人間をあきらめないための走行詩|nerdnekoがEP『Stargazing Youth』をリリース

Siren for Charlotteより

 

 

音楽レーベル〈Siren for Charlotte〉より、2020年代ミクゲイザー俊英・nerdnekoによるEP『Stargazing Youth』がリリース。

 

夜更けの街に滲む青い残響。ギターの揺らぎと電子の粒子が、夢と現実のあわいをたゆたう。初音ミクの声は語ることなく、祈りのように空気へ溶けていく。焦燥と孤独の中に見出される微かな光──それは、終わりではなく始まりの呼吸。誰のものでもない青春の断片が、静かな祝福として宙を漂っている。

 

以下、コメント

 

備忘録の様に描き続けてきた楽曲集ですが、4枚目となる本作は”Stargazing Youth = 空想に耽る青春”をテーマに、Siren for Charlotteが掲げる「遠泳音楽」(=Angelic Post-Shoegaze) と共存するような作品になりました。

そんな思い入れある本作を、敬愛するレーベル Siren for Charlotteよりリリースできることを大変嬉しく思います。

現実と空想の狭間で鳴る音。やるせなさに苛まれ、放心的に過ごしたモラトリアムを偲び、先へ進む希望を唄った今作が、今まさに最中にいる人、またそれを越えた人達へ届くことを祈っております。

 

──nerdneko

 

現行ミクゲイザー俊英、nerdnekoの最新作をSiren for Charlotteからリリースします。

宙を仰ぐように鳴るのは、青の残響。

このアルバムが掬い上げているのは、夢想と現実のあわいで呼吸する”モラトリアムの気配”だ。ギターの残響は冷えた街灯のように瞬き、夜風の中でわずかに歪む記憶の温度を描いている。遠泳音楽の思想と強く共鳴する「届かないものへのまなざし」が、ここではあまりにも人間的な焦燥とともに息づいている。

nerdnekoの音には「青春を引きずることの美徳」がある。

たとえそれが痛みであっても、彼はそこに微かな光を見出そうとする。その光は爆発的ではなく、雨上がりの舗道に反射する街灯のように淡い。けれど、その淡さこそが「祝福のまなざし」なのだ。

遠泳音楽のナラティヴに重ねるなら、本作は第Ⅱ章「喪失と断絶」と第Ⅲ章「加速する風景と超克」の境界にある。失われた時間を抱きしめながらも、なお進もうとする意志の手ごたえが、ドラムの粒立ちやメロディの余白に息づいている。

そして、その中心で初音ミクの声が鳴っている。

それは「誰か」ではなく、「誰でもない声」として響く。

つまり、痛みを共有しながらも、特定の主体を持たない”祈りの残響”だ。ミクの声はこのアルバムの中で、感情を再現するのではなく、感情が過ぎ去った後に残る静かな痕跡を示している。

人間的な焦燥と、非人称的な透明さ。そのあわいにこそ、遠泳音楽が描こうとする”祈跡的人間圏”が広がっている。

現在、当レーベル共同主宰者のひとりである門脇綱生が構想している「疾走音楽(Post-Melocore)」的な推進力も、ここでは闘争ではなく呼吸のリズムとして機能する。焦燥を前進力に変えようとする衝動、その刹那にだけ見えるのが、疾走音楽の文脈における「神の速度」である。

彼の青春は爆発ではなく、星屑のように拡散しながら静かに光り続ける。

そしてミクの声は、その光を媒介する風の器官のように、沈黙と残響の境を漂っている。

『Stargazing Youth』は、過ぎ去った日々を記録するためのアルバムではない。

むしろ、これからの誰かが同じ夜を歩くための灯である。

遠泳音楽の精神が「届かないものを凛として見つめ続ける祝福」であるなら、ミクという非人称の声は、そのまなざしの”声なき代弁者”として存在している。

星を見上げる少年の呼吸が、まだ終わらない遠泳の青を、確かに照らしている。

その声は祈りのように、誰のものでもないまま、世界の片隅で、静かに人間を歌っている。

 

──Siren for Charlotte

 

 

nerdneko – Stargazing Youth

Label : Siren for Charlotte

Releaese date : November 5, 2025

https://eneiongaku.bandcamp.com/album/stargazing-youth

 

Tracklist

1. Stargazing Youth

2. 救命艇(初音ミクver)

3. 廃工場にて

4. 天使Ⅱ

5. 海の囁き

6. sparkle

7. 放心のモラトリアム

8. 夜が明ける

 

music, composition, arrange, lyrics – nerdneko

Vocaloid – 初音ミク

bass -ヒラミ (track 1, 4, 8)

artwork – soyatu

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