2022/03/08
銅金裕司/藤枝守『エコロジカル・プラントロン』
植物学者/バイオアーティストの銅金裕司が開発した植物生体情報を得るための装置「プラントロン」を、作曲家の藤枝守のサポートによりインスタレーションとして構築された『エコロジカル・プラントロン』が30年の時を経て現代に復刻。ボーナスを加えて、CD/LP/デジタルで発売される。
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「植物からみた生きものたちのインターフェイス」。植物の視点から我々の身体を包み込む生態系の連鎖を音によって体感させるインスタレーション、『エコロジカル・プラントロン』(1994年)を再検証復刻。
植物学者でバイオアーティストの銅金裕司が、植物と話し、植物から話しかけてくるような装置を目指し、1987年から研究開発した画期的なシステムそれが「プラントロン」だ。植物から電位変化を取り出して人間の知覚できる音や映像にかえるこの装置は、ソフト面でもハード面でもかつて遭遇したことのない世界を提出する。
「プラントロン」は90年代初期に研究の場から公の場に登場するや、テレビ、ラジオや無数の雑誌で取りあげられて一種の<現象>となり、NHKの番組で特集され、2007年にはNTTインターコミュケーションで大規模展示を行っているが、この装置の意味がどこまで浸透したかは不明だ。銅金のとなえる「植物中心主義」の態度は相当に挑戦的で過激であり、90年代には理解者は少なかった。しかし、「プラントロン」最初のインスタレーションから30年経った2022年、脱炭素社会の構築を世界的な合意目標にあげた今、その先見性と実行に敬意を表するよりほかはない。
『エコロジカル・プラントロン』(1994年)はこの「プラントロン」の最初のCD記録集である。銅金の「プラントロン」を作曲家の藤枝守のサポートで本格のインスタレーションに構築したもので、植物と人間環境の往信から生まれた電位変化がMIDI変換され、「MAX」プログラムを通して不定形かつ不規則なYAMAHAのFMシンセ音となって放出される。強引に例えれば、クセナキスやペンデレツキの図形楽譜曲にどこか似た雰囲気、あるいは予測不能な電子音を垂れ流すコンロン・ナンカロウといえるかもしれない。
生態電気といえばヒトの脳波を使ったデヴィッド・ローゼンブームやアルヴィン・ルシエ、ヤン富田らの実験音楽が思い出されるが、本作は人間が主役ではなく徹底して植物中心主義で、そもそも近代的な意味の<音楽作品>として提示されていない。
今回の復刻ではギャラリーで制作された自主盤音源をリマスターし、CD版には『エコロジカル・プラントロン』以降の二つの展示「マングローブ・プラントロン」(1995年)と「ピアノラ・プラントロン」(1997年)での未発表録音をボーナス・ディスクとして収録。初のLP版も発売となる。なお、本装置の1992年のインスタレーション公開以降、疑似類似の試みが出現しているが、そのオリジナルが「プラントロン」である。
■基本情報
アーティスト名:銅金裕司/藤枝守(Yuji Dogane & Mamoru Fujieda)
アルバム題名:エコロジカル・プラントロン(Ecological Plantron)
フォーマット:2CD / LP / Digital
カタログ番号:EM1202DCD/LP/DL
定価:CD版 3200円(税別)、LP版 2600円(税別)
制作発売元:エム・レコード (EM Records) https://emrecords.net/
解説:銅金裕司(1994年版および2022年版寄稿)、藤枝守(1994年版)、江村幸紀(2022年版)
マスタリング:Takuto Kuratani
VINYL用マスタリング&カッティング:D&B, Berlin
Ⓒ & Ⓟ 2022 EM Records
■発売予定日
CD版/LP版/Digital版:2022年4月8日(金)
※昨今のVINYL工場の不安定な供給状態のためLP版が大幅に遅延する可能性があります。
■仕様
=CD版=
・2枚組、CD版別装丁
・28頁ブックレット、デュオケース、帯付き
=12″ LP版=
・LP版別装丁
・VINYL用マスタリング、インサート封入
・3mm背シングル・ジャケット
=Digital 配信版=
・Bandcamp配信
Bandcampページ:https://emrecords.bandcamp.com/
▼収録曲:全フォーマット同内容(フルヴァージョンがストリーミング試聴できます)。
=CD Version(完全版)=
■DISC 1
『Ecological Plantron』(1994年オリジナル録音)
Track 1 – Evening [18:15]
Track 2 – Night [18:16]
Track 3 – Morning [18:17]
Track 4 – Afternoon [18:26]
■DISC 2
Track 1 – マングローブ・プラントロン [35:00](1995年、未発表録音)
Track 2 – ピアノラ・プラントロン [35:00](1997年、未発表録音)
=LP Version(抜粋版)=
Side A. Evening(from “Ecological Plantron”)
Side B. Night(from “Ecological Plantron”)
※LP版は『Ecological Plantron』CD収録の4セッションから2セッションを収録した抜粋版となります。
category:NEWS
2020/09/04
『Immersion』 Hikari Sakashita、Pueru Kim、UltrafogことKohei Fukuzumiの3人による即興演奏を音源化した『Immersion Ⅰ』と『Immersion Ⅱ』が、本日のBandcamp Fridaysに合わせてリリース。 今作はツバメスタジオで録音され、ミックス、マスタリングは君島結が担当。フォーマットは2枚組CDとデジタル。『Immersion Ⅱ』はCD限定。 Hikari Sakashita, Pueru Kim, Kouhei Fukuzumi – “Immersion” Release date : September 4 2020 Bandcamp : https://immersion.bandcamp.com/album/immersion-i デジタル ¥1,000 CD(2枚組) ¥1,500 『Immersion Ⅰ』 Tracklist Track 01. I Track 02. Ⅱ Track 03. Ⅲ Track 04. Ⅳ Track 05. Ⅴ Track 06. Ⅵ Track 07. Ⅶ Track 08. Ⅷ Track 09. Ⅸ Track 10. Ⅹ Track 11. Ⅺ 『Immersion Ⅱ』 Tracklist Track 01. I Track 02. Ⅱ Track 03. Ⅲ Track 04. Ⅳ Track 05. Ⅴ Track 06. Ⅵ Track 07. Ⅶ Track 08. Ⅷ Track 09. Ⅸ Track 10. Ⅹ Drums: Hikari Sakashita Sax: Pueru Kim Electronics: Kouhei Fukuzumi Mixing & Mastering: Yui Kimijima Recorded at Tsubame
2021/04/21
4ADより photo: Nhu Xuan Hua サウスロンドンを拠点にするシンガーでチェリストのLucinda Chuaが〈4AD〉と契約し、2nd EP『Antidotes 2』のリリースを発表。 『Antidotes 2』は、2019年に自身のレーベル〈秀燕〉よりリリースした『Antidotes 1』の姉妹作品であり、続編にあたる。自身のサウンド・ボキャブラリーを拡大させ、意識と潜在意識の間を刺激するようなテクスチャーは、お互いに混ざり合ってから消えていく。『Antidotes 1』が、Lucinda Chuaが自分の音楽のために景色を作り上げたものだとしたら、『Antidotes 2』はその中で彼女が生きているものだという。 今回、発表に合わせてEPの冒頭の楽曲「Until I Fall」の映像作品が公開。William Kennedyが映像を手掛けている楽曲は「再生と、立ち上がるための内なる強さを見つけること」をテーマにしている。 ノッティンガムの大学でフォトグラフィーを専攻していたLucinda Chuaは、音楽制作の選択科目を受講し、実験的なトラックを制作してオンラインにアップロードしたところ、アメリカのレーベル〈Kranky〉に発見された。やがて彼女は、チェリストとストリングス・アレンジャーとしてStars of the Lidのツアーに参加し、最初のバンドFelixでは2枚のアルバムをリリース。Felix解散後、ロンドンで数年間過ごし、チェロの実験的創作をスタートさせた。それらの実験は、2019年のデビューEP『Antidotes 1』に反映されており、静かなソングライティングと広大なテクスチャーのサウンドスケープが特徴的を持っている。リリース後には、FKA twigsの『Magdalene』ツアーのライブバンドにもメンバーとして参加している。 4ADのサイトでは『Antidotes』の1と2、両方の楽曲を収録したスペシャル・ヴァイナル・エディションの予約スタート。こちらは8月13日に発売される。 Lucinda Chua – Antidotes 2 Label : 4AD Release date : 7 May 2021 Pre-order/Pre-save : https://lucindachua.ffm.to/antidotes2 Tracklist 01 Until I Fall 02 An Avalanche 03 Torch Song 04 Before
2025/06/05
最新EPから「Ash」のアコースティック版がリリース 韓国・ソウル出身、2022年に「Signs」でデビューしたiisoは、planet rave以降のフィーリングにY2Kカルチャーのキュートネスを掛け合わせたような作風で、彗星のごとく登場。とりわけ、「Salad Days」の軽やかさと煌めきは多くのリスナーの心をとらえることに。良質なアーティストを抱える韓国のレーベル<Mine Field>から数曲をリリースしたのち、2025年3月に公開したEP『Ash』では、柔らかなダンスビートとともに新境地も提示した。 「私は声が小さかったけど表現したいことはたくさんあった」と語る彼女は、幼い頃にジャズピアノを習い、絵を描き、手芸に没頭した。そして今、DIY感あふれるプロダクションに、ベッドルームポップの親密さと静かなエモを加えたiisoワールドを作り上げた。日本の音楽やアニメをこよなく愛し、どこか儚さを漂わせながら歌うiisoの感性に、そっと触れるようなインタビュー。 Text : つやちゃん ──ジャズピアノをやっていたところから、ダンスミュージックへ関心が向いたのはなぜですか?どのようなきっかけがあったのでしょうか。 iiso – 私はいつも「当たり前」のことをしたいというわけではないんです。ピアノを学んでいたので、人々は私がピアノに合わせて歌うことを期待していましたが、私はもっとワクワクすることがしたかったんです。「どうやってこの殻を破るか?」と考えるようになりました。 ──あなたは、ドラムンベースやガラージといったダンスミュージックを、これまでどのような形で知り、聴いてきたのでしょうか。 iiso – ある日、曲を聴いていたら、ドラムの音がすごく「キラキラ」していて、まるでポッピングキャンディが耳の中で弾けているみたいだったんです。それで「わ、楽しい!私もやってみたい!」と思いました。そんな時にARCXから一緒にそういうスタイルの曲を作らないかと声をかけられて、すぐに飛びつきました。 ──以前はレーベル<Mine Field>からのリリースでしたが、今回のEPは個人でのリリースとなっています。レーベルを離脱されたのでしょうか? いきさつを教えてください。 iiso – はい、レーベルを離れました。自分自身でいろいろやってみたくなったんです。ありがたいことに、レーベルの方々はその決断を理解してくれて、尊重してくれました。 ──これまでは、ARCXやYONNと言ったプロデューサーと組んできましたが、今回のEPはどのような方々と制作しているのでしょうか。 iiso – 今作は、実は何度も延期されていて、数年前にリリースされる寸前までいっていたこともあります。結局、自分で約80%を仕上げたんですが、感情的にも創作的にも燃え尽きてしまいました。そこで「誰かに助けてもらわないと」と思い、OBSNと出会って、残りを一緒に完成させました。 ──以前、iisoを「healing techno fairy(癒し系テクノの妖精)」と表現していてぴったりだと思いました。「Black Diamond」や「Bloody Hell」はその路線とは異なる新境地です。iisoとしての表現幅が広がってきていますが、何がそうさせているのでしょうか。 iiso – その時その時の正直な感情を反映しているからだと思います。「Black Diamond」は怒りに満ちていたときに書いた曲。「Bloody Hell」は深い鬱状態から生まれました。ジャンルについてはあまり考えず、自分の気持ちを最もよく表現できる音を選んでいます。ごちゃごちゃしているように感じられるかもしれませんが、それが私という人間なんです。一つのジャンルに縛られる必要はないし、私は一面的な人間ではありません。もしかしたら、感情的に安定した時期が来れば、もっと固まった音楽スタイルになるかもしれません。今はまだ成長の途中だと思っています。 ──今作はこれまでにも増して脆く、か弱い感情が詰まっているように聴こえます。繊細な作風になったのは、なぜでしょう? iiso – 以前は、他人が自分の音楽をどう聴くかなんて、正直どうでもいいと思っていました。「自分にはこう聴こえるんだから、みんなもそうでしょ」って。でもそれがとても一方通行なコミュニケーションだと気づいたんです。その気づきが、もっと繊細に、そして思いやりを持って表現したいという気持ちにつながりました。 ──今作もそうですが、iisoの音楽はパッド音がとても柔らかく、ヒーリング効果を感じます。普段、どのような点にこだわって音を選んでいますか? iiso – トラックの空白を埋められるような、柔らかくてもキャラクターや色を感じられる音を探しています。それらを重ねて、慎重にハーモニーを作っていきます。 ──ピアノだけでなくギターも弾くようですが、普段曲作りはどのような形で行なっているのか教えてください。 iiso – 普段はキーボードで作曲しています。ベースラインやドラムをさっとスケッチできるので、便利なんです。ギターはまだ練習中で、作曲の道具というよりは、今はただ練習している段階です。 ──DAZEDのインタビューで、「私は声が小さかったけど表現したいことはたくさんあった」と答えていたのが印象的でした。あなたは音楽という手段を見つけましたが、今iisoとして伝えていることは世の中にどのくらい伝わっていると思いますか? iiso – 少しは伝わっているとは思いますが、まだまだ見せていない部分もたくさんあります。私は「言うべきことはちゃんと言う」タイプなので、これから発信していくメッセージにもぜひ期待していてください。 ──年末にはBEBE YANAとともにライブをされていました。韓国のインディ音楽シーンで、他にあなたが関わりのある、または共感するアーティストはどういった人がいますか? iiso – Effieです。女性アーティストとしてエレクトロニックミュージックを作っている彼女にとても共感しています。彼女のサウンドも大好き。全部ひとりでやっていて、強くて、かわいくて、すごくインスパイアされます。 ──ワンピースなど日本のアニメがお好きなようですが、他に日本のアニメや漫画、映画、音楽、ファッションなど制作のインスピレーションになっているものがあれば教えてください。 iiso – アニメ、映画、音楽、ファッションなど、今おっしゃったもの全部めちゃくちゃ摂取しています。時々、アニメを観ながら曲をかけて、まるでリミックスのように楽しむこともあります。音とシーンがぴったりハマった時の感覚がたまらなくて。そういう自由な楽しみ方こそが、私にとって一番のインスピレーションになっています。 ──インスト曲「Kurume」のタイトルはどのような意味なのでしょうか。 iiso – ピアノを弾いていた時に、この曲に「Kurume」と名付けました。あとから「久留米」は実際に日本の地名だと知って、写真をいくつか見たんです。それで「もっとこのタイトルが好きになったし、久留米も好きになった」って感じです。 ──YouTubeで、青葉市子とSweet Williamの「あまねき」をカバーしていました。日本語を歌ってみて、韓国語との違いをどのように感じましたか?(以前、あなたが日本語を勉強している様子をSNSのポストで見ました!) iiso – 日本語の発音って、すごくかわいいんですよ。真面目なことを言っていても、どこかキッチュに聞こえるというか。時には、すごく意志の強いヒヨコが喋ってるみたいに感じることもあって(笑)、そこが好きなんです。同じトーンでも、日本語だと違った感情が表現できる気がします。 ──iisoの世界観にとって、イラスト表現も重要なアプローチのひとつです。もし好きな画家やイラストレーター、インスピレーション源になっている作家がいれば教えてください。 iiso – 名前まではあまり詳しくないんですが、絵を描く時は好きな曲や、アルゴリズムが勧めてくれた新しい曲を聴きながら描いています。小さい頃からずっと絵を描いたり物を作るのが大好きだったので、ただただ楽しい趣味という感じです。 ──How did your interest in dance music shift from your days playing
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