Yung Kiss interview

『Z-POP』 – 生活のリアリティと音楽 –

 

 

2020年、コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンが続く東京で発足したアーティストたちによる「今を生き抜く」プロジェクト2021survive。Yung Kissは2021surviveメンバーのLingnaとKen truthsによって結成された、Z世代によるJ-POPユニットである。リアルな場での露出は一度もないままに1st Album “Z-POP”をリリースした彼らに話を聞いた。

 

取材・構成:木下真紀

 

 

– 『Z-pop』のリリースおめでとうございます。本アルバムはいつ頃制作されたものなのでしょうか?

 

りんな – ありがとうございます。2020年の6月にKen truthsとYung Kissを始めて、そこから2021年の始めくらいまで作り続けてた感じですね。

 

– 2020年6月といえば、緊急事態宣言が出た後のタイミングですね。二人の生活や環境はどのように変わりましたか?

 

Ken – 宣言が発令されてからはみんなと同じで、家の中で過ごす時間がほとんどになりました。それまでは遊びに行ったりクラブで音楽聴いたりしていた時間も、曲を作るかUber Eatsを頼んでNetflix観るしかない、みたいな。

 

りんな – ライブもできなくなったし、友達とも会えなくなった。でも曲はとにかくたくさんできてたから、表現の場所とか方法は自分たちで作り出すしかなかったです。

 

 

– コロナ禍ではスタジオに入るのも難しくなっていると思います。具体的に、二人はどのように制作を進めていったのですか?

 

りんな – 基本的に僕が一人でビートを作って、やばいのができたらKen truthsに送ったりしてました。二人とも家が近いから、緊急事態宣言が明けてからは僕の部屋で遊びながら作ることが多かったと思う。

 

Ken – 俺は2019年くらいまではバンドをやってて、ちゃんとDTMをやり始めたのが去年からだったので、いわゆる宅録ってこんなもんなのかって思ってました。

 

りんな – 人と関わることが減ったから、ノイズが減ったのは良かったかもね。流行りとか気にしないで好き勝手気持ちいいことをやってた感じで。家のスピーカーで鳴る音とクラブのでかいスピーカーで鳴る音って違うから、気持ち良さ自体も変わってくるんですよね。ビートとかベースの置き方とかは特に変化したところかもしれないです。

 

 

– いざ『Z-POP』をリリースしてみて、自分たちのなかでどのようなアルバムになったと感じていますか?

 

りんな – 2020年のロックダウンから2021年にかけての生活に記録みたいな感じですかね。クラブとかライブとか大音量で音楽を聞くような体験と離れたから、暮らしのグルーヴ感とすごく近いところに鳴ってる音楽を「いいな」って思うようになって。だから自分たちでつくるものも暮らしと共鳴するものにしたかった。

 

Ken – 例えばですけど、TikTokの15秒のバズよりももっと長いスパンでリスナーの人生に寄り添えるような作品を作りたいと思っていて。1ヶ月単位でトレンドが変わっていくような流動的な音楽シーンのなかでも、普遍的にいいと思えるような曲を集めたのがZ-POPだと思います。

 

– 二人が「Z世代のJ-POPデュオ」を謳う一方で、実際にアルバムを聴いてみるといろんな音楽ジャンルの要素が混ざり合っているような印象を受けました。それぞれの音楽的なルーツについて聞かせてください。

 

りんな – 僕の場合は家の車でかかってたミスチルのALIVEとかRadioheadのairbagとかが根本にある感じがします。カーステレオから流れるデッドなキックの感じが印象に残ってて。それでミスチルをギターで弾きたくて、貯めた小遣いでハードオフに売ってた7000円くらいのレスポールをこっそり買ってきたのが音楽やり始めた最初ですね。

 

 

 

Ken – 初めて買ったアルバムがYUIさんのI LOVED YESTERDAYで、同時期にRed Hot Chili PeppersのBy the Wayに出会ってから意識して音楽を聴くようになりました。小5のときに初めてギターを買ってもらったけどずっとホコリをかぶってて、中学生でOasisとかを練習し始めてからどんどん音楽にのめり込んでいった感じです。ティーンの頃も今と同じでカッコイイと思うものはなんでも聴いてました。インディーロックが多かったんですけど、当時流行ってたOdd FutureとかFlying Lotusとかもチェックしてましたね。高校でUKのロック中心にコピーバンドをやってて、上京してからは3年くらいパンク系のバンドで活動してました。

 

 

 

りんな – By The Way俺もめっちゃ聴いてた!でもKen truthsがUKにはまってた頃僕はandymoriとかハヌマーンとか国内のロックバンドにめっちゃはまってて、曲作り始めたのもandymoriのアルバム聴いたのがきっかけなんですよね。その後はBurialとかNicolas JaarとかSOPHIEとかエクスペリメンタル寄りのダンスミュージックにはまっていって、その辺のルーツが全然かぶってないのも面白いなって。

 

– 二人が「Z世代のJ-POPデュオ」を謳う理由は?

 

Ken – シンガーとかラッパーとか色んな言い方があるなかでも、単純にそれが一番しっくりきました。

 

りんな – 基本的に日本でポップスやってるって以上の意味はないです。でもこの世代のこの国に生まれて生活してることに嘘はつけないし、さっきも言ったけどそういう生活に寄り添うような音楽を作っていたいから、自分たちのバックグラウンドの一つに「J」があることには向き合ってるつもりでいます。

 

Ken – 音楽って世界、社会の写し鏡みたいな面があると思ってて、だから誰かにとっての逃げ場や救いとして機能するし。だけど今「J-POP」って言われてるものの多くは感覚的ってよりは定型化されて再生産されてる商品って感じが強いかなって。俺らはそういう状況をひっくり返したい。だから暮らしに近い距離感の音楽を作ってJPOPって名付けることには意味があると思ってます。

 

 

– Kenさんが言ってた「流動的な音楽シーンのなかでも、普遍的にいいと思えるような曲を集めたのがZ-POP」って言葉とも繋がってきそうですね。二人が活動している2021surviveとは何なのでしょう?

 

りんな – 明日世界がどうなるかも予想できない状況になって、もともと僕らが使ってた表現の場所が機能しなくなったから、それを自分達で作り出そうとしてるプロジェクトです。折角一から作るなら、今までのやり方ではなかなか越えられなかった壁を越えていきたいなって思ってます。

 

 

– 「今までのやり方ではなかなか越えられなかった壁」とは具体的にはどのようなものがありますか?

 

りんな – 結局東京って狭い街だから、「シーン」みたいなフィールドのなかで限られた機会をどう勝ち取ってどう評価されてってところでみんな戦ってた気がして。本当はもっと自由で、どこへでもいけるし何したっていいと思う。例えば今海外のアーティストとの製作も進めてますけど、場所とか言語とか関係なくワクワクするものを作っていきたいし、2021は狭いシーンのなかでは居場所がないようなアーティストの受け皿になりたいですね。

 

– 今二人が気になっているアーティストは誰ですか?

 

りんな – 近くで一緒にやってるようなアーティストはみんなかっこいいし常に気になってますけど、最近だと個人的にはWATERDAWGSとかJimi Somewhereとかかな…?Ken truthsはどう?

 

 

 

Ken – Jean Dawson, Kenny Hooplaあたりのポストトラップのインディーロック感は結構最近のムードですね。

 

 

 

– お話にもあった通り、海外のアーティストが多いですね。J-POPユニットYung Kissとして、今後やりたいことなど教えてもらえますか。

 

Ken – 今まで通りいい曲を作りたいです。世界を動かしたい。

 

りんな – 世界はもっと自由なんだってことを知りたいし、みんなにも見せたいです。自分として生きていくなかでしか見えないリアリティが一人一人にあるし、音楽ではそれに嘘をつく必要はないと思うから、僕たちは引き続き好きにやるしみんなにもそうあってほしい。「こうしなきゃいけない」とか「こうあるべき」みたいなのは全部飛び越えていきたいですね。

 

Ken – あとは普通に宇宙でライブとかしたいっすね。

 

 

Yung Kiss – Z-POP

Label : 2021survive

Release date : 17 February 2021

Stream : https://friendship.lnk.to/z_pop

 

1. if the world would end in a minute

2. Shooting Star

3. COCACOLA

4. Understate

5. Plastic Lover

6. JUICE

7. メリーゴーランド

8. 312

9. my morning routine

10. 明日

11. ZPOP

 

 

 

 

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