養みたいなのがある人がやってるから壮大な感じになっていったと思うんですけど、アフリカの場合だとクラシックの代わりに土着的なリズムがあるじゃないですか。で、DAWヤバいってなっていく中で元から持ってる素質のポリリズムみたいなのがくっついてどんどん変な音楽が出来てるのかもな、って思いますね。まあ全部想像ですが♪ ──Bはそういう意味ではクオリティは向上し続けてるんですけど、最初からやってることは一貫してるし同じように見えて少しずつ変化し続けているのかな、というのが近作を聴いて思ったことで。 西園寺:あえて言うと、ミックスは上手くなったと思うんですよね。きっかけはuamiさんと一緒に曲を作ってみたときなんですけど、お互い同じGaragebandなのでプロジェクトファイルを送ってもらったら全然違ってて。 ──どういうところが参考になりましたか? 西園寺:今まで一個一個のステムを全部真っ赤にしてて。それでもスネアの音とかが小さかったらもう一個トラック作って、同じ音をドンドン追加しまくるみたいな感じでやってたんですけど、uamiさんのプロジェクトに入ってるトラックは全部音がめちゃくちゃ小さくて。 ──じゃあ、今まではマスタリング前から既に爆音だったんですか……。 西園寺:そうっすね。音をデカくしたかったら最後に大きくすればいいじゃん、そのためのマスタリングなんだ~! ってことが初めて分かりましたね。それで『Positive Violence』のときは全部のトラックを絞って、個々の音量をなんとなく微調整してたんですけど。まあ最近は「後から上げるから何でもいいっしょ♪」みたいな感じで逆にミックスが適当になってきてます! ──じゃあ最新作の『SHINPI』は、さらに進化した姿というよりはまた全然違った音像になったわけですね。よりプログレッシブな方向に? 西園寺:むしろ退化してる可能性も全然ありますね。最近はもうイヤホンもしなくなっちゃって。 ──モニタリングとかも特にしないで作ってたんですね……。 西園寺:ほとんどiPhoneのスピーカーでやってます。ちゃんと作ってる曲も一応あるんですけどね。ヘッドホンつけた方がいいだろうとは思うんですけど、まいっか♪ って感じで。 ──今回のEPなんですけど、タイトルが『SHINPI』、つまり神秘じゃないですか。どういった意味が込められてるんでしょうか。 西園寺:プログレですね。 ──プログレなんですね。プログレの神秘に迫る、ということですか? 西園寺:いや、なんか『SHINPI』ってタイトルだとプログレっぽいかなって思って。 ──プログレマニアには絶対持てない視点ですよね。海外の人が日本の昔のV系を「Visual Kei」として楽しむみたいな感じでヤバいなと思います。ちなみに澤くんもプログレモードではあるんでしょうか? 澤:まあ、一応。俺もなんか作った方がいいのかって思ってちょっと素材を提供したりしたっすね。 西園寺:それで一曲作ったり。まぁ今回はいろいろ考えて収録しなかったんですけどね。 ──えっ、収録されてないんですか? 西園寺:してないです! 内容的にはシンセのシーケンスとプログレのギターをサンプリングしたものでした。 澤:まあ好きなとこだけ集めてみて、Bで使えるかなーぐらいの感じで。使われなかったけど。 ──聴きたかったですね……。そんな澤くんも以前からプログレが好きだったと。 澤:もともとお互いプログレは好きだったみたいで、でも共通言語でも何でもなくて。何がきっかけだっけ? 西園寺:MAGMA(*フランス出身のプログレッシブ・ロックバンド)じゃない? 澤:あ、MAGMAっすね。一緒に車に乗ってるとき急に流れはじめて「は? MAGMAじゃん」ってなって。 西園寺:お互いプログレの話なんか一切したことなかったんですけど、その日初めてMAGMAで通じ合いました。澤くんはプログレが全般的に好きなんですけど、僕はいわゆるユーロプログレみたいなやつだけ聞いてて、しかもお互い勝手に独りでdigってたんですよね。ちなみに、その後ひかりのラウンジでも流してたらfri珍さんから「MAGMAじゃん!」って言われました♪ ──ひかりのラウンジってプログレッシブ・クラブだったんですね。 西園寺:建物自体プログレのジャケットっぽいし。 ──『Victory Hardcore』~『Positive Violence』まではおそらくグラインド感重視の感じで、音のラウドさを突き詰めてたところから『SHINPI』に移ったわけじゃないですか。もはやハードとかラウドじゃなくてもいいかなって気持ちではあるんでしょうか。 西園寺:自分的に『Positive Violence』の制作はすごい頑張って、この路線でこれ以上続けてもっとカッコいいものができるか分かんなかったんで、頑張ったしもういっか♪ みたいな感じでした。まあ一応『SHINPI』にもうるさい曲は入れとくか~って思ってたんですけど、それも外しました。ちなみに、その外した曲が澤くんのやつです♪ ──じゃあBとしては『SHINPI』が新しい今のムードではあるという感じなんですかね。 西園寺:なんていうかな、誤解を恐れずに言うと今回は「プログレスカム」みたいなものがテーマだと思ってて。作ってみた結果そんなプログレじゃなかったんですけど、気持ちはプログレっすね。 ──今回は昨年行われた連続シングルリリース時に収録されてたB面の曲みたいな雰囲気のものが多くて、聴いてて不思議な気持ちになりました。たしかに神秘性を感じましたね。 西園寺:まぁ統一感じゃないですけど、コンセプト的には聴いたらなんとも言えない感じになる作品を目指したかも。(聴いた人には)モヤモヤしてほしいっすね。僕、あんまよく分かんない曲がもっと世の中にはあってもいいんじゃないかな? って思ってて。 ──プログレッシブ精神でよく分からない曲を作って出して、リリパを開催するという(笑)。ちなみに、手応え的にはどうでしたか? 西園寺:一曲だけすげー良いのが出来たんですよね。遡ると、『Victory Hardcore』のときに「これヤバい、神の領域に手が届いちゃった!」みたいな曲ができて、それが「GOD」ってやつだったんですけど、『Positive Violence』のときにそれを超えちゃって。それが「SHIN GOD」って曲だったんですが、今回はさらにそれも超えちゃいました♪ ──その曲名って、もしかして? 西園寺:「SHIN GOD 2」です♪ ──タイトルに”2”って付くのもなんかプログレみたいで良いですね。EPは6曲入りでしたが、アルバムにはしなかったんですね。 西園寺:もともと、去年アルバム出したあとに「全然良くないEP作りたいな~」って思いついて。しょうもない、なんとも言えない感じの曲ばっか集めたら面白いかな? って。でも、結果的に8曲ぐらい出来ちゃって、それはもう普通のプログレだなって感じたんで2曲を1曲に無理やりしたりしました。そういう感じで進めてたら、なんかWWWでやることになっちゃって。もっと軽い気持ちで作ろうと思ってたんですけどそういうわけにもいかな くなって、ちょっとだけ頑張っちゃいました。 ──ちなみに、『SHINPI』はプログレ以外だと何に影響されたEPなんでしょうか。 西園寺:そうっすね、今回は没 vs nulの『Revolver』にすごい影響受けてて。エコポップって言うんですかね、ハイパー以降の柔らかいトランスみたいな感じってあるじゃないですか? エコポップをヒップホップの感覚で作るっていう所に可能性を感じて。じゃあスカムの感覚でエコポップを作って、更にプログレ要素も足したら面白いんじゃね? と思ってやってみた感じです。 ──みんなでドンドン聴き込んで、ドンドン微妙な気持ちになっていきたいですね。そんな『SHINPI』のリリパですが、結構独特なブッキングで面白そうだなと思って。人選のポイントとか当日の見どころって何かありますか? 西園寺:一応プログレって感じだしバンドかな、みたいな。微妙に揃うことも無さそうなメンバーだし。ただ、このブッキングを組んだのが去年の秋冬ぐらいだったんですけど、その後いろんなイベントでめっちゃ共演するようになってました♪ ──(笑)。とはいえ、どの出演者も今まさに旬な感じですし、全員かなり独特の表現にチャレンジしてますよね。そういう意味では一貫性があるというか。さらに言うと、オシリペンペンズなんかはこうやって誰かが混ぜないと決してユース層とは交わらない存在じゃないですか。 西園寺:ヘッドライナーって言うとアレですけど、そこを決めるのにすごい時間かかっちゃって。けどさすがに誰も考えてないかなって思って。とにかく、大御所に若者たちをビビらせてほしいんですよね。 ──話を伺ってると、結構納得できるタイプのヤバさというか。イベントの組み方自体にプログレッシブな感覚がありますね。 西園寺:そうかも。ペンペンズって本当にフォロワーが誰もいないというか、誰も別にやろうとしてないことをずっとやってるのが本当に凄くて。モタコさん以外誰もできないようなことを普通にずっとやり続けてるのはヤバいし、それってプログレですよね。 ──ちなみに、これはもし話せたらで大丈夫なんですけど、今回のBは去年のDOME’23のようにロングセットでやるとか、客演をキャスティングするような計画はあるんでしょうか。 西園寺:いや、特には。プリミティブに自分たちの力だけで頑張ってみようかなって感じです。 ──逆に普通にやるプログレッシブ精神。なんというか、関西ゼロ世代以降の感覚が全体に引き継がれてる雰囲気もあって、そういう意味でも面白そうだなと。 西園寺:認識が合ってるか分かんないんですけど、自分たち的には新しいポストパンクの感じっていうか。オシリペンペンズってちょっとポストパンクっぽいじゃないですか? そんなことないか……♪ ──いや、広い意味でのポストパンクとしては考えられそうですよね。よりアウトサイダー的な変さに向かって突き抜けてく感じ含め、やっぱり根底にはカウンター性とか実験精神があるんだなっていうのが。 西園寺:プログレですよね。 ──ハイパー期の反動的な動きでもあるのかな、とか勝手に思ってて。サウンドデザインとかをひたすら追求し続けることが普通になった今だからこそ、人力で実験を突き詰めるアーティストが集ってるような気がします。 西園寺:僕、昔はバンドばっか聴いてたんですけど、次第に全然聴けなくなっちゃって。で、ハイパーポップが始まってからはバンドがミームになっちゃったと思ったんですよね。普通に新しい音楽を聴いてるインターネット世代の子たちがバンドを始めだしたりとか。 ──情報量の多さのなかで全部が並列になってって、そこで再びバンドっていうのが新鮮に聴こえるというか。 西園寺:あと、今ってみんなめちゃくちゃ上手いですよね。昔の音楽を別に悪く言うつもりはないんですけど、それまでは技術的に限られてるなかで突出して上手い人たちがマスロックとかプログレみたいなことをやってたじゃないですか。今の子たちって、なんというか雑多に聴いてるのをまとめ上げるための技術みたいなものが格段に上がってるなって思ってて。全部突っ込んじゃったみたいな感じなのにバランスが取れてて。それはもちろん素晴らしいことなんですけど、やっぱ「何やってんだ?」っていうのが一番面白いんで。 ──そういう他人に理解できない過剰さみたいなものを突き詰めたリリースパーティーになりそうですね。最後、ほかに話したいトピックなどがあればそちらもぜひ伺いたいです。 西園寺:じゃあ、アメカジで! 今、本当にイケてるやつはアメカジ着てるんで。 ──どのタイミングでアメカジの良さに気づきましたか? 西園寺:ずっと憧れ自体はあって。でも今って、東京のイベント行ってもアメカジを着てる若者が一人もいなくて。ってことは今こそアメカジが一番カウンターカルチャーなんじゃないかな? って感じたんですよね。たとえばGジャンとGパンのセットアップでDJとかしたらめっちゃカッコ良いのに、なんでそういうやつがいないんだろう? と思って。あと、結構日本のブランドがアメカジの伝統的なモデルのレプリカとか再現モデルを作ってるんですけど、そういうのを「和メカジ」って言うらしくて。そのワードセンスもかなりヤバいなって思いました。 ──岡山の桃太郎ジーンズ的なやつですかね。 西園寺:そうです。桃太郎ジーンズって名前もヤバいし。でも、ああいうのって信じられないくらい縫製とか素材にこだわって作ってるんですよ。たぶん、たまたまその人たちはデニムの道を選んだんですけど、おそらく楽器を渡してたらプログレをやってたんじゃないかな? って思いますね。 ──もはやオシャレとかじゃない別の美学で成り立ってるというか、その需要とかトレンドと無関係な突き抜け感はたしかにプログレかもしれないですね……。 西園寺:アメカジ好きの人達ってデニムを「根性履き」とか言って半年ぐらい洗わずに着用して、シワの入り方とか色落ち具合を追及したりしていて、最早カッコいいとかオシャレとか関係無くて美学だと思っていて。音楽で置き換えると、やっぱりみんないい曲を求めるし作ろうとすると思うんですけど、僕はみんなの失敗作が聞きたくて。失敗を恐れないとかそういうレベルじゃなくて、もっとガンガン失敗を楽しめばいいのにって思ってるんですよね。どうなってもいいからヤバいと思ったことをひたすら追求する、みたいな。そういう大事なことをアメカジから学びました。 ──アメカジもプログレも過剰な美意識の発露ということですね。ちなみに、今回のリリパでは学ランの第2ボタンが配布されるみたいですが、それは何故なんでしょうか? 西園寺:あれは最初のリリパのときに「第2ボタンかハチマキ配るっしょ!」って話になってたんですけど、当時さすがに第2ボタンはちょっと意味が分からなさすぎるってなって、あとオリジナルの第2ボタンを作ろうとしたらすごい高くなりそうだったんで一回頓挫して。今回は来てくれた人たちによく分かんない気持ちになってもらいたくて、どっかの学校で使われてる「中」って書いてあるやつをチョイスしました。 ──ボタンには桜もあしらわれてますね。なんか、2年前をさらに乗り越える感じが熱いなって思いました。 西園寺:そう。そういうことなんですよ。 ──? 西園寺:とにかく、たぶん神秘的な一日になると思うんで、神秘体験しに来てください! マジで本当に一人でも多く来てほしいです。 ──ということで、察してください。今回はありがとうございました! 西園寺:ヨンキュー♪ タイトル:『SHINPI』 release party 日程:2024年3月22日(金) 会場:WWW 出演:BBBBBBB /
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