2025/09/09
箏を演奏したのは奥野楽
作曲家/プロデューサー、フクゾノヤスヒコのソロプロジェクト、aus(アウス)がニューアルバム『Eau(オー)』のリリースを発表。12月12日にエム・レコードよりリリースされる。奥野楽の演奏する「箏」を全面的にフィーチャーし創作した、ausの魅力的な方向転換といえる美しい作品。
思慮深く展開する繊細な技巧、展覧会や実験映画のための魅力的なサウンドデザインで、国内外から篤い支持を受けるアウスは、これまでキーボードやエレクトロニックサウンド作品を主に手がけてきた。本作『オー』は、依然としてエレクトロニックサウンドでありながらも、日本の楽器の中で最も特徴的な弦楽器のひとつである箏の音世界を軸に展開する、アウスの魅力的な方向転換といえるアルバム。繊細でありながら豊かな数々の箏のフレーズと音色は、非常に才能豊かな演奏家、奥野楽(おくの・えでん)が担当。アウスは作品解説の中で、このプロジェクトにおける奥野の演奏とその芸術の重要性を称賛している。
『オー』収録楽曲は、箏の微妙に変化するアタック、揺らめく響きの音色と、他の楽器の音色のバランスをとるようにデザインされている。箏の繊細な減衰と韻律の柔軟性は、持続的なシンセサイザーの音色と対位法的に構築されたピアノの旋律に包まれ、引き込まれるような底流と、物憂げで流動的な質感を伴う流れるようなアンビエンスを生み出している。
箏の現代史をみたとき、日本のコンテンポラリー音楽の愛好者は『オー』を聴いて、沢井忠夫がリアライズした吉村弘作曲作「アルマの雲」(1979年)、箏の演奏グループKoto Vortex(コト・ヴォルテックス)が同じく吉村弘の作品を取り上げたアルバム『Koto Vortex I: Works by Hiroshi Yoshimura』(1993年)を思い出すかもしれない。どちらも箏を伝統から引き剥がし、アンビエント~テクノの文脈に配置しようとした先駆的作品で、それらは『オー』にも影響を与えている。また、諸井誠の『和楽器による空間音楽』といった70年代日本の現代音楽作品も『オー』の影響源となっている。
フィジカル版にはアウスによる日本語・英語解説付き。ジャケットデザインは橋本麦、マスタリングは大城真が担当。CD/LP/カセット/デジタルで発売し、CD・デジタル版とLP版はジャケット違いとなる。本作はレーベル《FLAU》とエム・レコードの初のコラボレーション・リリース。
aus – Eau
Label : エム・レコード
CD 版
●カタログ番号:EMC-027CD
●JAN コード:4560283215769
●定価:2700 円(税抜/税込2970 円)
●発売予定:12 月12 日(金)
+通常ジュエルケース+帯
+8 頁ブックレット/日本語英語併記
+解説:アウス
VINYL 版
●カタログ番号:EMC-027LP
●JAN コード:4560283215776
●定価:3500 円(税抜/税込3850 円)
●発売予定:12 月12 日(金)
+ シュリンク封入、ステッカー
+解説:アウス
Tracklist
1. Tsuyu(ツユ)
2. Uki(ウキ)
3. Variation I(ヴァリエーション I)
4. Orientation(オリエンテーション)
5. Variation II(ヴァリエーション II)
6. Tsuzure(ツヅレ)
7. Shite(シテ)
8. Minawa(ミナワ)
9. Soko(ソコ)
10. Strand(ストランド)
category:NEWS
tags:aus
2023/04/21
現行20sエレクトロニカと静かに合流 「 “ラング” はエレクトロニカがどれほど有意義でエキサイティングな音を表現することが出来るかを示した素晴らしい見本と言えるでしょう。ausは細かなディテールと、哀愁と楽観的な感情を同時に呼び起こす素晴らしいメロディーで感覚的に構築したアレンジを組み合わせている。」 – ウルリッヒ・シュナウス 2006年にリリースされた今作でエレクトロニカの世界に魅了され、同時期に盛り上がったポストロックやその後のポストクラシカルの世界にどっぷりと浸かった人も少なくない。メロディアスで耳に優しく残るグリッチサウンドと柔らかなドラムンベースのリズム、そこにフリージャズやアブストラクト・ヒップホップを彷彿とさせるドラムのサンプリング。水面にキラキラと輝く陽の光を想起させる透明感のあるエレクトロニカサウンドは当時大ヒットし、ausの名をこのシーンを牽引する存在へと引き上げた。今回リマスタリングはRothkoとしての活動でも知られるMark BeazleyがLP用に仕上げている。当時のCD盤と同じくアートワークをAkihiro Moritaが手がけ、写真はRyo Mitamuraによるもの。 一新したデザインで登場。現行20sエレクトロニカと静かに合流する。 aus – Lang 2023年5月26日リリース フォーマット : 国内盤LP 価格 : 4,730円(税込)/4.300円(税抜) レーベル : p*dis ■初回完全生産限定盤 ■リマスタリング http://www.inpartmaint.com/site/37382/ A-Side 01.Clocks 02.Halo 03.New Look 04.Beyond The Curve B-side 01.Double Talk 02.Opaque 03.Aslope 04.Headphone Girl 05.Moraine
2023/05/26
その時代のエレクトロニカとアルバム解説 photo by TAKCOM 15年振りの新作アルバム『Everis』を今年4月にリリースしたばかりの、東京のエレクトロニック・ミュージック・アーティスト/プロデューサーのaus。その久々のリリースとなった新作に続き、00年代のジャパニーズ・エレクトロニカの名作と言われる、2006年にリリースされたアルバム『Lang』が、17年の時を経て今月5月26日に初のLPとなって再びリリースされる。 水面にキラキラと輝く陽の光を想起させる透明感のあるエレクトロニカ・サウンドは当時大ヒットし、ausの名を日本のエレクトロニカ・シーンを牽引する存在へと引き上げた歴史的名作となる今作で、エレクトロニカに魅了され、それから同時期に盛り上がったポスト・ロックや、その後のポスト・クラシカルなどへとどっぷりとはまっていった方も少なくないはず。ブレイクビーツ〜メロディアスなプログラミングビートは現在盛り上がるシーンともリンクするので聴いたことのない人にこそ紹介したい作品。 そこで2006年に『Lang』のCDをリリースしたレーベルの主宰者でもあるLinus Recordsの松本氏とausが、当時のアルバムの制作・リリースの経緯や、収録曲について振り返ります。 Text : Teru Makabe (p*dis/Inpartmaint Inc.) アルバム・リリースの経緯 ■まず当時『Lang』をリリースするまでの流れを教えてください。 aus : 大学生の頃から当時高円寺にあったLinus Recordsさんにお客として通っていたんですが、一番好きなレコード・ショップだったので、そこのオーナーである松本さんに自分の音楽を聴いて欲しくて、勇気を出してデモを渡したのが始まりです。 松本 : 最初は海外の良いレーベルから出したほうが良いんじゃないかと思って、欧州のエレクトロニカ/IDMレーベルのNeo OuijaとU-Coverに連絡を取ることを薦めました。自分はまだレーベルを始めていなかったので。そのデモを聴いたときに、そのふたつのレーベルがリリースしていたアーティスト達に近い、ビートは複雑だけどクリアで綺麗なサウンドという印象をデモから受けてまして。だから合うんじゃないかなと。 ■その流れでU-Coverから『Kangaroo Note』(2004年)と『Crowding』(2005年)の2枚のアルバム、Music Relatedから『Sonorapid』(2006年)をリリースしたんですね。 aus : 『Sonorapid』が初めてのCDでのリリースでした。 松本 : でもそれらは日本での流通があまり芳しくなかったアルバムで、U-Coverからの最初の2作もほぼレーベル・サイト直売のみの限定のCD-Rリリースでした。もう次はいよいよ自分がやるかなぁと(笑) 4作目になりましたからね。 Antwarps aus ■その時期にそれだけリリースする楽曲があったんですね。 aus: 当時大学を卒業した頃で、そこから資格を取るために1年間バイト生活をしていたんですね。『Sonorapid』と『Lang』の後に出ることになる『Curveland』(Moteer:2007年)が先にできていた段階で、U-COVERの限定リリースの曲も含めた形で一つの作品として出さないかって松本さんからお誘いを受けたんです。でもせっかく出すなら全て新曲のインスト・アルバムとして出したいと思って、作ったのが『Lang』ですね。 https://vimeo.com/3221647 松本 : その頃『Lang』の楽曲もほとんどできていて、他のアルバムと同じタイミングでマルっと全部まとめて聴かせてもらっていたと思う。 『Lang』LP収録曲の全曲解説 ■ではLPの音源を聴きながら1曲ずつ思い出や作曲について教えてください。最初に松本さんから曲に対するリクエストはありましたか? 松本 : ポリシーとして曲を大幅に作り変えさせるといったような口出しはしないんですが、でもちょっと足したほうが良いかなと言うことはあります。すでにできている、すでにある音を削って欲しいと言うことは無いんだけど。 aus :エレクトロニカを知らない人、それこそ松本さんのご両親にも気に入ってもらえるような大衆性というか間口の広さがある、と自分の音楽について言われたのは、今も意識しているポイントですね。そしてリリースに至る根っこにあるものとして言われたのが、「その音を必要としている人には(例えそれが世界で5人くらいでも)かけがえのないものになるであろう作品」という言葉。印象に残っています。 ■A1 (tr1). Clocks aus :即興的に弾いたシンセサイザーと、ストリングスのカット・アップで作った曲です。鉄琴を叩いたり、身の回りにあるものの音をマイクで拾ってビートに入れ込んでいます。基本のビートはキック・ドラムと本を擦ったり叩いた音から作っています。 松本 : 当時あんまり無かったようなタイプの曲が1曲目で面白いなと思ったのを覚えています。イントロとアウトロがある感じというか、エレクトロニカなんだけど何かバンドで作ったいるみたいで、当時の欧米のエレクトロニカのアーティスト達とはまたちょっと違う雰囲気もあり、それもあって1曲目が良いと思った。 aus: 曲の冒頭に時計の音を入れたんですが、鉄琴のバチの転がる音とか、その場の音をシンセサイザーと混ぜて鳴らしたのが曲の入りと後ろにうまくはまりました。 ■2 (A2). Halo aus : この曲は松本さんが良いって言ってくれたんですよね。僕は正直あんまり良いと思っていなかったんですけど、ギターが良いって言ってもらえて。 松本 : 当時は外資系の大型店では特に試聴機で聴いて買ってくれる人が多かったかと思いますので、1曲目と2曲目は大事ですよね。これが2曲目って位置は良かったと思います。今となってはクラシックじゃないですか(笑)この年代のエレクトロニカの。でも本人はデモを聴かせる段階で恥ずかしがっていたの覚えています。やり過ぎですかねぇって。ちょっと甘すぎるみたいな感じで。アルバムからのシングル・カットになれるような曲なのに。 aus : このコード感の良さが良くわからないんです。 松本 : いわゆるクリアなエレクトロニカのコード感だと思うんだけど、引っ張ってるのがギターっていうのが面白いよね。エレクトロニックな音が控えめで、ギターのアルペジオのほうが全編通して前に出てるっていう。ある種のポストロックみたいな作りになってて、ずっとギターがリードしていくみたいな。本人の手応えがなかったのが結構不思議。というかこのLPの音良いね。 aus: 確か松本さんには事前に2回音源を渡していて。「Headphone Girl」と「Double Talk」は良いな、と思っていて、それと一緒に渡したのを覚えていますが、「Halo」はアルバムに入れようとも思っていなかったぐらいでした。 松本 : むしろこの「Halo」がアルバムの中心になる曲じゃないの?って。 aus :自分で弾いたギターが下手すぎて、この曲をUlrich Schnaussにリミックスしてもらうときに、データをパラ音源で渡すことに震えました(笑) 松本 : CDと今回のLPもアート・ワークを担当してくれたデザイナーの森田くんから聞いたんだけど、当時あった心斎橋だったっけな?大阪のタワー・レコードさんが店頭で「Halo」をヘヴィー・ローテーションしてくれていたらしい。 ■A3 (tr4).
2023/09/27
リミックスアルバム『Revise』より ロンドンを拠点に活動する中国出身のサウンド・アーティストLi Yileiによるausのリミックス「Steps (Li Yilei Remix)」がリリース。このシングルは今春リリースされたausのアルバム『Everis』のリミックスアルバム『Revise』からの先行シングルとなり、 Li Yileiのリミックスを含む全10曲を収録。 ファイン・アートとサウンド・アートのバックグラウンドを持つ李は、リスニングのオルタナティブ・モードを探求し、実存的な出来事の暗黙性とはかなさについて考察する。イギリスのMétron Recordsからアルバムをリリースした他、最近ではBarbican Centre, Tai Kwun Contemporaryなどでもパフォーマンスを行っている。 「このトラックは、オープンリール・レコーダーを使って録音した。最初は、曲全体を聴かずにこのリミックスを開始した。代わりに、各ステムを個別の音響アーカイブとアーティファクトとして扱い、新しい現実、音の空間、対話を描き出そうとした。数日間、没頭して聴く実践をした後、ステムは過去の思い出の一部のようなフィールド・レコーディングのように聞こえ始めた – 何か懐かしい、親しみやすい、温かみのあるもの。最終的に、この感触が私をテープにサンプルをすべて録音するアイデアへと導いた。テープは過去の響き、その繊細さ、粒子状の質感、軽やかさを伴う媒体だ。リールに収められたやや断片的な長い録音を一度にすべて聴いた後、それはコラージュされたサンプルを持つ実験的な音響のスクラッチ・ブックのように聞こえ始めた。私はテープ・ループを切り出し、それからソフトウェアを使用して録音し、再配置した。この全体の経験は、アナログの響きとデジタル領域の手術的な精密さとの間に永遠のリエゾンを築いているように感じられる。」 – Li Yilei aus – Revise Label : Lo Recordings x FLAU Release date : October 27 2023 Pre-order : https://aus.lnk.to/Revise
〈SONICMANIA〉Official Repost by AVYSS
more
20年代型ネオ解釈邦楽カバーコンピLP版発売
more
2025年8月15日 渋谷WWW
more