LIM KIM interview

ベールを脱ぎ自己の内面へ向かう

 

 

韓国出身のアーティスト・LIM KIMは、過去フォークポップデュオ・Togeworlとしての活動を経たのち、東洋と女性をテーマにしたEP『GENERASIAN』でK-popシーンに新たな立ち位置を築いた次世代のソロシンガーだ。内包するアイデンティティを洗練されたサウンドとビジュアルワークで解放し、常に新たな創造性を探求しながら世界規模のキャリアを着実に歩み始めている。

 

先日、東京・渋谷で開催されたショーケース「KOREA SPOTLIGHT@JAPAN」への出演を果たした彼女は約1年ぶりのリリースとなるニューシングル『VEIL』を初披露。ソロシンガーとして多様な題材に挑み続け、東京でも圧倒的なパフォーマンスを見せつけたLIM KIMに近年の歩みを語ってもらった。

 

Text : yukinoise

Photo : Hana Watanabe

Live photo : Masami Ihara

Coordination : Yoshiko Kurata

 

  ー 「KOREA SPOTLIGHT@JAPAN」でのパフォーマンスはいかがでしたか?

 

LIM KIM:とても楽しかったです。日本でパフォーマンスするのは今回が2度目で、前回2019年にパフォーマンスした際も素敵だったし、大好きな東京にまた来たいとずっと思っていました。

 

 

 

ー インディペンデントなアーティスト活動を始めて以降、その間はどのように現在のパフォーマンスや音楽性に繋がるカルチャーと触れてきましたか?コロナ禍などの影響も大きく受けたのでしょうか。

 

LIM KIM:前作『GENERASIAN』の時はたくさんの音楽に興味を持ち、様々な作品に触れることで2020年から2023年まで何をしたいのか分かるようになりました。アーティストとは常に何かを見ながら自分を探しているので、日々いろいろなことに触れるのは若い頃からのマイルーティーンです。コロナ禍の期間は全くショーができず、シングルを発表したり映像を撮影したりとオンラインでできることをやってました。自分主体で動くことは難しい経験だったけど、ソロアーティストとしてマネージングの仕事やクリエイティブなことをやり遂げて、アーティストとして成長を感じてます。

 

ー 東洋アジアと女性をテーマにした作品『GENERASIAN』はアジア人女性アーティストとしてとても挑戦的な作品で、韓国の音楽アワードでも受賞作に選ばれました。これまでの活動路線を一新したリリース後はどういった反響や心境の変化がありましたか?

 

LIM KIM :ソロ活動を始める前に、オーディション番組で韓国のアジア人女性アーティストのプログラムでトップ3に選ばれましたところからわたしのキャリアは始まりました。以前はメロウでチルな大衆向けのスタイルだったのですが、3年くらい活動休止してた期間にアルバムの準備をして、全く違うスタイルの作品が出来上がって。活動をリスタートした時の最初のリアクションはかなり衝撃的だったと思います。リスナーにはこれまでと異なる印象でショックを受けた人もいれば、好きでいてくれる人もたくさんいましたね。当時は東洋アジアと女性というテーマを取り入れてましたが、今はこれらのテーマというより自分のプライベートな生活や個人的な想い、出来事についてフォーカスした活動をやっていきたいと思うようになりました。

 

 

ー たしかに、2021年にリリースされたNIKEのフェミニスト・プロジェクトとのコラボレーションシングル『MAGO』では韓国の神話、同年リリースのシングル『FALLING』ではギリシャ神話に登場する人魚が楽曲のモチーフとなっているように、楽曲で描かれるテーマの変化を感じました。神話のどんなところに魅力を感じ、インスピレーションを受けましたか?

 

LIM KIM:神話には常に魅力的な物語があります。現実性と創造性が入り混じっていて、主題にするにもキャラクターを描くにもイメージがしやすくなるんです。わたしの歌にはミクロなキャラクターが基づいているので、現実的な部分と創造的な部分が安定している神話からはインスピレーションをもたらされますね。

 

 

 

ー 先日リリースされた約1年ぶりのニューシングル『VEIL』には2つの意味があるとのことですが、改めて日本のリスナーに向けて新曲のテーマを聞かせてもらえますか?

 

LIM KIM :『VEIL』にはカーテンのようなもので覆われたベールから本当の姿を現すという意味と、鋭く切れているような緊張感を示す反対の意味が込められています。意味を考える前に、自分の内面を伝えるためこのタイトルを先に選びました。ひとつの特徴を表現したいとは考えておらず、様々な意味で日本のリスナーにこの曲を楽しんでもらえたら嬉しいです。音楽的にも前作より聴きやすいはず。

 

ー『VEIL』には作曲・作詞でHongsamman、 Will Not Fear、202Laurent、Sumin、Yeorum Moon、Hanbit Jangといった数多くのクリエイターが関わっていますが、制作陣の彼らとはどのような経緯で集まったのでしょうか。

 

LIM KIM:韓国のエレクトロニック・シーンはまだ小さく、アーティストだけでなくDJやプロデューサなど個が集まってひとつのシーンとして成り立っています。彼らとはそういった音楽業界の中で共通の友達を通じて集まりました。過去に制作したプロデューサーさんからご紹介いただいたSuminさんとは前から一緒にやってみたかったので、いいものが作れると予感はしてましたね。

 

 

ー 今回のシングルで自分自身のベールを切り開いたと思うところはありますか?

 

LIM KIM:これまでの楽曲制作ではやりたいことや自分のジャンルを模索していたのですが、最近は徐々に自分が挑戦してみたいものなども見えてきたので、次の第一歩として新たな方向に進めている気がします。

 

ー 次の第一歩が見えてきた今、アーティスト活動をしていく上で大切にしていることは何ですか?

 

LIM KIM:インディペンデントな活動を進める中でも自分自身をきちんとコントロールする姿勢を大事にすること。

 

ー ありがとうございます。では最後に、今後の展望や挑戦したいことがあれば教えてください。

 

LIM KIM:来年はまた新しいアルバムを出す予定だし、これからも新曲のリリースやライブの機会を増やしていきたいですね。今回はショーケースのための短い滞在だったので、次回来日した際はもっとパフォーマンスをしてみたいです。

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