2022/10/05
「電脳カフェ」のための音楽
西武が情報発信企業としての黄金期だった80s-90s初頭、西武美術館と付属のショップ《アールヴィヴァン》は、現代美術と実験音楽の交差点だった。見たこともないディスクが並び、高橋悠治は水牛楽団を、藤枝守はアメリカ純正調楽派のミニコミ『1/1』を、そしてサウンドアート黎明期の作家たちは変な音のカセットを販売していた。エム・レコードが放つ『「電脳カフェ」のための音楽』はそんなオカルト的空間で行われたオカルト的な音楽。メロディどころか始まりも終わりもない抽象的な電子音は、今ならググれば簡単に調べられる。しかし多少敏感な人たちですらそういう拠り所がない当時は、より興味深く、かつウサン臭い眼差しで接していたはずである。その「見てはならぬものを見た」トラウマが、30年経って新しい何かを生み出しているとすれば、仕掛け人たちにとっては望外の喜びだろう。 (井部治/OMEGA POINT)
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本作はアールヴィヴァン(西武)運営のスペースで高橋悠治が企画したイベント「池袋電脳カフェ」のために制作された幻のカセットの復刻である(*1)。これは高橋悠治と藤枝守のマック(*2)を用いたコンピューターシステムの共演で、柴田南雄宅で櫻井卓の手により録音。揺るぎない信念のもと、高橋がマックでコントロールしたサンプリング音源と、藤枝がMAXで操作した音響システムとFM音源(*3)が交錯する意味不明の音塊が収録された。
当時のパンフレットに高橋が寄せた言葉 「日常のゆらめく時間のなかに暗い電脳空間の半透明な座標軸が陽炎のように見え隠れする」 は、彼がサイバーオカルト的なものに憑かれていた可能性を示し、また、当時の雑誌取材で 「来なかった人も重要。自分はそこにいなかったけれども、何かが起こっていたらしい、と後で知る。そのイメージから全然別のものが出てくる可能性がある」 と語ったのは予言だったのか!?理性が基根をなす現代音楽と怪しい電脳オカルト的世界が交錯したのはごく短い期間であり、本作はその<残してはいけなかったかもしれないもの>を記録した裏歴史資料である。 解説は日本の電子音楽の泰斗、川崎弘二。
*1:オリジナル題名は『Computer Café Music』。
*2:植物学者の銅金裕司によると当時のマックは「オカルト的な感じ」が漂い、価格は「軽トラ2台分」だったという (『エコロジカル・プラントロン』解説より)。
*3:後に『プラントロン』インスタレーションでも使用されるシステム。
ARTIST NAME: Yuji Takahashi, Mamoru Fujieda 高橋悠治、藤枝守
TITLE: Music for “Cyber Café” 「電脳カフェ」のための音楽
FORMAT: CD
RELEASE DATE: October 28, 2022 (in Japan)
EXPECTED SHIPPING DATE: Mid October
Bandcamp: https://emrecords.bandcamp.com/album/music-for-cyber-caf
+ Standard jewel case with obi
+ 14-page booklet
+ Liner notes: Koji Kawasaki
+ Japanese and English text
Tracklist
01. Morning [4:44]
02. Afternoon [9:38]
03. Evening [9:34]
04. Night [4:40]
category:NEWS
2021/05/06
電脳的反抗と絶頂 90年代の本邦サイバー・オカルトとメディアアートの地下水脈で暗躍した音楽家、ヘンリー川原の初アーカイブ作品『電脳的反抗と絶頂: エッセンシャル・ヘンリー川原』がエム・レコードよりリリースされる。 今作は、90年代前半におびただしい数の作品を発表した後、表舞台から姿を消したアウトサイダー作家ヘンリー川原の作品を、メディアアートで活動を共にした沖啓介の寄稿と、その作品を果敢に送り出した八幡書店の社主かつ本邦オカルト界のフィクサー、武田崇元のインタビューを交えて検証している(作品解説は江村幸紀)。 収録曲は、挑発的で実験色強いものから、東南アジア音楽を流用したもの、サイバー感が充満したアンビエント・チューン、スピリチュアルなピアノ曲など、楽曲ごとの振り幅は尋常ではない。精神世界とテクノロジーが怪しく交錯したカウンターとしてのオカルト精神が見え隠れし、聴くものを向こう側の世界へ導く。今作のほぼ全曲が既発版とヴァージョンが仔細に異なる作家のフェイバリット版および未発表曲で、VINYL版はLP2枚組、CD版はCDのみボーナスディスク『無目的論-α』と『無目的論-β』を付けた3枚組となる。これまで知る由もなかった、本邦サイバー・オカルトと初期デジタル・メディアアートをミクスドしたヘンリー川原の真相(深層)に迫る。 まるで2021年のコロナ禍の世に放たれるべく秘蔵されていたかのような、ポストパンデミックな”音泉”が世紀を跨ぎ遂に御開帳!!!!!!! いま、人類にとって必要不可欠なのは、変異株にも効くワクチンの接種と、故・ヘンリー川原の源泉を両耳から魂に直接かけ流す行為だ!!!!!!! —宇川直宏(DOMMUNE) Henry Kawahara has been called “the Jon Hassell of Japan”, but upon closer inspection one finds that his work operates on very different terms. Like Hosono’s forays into computerized Ryukyu folk “sightseeing music” or Tsutomu Ōhashi’s Ecophony trilogy, Kawahara’s world projected ancient musical traditions and notions of cultural identity onto the modern digital
2025/03/26
4/20 桜台pool memoirは桜台の名ヴェニュー「pool」を舞台とした特別な一夜を提案します。2025年4月20日(日)17:30開場、22:00終演となります。 アンダーグラウンド文化への愛を貫き通しながら2019年に惜しまれつつ停止した米メディア「Tiny Mix Tapes」が示した世界、Bandcamp〜SoundCloud等のWebインフラが拡充したことで数多の宅録音楽家にとって新たな地平が切り開かれ爆発した創造性、つまり雑誌的価値観とオンラインの美学がクロスオーバーした時代=2010年代における、電子音楽カルト・ヒーロー2組の待望の初来日を用意しました。 本会の主役となるのはロシアから招聘するChushi、アメリカから招聘するJames Matthewの2人。彼らのことを知らない人も多いと思うので説明します。 Chushiはロシア出身の音楽家で、2010年代初期にBandcampの台頭と同期する時流のなかキャリアを開始しました。アンビエント、ドローン、エレクトロ・アコースティック、ミニマル・ウェイヴ、テクノ、そしてインストゥルメンタル・ヒップホップ……それらが複雑に織りなす座標上で滑らかに点描する音楽性が彼の特徴です。またロシアらしく、ヒップホップ本流であるUSからの距離感と似る形でジャンルに対しての希薄な帰属意識を示しつつ、自由な発想と独特な配置のサンプリングで「電子音楽的アプローチのヒップホップ」をモダンに更新し、より深い位置へと沈める作業をした人物のひとりと言えるでしょう。 数多くの作品を残している彼ですが、当時/fと名乗っていた”デジタル・シャーマン”であり美術家のLyla Perryがファウンダーとなり、Bug Bus Piano、Brrd、emamouse、Madegg(現Kazumichi Komatsu)ほか、別名義を包含すると誰が誰なのかも見当がつかないくらいに夥しい量のリリースを重ね、デジタル空間を侵食していた〈Psalmus diuersae〉から発表したアルバム『1-34』『raw』『Return III』などが主な活動歴として挙げられます。 宅録音楽家にとって革命的存在であったBandcampのブーストにより急速的にコア化した2010年代のアンダーグラウンド・シーンにおいて、Lyla Perryのキュレーションやそこに付随する作品群は象徴的事象であり、その中心人物でもあったChushiの掴みきれないサウンドは後進となるDos Monosの没 AkA NGSなどに深く影響を与えることとなります。 また2020年代以降は音楽作品のリリース頻度も緩やかとなっていましたが、reisenのメンバーである東京在住のuxyagkcolbgofとの共作アルバム『A-lie-O』を今年発表するなど、次世代へとそのサウンドが受け継がれています。 A-Iie-O uxyagkcolbgof & chushi James MatthewはLA出身の音楽家で、Chushiと同じく2010年代初期にキャリアを開始しました。生粋のビートメイカーと言える彼はサウンドの位置が抽象的であるChushiとは異なり、インストゥルメンタル・ヒップホップのモダニズムを地下から開拓してきた人物と言えます。 盟友aaronmaxwellとのユニットFamily Event結成のほか、彼らがファウンダーを務める〈El Sereno Records〉ではdpee、RITCHRD、NIPPLE TAPES、ILLSUGIとのスプリット作品などでも知られるyagiの作品リリースを手掛けるなど、LAローカルを基点にバラエティ豊かなビートを発信してきました。トラップの隆盛に伴い時代遅れのアートとされつつあったSP-404ベースなサンプリング・ビートを、Chushiらと近接する形で電子音楽領域に持ち込み再解釈したことが彼の大きな功績でしょう。 現在はJames Rene名義でZoe Ghertner、Nadine Ijewere、Brianna Capozzi、Zora Sicherなど数多くの著名フォトグラファーとコラボレーションする有力なセットデザイナーとして活躍しており、Dazed、i-D、Britich Vogueなどで彼のセットが披露されています(上述の没 AkA NGSはJames Matthewのことが好き過ぎて渡米した過去あり。そこでSP-404のレクチャーを受けたとか)。 EL SERENO TAPE (ESR007) JAMES MATTHEW 国内勢はChushiやJames Matthewを以前よりフェイバリットに挙げる人物で固めました。レーベルメイトでもあり、クラブとギャラリーを行き来する作家Kazumichi Komatsu、文学や映画から影響を受けた音楽を制作し、EUツアーを経て成熟味を増すMetoronori、今回のブッキングを最も情熱的に取り組んでくれた彼らのNo.1ヘッズKenshi、2014年にChushiとJames Matthew両名を収録したコンピレーション・アルバム『Meili Xueshan』を編纂した私Kenji (ユニットpopoでも活動するtirucoとのセッション)という座組です。 非常に狭い世界かもしれませんが、深大なインスピレーションを与えてくれた彼らに会えることを私達は非常に楽しみにしています。本会は我々memoir、Kazumichi Komatsu、Metoronoriら同世代の音楽家にとって10年の時間における一つの結実であり、二度とは再現出来ない夜になることでしょう。我々にとってはもちろんのこと、彼らを初めて知る人たちにとっても、忘れられない時間にしたい!春の訪れと共に奏でられる音楽にぜひ耳を傾けに来てください、待っています! (Text by Kenji) – 𝙢𝙚𝙢𝙤𝙞𝙧: 𝙘𝙝𝙪𝙨𝙝𝙞 & 𝙟𝙖𝙢𝙚𝙨 𝙢𝙖𝙩𝙩𝙝𝙚𝙬 2025 April 20th (Sun) 17:30 – 22:00 at POOL Sakuradai (Silver building B2F,
2019/06/07
6月22日、TT” a Little Knowledge Storeにて開催。 2018年に星ヶ丘テラス内にオープンしたカフェ「TT” a Little Knowledge Store」(通称:トド)にて電子音楽のライブとクラフトビールをテーマとしたイベントを開催される。 機材から発生した電気の「波」が電線を伝いスピーカーを揺らして空気の「波」となって人の耳に届くことで音として聴くことができる。このしくみを楽器として音楽的に利用したシンセサイザーは20世紀における音楽的大発明のひとつであり、今や音楽表現に欠かすことのできない重要な楽器である。シンセサイザーが発する電気の音はそれまでに存在したどの楽器とも異なる独立した進化を遂げ、音楽の歴史を塗り替えた。そして誕生から半世紀以上がたった今もなお、これまでの世界に存在したことのない新しい音を創り出している。シンセサイザーは楽器であり電子機器である。ボタンやツマミが整然と並び、コードが複雑に絡む様からはどのような音が発するかはまったく想像ができない。だからこそ人間の知的好奇心を揺さぶる。今回の企画ではシンセサイザー等を用いた電子音楽のライブパフォーマンスをするアーティストを東海圏のみならず、関西・九州エリアから招聘。彼らが創り出す電気の音が初夏の星ヶ丘テラスから私たちを新たな世界へといざなう。上質なクラフトビールとともに。 CRAFTS 2019/6/22 VENUE TT” a Little Knowledge Store OPEN 18:00 ¥1000(1D付) LIVE: shex a.k.a. TECHNOMAN MARU303 AUFGUSS(Nkui+Methodd) LOADED mamenoki DJ: yusuke uchida mamekx
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