2018/10/18
PALETOWNにとっての音楽、ローカルの温度感。
幡ヶ谷の駅から数分歩いた場所にあるのが古着屋PALETOWN。よくファッション誌で紹介されているこの人気店のオーナー谷川浩志は、以前はDJとして三宿Web、渋谷のOrgan barなど東京で毎週のようにDJとして忙しく活動していた。という事実はこれまでファッション誌であまり語られていない。今回のインタビューでは、“現行の音楽を追っている古着屋の人”だからこそのエピソードがふんだんに盛り込まれているのだが、これって日本で活動するインディバンド、アーティスト、業界に関わる人に直接響くのではないだろうか。
– まずは自身にとって、PALETOWNにとって、音楽はどういう存在ですか?
谷川浩志(以下、谷川)– いつも自分にヒントとアイデアをくれます。知らないことしかないし、それに付随するカルチャーや周辺事情も、知れば知るほど楽しいので終わりがなくて大変ですが、そういうのが根底にあって今のお店が出来てる気がするので、手前味噌ですが、やっぱり無くてはならないものです。
– お店ではどういう音楽を流していますか?
谷川 – 出来るだけ新しいフレッシュな音楽を、日々のテンションでかけています。 例えばこの夏はとても暑かったので、ベルギーのStroomから出てたJason Kolarは涼しくて、かなり流してました。 新しいところでいうと、好きなWoodsistまわりや、Keeled Scales、あとはMississippi Records、Smithsonian Folkways関連のフォークやソウルのリイシュー・編集盤とか…かなり浅く広く、アンビエント、ダブ、エクスペリメンタルなど…基本的に静かなものが多く、飽きたらGrouperに戻っている気がします。
– アメリカでの買い付けの旅を記録したZINEではローカルなライブハウスにも訪れているみたいですが、アメリカに行っているときは音楽に触れる機会は多いですか?
谷川 – そういう機会を作っています。基本一日中古着と向き合っていて、あまり楽しみがないので。めちゃくちゃタイトで全然時間ないのですが、現地の友人に聞いたり、事前に調べたり、本当に見たいアーティストだとスケジュールを変えたり、最悪帰国をずらします(笑)本屋でやってたMozart は、その時期にオークランドであった火災の支援金を募るために、自分たちで手書きジャケの7インチを作って、ドネーション形式でのライブを行っていました。
SmegmaのメンバーがやってるThe Tensesを観たときは、小さいバーのローカルなロケーションでした。 日本ではあまり味わうことの出来ないLAFMS付近の音と独特なパフォーマンスを感じれて、かなり興奮した覚えがあります。
今年は、劇場で観れた大好きなHand Habitsのソロショーも最高だったし、PowderがオールナイトロングでDJやってたパーティーも少し変わった場所で開催されていて、とても印象的でした。クラブやライブハウスももちろん楽しいのですが、日本ではなかなか観られない家の庭や地下、バンの中、ウエアハウスや工房、無理矢理なところでライブしてるのも、アメリカや海外の醍醐味だと思うので、いろいろ経験してみたいと常々思っています。 そこにいる人の格好とかもよく観察していて、”このダサい服着てるけど、合わせ方めちゃ最高だなぁ〜”とか、”あっこれ(この服)もアリなんだ(笑)”とか。 そういうのが古着の仕入れのアイデアにつながることがとても多いです。 あとは…仕入れ中ほぼ車に乗っているので、ラジオで今のアメリカのメインストリームを聴くのも好きです。Bruno MarsやJustin Beiberを大熱唱(主にハミング)したり、Chance The RapperやWeekndがかかったら、ミックステープ出してからここに来るまですごいアメリカンドリームだよなぁ〜とか、 移動が長いんで、ラジオを聴きながら本当にどうでもいいことをよく考えるし、眠すぎる時はクラブにいると言うていでフォ〜とか言って眠気を覚ましています…。 11〜12月になると、ずっーーーとクリスマスソングがかかっててるチャンネルがあるのですが、それも大好きです。 クリスマスソングのカバーあり過ぎだし、フリーウェイで”恋人たちのクリスマス”をこんなに聴く人生になるなんて、思ってもみませんでした。
– アメリカでバンドやミュージシャンと出会うこともあるのですか?
谷川 – あります。というか、ライブハウスはもちろん、レーベルオーナーやアーティストの家など、現場に行ってるパターンが多いかも知れません。 日本で新譜のレコードを買うときは、どこのアーティストなのかってのも割と重要で、買付けで行ってる土地だったりすると、タイミングよくライブやってないかな〜。とか、必ず調べます。実際に行ってみてマーチャンを買ったり、その周辺も探ってみたり。例えばLOWER GRAND RADIOをやっているAlex Shenは、彼が参加しているUNITYというバンドのレコードを買って、実際に会いに行って仲良くなりました。
現在は、Jeffrey Cheung主宰のUnity Pressと本屋の二階スペースをシェアしてラジオストリームをやったり、Marbled EyeとしてDigital Regress Recordsからレコードを出したりしていて、面白い動きをしています。
先日彼が学生の頃に着ていたというDerby Of San Franciscoのジャケット(サンフランシスコ発祥のメーカーで、ただのおっさんジャケット。最近は人気で、値段もグッと上がっています。)をもらったのですが、こうやって音楽で知り合ったベイエリアの友人にこのジャケットをもらうなんて、何ともリアルで感慨深く、一生手放せない古着になったなぁと思いました。ストーリーのあるところも古着の魅力です!おひとついかがですか?(余談ですいません。)
ベーグル屋Spielman BaglesのRaf SpielmanがやってるバンドWoolen Menの周辺も、LithicsやHoney Bucket、Mope Groovesなどローカル色の強いバンドがいて面白いです。そして、そのそれぞれのバンドメンバーがそのベーグル屋で働いているのですが、スタッフ同士で組まれたバンド・L.O.X.(店の看板メニューの名前。めちゃうまい。)がまた最高なのです。音楽以外の活動もやっている人も多くて、陶芸だったり、絵を描いたり、家具を作ったり…それこそベーグル焼いてたり。もちろんジャケットやマーチャンも自分たちで行っていて、どれもかっこいいし、Spielman Baglesには彼らの周りのローカルなアートがさりげなく飾られています。
実際ぼくも友人であるDino Mattというセラミックアーティストから、彼らのことや先述のThe Tensesを紹介してもらいました。 そうやって広がって、音楽はもちろん、美味しいメキシカンとか飯屋のこと、おすすめのスリフトやアンティークショップ、おもしろい展示やアートを教えてくれます。古着のディーラーに行くより、レコード屋やライブに行った方が自分的にはアイデアが生まれる気がしています。 英語が話せないのがとても悔しいのですが。
この無理した笑顔の写真は、レコード屋にMac Demarcoの顔ハメがあって、ネタになるだろうと一人で照れながら店員にお願いして、写真を撮ってもらったときのものです。その後、アポを取っていたLithicsのマーチャンを仕入れに彼らの家に初めて行ったのですが、迎えてくれたのがボーカルのAubreyと、写真を撮ってくれたその店員で、、、なんとメンバーでした(笑)という、とてもローカルな経験もありました…。
– アメリカに住みたいと思いますか?
谷川 – あまり思いません。日本のご飯大好きです!日本にいるからこそのアメリカへの憧れがあって、それで古着屋をやっているようなものなので住んだらそれが当たり前になって、新鮮さも感覚も何だか違ってくるような気がして。住んでいると毎日スリフトにも行けるから、ビンテージを見つけたときの嬉しさも半減しそうだし、英語がうまく喋れなくて、あくせくしてる状況も(後から考えると)ある意味楽しいので(笑)今は新しい感覚を常に求めに行ってる感じです。一年に4〜5回アメリカに行って、感じたものを店で表現する、というスタンスが自分らしいのかなと思います。初めて会った人に”バディ”や”ボス”って呼ばれるのも、ウインクされるのも、例えばドレッドのUSPSの配達員が、キャリーにすごい小さいサウンドシステムくっつけてめっちゃ小さい音でダブ掛けて配達してたりするような、日本では味わえない非日常の生活に、いつも”うぉ〜”となってたいです。
– 日本とアメリカで、何か違いを感じることはありますか?
谷川 – 違いというか、現地との温度差がすごいあるなぁと思うときがあります。音楽やファッション、デザイン、飲食、、それ以外にも共通して言えますが、ローカルでやっていることも、どこかにフックアップされて、日本国内だけで大きくなって、SNSのネタになって、一過性のものになってしまったり。もちろんビジネスもあるし、海を越えて来るものだから仕方ないのですが。現地で見ていたり、感じていたりするものだと、個人的には何だかちょっと違う見え方になってしまうことがあるなぁと思うこともあります。店をやる以上、海外で仕入れをする以上、その現地感というか、ローカルの温度は大切にしたいです。”あれは5本だけのリミテッドエディションなんだよ”、”あのTシャツ、SとLが在庫切れ、しかもM、XL一枚ずつしかないんだよ”『、、、、いやいやもう少しがんばって作ってくれよ!』みたいなお決まりのケースも嫌いじゃなくて(笑)お土産みたいな量の仕入れで、そのストーリーを交えて”もうないんすよ”くらいがちょうどいいかなと。そのくらいだから面白いってのもあるし。
– 自分以外のお店で共感できるor好きなお店はありますか?
谷川 – ポートランドにあるLOWELLというショップ/ギャラリーがとても好きで、たくさん影響を受けました。ローカルのアートやセラミック、メキシコのビンテージフォークアートにジュエリーなど、バラバラだけど、全てLOWELL色になる。友人であり、オーナーMayaのフィルターを介した空間が本当に大好きです。たまに理解に苦しむモノや展示もあるのですが、彼女から仕入れた文脈やまつわるカルチャーを聞いて、”なるほど”となることが多く、いつも自分の感覚を広げてくれます。音楽もそうですが、分からないものが分かっていく感覚ってすごく嬉しくて、またそれを求めて行きたくなる。空間や余白の使い方、ディスプレイも含めて、ぼくにとってパーフェクトで特別なお店です。
自ら外へ出ずとも、誰でも知らないことを見た気になれるし、古着もレコードも何でも、安く入手することができるようになりました。でもそのお店のその空間で、そのモノに纏わること、仕入れるまでの経緯、紆余曲折ストーリーやバックボーンを聞くこと、知らないことを知ることや、自分のことを分かって提案してくれたり、所謂+αを得られる信頼のあるお店に惹かれるし、自分もそうでありたいと思います。
東京で言うと、近所のPaddlers CoffeeやCommune、原宿のBIG LOVE RECORDSには同じように、いつも刺激と新しい感覚を頂いています。
– PALETOWNではミックステープも制作販売していますが、どういう経緯で始めたのですか?
谷川 – Mississippi Recordsのテープシリーズのようなラフな(白のブランクテープにダビングして、普通紙コピーの白黒ジャケ)スタイルに憧れて始めました。長年soundcloudなどのサービスももちろん利用していたのですが、情報が多すぎて、うまく使えなくて。 これ誰だっけ?みたいなのが増えてしまって、離れてしまいました。 それだったら自分が携わって、自分の今聴いている曲の記録だったり、単純に友人たちがどんな音楽を聴いてるんだろうと思ってお願いしたり。数本しかないビンテージのテープを、旅の予定がある友人に渡して、現地で買ったレコードを録音してきて…とか。DJ MIXとはまた違った、そういう音楽の聴き方も楽しいし、何より顔が見えて、話ができるのが一番で。あとは音質とかそういのよりも、”雑さ”の方(急にボリュームが下がったり、曲の途中でテープが終わったり)も、楽しめるタイプなので、パリッとパッケージングされたものよりは、ラフなものの方が好きだったりします。
– PALETOWNの今後の目標はありますか?
谷川 – やりたいことや、つくりたいものはたくさんあるのですが、目標は特になくて…古着屋じゃない、少し攻めた店をいつかやりたいなぁとふわっと思ってはいます。あとは健康に気をつけることと、アメリカの友人たちが日本でライブしたいとか言ってたりするので、その企画はいつかやってみようかな〜とか思ってるくらいです。古着を売って、そのお金でまた仕入れに行って…自転車操業の現状維持。なので、みなさま宜しくお願いします!
PALETOWN
2-21-10,Nishihara Shibuya-ku,Tokyo,JPN 151-0066
category:FEATURE
2018/08/09
突如リリースされたアルバム『STEALTH』について。 今年6月にいきなりtakaoから届けられたアルバム『STEALTH』は全編を通して真摯で丁寧なレイヤーに包まれている。付かず離れず一定の距離感を保ちつつも優しく見守ってくれるような守護天使のように生活と耳に寄り添ってくるこのアルバムは、自主リリースかつSNSでオフィシャルのプロモーションが無かったにも関わらず確実に濃い広がりを見せた近年では稀有な作品である。takaoにアルバムのことを中心にメールインタビューを行なった。 – 音楽に目覚めたのはいつですか? takao – 小さい頃からテレビゲームが好きだったので、ゲームの音楽には親しみがありました。92年生まれなので、ニンテンドー64やプレステ1、2らへんのゲームをよくやってました。自分から弾いたり、聴きたいと思ったのはゲームの曲が最初かなと思います。ピアノを習ってたんですが、先生がゲームの楽譜(ゼルダやドラクエ)をよく買ってきてくれたりして、弾いたりしてました。いまでも当時つかってたゼルダの楽譜とかを見ながらときどき弾いてます。あとはなんか目覚めたっていうなら、中学生のとき、友達にSOUL’d OUTを教えてもらってハマったっていうのがありました。ファッションやノリは全然趣味ではなかったんですが、いつのまにかよく聴くようになってました。曲自体になんか聴きたくなる魔力みたいなのがあったかもしれないです。僕が中三のときにちょうど3ヶ月連続シングルリリースみたいなのがあって、月ごとに更新される先行情報とかどんな曲がでるかみたいなのを友達と予想したりとか、なにか最新なものを追うみたいな感じも当時楽しかったです。はじめて見たライブも大磯ロングビーチで行われたSOUL’d OUTでした。 – 制作環境どんな感じですか? takao – 主にパソコンで作ってます。Mac miniでableton live(9のスタンダード)を使ってます。ソフトだとXpand2っていうシンセをよく使います。『STEALTH』はほぼXpand2で作りました。ハードの機材は少なくて、SP404とmicro korg xlくらいしか使ってないです。 – 今回のアルバム『STEALTH』にはテーマやコンセプトはありましたか? takao – 漠然としていますが、出自がわからなくてもいいなと思えるアルバムを作りたかったです。『STEALTH』を発表するにあたってとくに話題性などはなく、聴いてくれる人も結構限られるかなと思っていました。けど全然知らない人がなんかの拍子で見つけたときでもいいなと思ってくれるものを目指しました。なのでとっつきやすいものになればなと思っていました。そのため、明確なコンセプトやテーマは考えずに単純にこういうの聴いてみたいなっていうアルバムをつくりました。僕のなかでこういうの聴いてみたいってものは、いままで聴いたことありそうだけど聴いたことないってものでした。聴いたことないものってなると肩に力が入ってしまいますが、肩の力抜いて気楽に聴けるものがよかったです。参考になったのは僕が好きな音楽やゲームでした。それらはときどき聴き返したり思い出したりするようなもので、楽しい気分にさせてくれますが共通して強靭で不動な感じがありました。また、どれも作りこまれていて、力作って感じのものが多かったです。なので『STEALTH』も力作を目指しました。また、力作のようなものであれば息長く聴いてもらえるかなと思っていたからです。あと聴いたことありそうだけどないってものにするなら、アルバムを通して聴いた時に作った年や作者、ジャンルがわかりづらいようになれば面白いかなと思いました。アルバムの曲名は雰囲気やイメージに近い名前になっていて、影響はわかりやすいのかもしれませんが、全体としてはなんでこれが作られたのか不明な感じにしたかったです。古代遺跡でもなんでこんなところにこんなものがあったんだろうってなるもののほうが面白いので、『STEALTH』も何十年か経って発掘されてそうになったら面白いかなと思いました。『STEALTH』には明確なテーマやコンセプトはありませんが、こうしたいっていうことはたくさんありました。なので、自然と他と干渉しないような独立した雰囲気を持つアルバムを作ろうと思いました。 – アルバムはどのようなプロセスを辿りましたか? takao – いままでサンプリングをして曲をつくることが大半でしたが、2年くらい前からほぼ打ち込みでつくるようになりました。多分打ち込みの方がはっきりしたメロディやリズムをつくるのに適してたからだと思います。最初にできた曲は去年の春とかでした。そこから1~2ヶ月に1個くらい作っていって、今年に入ってから調整したりして完成しました。アルバム全体としては、飽きないようにすることに一番気を遣いました。アンビエントっぽい曲の次の曲ははっきりとした旋律がある曲にしたり、同じような雰囲気の曲を続けて置かないようにしました。なので、ある程度完成してからは、自分のiPhoneに曲を入れて通して聴くのをやりました。通勤の電車とかで聴いてみて、飽きたり間延びしそうなところは、順番を入れ替えたり、曲の構成自体を変えたりしました。 – アルバムで気に入ってる曲はありますか? takao – 特別これみたいなのはなくてどれも同じくらいと思っています。 – 最近どんな音楽を聴いてますか? takao – 作ってるときにもいろんなの聴いてましたが、Deep Magicの『Reflections of Most Forgotten Love』をよく聴いてました。あとはこないだフジロックのライブ配信でeastern youthを見てかっこいいなと思って、最近聴きはじめました。ときどきiPhoneに入ってる曲を全部シャッフルして聴くのも面白くて好きです。 – 趣味はありますか? takao – 『Fortnite』っていうゲームにハマっててほぼ毎日やってます。最後の一人になるまで島で戦うっていうオンラインのゲームで、すごいおもしろいです。あとはYoutubeでライブカメラを見るのにハマってます。空港や街の定点カメラの映像をずっと流しっぱにしてるだけなんですが、見ながら音楽聴くのとかも楽しいしコメント欄で人が会話してるのを見るのも面白いです。 – 最近ブチ上がったことありますか? takao – ライブや生演奏を見るとテンション上がりますね。半年くらい前にN響演奏のストラヴィンスキーの火の鳥を見にいったときは感動しました。あとこないだのカトーマサカーでのdie reiheのDJがすごい良くてテンションあがりました。 – 今後挑戦したいことありますか? takao – 合唱できるような歌の作曲とかしてみたいです。 『STEALTH』のダウンロードはこちら。
2018/08/13
レコードを売る生活『naminohana records』 大阪の梅田駅から少し歩いた浅田ビルという建物の3Fにあるレコード屋naminohana records。入口の扉は閉められており、特にお店であることを示す看板的なものはない。正直とても入りづらいが、扉の向こうには気さくに接してくれる笑顔が素敵な店主が待っている。テクノ/ハウス、エレクトロニックなクラブミュージックを軸に店主インベのセレクトはリスナー、DJ問わず広く利用されている。今回はnaminohana recordsのオーナーであるインベにメールでショートインタビューを行なった。 – naminohanaという名前の由来はなんでしょうか? インベ – 字面で選びました。同じようなアルファベットが並ぶのが気に入ってます。後付けで適当に言うこともあるけど、深い意味はありません。 – どういう経緯でnaminohana recordsを始めたのでしょうか? インベ – 元々、高校生の頃から地元のレコード屋でバイトしていました。そのまま社員になって10年くらい経った頃に、被災(水害)して所有していたレコードの大半を失うことに。意気消沈していたところ、大阪の某レコード屋から声をかけてもらって、誘われるがままに大阪移住。5年ほど経過したころ「レコード業界にいる限り幸せになれない」的な妄想に取り憑かれて退社&レコード売却。しかし、ほぼレコード屋しか経験していないので、まともに働けるわけもなく、グダグダした生活が続く。紆余曲折を経て、結局レコードを売るしか生活出来ないと気が付き、2011年の12月に無理やりnaminohanaをオープンしました。 – レコードなど商品を仕入れる基準はありますか? インベ – 自分がレコードで聴いてみたいもの、売れ残っても嫌じゃないものが前提で、「これは今までの感じと違うな」と思ったもの、お客さんに教えてもらったもの(リアルもネット上も)、そこから広げたものです。昔はレコード屋の特権みたいなものがあって、リリース情報はギルド的な「秘密」だったけど、ネット社会となった現在は、そんなのほとんど無く、深く追っているお客さんの方が情報を持っています。で、その情報を踏まえて、あのお客さんはコレも好きじゃないかな~、とか考えながら仕入れてます。 – どんなお客さんが来ますか? インベ – 色んな方達。 – 最近注目しているDJやアーティストやレーベルはありますか? インベ – PRR! PRR! – レコード屋をやっていて楽しいと感じるところはどんなところですか? インベ – レコードが売れたとき。通販してくれているお客さんが店に来てくれたとき。 – 今後の目標や、実現させたい展開などはありますか? インベ – 雨漏りしないところに引っ越したいです。 こちらはnaminohana recordsが入荷情報をお知らせする『言わなければよかったのにBlog』 https://naminohana.wordpress.com/ 以下、現在naminohana recordsに入荷している商品です。気になるものをいくつかピックアップ。お店で購入していただくか、リンクから注文してください。 http://naminohana-records.com/?pid=133755214 http://naminohana-records.com/?pid=133385370 http://naminohana-records.com/?pid=131786523 http://naminohana-records.com/?pid=133835867 http://naminohana-records.com/?pid=133836230
2019/01/09
本日デビュー曲『In The Cloud』をリリースしたSkyraとは。 Photo by Takahiro Waraya 故Lil Peepや彼が所属していたクルーGothboicliqueを中心に広がったトラップの様式で表現するエモ。もちろん日本でも確実に広がった音楽ではあるが、アーティストサイドを見ると無数に存在する海外のアーティストに対して、日本人でそれを表現しているアーティストは極端に少ない。そんな中、突如現れた鳥取在住のSkyraはインターネットを介してあちらの先端とスムーズに繋がっていってるようだ。本日リリースされたSkyraのデビュー曲『In The Cloud』は、Misery ClubのZubinやGhostemaneのDJであるParv0などとコラボレーションしているオーストラリアのDarcy Baylisが手がけている。今後さらに大きな展開が待っているらしい彼にインタビューを行った。 – Skyraというプロジェクトはどのような経緯でスタートしたのでしょうか? Skyra – いつもInstagramばかり見ていて、僕自身がポストするのは、音楽か、ファッションの事なんですけど、2018年の6月、いつものようにポストをした時、ある人物から「絶対表に出て作品を作るべきだ」とDMで言われた事が全ての始まりですね。 その方のことを僕はボスって呼んでるんですけど、ボスの言葉には言葉が非常に説得力があって、気がついたら30曲くらい作ってました(笑)そしたら、その中からこれはいけるかも?とかなんとかっていうやりとりを繰り返して、トントン拍子に2019年1月現在、リリースが良い形で決まった感じですね。ボスは東京在住の方なんですが、僕の行動全てをディレクションしてくれています。それ誰なん?てよく聞かれるんですが、まだ秘密です。いつか何かの形で匂わせると思います。 – 以前はどんな活動をしていたのですか? Skyra – ティーンネイジャーの時はエモやパンクが大好きで、ギターを毎日弾いていました。そのころは、Blink182のアルバムは1,000回を優に超えるかなというレベルで聴いていましたね(笑)その後、My Bloody Valentineなどのクリエイションレコーズ寄りの音にのめり込んだり、NINやBoards Of Canadaなどの退廃的な世界観に惹かれたりしていました。そして、2013年にNYに留学してブルックリンに住んでいた時HIP HOPにどハマりしてしまいました。環境がそうさせたんだと思います。Asap Rocky、Meek Mill、Danny Brownなどのライブに行ったりしてた頃、トラックメイクを始めて、サウンドクラウドに作品をアップしていました。 – その頃に制作されてたトラックというのは、どのようなトラックですか? Skyra – trapのhip hopを聴いていたので、そういった音楽です。 シンセの音色はクリスタルキャッスルズに影響を受けていた時期もありました。 – デビュー曲はDarcy Baylisプロデュースですが、彼がプロデュースするに至った経緯を教えてください。 Skyra – もともと彼の作品が好きだったので、思い切って自分の作品を送ってみたら気に入ってくれて、彼がプロデュースしてくれることが決まったといういたってシンプルな流れです。リアルに会ったことは一度もないですが、ほぼ毎日テキスティングを交わしています。音楽のことはもちろん話しますが、プライベートな事も話すので、ビジネスメイトであり、友人でもある良い関係だと思っています。「いつかメルボルンにおいでね!」って言ってくれているので、ツアーとかでいけたらいいなと思っていますね。 – 鳥取在住とのことですが、普段はどんな生活をされていますか? Skyra – 朝起きて、家族でご飯を食べて、昼は別のビジネスをしているので、それをやって、夜帰ってきて、また家族で夜ご飯を食べて、そのあと、寝るまでの間に音楽に向き合います。デビュー曲の『In The Cloud』に出てくる神社が近くにあるので、友達が来た時は、あの場所へ夜真っ暗な時間に行って、星を眺めたり、滝の音を聞いたりします。都会から遊びに来てくれる友達が多いので、みんな感動してくれますね。僕のInstagramを見てくれている人はわかると思いますが、山奥の町に住んでて、リビングに薪ストーブとソファーがあって、部屋には大量の観葉植物があって、、、そして、母の作る食事は毎日ご馳走!みたいな、最高にのどかな暮らしをしていますよ(笑) – 地元で音楽を共有できる人やコミュニティは持っていますか? Skyra – 地元のシーンとは一切関わりを持っていません。というのも、色々あって住む場所を転々としており、昼間は別のビジネスのために時間を割いて、夜は前述のように家で過ごしているためです。地元に友達はいないので、僕の相手をしてくれるのはお父さん、お母さん、離れた場所に住んでいる恋人、ボス、Netflixくらいです(笑) – 普段聴いている音楽と自身の音楽に影響を与える音楽は共通していますか? Skyra – もちろんですね!今まで聞いてきた音楽の全てが影響されていると思います。 先ほど、自分の活動を話した時に触れたアーティスト以外にも、僕のお父さんがJAZZ狂で、お母さんのお腹にいる頃からMiles DavisやPat Methenyを聴かされていました。今でもMiles DavisのKind Of Blueとか聴くと、切なくて涙が出ます。音楽からの影響はもちろんなのですが、ティーンネイジャーの後半くらいの頃から、Panic disorderという精神的な病を抱えていて、一度車を運転した時に全身が痺れて救急車で運ばれた事もありました。まあ他人がぱっと見た感じは普通だと思いますし、ほぼ治りかけているのもあるんですが、今だに毎日精神安定剤を飲んでいるので、少し飲むタイミングを誤るととてもバッドな感情に引きずり込まれます。そういう精神的な作用が大きい病気を抱えている為、必然的にSadなフィーリングが、自分の作る音楽や、歌詞の大きな割合を占めます。一番クリエイティブな状態になるのもその時なので。Panic disorderって何?って思うと思うんですが、Googleで検索すると、「生きたまま棺桶に入れられる恐怖」と出てくるので、そういう事だと思ってもらえればいいと思います。 – 今後の展望や、言える範囲で構いませんのでプランを教えてください。 Skyra – このインタビューがいつリリースされるかわかりませんが、2019年1月にNYに行きます。先日Instagramでもポストしたり、AVYSSさんのTwitterでもツイートがありましたが、渡米中のことについて、Lil TracyのマネージャーのNick Blancoと電話でミーティングしてます。まあそういう方々の大きな力が働いているものなので、詳しい内容は僕のInstagramを見ててくださいとしか今は言えない状況です。大雑把にいうと、今のアメリカのシーンに居るリアルな人間とアクション起こしまくりますという事と、2019年はマシンガン並みにリリース&ニュースラッシュになるので、年末までビッシリとスケジュールが 確定していますという事でしょうかね。耳が早い人は僕の世界に遊びにきてね。面白い事だけやって行くつもりです。 Skyraのデビューライブ決定した。NYのLuv Story Barにて1/11、Lil Tracyをスペシャルゲストに迎えたイベントに出演するとのこと。他に出演はLil Raven、BUKU BANDZ、SCUMらがラインアップ。
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