2022/10/05
服飾や美容の歴史を参照した新作を発表
この度、TAV GALLERY において、服飾史を参照しながら、ファッションと身体の規準との関係に言及する作品を通してルッキズムの問題にとりくむアーティスト・高橋鮎子の個展「Kalavinka」を10月14日から28日までの日程で開催します。
高橋鮎子はこれまでに、平均的ないし標準的な身体として偶像化されているトルソをモチーフとした絵画や、三途の川のほとりにあり、亡者から剥ぎ取った衣服を枝にかけ、その垂れ具合で生前の罪の重さを計るとされる「衣領樹」を模した立体作品、あるいは、他人の目に苛まれる地獄を描いたサルトルの戯曲「出口なし」を下敷きとしたインスタレーションなど、さまざまな形式の作品を発表してきました。
今回の個展では、スカーフやネックレスなどの首飾りに着想を得た新作を中心に発表します。首飾りは、首に装着することで体の前面の中心に呈示しやすく、アクセサリーのなかでも最もバラエティーに富んでいます。現代においては装身具として用いられることがほとんどですが、古来よりその用途は様々であり、獲物の骨牙をつなぎあわせることで狩猟の技量を誇示するものや、富ないし権力の象徴であるもの、宗教的あるいは呪術的な意味が込められたものなど、きわめて多義的なモチーフであると言えます。
真珠養殖の普及に成功した実業家・御木本幸吉は、「世界中の女の首を真珠で締めてみせる」と豪語したといいます。その野望はむしろ、真珠の養殖化によって、従来ほとんどペルシャ湾産に限られていた天然真珠産業が打撃を受け、油田開発に舵を切ったことから、石油の時代が到来したと言われているように、思いもよらぬ歴史的な展開に帰結しました。
複雑なコンテクストをもつ頸飾のなかでも、スカーフは特に奇妙な発展を遂げています。近年、エルメスの開発した「ハンギング・システム」が人口に膾炙し、スカーフを壁に吊り下げて飾るカルチャーが広がりを見せています。額縁をつける「邪道」なディスプレイ方法も流行し、新しいかたちの――しかし、きわめて規格化された――絵画として進化しているとも言えます。
壁飾りとしてのスカーフは、鹿頭の剥製に代表される「ハンティング・トロフィー」にも似ています。本来であれば首に巻きつけて使用するはずのスカーフが、広げられた状態で吊り下げられている光景は、見せしめに磔にされた晒し者、あるいは、切り開かれて吊されている屠殺された牛の姿を想わせ、凄惨に映るかもしれません。
展覧会タイトルの「Kalavinka」(カラヴィンカ)は、梵語で「美しい声」を意味し、仏教における極楽浄土に住む半人半鳥の生物「迦陵頻伽」(かりょうびんが)に由来します。その美麗さに魅惑され、多くのひとが耽溺する美容やファッションの世界ですが、そこは果てしない執着の地獄とも言えるでしょう。文化や慣習のなかで当たり前のように行われていることに対し、批判的なまなざしを投げかけ、その滑稽さや残酷さを呈示してみせる高橋鮎子の作品に是非ご注目ください。
飯盛 希
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開催概要
名称:高橋鮎子 個展「Kalavinka」
会期:2022年10月14日(金)- 10月29日(土)
会場:TAV GALLERY(東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F)[080-1231-1112]
時間:13:00 – 20:00
休廊:日、月
レセプションパーティ:2022年10月14日(金)18:00 – 20:00
category:NEWS
tags:高橋鮎子
2021/10/09
if you’re out there i miss you 。゚・ (>﹏<) ・゚。 活動終了に伴い、最後のアルバムのリリースが控えているシドニーを拠点にするプロデューサーJvneによるプロジェクトSewerslvtが3曲入りのEP『if you’re out there i miss you 。゚・ (>﹏<) ・゚。』をリリース。それぞれの楽曲の内容をイメージさせる映像もYouTubeにて公開され、概要欄には楽曲の制作背景が記載されている。 今回のEPは無料でダウンロードできるが、鬱病、不安神経症、自殺など、メンタルヘルスをサポートするオーストラリアを拠点の団体〈Beyond Blue〉への寄付を呼びかけている。Sewerslvtは「EPは無料ですが、そのためにお金を差し出してほしくないし、むしろ自殺防止のために使ってほしいと思っています。」とBandcampページに記載している。 また、彼女のInstagramにて、最後のアルバムの詳細が発表されており、今回の3曲も収録されることがわかっている。アルバムは自殺で亡くなったガールフレンドに送られるラブレターアルバムであるという。 今年9月の初めにPatreonにて彼女は「完成したときに彼女に見てもらいたかったのですが、このラブレターは未開封のまま終わってしまいます。彼女が去った日、私は多くのものを失い、それ以来、立ち直ることができませんでした。もうこのアルバムを出すべきではないのではないかとさえ思っています。」と語っている。 そして、アルバムが天国のガールフレンドに届くのを願うのと同時に、人々にレビューをしないで欲しいと彼女は付け加えている。「人々がこの出来事から何かを感じ、何かを経験してくれることを願っています。もしお願いがあるとすれば、このアルバムを “レビュー “しないでいただきたいです。私の他の作品については、肯定的にも否定的にも議論することに抵抗はありませんが、このアルバムの場合は、高い評価であれ、非難的な批評であれ、意見をしないでいただきたいと思います。私は彼女のためにこのアルバムを作りました。これらの曲は、私が彼女に短いクリップやデモを送ったときに彼女が楽しんでいた曲です。彼女が、私が作ったことを誇りに思っていた曲なのです。」 Sewerslvt – if you’re out there i miss you 。゚・ (>﹏<) ・゚。 – EP Release date : 4 October 2021 Download : https://sewerslvt.bandcamp.com/album/if-you-re-out-there-i-miss-you-ep Beyond Blue Donation : https://www.beyondblue.org.au/get-involved/make-a-donation Tracklist 1. dissociating 2. self destruction worldwide broadcast 3. all the joy in life
2021/10/26
“suffering from melancholia” シドニーを拠点にするプロデューサーJvneによるプロジェクトSewerslvtが、彼女の最終アルバムであり、自殺で亡くなったガールフレンドに送るラブレターアルバムから新作EP『suffering from melancholia』をリリース。それぞれの楽曲のヴィジュアライザーも公開されている。 前回のEP『if you’re out there i miss you 。゚・ (>﹏<) ・゚。』に続く今回のEPも無料でダウンロードできるが、鬱病、不安神経症、自殺など、メンタルヘルスをサポートするオーストラリアを拠点の団体〈Beyond Blue〉への寄付を呼びかけている。Sewerslvtは「EPは無料ですが、そのためにお金を差し出してほしくないし、むしろ自殺防止のために使ってほしいと思っています。」とBandcampページに記載している。 また、アルバムが天国のガールフレンドに届くのを願うのと同時に、人々にレビューをしないで欲しいと彼女は付け加えている。「人々がこの出来事から何かを感じ、何かを経験してくれることを願っています。もしお願いがあるとすれば、このアルバムを “レビュー “しないでいただきたいです。私の他の作品については、肯定的にも否定的にも議論することに抵抗はありませんが、このアルバムの場合は、高い評価であれ、非難的な批評であれ、意見をしないでいただきたいと思います。私は彼女のためにこのアルバムを作りました。これらの曲は、私が彼女に短いクリップやデモを送ったときに彼女が楽しんでいた曲です。彼女が、私が作ったことを誇りに思っていた曲なのです。」 Sewerslvt – suffering from melancholia – EP Release date : 23 October 2021 Download : sewerslvt.bandcamp.com/album/suffering-from-melancholia-ep Beyond Blue Donation : www.beyondblue.org.au/get-involved/make-a-donation Tracklist 1. whatever 2. blissful overdose 3. inertia status
2022/11/08
11/19 (Sat) – 12/4 (Sun) この度、TAV GALLERYでは3度目の個展となる中国西安出身の気鋭の若手作家・馬嘉豪(マ・ジャホウ)の個展「諫(カン)」を開催いたします。膨大な人口数の下に潜む暴力性や違和感、アクチュアリティとその行方を人型の建築模型用のフィギアに圧縮した彫刻表現を行うアーティストとして知られています。初個展「霾(バイ)」(2018, TAV GALLERY) では、高度経済成長下の社会問題であった大気汚染PM2.5を題材に、調香師AIKIKAKUと共にPM2.5の香りを空間内で再現した先鋭的な企画でデビューを果たし「燎(リャオ)」(2020, TAV GALLERY)では有名建築や菩提樹をモチーフとしたリアリスティックな彫像を中心に、ロダンの地獄の門を女性器にみたてた大型彫刻作品を展開するなど、文化浄化の時代に応答しました。「シャトレーナガシマ」(2022, ARTDYNE)ではゴミや家具を画廊内に移動させ寝泊まりを続けながら、労働体制や制度的包摂に対する静かな抵抗としてのパフォーマンスを展開いたしました。 これらの活動を通じ、マジャホウは一貫して、文明そのものを対象に、俯瞰的にリアリズム表現を行ってきたアーティストであると言えます。労働体制や制度的包摂に対しての抵抗としてのパフォーマンスを行いました。これらの活動からマジャホウは一貫して、文明そのものを相手に、俯瞰的にリアリズム表現を行ってきたアーティストであると言えます。 当展に寄せて『現代社会は人への感謝より謝罪を行うことの方が多いーー、社会的な扇動を前に、私たちには断る権利すら残されていない。』と語ったマジャホウは、非現実を現実の一環として表現するマジック・リアリズムの文脈を媒介にした新しいシリーズの絵画作品に挑戦しました。ルネ・マグリッドの《無限の感謝》(1963) をオマージュした《無限の謝罪》や、生活空間にまつわる普遍的なモチーフを建築模型用フィギアで再現した彫像群では、地政的問題を越えた人間と社会との関係性が浮き彫りにされています。 当展のタイトルとして採用された「諫(カン)」は、「出師の表」の一文「忠諫」(まごころをもっていさめること) に由来します。「出師の表」は、建興5年に、諸葛亮孔明が北伐(魏への遠征)に出発する前に、主君の劉禅に奉った上奏文であり「出師表を読んで涙を堕さない者は、その人必ず不忠である」という、古来からの名文です。現在、歴史的・民族的に正当化される戦争ーー、その行く末を揶揄したマジャホウの新たな試みに、是非ご期待ください。 佐藤栄祐 開催概要 名称:馬嘉豪 個展「諫」 会期:2022年11月19日(土)- 12月4日(日) 会場:TAV GALLERY(東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F)[080-1231-1112] 時間:13:00 – 20:00 休廊:月、火 Web:http://tavgallery.com/kan/
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