2023/04/07
緊縮と曖昧、煉獄と船酔い
カナダの作曲家Tim Heckerの最新作『No Highs』は、現在流行している偽陽性の企業アンビエントに対して、不安の標識となるもの。警告と取るか、約束と取るか、『No Highs』はそれを実現する。これは緊縮と曖昧さ、煉獄と船酔いの音楽。薬漬け時代のギザギザした抗リラックス剤であり、荒削りで未定義である。
モールス信号のパルスプログラミングが救難信号のように明滅し、ストリングス、ノイズ、ローエンドの嵐が遠くのほうに迫ってくる。エレクトロニクスは、ひび割れた電圧、マントリックホーン、大聖堂キーボードなどのピッチシフトの集合体に対して震え、作品全体を通して、ドラマを生み出し、また回避し、クレッシェンドよりも引き潮を意識している。Tim Heckerは「否定」をミューズの一種として挙げている。大げさでなく騒々しいという感覚、縛られたエクスタシー、逃避からの逃避。Tim Heckerの作品は、無愛想でありながら蠱惑的であり、解決策を持たず、リスナーをそのグレースケールの不穏な錬金術の中に深く誘い込む。
Tim Hecker – No Highs
Label : kranky
Release date : April 7 2023
Bandcamp : https://timhecker.bandcamp.com/album/no-highs
Tracklist
1. Monotony
2. Glissalia
3. Total Garbage
4. Lotus Light
5. Winter Cop
6. In your Mind
7. Monotony II
8. Pulse Depression
9. Anxiety
10. Sense Supression
11. Living Spa Water
category:NEWS
tags:Tim Hecker
2021/01/11
Quiet Timeより Jio、Debit、JR Chaparro & Lucas Dillon、DJ Healthyなどの作品を発表してきたNY拠点のレーベル〈Quiet Time〉から、ミステリアスなアーティストGi Giのデビューカセットアルバム『Lumino Pleco』がリリース。 今作は、時にメランコリックで、時に希望に満ちており、豊かなテクスチャーのスピリチュアルなアンビエント作品。Prince、Erykah Badu、Miles Davis、Vangelisの楽曲をサンプリングし、ブレンドしており、瞑想的でありながらシネマティックな雰囲気も持ち合わせている。 Gi Gi – Lumino Pleco Label : Quiet Time Release date : 7 January 2021 Bandcamp : https://quiettimetapes.bandcamp.com/album/lumino-pleco Traccklist 1. Deudorix 2. Montjuïc ft. Mi Mi 3. Parched No Lake 4. Discalced 5. Tricofero 6. Plantings 7. Sagrat Cor 8. Lumino Pleco 9. Devorse
2022/03/22
騒乱の時代に抗うことなく⽣きる⼈間の命 神奈川県相模原市を拠点に活動する松永拓⾺が1stアルバム『ちがうなにか』をリリース。アルバムアートワークはフォトグラファーのReina Kubotaが手掛けた。 常に社会との関係性や⾃⼰⽭盾を探求し続け、“⼈間がこの時代に⽣きること”そのものを等⾝⼤で写し取った本作品は、「現⽣する命の投影」がテーマとなっている。 全楽曲の作詞・作曲は松永拓⾺⾃⾝で⼿掛けており、アンビエント・ミュージックを基盤としつつも枠にとらわれない曲構成や、⾃⾝の記憶に結びつきが強い環境⾳/ノイズを多様する独⾃のサウンドメイクからは、現世の社会環境に溶け込むリアルな⼈間のグルーヴ感を感じ取ることができる。また、ラップを基調としながら⽣々しく放つ歌詞世界からも、この騒乱の時代に抗うことなく⽣きる⼈間のありのままの“命”を感じることができる作品に仕上がっている。 また、5月7日に〈みんなのきもち〉がホストを務めるリリースパーティーが開催される。 松永拓⾺ – ちがうなにか Release date : 22 March 2022 Stream : https://linkco.re/meeCFneP Tracklist 1. プロジェクト01 2. Vou Pegar 3. プロジェクト03, 04 4. プロジェクト05 5. プロジェクト06 6. プロジェクト07(interlude) 7. ⻑い旅 8. ⻘い⼭ 9. I Donʼt Mind pt.2
2021/07/21
Vladimir Kartashovの展覧会のサウンドトラック モスクワを拠点にするプロデューサーMoa Pillarが、Vladimir Kartashovの展覧会のためのサウンドトラック『Innocent Pranks』をカセットテープでリリース。 今作は、Vladimir Kartashovのサイケデリックな側面を反映させたホームリスニング・アンビエント作品。3つのトラックは最小限のパレットで深い効果を生み出しており、「音楽は起こるべきものであり、生きるべきものであり、動かないものでなければならない。」と彼は語っている。最初の2曲は、モスクワのギャラリーJARTで開催された展覧会「Innocent Pranks」展のために書かれたもので、最後の曲「Concert of Birds」は、Tsaritsyno Museum-Reserveで開催された鳥類学に特化した展覧会のサウンドトラックであるとのこと。これは鳥が神の使者であり、天国のメタファーであるという。 Moa Pillar – Innocent Pranks Label : ПИР Release date : 20 July 2021 Buy : https://peer.moscow/album/innocent-pranks Tracklist 1. Innocent Pranks 2. The Cave 3. Concert of Birds
6/17 新宿BLACKBOX³ more
6/3 札幌TWLV more
その時代のエレクトロニカとアルバム解説 more