2018/06/04
Orange Milk Recordsのジャパンツアーが実現
アメリカはオハイオ州のコロンバスとデイトンを拠点に、2011年にスタートしたOrange Milk Recordsは、2009年以降世界で徐々に増え続けてきた主にカセットテープをリリースするレーベルの中でもトップ5に入るレーベルであり、リリースメディアとしてのカセットテープに、1990年代以前の主流メディアであった頃の扱いとは違う新しい価値観を定義づけた代表格である。
個人的にOrange Milkを知ったのは、レーベルのヴィジュアルや作品のアートワークを手がけるKeith Rankinのミュージシャンとしての名義、Giant Clawの2012年作のアルバム「Mutant Glamour」だった。現在の彼のスタイルとはそもそもの音のチョイスが違い、ピュアなシンセシストとしてのKeith Rankinの顔が垣間見える良作であった。その後、おそらく一般的にもレーベルの名前が浸透し、独特な3DのアートワークがOrange Milkの象徴として広く根付いたのは彼の2014年作「Dark Web」ではないだろうか。その「Dark Web」でも顕著に表れていた繊細なMIDIの粒、細かくカットされたボーカルサンプル、音と音の隙間の使い方、転がるようなリズムは、その後世界各地のアーティストが参考にしたに違いない。
片やもう1人のファウンダーSeth Grahamはレーベルの実務的なことを行っている。彼もまたミュージシャンであり、今年3月に新しいアルバムをリリースしたばかりだ。その楽曲は美しい旋律、時にホラー映画で殺人鬼が通り過ぎるのを息を押し殺して待っているかのような緊張感は、Giant Clawよりもさらに大胆に使う余白と共に、レーベル内でトップと言ってもいいほどの芸術性と物語性が高い立体的な音響コラージュになっている。
Orange Milkはこうした2人のミュージシャンとしての精力的な活動もありながらも、レーベルとして決してペースを落とさずにリリースの度に新しい発見を与えてくれる。クオリティを維持しながらも、毎回どこで見つけてくるのか新しい才能を発掘しリリースし続けているその姿勢はアンダーグラウンドレーベルの鑑のようなスタンスである。
2016年のRedbullの音楽記事で、Where To Now?のファウンダーJames Hindsが書いたカセットレーベル特集にOrange Milkがピックアップされており、その中のKeith Rankinのコメントで「現代では既に確立されている既存の手法を多少ひねるだけで実験的な音楽が簡単にできてしまう。たとえば、予測可能なはずのリズムに静寂を挿入したりね。ダンスミュージックにおけるそうした自由や遊びの要素は僕も大好きさ」とある。このKeithの言葉がOrange Milkのサウンドを端的に表しているかもしれない。さらにコラージュ、ジューク/フットワーク、グリッチ、ヴェイパーウェーブなど多様なジャンルのアーティストをリリースしながらも、レーベル全体としてはしっかりと統一感があり、ポップな印象が残るのは完全に確立されたアートワークの力もあるのではないだろうか。KeithとSeth、2人のインタビューと共に過去のリリース作品のアートワークもいくつか振り返っていきたい。
– 早速ですが、Orange Milkはどのようにスタートしたのでしょうか?発足の経緯を教えてください。
Seth – Keithと私は約16年前に出会いました。私はその頃Quiltという小さな規模のテープレーベルを運営していて、彼の作品をリリースしたのを機に私達は仲良くなりました。その2,3年後くらいに私達は新しいレーベルを2人で始めようと決めました。自分たちのリリースを自分たちでコントロールしていきたいことと、自分たちが興味あるバンドやアーティストの作品をリリースしたいというのが理由です。例えばCaboladiesとかね。
– レーベルのコンセプトってありますか?もしあれば、教えてください。
Seth – 当初、私たちはコンセプトを具体的に決めませんでした。それは気軽に実験的な音楽を楽しむためなのですが、それでも2人でかなりディスカッションを重ねました。最初の頃に比べるとどういう音楽をリリースしたいのかという欲求は進化していると思います。でもそれが今どんなものになっているのかは自分でもよく分かっていません。正直に言うと、ステイトメントというものがあまり好きではないんです。それにこのような、いわゆる「意図を言語化」するプロセスは、その存在を正当化しようとしているだけのように感じます。なので、私はあくまで自分達が純粋に好きな作品をリリースすることが好きだし、私達はそれを聴くまではそれが一体何なのかはっきりとはわからない、ということです。
– アメリカ拠点のレーベルとしては珍しく、日本人アーティストを多くリリースしていますが、もし理由があれば教えてください。
Seth – それに関しては意図的ではないんです。Orange Milkはカナダ人アーティストを一番多くリリースしています(たぶん、日本人アーティストと同じくらいかな)。私は活気のあるエレクトロニックのシーンを持つ地域ならどんなところでも好奇心をそそられるし、魅力を感じます。結果的にそこから出てくるアーティストを多くリリースしていると思います。
– 2人は何に影響を受けて音楽を制作していますか?
Seth – 個人的にモダンでハイレゾな録音の電子音楽やアブストラクトなデザインのサウンドが好きです。あと60,70年代のアヴァンギャルドやコンテンポラリーミュージックも本当に好きで、普段からそういうのを聴いてますね。
Keith – Sethが言ったものと似ているんですが、私はクラシックの構成とサウンドデザインが組み合わさったときが好きです。でもHolly Herndonのようなダンスミュージックも好きですね。あとは私の住んでいる場所(コロンバス)にも好きなDJ/ダンス・ミュージックのコレクティブがいて、BLVCK ICEとかBUILDって呼ばれています。
– Keithに質問です。Orange Milkの作品のアートワークは何がインスピレーションになっていますか?
Keith – ファンタジー全般か白昼夢のようなものであるなら何でも。手法としてはPhotoshopのエアブラシと3Dの要素を混ぜ合わせています。当初はエアブラシイメージと初期シュルレアリストの絵に非常に影響を受けていたんですが、今はそれらの影響を超えて発展できればなと思っています。特定のアーティスティックツールに馴染むまでには長い時間がかかりますし、正確に自分の中の何かを模倣ではなく表現するにはさらに長い時間が必要です。
– Sethに質問です。あなたは以前日本に住んでいたという情報を食品まつり a.k.a foodman氏から聞きました。どこに住んでいたのですか?また、なぜ日本に住むことになったのですか?
Seth – 私の両親はキリスト教の宣教師だったんです。それで私が6才の時に日本へ引っ越してきて、最初は軽井沢市に1年間住んでいました。その後、兵庫の伊丹市で14才まで住んでいました。さらにその後、大阪の池田市に1年間住んで、15才のときにアメリカに帰国したんです。それから今まで一度も日本へ戻っていません。
– ついにジャパンツアーが目前ですが、来日してからの一番の楽しみは何かありますか?
Seth – 全てのアーティストに会えるのを本当に楽しみにしています。あと日本食を食べること。そして、自分が育った伊丹市を再訪したいと思っています。
Keith – 日本のエレクトロニックシーンがアメリカとどのように違うか見てみたいです。あとは私達の音楽を日本のお客さんがどう受け取ってくれるかもとても楽しみにしています。
– ありがとうございました。ツアーを楽しみにしています。
今回のジャパンツアーは東京3公演の他に岡崎・福岡・大阪も合わせて6公演を開催、未発表音源を詰め込んだ日本限定のコンピレーションも各公演で販売する。同レーベルからリリースしている日本人アーティストの食品まつり a.k.a foodman、CVN、toilet status、D.J.Fulltono、koeosaemeなども出演予定。
東京の3公演のDommune、K/A/T/O MASACCRE、ツアーファイナルWWWはもちろんのこと、日本人アーティストを多くリリースするOrange Milkならではの組み合わせや、遊び心溢れた仕掛けが各地方でも実現しており、ファンなら全公演行きたくなるのではないだろうか。
<original>
– How did you start your label?
Seth Graham – Keith and I met about 16 years ago. I ran a small tape label called – Quilt. I did a release for Keith, and we became good friends. A few years later, we both decided to start a new label because we didn’t want to send demos to labels of our own material and we were interested in releasing records for certain bands/artists, such as Caboladies.
– Let me know label concept.
Seth – We never concretely decided on a concept. We did have many discussions when we started the label that we wanted experimental music to be fun, lighthearted.
I think our desire on what we want to release has evolved, but I am not sure what it is at the moment. If I am being honest, I somewhat hate artist statements and this
demand or requirement to verbalize intention, that to me feels subservient to academia. I prefer to just release material we like, and we are never sure what that is until we hear it.
– Please tell me that reason for many Japanese artist releases.
Seth – This was never intentional and we release many Canadian artists as well (maybe equal to Japanese artists?). I think any place that has a vibrant electronic music scene
we tend to have many releases coming from there, since that is what interests us.
– What do you make music under the influence of?
Seth – I personally really like modern high res computer music and I like abstract sound design. I also really enjoy 60-70’s era avant garde classical/contemporary music.
Keith Rankin – It’s similar to what Seth said for me too. I like when classical music composition combines with sound design, but also with dance music like Holly Herndon. There are also some DJ/dance music collectives where I live that I like seeing, the collectives are called BLVCK ICE and BUILD.
– It’s a question for Keith. I love OM artworks. What is that inspiration?
Keith – General fantasy, or anything that seems like a daydream. I blend a photoshop airbrush style with some 3D elements, originally my art was very influenced by airbrush images and early surrealist paintings but I hope to develop more beyond those influences. It takes a long time to feel comfortable with your artistic tools, and even longer to accurately express something in yourself beyond imitation.
– It’s a question for Seth. I heard from Foodman that you lived in Japan before. Why did you decide to live in the Japan?
Seth – My parents were christian missionaries. I moved to Japan when I was 6 years old, I lived in Karuizawa for 1 year, then I moved to Itami shi in Hyogo Ken. I lived there until I was 14.
Then we moved to Ikeda shi for one year, then we returned to America when I was 15. I never went back to Japan (until now).
– Finally, OM Japan tour will start soon. What are you looking forward to the most in Japan?
Seth – I look forward to meeting all the artists, and eating the food and revisiting Itami where I grew up.
Keith – I’m curious to see how the electronic music scene in Japan compares to the USA. I also look forward to meeting everyone and seeing if they like our music.
ツアー詳細
Orange Milk Japan Showcase Tour 2018
6/5 tue 21:00 – at Dommune Tokyo
WWW & Disk Union presents Buy Nowers Club feat. Orange Milk
Talk Session: CVN, Yusuke Tatewaki, Dirty Dirt
DJ: Seth Graham & Giant Claw and more
VENUE / INFO http://www.dommune.com
6/6 wed 18:00 – at Forestlimit Tokyo
K/A/T/O MASSACRE vol.173 Orange Milk vs 奴隷船
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, 奴隷船
DOOR ¥2,500+1D
VENUE http://forestlimit.com
INFO https://twitter.com/NOVO_vintage
6/8 fri 23:00 – at hikarinolounge Okazaki
OMツアー
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, CVN, 食品まつりa.k.a foodman, fri珍, nutsman, pootee, woopheadclrms, Yusuke uchida
ADV ¥2,500* | DOOR ¥3,000
*前売特典 Orange Milk Japan Showcase Tour 2018 A2 Poster
VENUE / INFO https://hikarinolounge.tumblr.com
6/9 sat 14:00 – at Torikai Hachimangu Shrine Fukuoka
0FFICE
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, toilet status, hinako takada, SHX, abelest, hir0))) and more
VJ: chanoma
ADV ¥2,500 | DOOR ¥3,000
VENUE http://hachimansama.jp
INFO http://office314.wpblog.jp
6/10 sun 16:00 – at Circus Osaka
Orange Milk Showcase Japan Tour 2018 Osaka
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, D.J.Fulltono, 食品まつり a.k.a foodman and more
ADV ¥2,500+1D | DOOR ¥3,000+1D | U19 Discount+1D
VENUE http://circus-osaka.com
INFO http://popowpowpow.tumblr.com
6/12 tue 18:30 – at WWW / WWWβ Tokyo
Orange Milk Japan Showcase Tour 2018 – Tour Final –
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, 食品まつり a.k.a foodman, CVN, koeosaeme and more
ADV ¥2,500*+1D | DOOR ¥3,000+1D | U23 ¥2,000*+1D
*前売特典 Orange Milk Japan Showcase Tour 2018 A2 Poster
Ticket Outlet e+ / RA / WWWVENUE /
category:FEATURE
tags:Giant Claw / Keith Rankin / Orange Milk Records / Seth Graham
2018/11/14
クリスマス仕様になる渋谷ヒカリエにGiant Clawが手がけた絵が飾られる。 『COLOR THE WORLD ~あなただけのクリスマスカラーで。~』をテーマに11/15から12/25まで全館を通じて開催される渋谷ヒカリエのクリスマスプロモーション。 館内ビジュアルとクリスマスツリーをプロデュースしたのは、水原希子のプロジェクト『OK』。フォトグラファー茂木モニカと共にビジュアルを制作したのは、Orange Milk Recordsファウンダーの1人、Giant ClawことKeith Rankinである。このビジュアルは銀河、惑星、地球などのモチーフで描かれた「世界」がさまざまな「色」によって彩られていく様子を見つめる、水原希子さんの横顔を描くことでテーマを体現しているとのこと。 渋谷を代表する複合施設にOrange Milkカラー全開のアートワークが彩られるとは、今年最後に素晴らしいサプライズである。イラストレーターKeith Rankinとしての活動に今後もっと大きな展開を期待してしまうのはもちろんだが、Orange Milkへの良い還元にも繋がるようなプロジェクトになればと願う。期間中に足を運んでみよう。 プロジェクト詳細はこちら。 以前公開したKeith RankinとSeth Grahamへのインタビューはこちら。
2019/05/13
Mondojから5月24日リリース。 Front cover by Seth Graham オハイオを拠点にするレーベル〈Orange Milk〉をKeith Rankin (Giant Claw)と運営するSeth Grahamの最新EP『Hint』がワルシャワのレーベル〈Mondoj〉からリリースされる。 タイトル曲を含む5曲の中には、More EazeとKoeosaemeとの共作曲が収録されている。またマスタリングもKoeosaemeが担当している。また、Seth Grahamは今月から来月にかけて、ヨーロッパツアーを予定している。 Pre-Orderはこちら。カセットとデジタルで、5月24日リリース。 Seth Graham EU tour 26 May / Warsaw, Klubojadalnia Młodsza Siostra, PL 27 May / Kraków, Osobliwy Poniedziałek, PL 28 May / Dresden, Hole of Fame, DE 29 May / Berlin, Kiezsalon, DE 30 May / Prague, Studio ALTA, CZ 31 May / Bratislava, LOM , SK 01 Jun / Ljubljana,
2019/08/30
アートワークはKeith Rankin 昨年11月にはR23X、death’s dynamic shroudと共に来日し、「NEO GAIA PHANTASY」と題されたジャパンツアーも行ったVaporwaveプロデューサー Equip がニューアルバム『CURSEBREAKER X』をGeorge Clantonが主宰する〈100% Electronica〉から本日リリース。 今年リリースされた3つのシングル / EP「Nocturne Catacombs」、「Shadow Dancer」、「Cemetery Moonglow」を含む本作は新たな冒険(ニューゲーム)へ旅立つ為のサウンドトラック。アートワークは〈Orange Milk〉ファウンダーの一人Keith Rankin (Giant Claw)が担当。 『CURSEBREAKER X』の購入はこちら。レコードとデジタルでリリース。Tシャツもあり。 Equip – “CURSEBREAKER X” 1. CURSEBREAKER X Theme 2. SHOP (New Inventory!) 3. CEMETERY MOONGLOW (in the cold air of the night) 4. GATECRASHING (Illusionary Angel) 5. NOCTURNE CATACOMBS ( d e s c e n d i n g
受け手の自由に寄り添う作品
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SoundCloud発、中国ラップスター more
東京・大阪を回るジャパンツアー開催
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