2018/11/06
カセットコレクターDirty Dirtの棚からなんとなくセレクトされたカセットを紹介。
Dirty Dirtこと戸田氏はエクスペリメンタル、エレクトロニック、テクノなどのアンダーグラウンドの電子音楽を中心に現行のアーティストのリリースを追いかけるヘビーリスナーであり、膨大な量のカセットを所有するコレクターである。今回は戸田氏のカセット棚から、特に選考基準なく、なんとなく選んでもらった数本のカセットを紹介してもらった。戸田氏の紹介コメントも含めて、何か引っかかるものがあれば、是非聴いてみてほしい。
LA Warman – 『Elizabeth』 (Looking at your mint)
Tiny Mix TapesでCOOKCOOK名義でライターとして活動しているNatalia Panzerと、2017年末にAngoisseのショーケースで来日していたTheodore Cale Schaferが運営するレーベルから、LA Warmanによるインターネットをテーマにした朗読劇。LA WarmanはChloé Elizabeth Maratta(Odwalla1221)の作品などをリリースしているUSBレーベルGlass PressをNatalaとともに運営している。ケースはなくウォレットチェーンがカセット自体につけられている(もちろん取り外してきくことができる)
catriel – 『zzzz xxxx』(self release)
アルゼンチンのcatrielのファーストカセット。前からカセットテープをつくったら送っていいかとInstagram経由で連絡がきていた(結局買った)。カセットケースごと、そして真っ黒な悪魔のような手のフィギュア(お守りらしい)をいっしょに真空パック。もったいなくて開封できないので、データできいています。Jカードの無機質な公衆電話写真もよい。音は同郷NGLYにも通じるインダストリアルなテクノ。
Deflector – 『Juice』(Clan Destine Records)
これまでにDream Disc RecordsやSummer IsleなどからリリースしていたDeflectorの2018年作品はグラスゴーのClan Destine Recordsから。終始暴走しっぱなしなノイズまじりのテクノ。10年近くになるレーベルの活動のなかで、DARK ACIDシリーズなど何度か見せ場をつくってきたClan Destine。2016年からは毎月4本ペースでミックステープをリリースしており、内容もウイッチハウスからトラップまでとCarl Clandestineの趣味全開。Jカードもすべて本人が制作。おおよそレーベルとしてのリリース数は2017、2018年は世界一ではないだろうか。
bod [包家巷] – 『Limpid Fear [清澈恐惧]』(Knives)
様々なレーベルのアートワークやパーティーのフライヤーなどのデザインでも活躍するLA出身ベルリン在住のNicholas Zhuによるソロプロジェクトbod [包家巷]の新作がPlanet MuのサブレーベルKnivesから。クラシカルな音、ルーツであるアジアな雰囲気のメロディや、変調声、切り刻まれるかのような打撃音などがアンビエント室な音とともに配置された各面1曲ずつのミックステープ仕様。Tea StražičićによるJカードのアートワークもすばらしく、それが銀色の袋に封入されている。銀色のジップロックや袋にはいってるカセットは外れがない。
James Ferraro – 『Four Pieces For Mirai』(self release)
2000年代半ばから常に先を走り続けているJames Ferraro新作。もはやOPNとならんで大御所の域んいるけれども、いまでも自主でカセットテープを作ってだすという活動はすばらしい。ディストピア4部作の1本目。前作のカセットテープを日本から注文した人にはまったくといっていいほど送ってこなかったのに新作タイトルでMiraiと日本語を使っていて、遠い未来、そのうち送ってくるっていうメッセージだととらえました。
NGLY – 『Untitled Tape』(Nostievo)
アルゼンチン出身、L.I.E.S.からの作品がすばらしかったNGLYの新作は、ノイズ、インダストリアルのカセットレーベル代表格であるNostilevoから。レーベルの色とぴったりだとおもったら、アンビエント集っていうひねくれたかんじもおもしろい。2017、2018と連続で来日、運営するファッションブランドFantasy ViolenceのTシャツのデザインがアニメーションなどのゆがんだコラージュでかっこいい。
Hegira Moya – 『Slow Vein』(moloton)
東京在住のHegira Moyaによる2018年作品はストックホルムのレーベルmolotonから。Grey Matter ArchivesにちょうどあがっているK/A/T/O MASSACREでのライブの様子をSNSでみたレーベルオーナーが気に入りそこからリリースにつながるという経緯が現代っぽい。ノンビートアンビエントトラップという新しい形容がうまれる。倦怠感、叙情的なシンセとギターのメロディとアンビエントな音色でいながら、トラップやブラックメタルを感じる。
J M S Khosah / JR Chaparro – 『NCA SUR』(NCA)
どの名義が彼であるのかオープンにしていいものとダメなものがあるときいたのでどれもかかないけれども、数多くのの名義でのライブやDJ、レーベル運営、パーティーの主催と幅広く活躍するJR Chapparro。NCAを運営しているJ M Khosahとsplit。フォノカードのパッケージそのままなJカードが渋い。 そしてそれぞれが先鋭的な音をしっかりと深いハウスに落とし込んでて、音も渋い。
woopheadclrms – 『vs o.t.O.g.I』 (Genot Centre)
Wasabi Tapesからのリリース、そして自身のレーベルUkiuki Atamaからもリリースを重ね、岡崎ひかりのラウンジを中心に活動する愛知県安城のwoopheadclrmsがチェコのGenot Centreから新作。HAlcyon Veilあたりにつながる鋭利なサンプリングやコラージュ感覚と、ときには日本的だったり牧歌的だったりする音のバランスがおもしろく、これからもいろいろなところからリリースされてほしい。Angoisseの日本でのショーケースコンピレーションに収録されていたものもはいっていたり。Genot Centreはローカルなアーティストと世界各国の先鋭的なアーティストのリリースのバランスがすばらしく、Jカードのデザインも毎回すばらしく、現行のカセットレーベルの理想形。
V.A. – 『Embrace』(Petrola 80)
コペンハーゲンの新興レーベルによるコンピレーション。Posh Isolation世代が名実ともに大きくなったいま、今年の冬に来日して日本ツアーを行ったAstrid SonneとXenia Xamanekや、Opal TapesからリリースされたばかりのLyra Vaienzaなど、コペンハーゲン新世代。絵画に文字を配したJカードもよく、Tシャツも出ていて、そちらも欲しかった。
TEXT by Dirty Dirt
そして明日11/7はDirty Dirtと舘脇悠介がホストを務めるトークイベント『Buy Nowers Club vol.13』が開催。AVYSSの佐久間も出演します。
『Buy Nowers Club vol.13』
11/7(水)
at dues新宿
OPEN 19:45 / START 20:00
CHARGE 1200yen+1d
TALK: Dirty Dirt、舘脇悠介、Nobuyuki Sakuma(CVN)
category:FEATURE
tags:Cassette / DIRTY DIRT
2018/12/19
カセットコレクターDirty Dirtの棚からなんとなくセレクトされたカセットを紹介。 Dirty Dirtこと戸田氏はエクスペリメンタル、エレクトロニック、テクノなどのアンダーグラウンドの電子音楽を中心に現行のアーティストのリリースを追いかけるヘビーリスナーであり、膨大な量のカセットを所有するコレクターである。今回は戸田氏のカセット棚から、特に選考基準なく、なんとなく選んでもらった数本のカセットを紹介してもらった。戸田氏の紹介コメントも含めて、何か引っかかるものがあれば、是非聴いてみてほしい。 Rabit – 『CRY ALONE DIE ALONE』(Halcyon Veil) 先日Halcyon Veilショーケースとしてアジアツアーを行った(日本にはこなかった…)Rabitが突然リリースしたミックステープ。ヒューストンのHiphopをスクリュー、そこにノイズを重ねたり、コラージュしたり。元ネタがわからないんだけれど、いまの気分にあう。はじめはデータだけかとおもって買ったらのちほどカセットテープが150本限定で売られたため二重に買わざるをえない案件。アートワークはAVYSSグッズのデザインも手がけるCollin Fletcher。 L.O.A. -『In Your Cities, What About Feelings?』(Forever Now) 2017年からはじまったナポリのDave SavedとNPLGNNによるレーベルForever Now第2弾は、ナポリで94年から続くパーティー『Angels Of Love』の2001年から2003年頃に録音したたくさんのCD-Rの音をスクリューしてコラージュ。ナポリで活動しつづける二人がローカルなカルチャーと向かいあい、いまの雰囲気にというかんじだが、全体のスクリュー加減が強すぎ、とくにヴォーカル曲はかなりずぶずぶで、得体のしれない音像に仕上がっている。JカードがCD-Rの写真。 Ao Wu -『Side Effect』(Future Proof:面向異日) 2018年は東アジアの盛り上がりが目立った。Future Proofは台湾のレーベルであまりフィジカルのでないこの界隈ではうれしい。Ao Wuは台湾を拠点に活動していて、Eternal Dragonzから韓国のラッパーMOLDYとの曲をリリースしたり、グリーンランド? のBio Future Laboratoryのコンピレーションにも参加していたり、映像やアートワークも作製するなど多才で今後注目。今作品は台湾の街中や家のなかの音をスマートフォンで録音したものをサンプルにつかって、東アジアな雰囲気のメロディと今のビートがからみあい構成。 Jカードのデザインも本人によるもの。 V.A. 『Compilation』(Lillerne Tapes) シカゴのカセットテープレーベルLillerne Tapesの100作目記念コンピレーション。2007年レーベル発足から、Zack Phillipsを筆頭に、Exael、mdo、Gora Sou、YYU、Rhucleなどローファイなポップや、アンビエントをマイペースにリリースを重ね、同時期に始まったレーベルはかなり消えてしまてゆくなか、続けられてるのはすごい。 AJA 『AJA』(Opal Tapes) グラスゴーAja Irelandによるソロプロジェクトデビュー作。ノイズと暴力そのものなドラムマシーンによるビート、そして叫び声。それもかなり激しい。LGBTコミュニティでの音楽や詩のワークショップの運営など JカードはLu La LoopというUKのファッションブランドとのコラボレーションで、Aja本人がモデルになっている。 Yeah You 『KHOT<』(Opal Tapes/Slip) Elvin BrandiとMyki Jaxnによる親子(らしい)ユニット。チープなCASIOのキーボードによるビート、サンプリングなのか入ってしまったのか街のざわめきやノイズ、そこに叫びまくるラップ。ラップしてるからといって、まったくヒップホップでもないし、ジャンル不詳なかんじがよい。蓄光の緑のケースが時折あるけれどもDJするときにあるとフロアで光る。 N1L 『山卂ㄒ乇尺 爪乇爪ㄖ尺ㄚ』(Opal Tapes) ベルリンのMartins RokisによるN1L。これまでにUIQ、Where To Now?
2022/11/08
映像はSkidが手掛けた UK DrillとJ-POPのミックスを行うラッパー/シンガー・MEZZと、Friday Night Plansへの楽曲提供や御厨響一(鋭児)とのユニット「鯱」としての活動でも知られるトラックメーカー・Dr.Payが8月にリリースしたコラボEP『Dr.MEZZ』から「Money From The Dirt」のMVを公開。 HIP HOP、00年代J-POPメロディーを織り交ぜた楽曲と歌詞の世界観とリンクして社会の暗部に触れながらもどこかコミカルでクールな作品となった今回の映像を担当するのは、東京を拠点に活動する若手クリエイターの集いから2021年に結成されたアーティストコレクティブで鋭児、ゆるふわギャング、Friday Night PlansなどのMVを手掛けるクリエイティブユニット・Skid。 MEZZ / Dr.Pay – Dr.MEZZ Release date : 25 August 2022 Stream : https://809.lnk.to/drmezz Tracklist 1. Freestyle1 2. Money From The Dirt 3. Lisa 4. Midnight Sea
2020/02/02
未来から来た印象派 上海から世界へ発信を続け、アジアを代表するクリエイティブコレクティブとなった〈Genome 6.66Mbp〉のメンバーであるDJ / プロデューサーDirty K。 Dirty Kは昨年11月に、2017年作『Exsiccation』以来2年ぶりの新作『Panorama』をリリース。複雑で繊細なサウンドデザインと東洋のメロディーが融合した傑作をひっさげ、3月1日に開催される「CHEMICAL MONSTERS」での来日が決定。「Panorama」の世界観を反映したビジュアルと共に恒例の質問を投げてみた。 – まずは簡単に自己紹介お願いできますか? Dirty K – こんにちは、Dirty Kです。本名はKeyi Xu。南京に住んで25年、学生時代もここで過ごして、今年カレッジを卒業したばかりなんだ。 – 曲を作るようになったきっかけってなんだったんですか? Dirty K – ずっと音楽制作に関連することを専攻してきた。学部ではレコーディングの勉強をしていたんだけど、その頃の仲間とは音楽についての関心の方向が違ってた。彼らの関心はもっぱら技術面に向いてたからね。だから大学院では楽曲制作に専攻を変えたんだ。デモンストレーションはまだ未熟だったけど当時すでにDJを始めたり曲を作ったりはしていたからね。 – 今回のEP 『Panorama』について詳しく教えてくれますか? Dirty K – 未来から来た印象派ってところかな。このEPでは多彩な風景を様々な楽曲・サウンド制作のテクニックを使って描写して、いろんな物の本質にある美を表現しようとしてみたんだ。岩肌や水、シーンごとの色の移り変わりなんかの美しさをね。ちょうど1900年代の印象派の音楽みたいなんだけど、僕が音を使って表現したいのは感情というより感覚によってとらえられるものなんだ。僕の以前の作品には感情がいっぱい込められていたから今回はそれを変えてみたかった。このEPではいろいろなデジタルサウンドも使っているんだけど、そこに僕はある種の「未来」を感じるんだ。もう一つ僕が自分の音楽でやりたいのは、観念とモノを弁証法的に統合すること。価値観やアイデンティティに背負わされた重荷を忘れて、静かな気持ち、開かれた心を持とうよって音楽を使ってみんなに言いたいんだ。印象派の音楽の特徴の一つは西欧的なハーモニーと5トーンスケールの組み合わせだけど僕はこれをもう一度使ってみたかった。西欧的な心と東洋的な心を美で結ぶ懸け橋みたいな響きだからね。 – 収録曲で行われているChamsやLJCとのコラボレーションはどうでした? Dirty K – Chamsを知ったのはEP『Lettre d’Amort』で。そのカバー(美しい風景画) を見て彼とは趣味が合うって分かった。シングル「panorama」を送ってみたら彼もそれを気に入ってくれて、一緒に何かやろうってことになったんだ。LJCとは彼が南京で学生だった頃から一緒に楽曲を作ってきた。彼はとても印象的なメロディや美しいシンセサウンドを作るすごいセンスの持ち主さ。彼らと一緒にやるのはとても楽しいし、彼らから伝えられるアイデアも素晴らしいものなんだ。 – 制作プロセスについて教えてくれますか? Dirty K – タイトル曲「Pamorama」がEP全体の出発点だった。当時ビジュアルアーティストiranacredi (Johanna Invrrea) の作品にインスピレーションを受けたんだ。彼女の撮影した風景を見て感じた気持ちは今でも覚えてるよ。彼女に連絡してプロジェクトに参加してタイトル曲の映像を作ってくれないかって聞いてみたら、すごくラッキーなことに興味を持ってくれた。EPの制作は結構大変だったよ。GRM Toolsで 808drum loop に何回も何回も修正をかけて岩肌の感じを出したり滑らかなリードサウンドメロディで川を表現したりした。あとは、いろいろなやり方でよくある音楽の構造を打ち壊そうともしてみたんだ。このEPの一部ではbpmを数えることもできないぐらいだよ。 – 〈Genome 6.66Mbp〉とはどんな関係にありますか? Dirty K – Genomeのことはみんな知ってるよね。3年もその中心メンバーでいられて本当に嬉しいよ。大変な時期もあったんだけど、今回またこのEPをGenome からリリースできて本当によかったと思ってる。 – あなたのいる音楽シーンつまり上海、ALL、Genomeなどについてはどう感じてます? Dirty K – このシーンは僕にとっては一種のシェルターなんだよ。だけどシェルターはいつも僕を守ってくれるわけじゃない。自分の方がシェルターに貢献しなきゃならない時もあるよね。僕にできるのはみんなにとってより価値のある音楽を作ることだけだね。 – 将来に向けての希望や想いは? Dirty K – 死ぬまであきらめないで音楽の次のレベルに上がっていくこと、だね。 – Can you
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