2018/06/25
各国の映画祭でも多くの賞を受賞している、ラーフル・ジャイン監督デビュー作品『人間機械』とは
みんな疲れている。毎朝満員の通勤電車に閉じ込められた人々の表情には生気が無い。こんな状況をいつまで続けたらいいんだと思っている人も少なくないだろう。
しかし、ラーフル・ジャインという20代の監督が発表したデビュー作品「人間機械」には更に過酷な労働環境の様相が映し出されている。
インド、ニューデリーに生まれた監督は自身が育ち、幼少期には遊び場として親しんでいたグジャラート州の繊維工場に目を向けた。著しい経済成長を遂げているインドだが、そこには劣悪な環境で働く労働者たちの実態があった。低賃金、長時間労働・・・。グローバル経済に隠されたこの状況の告発をテーマにしたドキュメンタリーである本作だが、その中に別の質感を抱く。
冒頭の工場内部に迫っていくステディカムを駆使した魅力的なショット。巨大な機械、そしてその爆音。繊維工場で稼働する機械たちの反復は最新の撮影・音響・編集技術を駆使しどこまでもフェティッシュに描かれる。
その一方で労働者たちは手際よく手を動かしながらも時折、虚ろな目で今にも眠ってしまいそうな表情を見せている。永遠に続く人力の反復はありえない。だからこそ我々は機械(マシーン)による反復を求める。それはビートの反復するテクノや、音を永遠に引き伸ばしたいという欲求を内包したアンビエント・ドローンミュージックにも通じる。永遠の反復は人類には不可能であるが美しい。
しかしそこは禁断の領域であり、何も手出しができない煉獄のようでもある。
作中、インタビューに答える労働者が過酷な環境を変えるため、労働組合が成立できない状況を「一人二人が抗っても工場は止まらない。我々が報われるのは死ぬ時だ。」と語っていた。
後半、彼らの手によって作り出された繊維製品が“ぼとぼと”と無造作にコンテナに投げ込まれていく。そこに人の血は通っているのだろうか。しかし、そんなことは彼らにとっては関係ない。日々の生活を続けるためにこの環境で働くしかないのだ。人間と機械の悲しみのアンサンブルを劇場で目撃して欲しい。
また、pootee氏による動画フライヤーも公開されている。
Text by Kenji Komine
ラーフル・ジャイン監督『人間機械』(原題:MACHINES)
2016年/インド・ドイツ・フィンランド/DCP/カラー/71分/配給:株式会社アイ・ヴィー・シー
渋谷ユーロペースにて7月公開。全国順次公開予定。
公式サイト
category:FILM
2024/03/22
尺八とコンピュータで呼応する 1990年代に佐渡での村松流尺八との出会いをきっかけに尺八奏者として演奏・即興を始めた福島麗秋。彼の息子であり、リアルタイムなコンピュータ処理によって奏者との対話的かつ未知なる電子音響の可能性を探求する福島諭。 今作は新潟の父と子からなる親子ユニットの記録として綴られた初のアルバム作品。深い息遣いをみせる身体的な尺八の演奏をコンピュータで分解・加工処理で即時応答し、現在に過去を進行形で重ね、未だ見ぬ新たなる音像を多層的に創出していく。過去と現在、身体と機械、分解と構築、間と動作、作曲と即興。相反するふたつの事象/現象を行き交い、やがてその境界線で根を張り、まるで艶やかで柔らかな花びらが開花するように、電子音響レイヤードは凛と美しく、未来へと眩しい輝きを放っているかのようである。 アーティスト:福島麗秋 + 福島諭 タイトル:Inter-Others レーベル:Experimental Rooms フォーマット:LPレコード(DLカード付) カタログ番号:№ 4 (流通番号 ERLP-004) リリース:2024年5月15日(水) 作品詳細: http://www.experimentalrooms.com/label/no4.html https://experimentalrooms.bandcamp.com/album/inter-others + 初版限定300部 + ライナーノーツ:三輪眞弘 + コメント:長嶋りかこ + カバー写真:吉原悠博(吉原写真館) 【トラックリスト】 A1. 《#33》(2021) A2. 《 I 》尺八とコンピュータのための(2022) B1. 《主題と変奏》尺八とコンピュータのための(2023) B2. 異なる時空における即興 (2022)
2022/11/08
11/19 (Sat) – 12/4 (Sun) この度、TAV GALLERYでは3度目の個展となる中国西安出身の気鋭の若手作家・馬嘉豪(マ・ジャホウ)の個展「諫(カン)」を開催いたします。膨大な人口数の下に潜む暴力性や違和感、アクチュアリティとその行方を人型の建築模型用のフィギアに圧縮した彫刻表現を行うアーティストとして知られています。初個展「霾(バイ)」(2018, TAV GALLERY) では、高度経済成長下の社会問題であった大気汚染PM2.5を題材に、調香師AIKIKAKUと共にPM2.5の香りを空間内で再現した先鋭的な企画でデビューを果たし「燎(リャオ)」(2020, TAV GALLERY)では有名建築や菩提樹をモチーフとしたリアリスティックな彫像を中心に、ロダンの地獄の門を女性器にみたてた大型彫刻作品を展開するなど、文化浄化の時代に応答しました。「シャトレーナガシマ」(2022, ARTDYNE)ではゴミや家具を画廊内に移動させ寝泊まりを続けながら、労働体制や制度的包摂に対する静かな抵抗としてのパフォーマンスを展開いたしました。 これらの活動を通じ、マジャホウは一貫して、文明そのものを対象に、俯瞰的にリアリズム表現を行ってきたアーティストであると言えます。労働体制や制度的包摂に対しての抵抗としてのパフォーマンスを行いました。これらの活動からマジャホウは一貫して、文明そのものを相手に、俯瞰的にリアリズム表現を行ってきたアーティストであると言えます。 当展に寄せて『現代社会は人への感謝より謝罪を行うことの方が多いーー、社会的な扇動を前に、私たちには断る権利すら残されていない。』と語ったマジャホウは、非現実を現実の一環として表現するマジック・リアリズムの文脈を媒介にした新しいシリーズの絵画作品に挑戦しました。ルネ・マグリッドの《無限の感謝》(1963) をオマージュした《無限の謝罪》や、生活空間にまつわる普遍的なモチーフを建築模型用フィギアで再現した彫像群では、地政的問題を越えた人間と社会との関係性が浮き彫りにされています。 当展のタイトルとして採用された「諫(カン)」は、「出師の表」の一文「忠諫」(まごころをもっていさめること) に由来します。「出師の表」は、建興5年に、諸葛亮孔明が北伐(魏への遠征)に出発する前に、主君の劉禅に奉った上奏文であり「出師表を読んで涙を堕さない者は、その人必ず不忠である」という、古来からの名文です。現在、歴史的・民族的に正当化される戦争ーー、その行く末を揶揄したマジャホウの新たな試みに、是非ご期待ください。 佐藤栄祐 開催概要 名称:馬嘉豪 個展「諫」 会期:2022年11月19日(土)- 12月4日(日) 会場:TAV GALLERY(東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F)[080-1231-1112] 時間:13:00 – 20:00 休廊:月、火 Web:http://tavgallery.com/kan/
2023/09/07
現在アルバム制作中 三次元遊戯のラッパー霊臨(TAMARIN)がシングル「ROBOT」をリリース。 現在制作中のニューアルバムから「ROBOTt>>>scrap」「痛車のZ」「Glasses」 に加えリリースタイトルの「ROBOT」remix バージョンの計4曲を収録。「Glasses」を除く3曲のプロデュースはトラックメーカーの:Plueが担当。日常生活を題材にした今作では、外的ストレスで感情が左右されることを嫌う一方で、他者に対し機械的(=ロボット)になっていく事を恐れる相反する心の葛藤を描いている。 霊臨(TAMARIN) – ROBOT Release date : Sep 7 2023 Stream : https://linkco.re/Nz4q4rMU
受け手の自由に寄り添う作品
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SoundCloud発、中国ラップスター more
東京・大阪を回るジャパンツアー開催
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