2019/07/05
重ねた無垢と経験の果て。2ndアルバムを語る。
DYGLの2ndアルバムが出る。2年前にリリースされた1stアルバム『Say Goodbye to Memory Den』を聴いてからすぐに次のアルバムの事を妄想していたのは僕だけではないはずだ。次はどういうアプローチで、どういったコンセプトで彼らは音に乗せて聴かせてくれるのだろう、イチリスナーとして楽しみにしていた。そんな思いを巡らすバンドがすぐ近くに今現在に存在している。とても幸せな事である。
彼らは1stアルバムリリース後、2017年春から夏にかけてリリースに伴った日本~アジアを周るロングツアーを成功させ、同年夏初出演のFUJI ROCKでは早速新曲を披露するなど、2017年の勢いそのままに翌年も駆け抜ける姿を想像するには十分なトピックに溢れていた。
翌年2018年2月に僕は彼らから7インチシングル「Bad Kicks」のデザイン依頼をもらい、2ndアルバムへの構想についてもその際少し話を聞かせてもらっていた。すでに新曲がいくつか完成しており数曲録り始める準備をしているということだった。しかし、その直後アルバム制作を一時中断し渡英するという大きな決断を耳にした。
その後メンバーはロンドンに住みながら新曲を作りヨーロッパツアーを敢行。制作とライブを交互に重ねる期間に入る。その間日本でのライブは数本、国内ではなかなかライブが見れない事で拍車がかかり、新しい音源を待ち望むムードがピークに達したであろう2019年初頭、突如配信リリースされたアルバムリード曲「A Paper Dream」。その沈黙をあっさりと払いのけるかのような軽やかな演奏、歌い上げる姿を映し出すMVからはあらゆる面での決意を感じ取れた。そこに至る切磋琢磨からは想像をはるかに上回る経験を得たようだ。この際、何目線とかどうでもいい。僕はただ泣いた。泣きました。
というわけで、もう一度言います。DYGLの2ndアルバムが出る。どのようにしてこの2ndアルバムに至ったのか、久しぶりに会う友人でもある彼らに雑談も交えながら色々と話を聞いてみた。
text & interview by Yosuke “YYOKKE” Tsuchida
photo by Yuki Kikuchi
– 前作『Say Goodbye to Memory Den』出した後まで振り返ろうかな。
Kachi – ちょうど2年ぐらい前ですか。
Akiyama – だったね。1stアルバムをリリースした直後は、基本的にツアーに向けての準備をしてたと思います。ツアーの期間は半年強~1年無いぐらい。で、ツアーが落ち着いた頃から、次のアルバムを作ろうという話はしていて。でも活動が大きくなるにつれて、内容を詰めるより先に予定が決まっていく感じに慣れなくて。大きいツアーも初めてだったので、体力的にも精神的にも、どのくらいタフなものかあんまり分かってなかったですね、当時は。なので制作とツアーとの兼ね合いは難しかったです。本当に時間が飛ぶように過ぎていって。新しい経験の繰り返しだったからかもしれませんが、あっという間でしたね。新鮮な経験をしているというのと、物理的なハードさで、ツアーと並行して制作をするというのはとても難しかったです。ファースト作るまでの数年間と、ファーストが完成してツアーが終わるまでの一連の流れは、Ykiki Beatで一度経験していたとはいえ、規模感で言うと初めてのプロパーなツアーをしたなという感じはありました。SXSW、YYOKKEさんと一緒に行ったのって去年でしたっけ?
– あれはSXSW 2017だったね。2年前だ。
Akiyama – もう2年前か。じゃあ、去年はアルバムツアーが終わり、そのあとのSXSW前後で次のアルバムを録ろうとしてたはずですね。
– 2年前のSXSWへ行ってるときは、1stアルバムのマスタリングの段階だったよね。
Akiyama – そうですね。アルバムツアーも終わり2018年になって2ndアルバムを作ろうとしていたのですが、当時作っていた曲のクオリティーやアレンジの進み具合がまだ自分たち的には満足できないという思いを次第に募らせて、制作日程の延期をさせてもらったんですよね。延期といっても無期限で、僕らの準備が整うまでと言う感じで。マネージメントには迷惑をかけたと思いますが、自分たち的には本当に必要な期間だったと思います。予定先行の活動に違和感を感じたとはいえ、もう少し自分らの進捗状況と予定との兼ね合いを把握することもできたはずなので、その辺は僕らも自分たち自身のことをわかっていなかった部分もあったんじゃないかな。正直な話、スタジオも日にち押さえていた上でキャンセルしたのもギリギリだったので、お金的にもモチベーション的にも当時かなり打撃ではあったと思います。
– それはすごい、俺も覚えてる。去年の今頃に、2ndアルバムについて各メンバーそれぞれに話を聞いたことがあって。そのときに、みんなからは制作が滞り始めてるみたいなことを聞いていたので。
Akiyama – そうですね。でも直前で予定をキャンセルすることが大変な選択なのは重々承知してましたが、どういう経緯であれ自分たちの作品のクオリティを落とすと言うことは絶対したくなかったし、自分たちにも非があるからと忖度せず、作品を守るために延期に踏み切れたのはとてもいい決断だったと思います。それは今回のアルバムがしっかり完成した今だからこそ言えることかもしれませんが(笑)
– その前の2月に「Bad Kicks」のリリースがあるよね。その時は面白いオーダーをいただいて(笑)2月中で全部やりたいと聞いて。2月の頭に取りかかって2月の後半にはリリースするという。アートワークとレコーディングとかも全部並行して進めてって、みたいなことをやったよね。その時のみんなのエネルギーとスピード感がすごかったから、ここからDYGLが色々やってくんだろうなって思ったら、その先のアルバム止まっちゃった、みたいな。
Akiyama – あの頃バタバタしてて曖昧なんですけど、確か「Bad Kicks」はイギリスでレコーディングした初めての曲だったかな。
– 教会だっけ?
Akiyama – そうです。Londonから少し東に離れたRamsgateというこじんまりした街の元々教会だった建物に作られたBig Jelly Studiosというスタジオで。CSSも使ってたのか、関係者がいたのかは分からないですけど、ロゴの入ったバスドラとかも置いてありましたね。録り音も良かったし、スタジオのスペースに滑り台なんかもあって遊び心のある素敵な場所でした。そこで初めて元Test Icicles、Warm BrainsのRory Attwellと仕事して。このシングル制作も音楽的な方向やアレンジについての話し合いで難航した記憶がありますが、制作自体はとても楽しかったですね。ただ、そこから2、3ヶ月で次のアルバムを作ろうって中で、新曲自体はまだそれほど出来上がってなかったので変に焦ってしまって。で、最初Kachiが今回のアルバムは延期しようって言い出したんですけど、それを踏まえて全員で話し合ったらそれぞれアルバム制作への違和感を感じていて。制作のペースを自分たちでコントロールできていないなと。それで一度制作の延期を決めたんです。でも、その延期を経てその先の活動について見直すきっかけになり、バンドとしてこの先どのように制作を進めたいのか、もっと大きな話でいうと人生レベルで自分が今一番やりたいことは何か、色々と考えを巡らせました。やりたいことをやるってシンプルなはずなんですけど、関わる人が増えたり、スケジュールが過密になったりすると、靄がかかったように自分でも自分の気持ちを見失ってしまうこともある。でもいつも遭難した船が靄の中から灯台の明かりを目指すように、自分の心がこれはやりたい、これはやりたくないと感じている感覚に目を、あるいは耳を研ぎ澄ませることはとても大切なことだなと今特に感じます。一度制作が止まったことで、もう一度ゆっくり自分の感覚や感情に向き合えたのはとてもよかったと思いますね。それで、海外に拠点を置いて制作活動をしようと言う話をここでしようと。それまでも幾度となく話には出ていたのですが、何となく流れてしまっていたのが僕はもどかしくて仕方がなくて。ここしかないなと。生ぬるい感じで話が進んでいくのに我慢ができなかったし、この延期を経て諸々見直し、今一番やりたいことにフォーカスし直そうという中で、自分のしたいと思っていることは遠慮しちゃいけないなと思いました。音楽的に刺激があって、インディペンデントな音楽のあり方に理解のある地域に身を置いてみようと改めて提案して。実際住み慣れた日本を離れて拠点を海外に置くというのは、考えないといけないことも色々出てきますが、それぞれメンバーと話し合いながらロンドンに拠点を置いてみようと相談して。一度制作環境を立て直すためにも、このきっかけでロンドンにベースを移す話に展開できたのは、本当に意義のあることだったと思いますね。大変な時期でしたけど、あの一連のやりとりがあったからこそ活動がふわっとしたまま時間だけだけ経ってしまうのを避けて、時間をかけながらこのアルバムを完成させられたんじゃ無いかなと思います。
– ちなみにアルバムレコーディング延期を決めた時期に出来た曲は、今回の2ndアルバムに入ってる?
Kachi – ほぼないんじゃないかな。
Kamoto -「An Ordinary Love」のリフだけはあった。
Akiyama – 「Nashville」は1stアルバムを制作していた時期には既にあった曲なのでこの曲はありましたね。前回のアルバムの収録曲と比べても、「Nashville」は一番古いかもしれません。それとシングルで出した「Bad Kicks」「Hard To Love」を抜いたら、残りの曲はロンドンに移ってから制作してできた曲ばかりだと思います。
Kachi – 「She’s Got the World」っていう曲も、チャレンジしたんですけど、結局まとまり切るとこまではいかなかった。
– ライブとかでやってるよね。
Shimonaka – 「Spit It Out」もあったと思う。
Kachi – 「Spit It Out」もうちょっと後じゃなかったっけ。
Kamoto – 後だったね。
Shimonaka – 後だったっけ。
– 「Spit It Out」はサーフロック感のあるリフで、ギラギラしたものを感じるような。
Akiyama – 元々はもうちょっとタイトなマージービート的なアレンジを意識していたんですけど、最終的にサイケでサーフな方向にかなり持っていきました。元々作った時の印象はThe RemainsとかCreationとかみたいな60sのバンドを意識していたのですが、実際の初期のデモの仕上がり的にはDr. Feelgoodとかにも通じそうなタイトなアレンジだったんです。個人的には、マージービートっていうか、ロックンロール最初期の白人と黒人の文化や音楽が混ざったときの雑多な感じが、タイトに洗練されているような音楽性にアップデートできたら面白いかなと思って作り始めたんですけど。メンバー全員でデモを確認する中で、アレンジ的にこのままでは普通のロック過ぎて面白くないって話になって、もう1回アレンジし直そうと。その辺のライブハウスで週末のカバーバンドとかがやっていそうな所謂「ロック」な曲は俺ら的には違うかなと。もう少しアレンジにしてもミックス感にしても、モダンな印象が欲しくて、もう一度アレンジを練り直そうと色々考えてるときに、サイケデリックで、それでいてサーフロック的な、かつドラムの音は今風のミックス感のある曲のイメージはどうかと思って再度みんなに提案して。そもそもアルバムのコンセプトとして60’s、70’sのクラシックな曲作りをベースに考えてたんですよね。コンセプトから始めたというよりは、上がってきたデモをベースに話し合ったら共通してそういうオーガニックな匂いがあるのでそこに絞ろうという話になったんですけど。この曲もそのテーマに沿う形で、サイケっぽい色彩の音にしたら他の曲との兼ね合いも良いだろうし、音的にも面白そうだしいいじゃんと。それで進めてった結果、夏のギラギラ感ってことなんですけど(笑)とはいえギラギラというよりは、もう少しテンションの低いクールな熱感みたいなのも出せていると思っていて、その気だるさと熱量の両方あるのがこの曲の好きなところですね。ループ感も気持ちがいいし、ルーツ的なサウンドと自分たち的な今のアレンジとをミニマルに表現できたんではないかと思っています。
– 次回作は60’s、70’sのロックをベースに作っていきたいってのは、前に聞いてたので、どんなものが出来上がるのかなって思ってて。で、新しいアルバム聴いたら、そういう雰囲気はちゃんと持ってるけど、バラエティ豊かだし、前作からも繋がりもある感じになってるなと思いました。でも、元ネタはどこかにありそうで、そのコンセプトが下地にある曲作りをしてる感じがしたので、今、いろいろ話が繋がったかな。
Akiyama – 結構、参考に作った60sのプレイリストとか、YYOKKEさんにはデザインの話のときに送りましたよね。こういう感じのサウンドを試してみたいなって、Kamoちゃんと話したりもしたね。一回制作が頓挫してから、どういう風に制作を進めたら、それぞれの音楽的な感性を反映して、それぞれのメンバーの持つ音楽的な拘りを、妥協という形ではなく一つの作品に落とし込めるか話しあったんです。みんなで考えやビジョンを整理し直して、その時にまとまった曲をアルバムにした感じですね。その話し合いで候補から外れた曲と、収録された曲で何が違うのかっていう話をしたときに、「オーガニック」って単語が出てきて。色付けが自由にできる素材としてのシンプルさ、みたいな意味だと思いますが。60’s、70’sの音楽ってケミカルな感じがあまりしないじゃないですか。アレンジも込みだと思うんですけど、もう少し録音の向こうに、部屋にいる人間たちや楽器が聞こえてくるというか。アートワークもそうですよね、デジタル臭さがない。人間味。YYOKKEさんとよく使う言葉で言うと、ヒューマン味ですね(笑)そういうところからオーガニックっていう言葉が出てきて、60’s、70’sの音楽をベースに置いてみようという話になったと思うんです。そもそもは60’sに絞ってみようっていう話をしていたのが、そのうちに自然と広がっていったという感じですね、70’s的なサウンドまで。今回Jordanne Chantというオーストラリアのデザイナーの方に依頼してできたアートワークも60sというより70s的かなと個人的には感じています。相当やりとりしてイメージ伝えながらこの作品を制作してもらったのですが、音とも詩の世界観ともリンクしていてとてもいいアートワークになったと思っています。アルバム全体としては、結果的に他の年代のサウンドやアイディアも入ってると思うので、60’sの再現芸人みたいにはなってないと思いますが(笑)そういうバンドも好きですけどね。XTCがやってた仮面バンドThe Dukes of Stratosphearを最近聴いたのですが、あそこまで徹底していたら格好いいですよね。完璧な再現みたいな音でも。曲もいいし、こんな企画やっていること自体半分は冗談なのでしょうが、そのふざけ方も照れ隠しみたいなものでは全くなくて、遠慮0で本当に60sへの愛を全身で表現してる感じが伝わってきて。本気なのが良い。結構XTCまんまだなみたいなフレーズも時々あって面白かったですが(笑)でも基本的には、音楽はその作った時代の音が入り込んでくるからこそ良いというのはありますよね。僕らとしてもまんま当時の再現をしたくはなかったので、色々な工夫をしながら、最終的にこうしたアレンジに落ち着いたと言う感じでした。
– アレンジが色々持ってきやすいから、素材っていうか原型はシンプルにしたほうがいいよね、みたいなことでオーガニックな感じなのかな。
Akiyama – そうですね。こうしたほうがいいっていう風に狙って作ったというよりは、自然にそれぞれが好きだと思えるサウンドをまとめて、それに名前を付けて呼び直したら「オーガニック」になった感じだと思うのですが。どうかな?かもちゃんが確か言い始めたよね。
Kamoto – オーガニックって言った記憶ないけどな。
– 「Kamoちゃん、これオーガニックだと思う?」「オーガニックじゃないっす」みたいな、そういう会話をしてたわけじゃなくて?
Kamoto – いや、ロンドンでデモ選んでるときは、それをみんなでやってた記憶ありますね。今までAkiyamaが結構雰囲気を作ってきたから、すでに雰囲気ができてる曲が多くて。構造が割とシンプルなのでそういうのはみんなでアレンジするってなるとやっぱ難しいし、みんなが聴く曲も最近は違ってきてるから。オーガニックって言った記憶はないけど。
Akiyama – うそだ。言ってたね。
Kamoto – 俺はShimonakaが言ってた気がするけど。
Shimonaka – 俺は記憶ない。
– みんな記憶ない。
Kamoto – みんなの気持ちがつながったってことで(笑)
– 自然にみんなの気持ちがつながったっていうところで言うと、やっぱりロンドンに生活の拠点を移したことは結構大きいと思うんですけど、ロンドンに移住した理由はファンの人たちはものすごく気になってると思うんです。明確に語られてないじゃないですか?ライブのMCで「今ロンドンに住んでるんだけど」みたいなことは言ってるけど。
Akiyama – これは大きなトピックですね、僕としても日本と海外、自分のアイデンティティやものづくりをすること、今でもよく考えますし、人とも話します。これだけでインタビュー記事一つ作れそうですね。きっかけについては先ほどのレコーディングを延期したタイミングでという話はしましたが、なぜロンドンなのかということですよね。基本的には、気持ちよく音楽制作をできる場所を求めていました。無駄なことを考えなくて良い場所。人間ってどうしても場所や環境の影響を受けると思うので、ロンドンの持つ音楽の歴史や、人種や文化の交錯する感じはとても魅力的でした。ロンドン内で文化の生まれる&集まるハブとしての魅力に惹かれたことが大きいですね。日本社会の閉塞感やアートや音楽に対してのあり方が、僕らにとってストレスの感じる場所になってしまっているのも理由かもしれません。ただ日本だと「欧米 vs 日本」みたいな構図で考えられることも多いと思いますけど、実際それもちょっと無理のある括りだと思っていて。世界全体の中で見たら、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、北米南米、オセアニアや中東と、全部の地域をきちんと考慮したら、日本は随分グローバルな国だし、文化的、歴史的な遺産もすごいし、人口も多くてエネルギーのある国だと思います。礼節のある文化や、言語も綺麗で、好きな面はたくさんある。日本が好きだし、日本人でいる自分も好きです。海外に行くようになって、むしろ前よりフラットに、素直にそう思える気がしますね。だからわかって欲しいのは、僕らはざっくりとした「海外」がよかったんじゃなくて、「ロンドン」がよかったんです。海外がなんでも日本より優れてるなんて思ってないし、そもそもイギリスでさえ、日本の方が良いなという面も比べて見たらたくさんあるし。改札が開くスピードとか(笑)コンビニの便利さとか。店員の丁寧さとか。街の綺麗さとか。ただロンドンという街は、移民が本当に多くて、もはや白人だけの場所、イギリス人だけの場所ではないんです。もし白人的なものだけが好きだったらもっとマイナーな街に行けば良いですよね。僕らは白人的なものだけが好きなんじゃなくて、エネルギーのある文化や音楽が好きだった。だからそもそもカントリーよりもロックに惹かれているのも、そうした黒人音楽と白人的な感覚の混ざり合う中で生まれる音楽だから好きだったんだと思うし、その音楽性の中に、人種を超えた平等性を感じ取ったから、僕らもロックを好きになれたんだと思います。YMOも、山下達郎も、坂本慎太郎も、イギリスの音楽好きに本当に愛を持って受け入れられているのをみると、やはり人種は関係なく、音楽がよければそのよさはきちんと伝わるなと思っています。ロンドンにいると、ポーランド人、ブラジル人、エチオピア人、中国人、フランス人、そして勿論イギリス人と、様々な人との暮らしがあり、文化が共存しています。それだけの人が集まっている分もちろんたまには差別もありますが、基本的にはとても平等なフィールドがひらけていると思います。東京にいる頃、アフリカや中東はとても遠く感じていましたが、ロンドンからだとこの辺りの地域は近く感じますね。アジアのお店も結構あるので、アジアも案外遠く感じません。外の文化にも寛容で、日本の芸術や建築がフィーチャーされた展示があったり、中東系のレストランや店が立ち並んでいたり、アフリカ系の図書館があったり、グローバルな街と言われている東京と比べても、ずっと多様だし、本当に世界の縮図のような場所なんです。だから僕らが外から来てるのは勿論なんですけど、よそ者としてではなく、他のロンドンに住む人たちと同じく、目的をもって住んでいる一人の人間として疎外感を感じないで生活していけていますね。色々な文化やバックグラウンドを持った人が共存しながら成り立っている街なので、イギリスというより、もはや地球上の文化のハブという感じがするかな。イギリスも田舎の方に行くと、イギリスらしい街だなと感じますが、ロンドンはもはやロンドンという感じがしますね。世界には面白い街がたくさんあるし、東京や京都、大阪も勿論その一つだと思いますが、ポピュラー音楽の発信地という意味では、やはりカナダやオーストラリアと比べてもNYやLondon、LAはプロフェッショナルな芸術家やアーティストが集まっていると思うし、規模感は他の街と比べてもやはりまだ中心と呼べると思います。現にカナダやオーストラリアからロンドンに音楽をやりに来てる方も多いですし。実はオーストラリア人も日本人と同じくイギリスにワーホリで来られるのって二年間らしいんですよ。だから日本人のバンドが特別海外移住を難しがって構える必要も無いかなと思っています。BREXITを経て、この先どうなるかはまだ不確定要素も多いですが。確かに国内と海外どちらで活動するかと言う話は実際大きな話だと思うので、考えると面白いですよね。でも「場所を選ぶ」っていうことは、実は誰しもしてると思うんです。九州出身の人が学校や仕事を選ぶときに福岡に出られる方は多いと思いますし、音楽的な理由でもビジネス的な理由でも東京や大阪、名古屋に出てこられる方は多いと思います。大都市ではなくても、この街の方が住みやすい、アクセスがしやすい、仕事が多い、色んな理由で、生活の拠点はみんな選んでる。日本国内でもみなさん自分のいるべき場所は自分で選んでいると思います。関西の方から東京に出てきているバンドも多いですよね。物価や地価が高くても、街的に忙し過ぎて生きづらくても、やっぱり東京に来られる方は多いです。それと同じ話で、僕らも文化的にも音楽的に、面白い場所を選んだのがロンドンだったという感じです。その辺はもっと冷静に考えられたらいいんじゃないかなと思います。国内と海外をあまり違うものに考えすぎなくてもいいかなと。福岡と沖縄は、個人的にロンドンと並ぶくらい住みたい街だし、活動がもう少し落ち着いた後は全然ありえると思います。すごく好きですね、福岡とか、沖縄にある余裕と、スペースは。街に新しい文化が根付く可能性も感じるし、既にある文化も豊かで深くて素敵だと思います。ただもちろん日本全体で考えても、日本は文化的にとても豊かで恵まれた国だと思いますが、日本の島国、単一民族というところからくる村社会感、排他性、今の文化的な鎖国感や、コマーシャルで体制的な音楽ばかりが流れている街が、僕らにとっては退屈であるのも事実です。金のための今風なだけの売れるための音楽がチャートを賑わせていて、こんな層に聞かれ、受け入れられると事前にわかって作られる製品みたいな音楽。見た目重視で、内容が欠落しているファッション広告や、バンドの売り出し方。特に東京は僕は自分が育った街なので大切な場所ですが、物理的にも文化的にも限界を迎えて飽和してしまっていると感じていました。10代の頃はこんな日本をどう変えるかみたいな事をよく考えていましたが、日本に根付いている「まともでいなければいけない空気感」や、権威的で体制的な文化の土壌、ビジネスライクな音楽業界の大きさなんかはあまりにも強大で、片手間では日本の現状を変えるなんてことはできないと感じたんです。そして自分が一番やりたいことは、自分自身アーティストであることだし、この社会の中で立ち回りながら音楽をやるより、まずは自分が作品を作るために一番良い環境について考えようと。それで、既に様々な生き方や音楽のあり方への理解と、実験性、インディーな精神に対する土壌のひらけている国に行く方が早いと言う結論になったんです。東京で育ったからこそ、外の世界に対してフラットに考えられるようになったこともあるので、自分の土台が東京にあって良かったのはありますね。ただ日本に蔓延する諦観というか、社会のレールから外れたら白い目で見られる空気、行きすぎた自己責任論、物理的な人や街の忙しなさからくるストレスやなんかは、今どんどん過激になっていますよね。少なくとも僕はそう感じるし、正直めちゃめちゃ息苦しい。ここまで余裕がないと文化的なものは蔑ろにされてしまうし、この社会と付き合いながらものを作ることは、海外で暮らす大変さと比べても、もっときついと思います。そして別にその頑張りは今必要のある頑張りではないと感じたんですよね。今東京に無理している必要はないと。だからあまり大げさに考えて遠慮せず、アーティストとして居心地のいい場所選ぼうと。とはいえ東京でバンドを始めてから、それぞれの地域にあるインディのシーン、本当に音楽が好きな人たちが作ってきたコミュニティと出会って、学生の頃日本にもこんな人たちがいるんだと感動したのを覚えています。メジャーな音楽シーン以外全く目に入っていませんでしたから、日本の音楽なんて本当にクソだなと学生の頃は本気で思っていました(笑)でもそうじゃない、逞しい実験精神や、純粋な音楽への愛から、偽物のセルアウトをせず自分の音楽を楽しんでいる、そしてそんな強大な音楽業界に中指を立てている人たちもいるんだなと。YYOKKEさんやCuz Me Painの周りの皆さんと出会った時なんかはまさにそんな気持ちでしたね。Rhyming Slangのスさんもそうだし、関西のzicoさんも。そういう世界が日本にあるっていうだけで、本当に僕にとっては救いでした。音楽の話や、社会の話が同じレベルでできる人たちは日本に確かにいるし、また更に新しい世界や人と繋げてもらえたり。そういう人たちがもっと連携したり協力したりして、インディペンデントで、正直で、創作意欲に溢れた場所や文化をもっと創造して行けたら最高ですよね。そのために出来ることがあったら何でもしたい。日本は僕らにとって大切な場所です。でも今、インスタントにこの状況を変えることはできない。だからこそ、今のところはインディペンデントでDIYな音楽がより多く生まれている地域で、その空気を吸いながら活動したいねといって、ロンドンに移ろうと考えたわけです。それは実際2年も3年も前からバンドとしても話し合ってて、その時音楽的に面白いと思っていたLAやニューヨークにも行きましたが、元々音楽的にも文化的にも魅力を感じていたイギリスに行きたいと言う話はしていて。今回ようやく来れて本当によかったですね。有名な写真家や美術家の展示がフリーで公開されていたり、ローカルなショーでも名前の知らないバンドがなかなかいいライブをしていたりして。チケット代もめちゃめちゃ安いんですよね。それこそ音楽もフリーライブはめちゃ多いし、インディなバンドだったら10ポンドも出せば(1500円くらい)見れるライブも多いですね。日本だったら高校生の自主企画とかでも2000円とか払わないと見れなかったりして、学生の頃は辛かった。音楽のことを考えるよりバイトしないとでしたね。その隙にイギリスの同い年の連中は最高な曲を書いてるのかと思うと辛かった。まあ俺はまあまあ社会不適合者だったのでバイトもろくに続かなかったのであんまり関係ないかもしれませんが(笑)ライブハウスに払わされるノルマはきつかったです。あれから10年、いざちゃんとイギリスに住んで此方の音楽事情を見ていると、これは音楽が自由にのびのび育つよなと強く感じます。学生バンドがノルマ払うなんて絶対ないですからね。こっちでは。音楽を演奏する人に対してのリスペクトはすごくて、「今日はギャラが払えない」はあっても、ノルマを払わせるなんて聞いたことない。もちろんこっちはみんな酒をよく飲むとか、パブが会場だから音楽目当てだけじゃないお客さんもふらっと立ち寄れて、その分お客さん呼びやすいとか、いろんな事情があるんでしょうが、この辺の感覚はやはり素敵だと思います。ロンドンはコンパクトな町だから何が起きてるいるかも注意していたらきちんと観察できる。かなり手作りのイベントも多いので、ちゃんと住んでだんだんローカルに馴染んでから見えるものも多いですけれど。モノを作る人間としてはすごくいい環境だと思います。しっかり時間をかけて同じ場所に住むのは久しぶりだったので、ロンドンやイギリスのこと、その先にあるアフリカや中東の文化、他のアジアの文化についても考える機会が増えたし、日本の良い面についてもたくさん気づきました。実際、思ったより多くの人が日本に興味があるみたいですね。僕の知らない80sとかの日本のバンドを知っている人も多いし、発見は多かったです。日本と海外、これはこれからも語られ続けるトピックだと思います。正直に言っちゃえばこんなこと考えすぎないで、シンプルに音楽が面白ければ何だっていいしどこでも行けばいいじゃんとも思っているのですが(笑)、やはりアイデンティティの問題は大きいですからね。音楽に直接関わってくるし、説得力が必要だとも思っています。だからこそ、日本国内でももっと意思のある作品や、考えを持った人たちと何か協力して行けたら楽しそうですよね。政治や社会も今は混沌としていますが、考えのある人が日本の内側からも、繋がりながら何かを発信していけたらいいな。その気持ちは中高生の時から今まで、変わらずあります。でもこの一年、ロンドンで過ごせたのはとても大きな体験になりました。色々な学びにもなったし、何はともあれとにかく楽しかった。単純に違う文化の中に飛び込んで行くことはエキサイティングだし、楽しむことを悪いことだって思わないことも大事なんじゃないかな、と思います。特に今の時代には。
– 住んでみないと経験できない事ばかり、めちゃめちゃ良い話だね。日々の中で “楽しむことを悪いことだって思わない” 感覚は大切な気がするなぁ。ロンドンで例えばライブハウスだったり、ここに行きたいなって強く思うような場所とかあるのかな。
Akiyama – 自分たちは今ノースロンドンのほうにあるTottenhamという街に住んでるのですが、なかなかローカル感のある街で面白いですよ。どローカルな街なのですが、Sushi Headsという日本の方が経営されている納豆の買えるショップもあったりして(笑)場所によってはかなり怪しげな通りもあるのですが、パリとかと比べるとずっと治安は良く感じますね、パリでは僕バッチリ財布パクられましたから(笑)フランス人の友人にその話をしたら、”Welcome to the club”と言われました。ロンドンも日本と比べたらもちろん悪いということにはなると思いますし、物騒な話も聞きますが、いる場所や時間を気を付けていたら、それほどやばい目には合わないで過ごせるんじゃないかなと思います。あ、でも一度ロンドンでもMV撮影の時にコートと一緒にパスポートパクられて大変な思いをしましたけど(笑)ただこの辺りは10年前とかだと、随分と危ない地域だったみたいですね。以前イギリスで起きた暴動の発端はこのTottenhamから始まったと聞きましたが、今では土地代が上がりすぎてイーストロンドンから引っ越さないといけなくなった人たちが、ノースやサウスに流れて来てるみたいで、家族連れやおしゃれな若い子も結構いるイメージです。そのせいか新しいカフェやクラブなんかもできてるみたいです。知人にオススメされて行ったTottenham Haleという場所にあるBeaver Townというブルーワリーは、ツェッペリンのRobert Plantの息子がやっているみたいですし、5 milesという新しいクラブが工場地帯に立ったりして、面白い場所がだいぶ増えているみたいですね。以前は音楽の中心だったというCamdenや、10年前に盛り上がっていたDalstonなんかのエリアは現地の人に言わせれば今では当時と比べるとだいぶ落ち着ついているらしく、今はもっぱらサウスロンドンが面白いとよく言われていますが、なんだかんだそれぞれの町に十分その街の面白さが残っているように感じます。Hackneyの辺りにも倉庫を改築して作ったフラットやスタジオ、ライブハウスも多くて、皆さんだいぶ自由な遊びかたしてて面白いです。昔みたいな求心力のあるハシエンダとか、SEXブティックとか、今ここでまさに何か起きているという感じの場所はあまりなさそうですが、それでもそれぞれのローカルなパブや、ウェアハウスなんかで面白そうなイベントはしょっちゅうやっていますね。
– The Shacklewell Armsとかはどう?
Akiyama – あそこも面白いですね。家からバス一本で行けるのでよく遊びに行きました。アメリカなどの海外やロンドン以外のイギリスの各地域からも結構いろんなバンド来て演奏してるイメージです。台湾のSunset Rollercoaster もこの箱で見ましたね。しかも安い。フリーだったり、5ポンドだったり。
Shimonaka – ただShacklewellのブッキング枠は結構限られてるらしくて。ブッキングエージェントがほぼ独占してて、門が狭い分いいアーティストは出るんですけど。そういうビジネス的なところは、ロンドンでも意外と大きいのかなって、実際行って思ったっていうか。
– The Old Blue Lastとかもそうなのかな。
Shimonaka – The Old Blue Lastは、まだ開かれてる感じはあります。僕らも出れますし。
Akiyama – あそこでイベントブッキングをしてる人の一人が(自分達の事を)気に入ってくれたから出演できた経緯もあるので、無作為にすぐ出れるのかはちょっと分からないですけど。ていうのもアメリカとかでもお願いしたらすぐ出してくれる箱と、かなりちゃんと正式なプロセスを踏んで、マネージメント会社を通さないと出れないベニューがありましたが、イギリスはよりそういう面強いんじゃないかな。でも友達つながりでお願いしたら出してくれるウェアハウスのハウスパーティーとかもあったりして。結構、ロンドンって不思議なんですけど、入り込めば入り込むほど分かってくるものがある。数日間だけ滞在して名の知れた観光地やライブハウスとかだけ行っても、ローカルなロンドンを知るのはなかなか難しそうですね。それはまあ何処でも一緒なのかな。とはいえなかなか手強い分、探索しがいのある面白い街ではあると思います。ロンドンほど大きい街でも、これだけ手作りのイベントが多くて、行き慣れた地元のコミュニティで繋がってるFacebookのクローズドのコミュニティの中で情報共有してたりとか、友達がそこに住んでるから行ったらミュージシャンが集まってたりとか、そういうのって外に全然情報が出てなくて。調べても見つからない情報が多い街っていう感じはありますね。結構人の繋がりが大事だったりして。人間味あって面白いです。ただ出会い系はまじでみんなTinderですね。本当にこっちではカジュアルにみんなスワイプしてます(笑)その辺はかなり今っぽいかな。ともかくしばらく住んでみて、現地に住んでいる色んな人と繋がって、遊んでみて、ようやくロンドンで何が起きているのかわかってきた感じがします。
– ホームパーティー文化というか、酒場が早めに閉まっちゃうから、みんな酒買って家で飲む、みたいなのはあるもんね。
Akiyama – 東京の感覚でいくと、店閉まるのだいぶ早いですね(笑)まだ自分たちも知らないロンドンがたくさんあるので、きちんと紹介できるほどではないですが。音楽や芸術、ものづくり文化が好きな人たちが多いっていう空気感は、やっぱり居やすいなと思います。やっていることに興味を持ってくれるし、自分の作品のアイディアの話もわかってくれるし、他の人を繋いでくれたり、また別のフィールドの面白い文化や考えかたを紹介してくれたり。こっちで会う日本人も、日本の社会からのあぶれ者で変わり者の日本人が多いので話が合いやすいかもしれません(笑)好き勝手やって、そういう生き方も理解してくれて。他の海外に行く日本人と比べても、天気が悪く物価の高いロンドンにわざわざくる人は音楽やアートが好きな人が多いっていうのもあってか、肌感覚の近い人が多いですね。日本に帰った後も交流が続くといいんですが。ロンドンには新しいバンドがたくさんいるのはそうなんですけど、その辺の町を歩いてても、美術館の展示や、何かしらのローカルなイベント、週末のマーケットとか、何やら怪しげなインスタレーションやら、何かしら出会える町ですね。アメリカのワイルドさと比べると、多民族国家とはいえやはり少しヨーロッパ流に丁寧にまとめられてる感じが、洗練された印象も受けるので、それを良いと捉えるか退屈と捉えるかは、それぞれの人次第な気がします。アメリカみたいな爆発的なエネルギーはないとも言えるし、むしろあのエネルギーをもっと先に推し進めているとも言える。そこは結構好みかな。俺としては、この雑多感と洗練のバランスは好きですね。
Shimonaka – 町の見た目はすごく古風なんですよ。昔の建物が並んでて。建物もそんなに大きく見えないんすよ。ほとんど全部一緒に見える。でも、中に入るとすごくきれいで、内装もその人の個性が出てる。あとイギリスって庭文化があるじゃないですか。自分の庭をきれいにしてく、みたいな。そういう国民性なのかなって、最近勝手に思ってて。中に入んないと分かんないことが多いです。
– スコットランドは石造りの家がたくさんあって。その石造りの家をずっと脈々受け継いで、中をリノベーション、リフォームして住むのが一般的なんだそう。新築で家を建てると白い目で見られるって話があって。
Shimonaka – トラッド好きですよね、やっぱり。
– やっぱ伝統をめちゃくちゃ重んじる国民性があるね。
Kachi – 楳図かずお来たらやばい。
Shimonaka – いや、やばい。あんなピンクの家あかんって。
Kachi – 景観条例か何かで、洗濯物を外に干せないっていうのを聞いたことあって。(実際は景観条例はないみたいだが、部屋干しが主流)
Akiyama – LAも確かそうだよね。
– 一緒に住んでる家はどういう所なの?
Akiyama – レンガの建物に扉がずらっと並んでいるような建物、テレビとか映画でもよく見かけるじゃないですか。何て言うんだろ、名前があるかもしれないけどわからないな。通り沿い両サイドにレンガ造りの建物がずっと連なって続いてて。扉の一つをはいると共用の廊下&階段になっていて、それぞれの階の両サイドに2世帯分ずつあるって感じで、俺らの家は三階にありました。リビングはなくて、それぞれの部屋はあって、バス・トイレ共用でシェアハウスしてるって状態ですね。
– そこでずっとデモとかを作ってるんだ。
Akiyama – 基本はそうですね。たまに必要なときにスタジオ行って練習したり。
– その後、DYGLの2018年夏のツアーTシャツを作らせてもらったときに、当時みんなが住んでた家の住所が書いてある看板をデザインの中にわかりにくいように入れたよね。
Akiyama – アルバムのときもありましたよね。レコーディングしたスタジオの辺りの、チェルシーの地図を使うっていう。
– 絶対誰も分からないっていう(笑)
Shimonaka – WOOMANって曲作りのプロセス、どんな感じなんですか?
– WOOMANは私が核となる詞と曲を書いて、あとはメンバーでスタジオに入って合わせて固めていく、オーソドックスな感じだね。詞と曲を書いてる間、他のメンバーは飲みに行ってるんじゃないかな(笑)
Akiyama – やってないやつが飲みに行くスタイル、完全にオアシスですね(笑)
– 何度かみんなで新曲を作る会をやったことあったよ。みんなで曲作りしようって集まるんだけど、5、6時間かかって、プレモルの6缶パック3つくらい開けて、その間録音したのが30秒なくて。イントロぐらいしか浮かばなくて、めちゃくちゃ効率悪い(笑)その後、YouTubeとか見始めて、あの好きな曲のイントロどうだったっけ、みたいなこと言い出すわけですよ。あの曲のMVいいよね、みたいな感じになって。どんどんビールが進んでいく、結果ただの音楽好きの飲みの場と化す、みたいな。メンバーが仲良くはなるんだけど曲は全然出来ないっていう。最近は曲作りのペースも掴めてきたので、全くその会が開かれる事は無いですね(笑)
Akiyama – 全員で物作りをするって難しいですよね。冷静に考えると。実際バンドってみんなで曲作るってあるじゃないですか。セッションでもあるし、デモを交換しながら作ることもある。でも画家とかで4人で一緒に描こう、みたいのってあんまり聞いたことがないし、芸術作品を作るアーティストや写真家にしても、一人で作ることが多いですよね。陶芸とかもそうだし。展示を一緒にやるとか、作った作品を本にまとめるとかで他の編集の人と仕事するとかはあるのかな。とはいえものづくりってパーソナルな作業だから、一人で孤独に向き合うっていう時間は、すごく大事だと思うんですけど。バンドをやるっていうのはそれともちょっと違って、作品が生まれる最初の瞬間から一緒に作ることも結構あるなと思って。最近そのことを考えて、それって結構面白いなって思ったんです。ミュージシャンなんてエゴの強い人間が多いのに、その人間の感情やパーソナルな部分をぶつけながら共同作業として一つの作品を作るって改めてすごいことだなと(笑)
– 確かに改めて考えると数名で作品を作るってすごい事だよね(笑)もう少し具体的な話、曲の構成はみんなでやったりするの?「An Ordinary Love」、「Don’t You Wanna Dance In This Heaven?」とか結構、構成がすごいことになってるね。
Akiyama – 「An Ordinary Love」はさっきの話にも出てきたんですけど、最初にリフと幾つかのパートは僕が制作していて、結構初期の段階でそのラフなデモをメンバーに共有していました。ただスタジオで何度試しても全然アレンジがまとまらず、今回のレコーディング開始ギリギリになって、Kamoちゃんにデモ音源を渡してみたんです。そしたら若干曲の流れを変えつつ、最終的に後半のソウルなフレーズなんかを丸っと足してくれていて、それで出来上がった感じですね。「Don’t You Wanna Dance In This Heaven?」は、曲の構成などの枠組みは基本的に俺が作って、あとはアレンジの肉付けを少しずつ足していった感じです。あとは共同作業という意味ではアルバム一番最後の曲「Behind the Sun」は、Kachiくんが最初にデモを持ってきてくれて。そのデモを元に曲に落とし込んでいきました。
– 今回クレジットを見るとKachiくんが作ってるんだとか、2人が参加してるとか、書いてあるよね。
Akiyama – 「Nashville」は、それこそバンド名がまだ”De Nada”だった最初期の頃に、ShimonakaとKamotoと大学のスタジオかなんかで適当にセッションをしている内に生まれた曲で。
– 前作はアッキーが全部やっちゃう、みたいな感じだったけど、今回はみんなで作ってる感じが見えてるね。
Akiyama – そうですね。そこはファーストとセカンドで違った色合いになった理由なんじゃないかなと思います。
– Kamoちゃんは編曲をする時って、ギターとかも入れる?
Kamoto – 基本ギターですね。でも、「An Ordinary Love」とかも最終的にはAkiyamaが全部仕上げてて。僕がやってたのと、イントロとかヴァースとかも全部違うし。基本アイデア出しって感じですかね。最終的には僕の案はだいぶなくなってるかな。静かになるとこの雰囲気とかギターのリフまではいかないけど、そういうの作って、送って。今の最終形になってますね。
– 中盤に印象的なフレーズがあるんだけど、あれは鍵盤?
Shimonaka – あれはギターです。Akiyamaが元々そこは作ってましたね。でも、音はめっちゃ変にしよう、みたいに話してて。
– この曲はDYGLとしては珍しくホーンも入ってるよね?
Akiyama – そうですね。サックスを今回新しい試みとして何曲か入れてみました。「Only You」は、曲の構造自体はほぼループみたいな感じなんで、そんなに難しくはないんですけど、ただヴァース、コーラス、ヴァース、コーラスをやった後の曲の締め方がなかなか難しくて。ここは流れを切らずにソロが入ってくるイメージだなと思っていたのですが、ギターのイメージではなかったのでここは金管楽器かなと。今回レコーディングではいくつかのスタジオを使ったのですが、最後に使ったレコーディングスタジオが、Merge Recordsから音源を出してるIbibio Sound Machineというバンドのメンバーの方のスタジオで。Maxという方なのですが、その彼がサックスを吹けるということでプロデューサーのRory経由でオファーしてもらって、割と気さくに快諾してくれて。レコーディングも終盤、オケがだいたい出来上がった頃にMaxがふらっとスタジオに立ち寄ってくれて、30分から1時間くらい?の間にパパパっと吹いてくれました。Roryの提案で「Only You」以外にも「An Ordinary Love」の後半と「Bad Kicks」のノイズパートにも入れてもらってますね。
Shimonaka – 「Bad Kicks」の後半はジェームス・チャンスみたいな感じで入れてくれて。
– 「An Ordinary Love」は極端に言うと、Ariel Pinkの曲の作り方みたいな感じっていうか、King Gizzard and the Lizard Wizardとか、サイケとロックとAORみたいなものとか、ごっちゃになってるみたいな感じに聴こえて。でも、最後がBlow Monkeysみたいに終わっていく、みたいな。どこか哀愁のあるパーティー感が涙を誘うという。
Akiyama – Blow Monkeysって何ですか?
– Blow Monkeysって、80年代のブルーアイドソウルのバンドがいて。初期のネオアコ/ギター・ポップな作風からだんだん音楽性がソウルに寄っていったバンドなんだよね。
Akiyama – へえ、面白そうですね。聴いてみます。むしろ、このカッティングはヤマタツみたいだなとか言ってたよね、俺ら(笑)狙うべきなのか狙わないべきなのかわからなかったけど。
Kachi – 坂本慎太郎も言ってたよね。
– 今回はどのぐらいトレンドみたいなのは意識したの?DYGLはあまり意識しないタイプだとは思うんだけど。例えばPuma Blueとか、ジャズベースのロックバンドも最近は多くいるけど。
Akiyama – 多少は意識しました。やっぱり面白いですもんね。昨今のJazzとIndie Rockの接近はとても興味あります。King KruleやPuma Blue的なものもそうだし、Trudy and the Romanceみたいなもっとレトロでバブルガム的な世界観に、Jazzぽいコードが乗ってるのも素敵だし。今っぽいからと言うより、単純にサウンドが好きなので参考にしたら面白そうだなとは思っていました。
– 「Only You (An Empty Room)」は、ジャジーでブルースっぽい。個人的に、今作を聴いて1番DYGLの変化を感じた曲です。コードとか、振り切ってる感じがして。
Akiyama – そうですね。ファーストでも「I’ve Got to Say It’s True」あたりからコード感の変化が既にあって。「A Paper Dream」の時点で、シフトが若干あったんですよね。コードを、メジャー、マイナー以外の7thなんかを混ぜることで、もう少し好きな色味が出るなという感覚になってきて。そもそもはJAZZぽいコードのお洒落感が鼻につくんで俺は避けてましたね。わざと避けてたな、当時は。もっとパンクだった。もっと言ったら元々このバンド始めた頃なんかはメロディもないし、爆発するみたいなライブをしてたので、コード自体何弾いてのかもよくわかんないですね(笑)つーか俺、ドラムだったし。
– 「A Paper Dream」のコード感やアレンジは意外だったなぁ。前作のシングルに収録された「Bad Kicks」「Hard To Love」、この2曲がセカンドアルバムの幅になっていて、その間を埋めるような曲が並ぶのかなと思ってたら、全然違った。1回アルバム制作止めました、みたいな話を聞いたときに、個人的に心配してて。余計なお世話だけど(笑)。みんながいろいろ悩んで作ったタイトルが「A Paper Dream」って、そのタイトルの皮肉っぽさも込みで感動して。アンサンブルも挑戦があってかつメロディ、言葉の乗せ方がポップソングとして見事だなと。公開された日は家でずっとMV流しながらプレモル飲んでました(笑)
Akiyama – 引き続きプレモルを(笑)
– 基本プレモルです。で、タイトルが、前作は今までの自分たちに別れを告げて、次へ向かうって意味合いもあるタイトルだったけど、今回『Songs of Innocence & Experience』っていう、比較的意味が分かりやすいタイトルだよね。これはどういったところから来てるんだろう?
Akiyama – U2のタイトルをパクったとか言われるのですが(笑)、William Blakeという18世紀のイギリスの詩人の詩集の言葉から引用しています。僕は大学時代イギリス詩を専攻していたので、その人の詩を何度か読んだことがあったのですが、タイトルがすごく綺麗だなと思った記憶があって。前回は歌詞からタイトルを名付けたので、同じことするのはちょっと安易かなと感じて、今回は独立したタイトルをつけたかったんですよね。別に歌詞から引用をシリーズ化してもよかったんですけど、なんとなくそんな気分で。それで今回自分が書いた歌詞や曲から得る印象、自分たちの経験など全体を俯瞰して見たときに、その詩人の詩集のタイトルをふと思い出したんです。すごく綺麗だし、思い出したのも縁だと思ってとりあえずもう一度読み直そうと。そしたら自分の歌詞や経験とリンクする描写をいくつも見つけて。「An Ordinary Love」の歌詞は “Sweat dreams” から始まるのですが、同じく “Sweat dreams” っというフレーズから始まる詩があったり、詩の中に出てくるテムズ川沿いの描写と、今回のアルバムの詩作やミックスチェックをテムズ川沿いの美術館のカフェでしてたのがリンクしたり。1stアルバムの歌詞はもう少しイノセンス寄りで、さっぱりしていて、どの曲も希望や望みを残していて明るいのですが、今回のセカンドアルバムの歌詞はもう少しパーソナルでネガティブな部分をそのまま残してあるんです。感情に答えを求めないように、ただ書き留めている感じで。だから、ある答えはないんですけど、自分としてはある意味よりリアルというか。この世界って矛盾だらけじゃないですか。理不尽だし、答えがあって当たり前だと思うと、時に答えのない問いに苦しめられてしまったりする。だから、その理不尽や矛盾を、下手に希望と結び付けないようにそのまま残したいと感じたんです。なので、この作品と前作を比べて『Songs of Innocence & Experience』とも言えるし、今回の作品だけで考えても「A Paper Dream」なんかの曲調には、ファーストアルバムに通じる楽しげなムードがありつつ、少しや切なさそのものも残してあるので、一曲の中にもその無垢と経験の両面があるというか。「自分が描いてた夢は同じ形では叶わなかった、それでもあの時、俺は部屋で好きな音楽聴いて、歌って、踊ってたよな」みたいな。だから何?とも言えるような、ただのあの時の感覚。でもそのだから何っていう意味のないことって、意外と大事だったりもするなと思って。意味を求めすぎるのも危険なんですよ。合理的で、機能的で、意味のないものを全て排除しちゃったら、世界はつまらなくなると思う。ああやって無限に感じてた時間の中で、ただ意味もなく、楽しいからって理由で、あるいは悲しいからって理由で曲を聴いてた時の感覚。そういう曲が思い出させてくる感覚とかって、やっぱり大事なんですよね。思い描いてた通りの未来はなかなか訪れない、でもその間で好きな音楽を聴きながら生きてきたってことそれ自体が俺にとってはすごくポジティブなことだし、それを曲にすることで生まれるエネルギーがあるかなと。ただあるがままに書けたらいいなっていうのがありました。前作よりも。ブレイクも最初に『Songs of Innocence』を18世紀の終わりぐらいに出して、その5年後に『Songs of Experience』をイノセンスと合わせて出し直してるんです。最初の詩集は本当に子ども向けの詩かなというぐらい、子どもが楽しく遊んでいて、乳母の人が優しく見守っているというような、平和でパストラルな雰囲気なのですが、次の『Songs of Experience』を読んだら突然世界が暗黒になるような感じで。親のいない子が奴隷のように煙突掃除などで不当に働かされていることへ疑問を呈するような詩や、教会や信仰のあり方が子供にとって間違った形になっているといった描写など、鋭い批判的な視点が垣間みえて。真逆の世界観だし、矛盾があるし、答えがないんですよね。
– それらを対比させてるってことか。別々の二作品を通して生まれる矛盾。
Akiyama – 自分自身クリスチャンホームで育ってたっていうのもあって、教会や聖書に対しての考え方なんかも自分の中でいろいろ考えながら育ってきていて。今はセックス、ドラッグ、ロックンロールな仕事をしている訳ですから(笑)一見真逆なんですが、自分にとってはどちらも自分の一部として存在している。それは矛盾なんです。自分の形で信仰を持っているとは言え、信仰者としてはだいぶアウトサイダーだし、ロックンロールをやっているミュージシャンとして考えてもだいぶアウトサイダーで、分裂した考え方が自分の中にあって。Blakeもかなり根っからの教会文化の中で育っているけど、教会が建ったことで、昔行けたはずの庭に行けなくなって、厳しい牧師先生に子どもが叱られるというような描写を、皮肉的に書いてたりして。社会のあり方、正義とは何か、そういうブレイクのモノの見方がシンプルに、知的に表されていて。今回の歌詩の中には、矛盾そのものを残したかった。だからこの本を読み直した時、同じ矛盾の残酷さを垣間見た気がしたんです。そうした繋がりを強く感じて、このタイトルを引用したいと。でも、『Songs of Innocence & of Experience』なんですよね、元々のタイトルは。
– & of?
Akiyama – そうなんです。彼は最初に『Songs of Innocence』を出して、そのあと『Songs of Experience』を合わせて出した。だから『Songs of Innocence & of Experience』だとどっちも独立した違う作品を2つにまとめているっていうニュアンスに感じたのですが、一応僕らの作品は全体として『Innocence』と『Experience』、どちらも満遍なくが混ざって一つになった作品だと思ったので、二つ目のofは抜いてもいいかなと思って、微妙にオリジナルから変えてるんですけど。
– なるほど。その話を聞いたら、またちょっと詩の見え方や聴こえ方も広がりそうだね。今回、個々のプレイヤー、ギタリスト、ドラム、ベースとして、今回これをやってみた、みたいなことはありますか?
Kachi – 曲によってバラバラだったかなって。今回はデモ段階で入ってるフレーズとかをそのまま使ったりとかっていう感じでした。今回、そこまでは考えてないかも(笑)逆にファーストはもっと考えてたかもしれない。
– 結構うねってますよ。
Kachi – 頑張って弾きました(笑)
– 全国のラジオが聴けるradikoってアプリあるじゃないですか。3月にFM802(大阪のラジオ局)でみんながパワープッシュになってて、radikoで聴けるからって聴いたのよ。関西育ちなので関西のラジオを聴くと落ち着くのもあってパワープッシュの月はずっとFM802を聴きながら自宅で仕事をしてて。で、この間生放送で出てたじゃない?その時に最近はグルーヴ感を意識して曲を作ってるって話してて。あれはラジオ向けのやつですかね?(笑)
Shimonaka – それは常々言ってましたね。言い方悪いですけど、ギャル男みたいな大学の先輩がいたんです。でも実際はすごく優しい人でお世話になりました。その先輩に1回、DYGLの曲を聴かせたら「もっと速い曲やんないの?」って言われて。
– 速い曲?
Shimonaka – それ、よく考えたら、たぶんグルーヴのことだと思うんですよね。ノリが欲しいんですよ。踊れるグルーヴみたいなのが。やっぱりそれはどの音楽でも必要だなと思ってて。Ultrafogさん、先輩なんですけど、何て言うんだろう、ああいうエクスペルメンタルな音楽でもリズムとかグルーブがある。
Sakuma – そのギャル男がウルトラフォグってこと?
Shimonaka – いや(笑)
– 違う違う、そこ繋げんでもいいから。
Shimonaka – 彼が言ってたのはテンポの速さじゃないと思うんですよ、勝手な解釈なんですけど、グルーヴの強さかなと。ヒップホップとかでもめっちゃテンポ遅くても長い拍をカットできるじゃないですか。あれとかって、たぶん速さやドライブ感に繋がってくると思うんすよね。そういう強いグルーヴが、ロックのトラッドなノリだと物足んなくなってんだろうな、みたいのをそのときすごい思って。電子音楽とかのほうが、やっぱその辺強いなと思いました。だからトレンドに対しての話なんですけど、そういう音楽が出てきてる以上、バンドやってる側としては、それは無視できないんじゃないかなと思います。ヒップホップみたいなリズムを作るとかじゃなくて、何かやり方ないかなと思う。グルーヴに対する意識はまだあるし、まだDYGLでできてないかなとは思ってるんで。工夫の必要な難しいとこだと思いますが。
– 前作より横ノリみたいなのが結構入ってきてるよね。
Shimonaka – 「Don’t You Wanna Dance in This Heaven?」は露骨にこだわったと思いますね。アルバムに全員が参加したっていうのがあって、影響は大きいと思います。Akiyamaくん、ギターの右手がすごい上手なんです。
– ストロークが?
Shimonaka – メトロノームに対して超ジャストで入るんですよ。そのカッティングでキチッとしたグルーヴが生まれるんすけど、それにこの緩めの3人がやや遅れで入っているという…(笑)
– (笑)あの、2000年後半〜2010年以降、大衆音楽の多くがヒップホップやR&Bベースになってる現状があるのはなぜかって考えると、ロックのギターの中音域と高音域の周波数が人間の耳には合わないからなんじゃないかって説があると聞いて。さらにベースミュージック、トラップの方が、心地のいい聴こえ方をするサウンドシステム、PCやスマホに囲まれて生きてるから、それが主流になっていくみたいな。それに気付いてる近年インディーロックと呼ばれる音楽を作ってる人たちの作品はリズムが強調されていてさらにボトムが太くなってきている。最近ではジョン・ コングルトンがプロデュースする作品、The DistrictsやAlvvaysの新作とか特にそうで。
Shimonaka – 似たような話で、Boom Boom Satellitesのナカノさんが、ギターロックは中域がピーキーでカーステで聴くとロードノイズに弱い、というようなことを言ってました。Beatsとかのイヤホンで聴いてると、ロウばっか出てギターの音だけじゃなくてバンドの音が加工され過ぎちゃうように感じます。だから、昔の録音のものは最近の音響ではあまりしっくりきてる気がしなくて。それならむしろフラットなイヤホンで聴いたほうがギターロックはいいですし。ライトな層向けの安価なスピーカーで高音質を謳ってるものは、ただ低音がやたら出てるだけで。あれって全然良くないですよね。こないだMall Boyzのライブを見たんですけど、そのときに、クラブの方と喋ってたら、最近の日本のヒップホップの若い子は、どんどんニューヨークハードコアに近づいてるって言ってて。アティチュード的なところなのか音楽的なのところなのかははっきりわかりませんし、ちゃんとそれ理解してないんですけど、結局ギターロック的なものがみんなやりたいのかなみたいなのをすごい想像しちゃって。やっぱそこって強みですよね。人の感情がダイレクトに音に出せるっていうところが。現実的には世界中のみんながヒップホップを聴きたがってるのに、でもやってる側としてはロックが好きな人がいるっていうのは。僕たちはギターも弾けるし、楽器演奏できるから。一番かっこ良くなれると思うんですけど、それがやっぱり難しい。
– 音質とかそういう話でいくと、トレンドとはそぐわないかもしれないけれど、ロックへの憧れとしてはみんな持ってると。
Shimonaka – そうですね。憧れまでいかなくとも、あちらからギターロックにもメンションがあるのはすごく面白いです。本当のところは聞いてみないとわからないですし、かなり希望的観測ですけど(笑)ライブ見てて歌詞にもFugaziが出てきているのも印象的でした。Mall Boyzのライブめっちゃ良かったです。単純に今のヒップホップの人たちがロックに対してどう思っているのかって聞いてみたいです。彼らにはどういう風に聴こえているのか。特に意味はないっていうのならそれはそれで直接聞いてみたい。
– Kamoちゃんジャズっぽいドラムっていうのは、昔やったことがあるの?
Kamoto – 全くないっす。「A Paper Dream」のドラムに関しては、ほぼ考えてないっすね。Akiyamaからもらったやつを、大変だなって思いながら(笑)
– タイミングとか難しいよね。
Kamoto – むずいっすね。まぁノリっすね。ちょっと練習する時間が、あんまなかったんですけど、ライブが練習なんで、僕は。
Shimonaka – リンゴ・スター方式だもんね(笑)
Akiyama – あの人たちは年間ライブ本数が全然違うぜ(笑)
Kamoto – そうなんですよね。他の曲に関して、もうちょい、今回は考える時間あったんで、家でパソコンで打ち込んで、これ、どう?みたいな。いや、ここはやっぱこっちのほうがいいとか、みんなで話して、すり合わせたりしてましたね。
– 前から思ってたんだけど、DYGLの曲はドラムの打数が少ないじゃない?意識して減らしたりとかしてるの?
Akiyama – そうですね。意識はしてると思います。ドラムに限らず、どんな楽器も1音入るか、入んないかで全然違うものになりますよね。作品の中で意識してない音は1音もないと、俺は思ってるんですけど。音に必ずしも意味はなくてもいいかもしれないけど、意思はあった方がいいと思う。ドラムは特にビートの基本を作るし、大事ですね。感覚的に色々試しながら、ここは多いなとか少ないなとか話はしますね。まあでもそれはドラムに限っての話ではないな。
– 過剰なアレンジがないっていうのは、それはつまり、いろんな人が聴きやすくなるのかな。語弊があるかもしれないけど。ポップスとして耳なじみがいいっていう感じがして。それは音が少ないとかも関係してるのかなと思うんですけど。
Akiyama – ミニマルっていうか、無駄のなさっていうのは意識してます。基本的にそこはメンバー内で共有できてるとと思う。メタルが好きとか、アンビエントが好きとか、それぞれが好きの物がありつつ、そういう考え方の部分で、共通して分かり合える。前回のアルバムでもそのミニマルさへの意識はありましたね。ただ9日で14曲をレコーディングとミックスというだいぶ無茶なスケジュールだったので、話としては面白いし作品もベストは尽くせたと思うんですけど、足し算なしのミニマルだったと思うんですよね。最初から素材が足りてないのに引いてたら何もなくなっちゃうから、様々アイデアを自由に出した上で引き算をするっていうのを今回もっとやりたかった。前作よりアイデアのレイヤーは増やせたんじゃないかなと思います。足さないで引いちゃう人は多いし、足してばっかの人たちもいる。でも、そこには一番美しい、ここが完結点だなというのがあると思ってて。勿論人によってそのポイントは違うと思います。ただ、自分の主観の中で、正しいと思えるポイントは大事にしたほうがいいと思う。そしてそのポイントを探す中で、もっとたくさんのことを試して、そして要らないものを引く。4人とはいえそれを集団でやるのはやはり信頼と、決断力、時に強引さも必要だったりすると思いますが、なかなか大変な作業でした。それぞれの意識が違う場合には創作の中で話し合いが必要ですが、基本的にはバンドとして作曲をする中で無数に生まれる選択肢の中からベストを追い求めて、良いものを生んでいくのがモノづくりだと、特にDYGLのスタンスとしてはあるかなと思います。
– 前作が14曲で、今回10曲だけど、情報量は確実に今回の方が多いよね。
Akiyama – そうですね。俺もそう思います。
– 2ndアルバムができた事でまた次どうするか、みたいな感じはあるとは思いますけど。
Akiyama – 何でもいけますね。スッカスカの音像で、全編一緒に聞こえる曲ばっかりとか。あるいはサージェントペパーズの現代版的な、自分達流のコンセプトアルバムとか。iPhoneのガレージバンドで作ったヒップホップみたいなトラックを元にバンドサウンドにアレンジし直すとかも良いかもね。何でもありですね。曲が良ければ。
– すでに向こう3枚のアルバムくらいまでアイデアがありそうだ(笑)これから日本でツアーをやるって流れだけど、ロンドンベースで始めて、1年間日本を離れたからこそ、日本のシーンに感じることはあった?
Akiyama – 変な話ですけど、別に悪い意味じゃなくどっちでもいいっていうか。ほんとにその人次第だなって思いました。その人たちが気持ち良ければ日本でやればいいし、気持ち良くなければ出ればいいし、ほんとそれだけだなって。日本の音楽のあり方と、日本で音楽やってる人のあり方と、海外から日本に来てる人たちと、日本から海外行く人たちと、元々海外にいる人たちと、見え方は全部違うと思います。同じ町でも、同じやり方でも。だから、自分にとってっていう主観で語ろうと思えば、幾らでも語れるとは思うんですけど、最近もその見え方が結構変わってきたりもしてるので、難しいですね。イギリスもそうだし、日本もそうですけど、既にあるものを聴くと、聴き心地がいいっていう意味で売れるじゃないですか。音楽も服も。例えば、ハイブラで1回売れるって分かったら、ZARAが作ったりとか。やっぱりほんとに面白いものっていうのは、なかったものを作ったから面白いっていうのがあると思うので、それが出来る人たちがやっぱり一番面白いと思ってて、そういう人たちは実は日本にたくさんいると思うんです。何だかんだで、海外で面白いと思われてる人たちの多くに、日本のアーティストだったり、日本の芸術家だったり、日本の音楽家だったり、いると思って。だから、モノを考えて作る一流の人たちって日本に結構多いと思うんですけど、中間がないですよね、超尖っててこだわってて一流の人か、あるいはめちゃめちゃマスで、商業的でジャンクな音楽か。僕は個人的に実験性のある音楽を更新していくような作品が好きですが、バカみたいなポップな曲もなんだかんだ好きなものたくさんあるんですよね。だから音楽をたくさん掘るけど、スノッブにならずにポピュラーなものにも理解のある、中間の世界がもう少しあったら面白いかなっていうのは思いますね。
Shimonaka – ヒップホップは生活に密接な音楽ですから、やっぱ母国語で聴けたら面白いなって思いました。だから、アメリカのヒップホップを英語で聴けたらと思うんですよ。そしたらもっと気持ちいいだろうなと。そういう点で、日本語のヒップホップは感覚として全部入ってくるのが気持ちいいなって、こないだ帰ってきて聴いて思いました。
Akiyama – 「グローカル」(地球規模の視野で考えて、地域視点で行動するという意味)っていう言葉がありますが、音楽にとっても不思議なことにインターネットとか、世界がどんどん一つになればなるほど、大きな流れがなくなっているって面白いことだなと思って。かつては、プレスリーとかデヴィット・ボウイとかっていう社会現象を生むような求心力のある大きな存在がいましたが、現代のロックバンドでいうとArctic Monkeysや、Mac DeMarcoなんかのロックの世界の中での影響力というところに留まっている感じがして。良いとか悪いとかではないかもしれないですけどね。今のポップスターは、本当にどポップな歌手か、ラッパーたちが多いと思いますが、その彼らでも当時のようなうねりは生んでいないような気がします。最近だとKendrick Lamarだけはその求心力があるように感じましたが。ただ基本的にそういう個々の音楽的なシーンはインターネットのおかげで常に同時に存在しているように見受けられますが、その規模感はだんだん細かくそれぞれの流れというような感じで分派しているんですかね。ビートルズのマッシュルームヘアを全員がまねしたりとか、ファッションと音楽がリンクして、それが政治的な流れになるパンク精神なんていうものは減っている気がします。ただそれぞれの地域、コミュニティの中でどんな意味を持つのかっていう地域性こそ、むしろユニークな強みになるのかもしれませんね。こないだ沖縄の祖母の家に帰った時に思ったんですけど、今、唾奇っていうアーティストがめちゃ人気で。彼はかなり壮絶な家庭環境で育ったそうで、それをリリックにして歌っているのですが、沖縄にはそういうバックグラウンドを持った子や家庭がたくさんいて、沖縄の人にこそ伝わるという歌詞が響いているみたいです。僕も帰省する度に薄々感じてはいたのですが、今回初めてそうした沖縄の負の部分についても深く考えました。沖縄は青い空、青い海、白い雲、バカンスってイメージが観光地としての知名度で持たれていることがほとんどですし実際そうなんですが、逆に沖縄っていう県は実は自殺率も、離婚率も、廃業率も、子どもの貧困率も日本でナンバーワンなんです。あまり知られていないみたいなのですが、そういう厳しい環境がいつも身近にある。自分自身がそうじゃなくても、友達でそういう奴いるなとか、身近に感じられるみたいなんです。そういう街の雰囲気とか環境をみんな肌で知っているからこそ、そして沖縄の言葉を交えつつローカルなリアルを歌うという意味でも、彼のアイデンティティーって圧倒的に沖縄のアーティストなんだと思います。それは世界的に見てすぐに理解されるのは難しいのかもしれないですが、同じ空気を吸って生きている人たちからしたら、彼の音楽よりリアルな言葉で歌える人はいないんだと思います。だから、世界で通用する、通用しないとかっていうことは、やはりひとつの価値として勿論今でも大事ですが、そういうローカル性を持つことこそが、今多様化する世界の中でより深くて強い意味を持てるのではないかなと思います。そうなると、これまでみたいにギターロックが何千万枚売れるとか、流行りのヒップホップを世界中のキッズが歌えるとか、そういう状況もさらにまた少し変わってくるのかもしれないですね。だから、世界で売れるとか、地方か都会かとか、どうでも良いんですよね。東京に上京すればいいわけでもないし、そもそも瞬間的に売れたからといってそこに意味があるのかもわからない。ていうかもうCDも売れないし。売れるとか、規模がでかいとか、そういう数字的なものだけではない、限られた地域や社会にとってどれぐらい特別な意味があるかのかっていうローカル性は、むしろこの時代にこそ重宝される気がします。音楽は普遍的なものだし、どんなにローカルな世界を歌っていても、そこに誰しもが共感できるパワーを産むこともできる。だからそうしたローカル性のあるものこそが、世界的なうねりになっていくことも十分考えられますよね。南アフリカでもヒップホップが盛り上がっていると聞いて、気になっていますが、本当のローカル感は他人には真似できない。そういう強みは、この先大事になってくるのかもしれません。この先の音楽のあり方、いや社会全体のあり方を考えると、工夫のしがいはまだたくさんあるよなと思います。音楽のあり方だけでなく、どうやってこの先の社会をサステイナブルなものにしていくかとかというのは、いろんなフィールドの人が繋がり合いながら考えてくことができたらいいんじゃないかなと。それは未来に希望を持てる面白いことだと思う。今までなかったことだと思うので、考えがいがあるし。今、スウェーデンの10代の子でGreta Thunberg(グレタ・トゥーンベリ)という人がいて、世界中の学生を刺激して気候変動、環境問題に関してののデモをしてるんです。ああいうのもローカルから大きくなった結果、世界的なものになってて。こんな世の中ですが、何だかんだ希望はあるなって最近いろんなとこで思います。
– うん、なるほど。真似できないローカル性がより重要になってそれが世の中を良くしたり面白くしていく可能性は大いにあるよね。前よりも、今はより一層チョイスをする時代というか。例えば、昔俺らとかの時代とかは「昨日、あのテレビ見た?」みたいな話をするじゃん。チャンネルそんなに選べないから。でも、例えばNetflixって自分の感性で見たいものを選ぶから「あれ見た?」じゃないんだよね。
Akiyama – ちょうどこないだしました、そういう話。
– あれ見てないっていう可能性は高い。ってなると、あれ見た人を探しに行くじゃん。で、あれ見たって人に会ったら、そのつながりはすごく強固になるっていう。だけど、別のとこは薄くなっちゃうっていう。そういうことが毎日起こってる、起こりやすくなってるわけじゃない?
Shimonaka – 確かに。そうですね。
– それってコミュニティの生まれる速度が速まって、深いものができる。だけど、別の感性のところとは繋がらなくなっちゃう、みたいなことも起こり得る。勝手に盛り上がってるっていうことだけになっちゃう。それが今後どういうふうになっていくのか、ちょっと分かんないけれども、そういう時代なんだなって最近思う。
Akiyama – ある意味でそれぞれの小さなコミュニティ同士は分断していくのかもしれないですよね。
– YouTubeとかもそうだけどね、ほんとに。
Akiyama – テレビが残るか残んないかっていう話を、こないだKamoさんがし始めて。
Kamoto – うん。俺はもう残んないっていう話を言い続けて。
Akiyama – で、Netflixとかで好きなものだけを見て、好きなものだけと繋がるっていうことは、違うタイプの人間や文化と、ある意味どんどん距離が生まれるっていうか。ちょっと今のテレビの話と違うんですけど、さっきの話に戻すと、グローバルな社会が進むことでどんどん他の世界と繋がりやすくなって誰とでもすぐに連絡が取れるっていう時代になって、好きなものを選び安くなればなるほど、元々自分に近いものしか集まらなくなる。この話がわかりやすいかなと思うんですけど、昔だったら、ネットで事前に試聴ができなかったりして、レコードでジャケ買いして、めっちゃクソなアルバムが当たっちゃったときも、金払っちゃってて悔しいから元取るためにとりあえず何度も聴いてみるみたいな話を聞いたことがあって。僕らもネットがここまで進む前にジャケ買いギリやったことありますけど、僕らの親世代や、あるいはYYOKKEさん世代くらいの皆さんが体験したそれとは違うかもしれませんね。そうやってこれは違うったのになーと思っていたものも偶然の出会いから価値がわかるようになるっていうのが、今ではアルバムの1曲目の、しかも最初の15秒ぐらいだけ聴いて、好きだなってなればライブラリにボタン一つで追加するし、そうじゃなかったらそれで終わり。そんな時代ですよね。好きなものが溢れている分、興味のないものに割く時間がなくなってきているというか。それって、本当に音楽が好きで意識して自分のフィールドを広げないと、ある意味最初から自分の世界で収まり過ぎちゃう。システム的には気軽にいろんな音楽聴けるはずなので逆説的なんですけど。そうなってくると余計に、自分が興味あるもの以外に対しての一歩踏み出してくアクションが減って、自分が知らない価値観に対して厳しくなってくのかもしれないなと思って。もちろん向き不向きもあって、この時代だからこそサブスク使って気軽に新しい音楽に触れて興味を拡張している人もいると思うので一概には言えないですけど。そんな違いはあるのかなと考察してます。好きなバンドの新作が出た時の、あの胸踊るような感動は、少し軽くなることもあるかなと。
– うん、そうだよね。もっとインスタントなものになっていく。
Akiyama – 世の中が便利になることで生まれる利点っていうのは数え切れないほどあると思うのですが、それによって合理主義ばかりが先行するのはやはり怖いですね。無駄なことはしないし、無駄な話もしない、無駄な関係も築かない。昔ながらの村社会文化もそれはそれできついと思うのでこれも一概には言えないのですが。合理性も行き過ぎると全くのおせっかいのない、すごくさっぱりした社会になりすぎちゃうんじゃないかと思って。多少の無駄とか、多少の面倒くささ、とかも残さないと世の中人間味がなくなり過ぎてしまうんじゃないかなって思いますけどね。僕は都会育ちなので、それが当たり前だったし、学校のシステムなんかを見ていると面倒で旧体制的な無駄な習慣なんかなくなれば良いのにとよく思ってましたが、お節介が疎まれすぎる社会もどうかと思いますね。無駄には意味があることもある。干渉が優しいのか、無干渉が優しいのかは、難しい話ですが。
– うん、無駄なことや多少の面倒くささがもたらす感動も確実にあるわけで。2000年代後半のUKのバンドでGood Booksって知ってる?メジャーでもアルバム出して、一時期すごく人気があって。
Akiyama – Good Shoesじゃなくて?知らないです。めちゃ聴きたい。
– Good Shoesも最高だけど、booksの方。Apple Musicとかサブスクで探したけどないのよ。無いと逆にめちゃくちゃ聴きたいってなるじゃん。LPも出回ってる数が少なくて、discogsで調べたら1万円ぐらいとかになってて。ちょうどCDが売れなくなる時代からストリーミング時代の始まり間で埋もれちゃった存在なんだろうね。で、やっとCD見つけて買って聴いたらめっちゃ良くて、手間を掛けた分ね。久しぶりにアルバム通して聴いて感動したもん。
Akiyama – 俺もそんな感じで、YuckのファーストとThe Lodgerが案外、Apple Musicになくて。あの時代のインディーで売れたけど、忘れられてたシリーズめっちゃあるなってのを気付いて。その音楽音源としてちゃんと持っていると逆にすごい得した気分になるっていうか。あとソウルとかでも、めっちゃ名盤とされてるのにサブスクのアーカイブにない、みたいなこともありました。Madeline BellのDoin’ Thingsとか。結構そういうの、見つけると楽しいですよね。
– そうそう、楽しいよね。そういうカルチャーも今後盛り上がりそう。誰かまとめてくれないかなぁ(笑)ではそろそろ終盤、DYGL結成って、正式には何年なの?
Akiyama – 2012年ですね。
– 7年たって、どうですか。
Akiyama – 無垢と経験の7年間でしたね(笑)たくさんの変化がありました。
– 無垢と経験だ(笑)最初のスタジオは、どこに入ったの?
Shimonaka – 大学で組んでるんで、学校のスタジオですね。
Akiyama – 俺、割と保存癖があって。ほぼ、全部のスタジオ携帯で録音してるんです。DYGLの7年分のスタジオを。
– 毎回録音してるんだ!ヤバイね。めちゃくちゃ容量すごくない?
Akiyama – やばいですよ(笑)すぐバックアップ取るんですけど。当時の音楽性なんて聞き返すと全然違いますね。だいぶ変わりました。
Shimonaka – Kamoちゃんと元々バンドやってたんですよ。そのバンドが解散して、Kamoちゃんと「またやろうよ」って言ってて。2人とも作曲の責任を取らないので、誰か曲作れる人いないかなって(笑)
Akiyama – 召集されました(笑)
– Sakumaくんは最後どうですか?
Sakuma – DYGLを初めて見たのはVACANTだったかな?まだ3人のときね。ちょうど人と人の隙間からShimonakaしか見えなかったけど。
– 左寄りだと(笑)
Akiyama – あの時は割とバンド組んですぐっちゃ、すぐの頃ですね。2013年?2012年?
Kachi – Summer Twinsの来日だよね?
Shimonaka – そうそう。Tweeのイベントで。
Kachi – たぶん、シャムキャッツ出てた。見に行きました。
– そっか。お客さんで遊びに行ったんだ?
Kachi – 俺も客の隙間から見て。
– Shimonakaしか見えなかった?
Kachi – そうですね、Shimonakaしか。
Sakuma – あれ?隣にいた?(笑)
Akiyama – バンド組み始めぐらいに、Rhyming Slangを主催しているスさんとか、その後Ykiki BeatのMVを撮ってもらうことになるセッキーさんに渋谷echoに連れてってもらって。そのときですよね、YYOKKEさんと初めてお会いしたのは。Kachiくんが、Faron Squareってバンドが面白いかもって大学の昼飯食いながら話したりしていたので、そこでYYOKKEさんがそのバンドの方だと聞いてめちゃめちゃエキサイトしたのを覚えてます。大げさじゃなく、人生が動き始める感じがありました。あ、俺は今正しい場所にいるなと。東京にもインディーロックなんかが好きな人たちが、こうやって集まる場所があるんだなってのは、結構驚きでしたね。僕なんかは学生の頃めちゃめちゃ尖ってて日本の音楽も音楽業界も音楽シーンも全部ゴミだくらいに思っていたので(笑)この日のことは忘れられないですね。こんな風に音楽を通して人と繋がれる場所が、東京にもあるんだって。僕らも本当にこういう場所や音楽好きのコミュニティがあったから、演奏する場所や機会にも恵まれて。こうやって7年越しにYYOKKEさんにインタビューをしてもらえているのは、とても嬉しいです。
Shimonaka – 俺はYYOKKEさんは怖い人だと思ってましたから。ほんとに。Cuz Me Painの、ローマ字でYYOKKEって(笑)
Sakuma – だって、Yが2個付いてるしね(笑)
Akiyama – 何で2個付けてるんですか?
– あれは、ネット検索対策ってのと、あとYOKKEってかわいいから、Yを2個にすると、もっとかわいくなるからいいかなって(笑)そう、小学校2年生からヨッケなので、ずっとね。
Shimonaka – 下の名前のあだ名、うらやましいです。同じヨウスケとして。
Akiyama – 確かに。そうか。
– もうね、Shimonakaにはウチの母親にも会っていただいて(笑)
Shimonaka – そうですね。一緒に写真撮らせていただきました。YYOKKEさんがお母さんの前でどんな感じなのかも見ましたから、もう怖くないです。
– 母は今年イチ喜んでましたよ(笑)この後また、ロンドン戻るんよね?
Akiyama – ですね、そのあと7月からツアーと、フジロックと、もろもろ始まってく感じですね。
– なるほど。俺もフジロックとファイナルは遊びに行こうと思ってます。じゃあ、そんな感じで今日はありがとうございました!
■インストア情報
7月18日 (木) タワーレコード渋谷店 19:30~
ミニライブ & サイン会
参加券配布対象店舗: 渋谷店/ 新宿店/ 秋葉原店/ 池袋店/ 横浜ビブレ店
http://towershibuya.jp/2019/06/24/135314
7月19日 (金) タワーレコード梅田NU茶屋町店 19:00~
ミニライブ & サイン会
参加券配布対象店舗: 梅田NU茶屋町店/ 梅田大阪マルビル店/ 難波店
https://tower.jp/store/event/2019/07/096023
7月25日(木) 代官山蔦屋 音楽フロア 19:30~
お問合せ先:03-3770-2525(代官山蔦屋音楽フロア)
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/music/
■DYGL JAPAN TOUR
7月21日(日) 岡山 PEPPERLAND
7月23日(火) 鳥取 AZTiC laughs
7月27日(土) FUJI ROCK FESTIVAL’19
8月1日(木) 愛媛 Double-u studio
8月3日(土) 高知 ri:ver
8月4日(日) 香川 TOONICE
8月8日(木) 福島 CLUB#9
8月9日(金) 岩手 the five morioka
8月12日(月) 宮城 LIVE HOUSE enn 2nd
8月13日(火) 青森 Quarter
8月20日(火) 石川 GOLD CREEK
8月22日(木) 新潟 CLUB RIVERST
8月23日(金) 長野 LIVE HOUSE J
8月28日(水) 奈良 NEVERLAND ゲスト出演: The Mystery Lights
8月29日(木) 京都 磔磔(takutaku)ゲスト出演: The Mystery Lights
8月31日(土) 広島 CAVE-BE ゲスト出演: The Mystery Lights
9月1日(日) 兵庫 VARIT. ゲスト出演: The Mystery Lights
9月8日(日) 沖縄 Output 10月3日(木) 福岡 BEAT STATION
10月5日(土) 熊本 NAVARO
10月6日(日) 長崎 ASTORO HALL
10月11日(金) 北海道 Sound Lab mole
10月15日(火) 愛知 CLUB QUATTRO
10月17日(木) 大阪 BIGCAT
10月19日(土) 東京 EX THEATER ROPPONGI
■チケット発売 ¥3,500(税込/ドリンク代別/整理番号付)
一般発売: 6月15日(土)
詳細は各プレイガイド (e+、ローソンチケット、チケットぴあ、LINEチケット、他)まで
主催・企画 制作:HardEnough
category:FEATURE
tags:DYGL
2022/12/09
結成10年を迎えて共有されるバンドの現行ムード ポップパンクやUSポップスなどの要素を取り入れ、オープンにピュアに自由に表現された前作『A Daze In A Haze』から約1年ぶり、初のセルフレコーディングで制作された4thアルバム『Thirst』についてDYGLのメンバー(諸事情により嘉本不在)に伺った。バンド結成から10年という節目を迎えても失われることのない探究心と情熱と連帯から生み出された『Thirst』は、DYGLにとって新たな出発地点となる。 photo by domu – AVYSS Circleの出演ありがとうございました。と言ってももう2ヶ月以上は経ってるんですけど。 下中 – もうそんな経つんですね。 – THREEでライブするのは久々だったんじゃないですか? 秋山 – そうですね、何年ぶりだろ?ってレベルですね。そもそもコロナでやってなかったのもあって4年以上ぶり? – 僕がTHREEでみんなのライブ観たのってCONDOMINIMUMとかかもです。 下中 – それ、めちゃくちゃ前すね(笑) 秋山 – あの時期よくTHREEでやってたよね。 – ライブの後はみんなどうしてたんですか?秋山くんとは不思議なメンバーでファミマの前で飲んでたね。 秋山 – ですね。食品まつりさん、Lil Soft Tennis君、uamiさんもいました。 下中 – 僕はしばらく残って、Ultrafogさんと久しぶりに話せてよかったです。 加地 – 誰観たとかは覚えてないんですけど、僕はSPREAD行ってました。その後に秋山達がいるとこにすれ違ってみたいな感じだったかな。 – 楽しんでもらえてたら良かったです。今日は4作目のアルバム『Thirst』のことを教えて欲しいなと思いまして、ひとまず率直にどんな作品になりました? 秋山 – 言葉で説明すると色々な言い方あると思うんですけど、「好きな音楽」が出来たなって感じです。自分達じゃなくて他のバンドが出しててもリスナーとして聴きたいと思うようなアルバムになったかなと。 加地 – これまでで一番インディである意味オルタナだなって感じますね。 下中 – 普段聴いてるものが直接反映された感覚は今までの作品よりも強いです。 – アルバムの制作期間に聴いていた音楽はどんなものだったんですか? 秋山 – 個人的にはAlex G、PinkPantheressはよく聴いてましたね。 加地 – 僕はSlow Pulp、Deb Never、Tirzah、Wednesdayかな。 下中 – 僕はDIIVの『Deceiver』ってアルバムだけ。 秋山 – だけ?(笑) 下中 – 最初のDIIVのエッセンスはあえて入れないようにしてて。『Deceiver』は少しシューゲイズぽくなってるんですよね。あとは加地くんと同じでSlow Pulp、あとAlex Gの新しいアルバムに入ってる「Runner」の出だしのギターの音。あの音がレコーディング中に聴いて衝撃的に良い音で楽しかったですね。それとあとJay Som、Bachelor (Jay SomとPalehoundのデュオ)、あとスロウコアのDusterとか、あと前作から引き続きでSoccer Mommyもめっちゃ聴いてた。 –
2024/10/04
ツアー会場にて先行販売 DYGLの新作EP『Cut the Collar』がリリース。昨年リリースのシングル「Acervation」、「Shadow」に続き久々のまとまった形でのリリースとなった本作は、バンドの季節がひと回りし立ち返ることとなった、ロックミュージックの身体的な楽しさや、生活のさまざまな制約、そしてそれに対する自由がインスピレーションの元となり生まれた4曲を収録。 本作のLPリリースも決定。一般発売日は2024年12月11日(水)。尚LPは今月30日から行われる”Cut the Collor Tour”の各会場にて先行販売される。 録音は昨年の「Acervation」、「Shadow」に続きhmc studioの池田洋が担当。マスタリングは米NYの名門スタジオsterling soundのJoe Laportaが担当。サポートメンバーとして数年にわたって活動を共にする鈴木健人(never young beach)が今回初めてレコーディングにドラマーとして参加。ジャケット及びツアーフライヤーのデザインは現地での共演経験もある香港のバンドArchesのメンバーJackが担当。 DYGL – Cut the Collar Label:Easy Enough Distributed : SPACE SHOWER MUSIC Stream : https://dayglo.lnk.to/CuttheCollar Tracklist 1. Crawl 2. Drag 3. Evil 4. Point of View Cut the Collar Tour 2024 10/30 水 福岡 BEAT STATION [18:00/19:00] 11/06 水 札幌 cube garden [18:00/19:00] 11/13 水 仙台 Darwin [18:30/19:00] 11/18 月 名古屋 CLUB QUATTRO [18:00/19:00] 11/20 水 大阪 Yogibo Meta Valley
2024/08/14
全国ツアー開催 DYGLが2024年初のリリースとなるEP『Cut the Coller』のリリースを発表。 国内と海外を横断的に活動を続けるDYGLは2022年のアルバム『Thirst』以後、2023年に「Acervation」「Shadow」と断続的にシングルをリリースしてきた。性急かつダイナミックな変貌を遂げ、ソリッドで荒々しさを持つパンクナンバー「Drag」をリードに最近のライブでは全て演奏している全4曲収録。本作のレコーディングは昨年のシングル 「Acervation」, 「Shadow」に引き続きhmc studioの池田洋が担当。マスタリングは米NYの名門スタジオsterling soundのJoe Laporta が担当。サポートメンバーとして数年にわたって活動を共にする鈴木健人(never young beach)が今回初めてレコーディングにドラマーとして参加。ジャケット及びツアーフライヤーのデザインは現地での共演経験もある香港のバンドArchesのメンバーJackが手掛ける。リリースを記念したおよそ2年ぶりとなる全国ツアーも決定。チケット先行受付は8/14よりスタート。 DYGL – Cut the Collar Label:Easy Enough Distributed : SPACE SHOWER MUSIC Tracklist 1. Crawl 2. Drag 3. Evil 4. Point of View Cut the Collar Tour 2024 10/30 水 福岡 BEAT STATION [18:00/19:00] 11/06 水 札幌 cube garden [18:00/19:00] 11/13 水 仙台 Darwin [18:30/19:00] 11/18 月 名古屋 CLUB QUATTRO [18:00/19:00] 11/20 水 大阪 Yogibo Meta Valley [18:00/19:00] 11/28
レーベル第一弾作品は後日発表
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受け手の自由に寄り添う作品
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