自らの過去を葬り、消息絶った岩本清顕の唯一のソロ作品『SOUGI』が現代に復活

9月18日発売

 

 

EM Recordsが80年代の奇盤とも言える自主制作盤を現代に復活させる。岩本清顕、この名前を聞いて一体どれぐらいの人がピンとくるだろうか。彼の人生の断片と密接にも感じるこの音楽を、このストーリーを読み込むと奇妙な魅力と不安が同時に押し寄せてくる。自らの過去を葬り姿を消した岩本清顕とは。

 

今作は、極限までミニマルに削ぎ落とされたオリジナル曲とECDをも驚愕させたジョイ・ディヴィジョンの《超訳》カヴァーを入れた岩本清顕の唯一のソロ作『SOUGI』(1983)に、千紗子と純太の時を超えたコラボレーションリワークも収録した。単純なリイシューではないことはよくわかる。この苛立ちや絶望、喪失が渦巻き過剰なまでにザラついた歌に何か感じる人も多いのではないだろうか。

 

岩本清顕。1979-80年頃。右は螺旋の町田光。(c) Hikaru Machida

 

岩本はポスト東京ロッカーズ期の関東パンク~ニューウェーブ・シーンに姿を現し、ポストパンク・バンド<美れい>としてあの『都市通信』に参加。美れいの後、工藤冬里とガイズンドールを結成し工藤と連名で『Hard Rock Album』(1984)を発表。その数、消息を絶つ。

 

本作は岩本がコジマ録音で自主制作した唯一のソロ作『SOUGI』(1983)に、千紗子と純太による「Love Will Tear Us Apart」のリワーク、工藤冬里・礼子のNOISE『天皇』を思わせる美れいの未発表曲をプラスしたもの。美れい時代の曲「悲しい町で」を含めた彼のオリジナル4曲は、リズムボックスが冷徹にビートを刻み、ギターとベースで数個のコードが演奏され、切り詰めたような短い詩が放たれる。苛立つ感情を自己にぶつけるのは日本のパンク~ニューウェーブの特徴だが、岩本のふてぶてしいヴォーカルはいっそう苛立ちを増幅させ自壊に導くかのようで、ジョイ・ディヴィジョンの《超訳》にニヒルなクライマックスが訪れる。「俺の不幸を愛してくれ おまえの物だと思ってくれ」というオリジナル歌詞と一切関係ないパンチラインを勝手に作ってぶち込み、その一行で全て押し切るミニマルかつ攻撃的な姿勢に本作の神髄がある。『SOUGI』とは「争議」それとも「葬儀」だったのか。角谷美知夫なら一体なんと応えただろうか。

 

元々ミニマルな構成の曲に、淡々と鳴り続けるリズムボックスと極限まで削ぎ落とされた歌詞が相まって、ぐるぐると脳内をリピート、遂には「俺の不幸を愛してくれ」と口ずさんでしまう始末。危険なまでに中毒性の高い音楽。取扱注意。ー moppy (Soi48)

 

愛は惜しみなく奪う、そしてまた愛は俺らを引き裂く……かつてポストパンクの彼方へと打ち上げられたあらゆる喪失の結晶が今再びギラつきを取り戻す!故岩本清顕による幻の音源集、約40年の時を経て遂に解禁!!! ー 持田保(工場労働者兼リアル・インダストリアル・ライター)

 

 

岩本清顕 – SOUGI+

レーベル : EM Records

フォーマット:CD / Vinyl 10″ / Digital

2020年9月18日(金)CD、LP、ダウンロード版同時発売

Bandcamp:https://emrecords.bandcamp.com/album/sougi

 

Tracklist

01. 生理

02. 地獄が見えても

03. 悲しい町で

04. あまり遠くへ行かないで

05. Love Will Tear Us Apart

 

リマスタリング/マスタリング:Takuto Kuratani

VINYL用追加マスタリング&カッティング:D&B, Berlin

解説:江村幸紀

英訳:Matthew Lane

category:NEWS

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