ENG JPN

「全く過去に結びつかない映画」|『ジェシカ』(原題:JESSICA FOREVER)review

今の感覚のカップルが作り上げた孤独な墓碑

 

 

2019年春、アンスティテュフランセにて映画/批評月間~フランス映画の現在を巡って~にて先行上映されたキャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネルによる映画『ジェシカ』(原題:JESSICA FOREVER)が現在開催中のヒューマントラストシネマ渋谷「未体験ゾーンの映画たち2020」で公開されている。本作の上映は開催中のマイ・フレンチフィルム・フェスティバルの一環として企画されたもの。

 

2019年初頭に開催されていたICCでの企画「イン・ア・ゲームスケープ ヴィデオ・ゲームの風景,リアリティ,物語,自我」 で展示上映されていたジョナタン・ヴィネルの作品「マルタンは咆哮する」を観た方も多くいるでしょう。この映画はゲーム「Grand Theft Auto V」の映像を使用したマシニマ(全編に渡ってゲームの映像を用いて制作した映像作品)だったが、内容もさることながらエンドロールで流れた曲がCroatian Amorの「Love Means Taking Action」だった。監督自身が1988年生まれであり、私と同い年であることからも、音楽的な趣味趣向が近くなることはあるとは思う、が、その衝撃のあまり監督本人のSNSに感想を送ってしまった。そして実際に監督はフランスの音楽文化とも親しく〈Casual Gabberz〉からもリリースしているAamouroceanのビデオもキャロリーヌ・ポギと共にディレクションしている。

 

 

このビデオからもわかるように、彼らの作品は演者と一定の距離を置き、フィックスしたカメラでの撮影をしている。『ジェシカ」でもその撮影方法が多用され、映像にある一定の温度感を与えている。近年、インディペンデントな映画作品では手持ちカメラやステディカムを用いた躍動感ある映像が多いものの、フィックスショットを多用する彼らの作品にはどこか冷めた眼差しを感じる。

 

 

「謎の女戦士”ジェシカ”率いる社会不適合者となってしまった“はぐれ者”たる孤児たちと、彼らを抹殺するため無慈悲な特殊部隊を送り込む管理社会との熾烈な戦いを描いた異色の近未来SFスリラー」(青山シアターHPより抜粋)という設定の映画なのだが、その“はぐれ者”たる孤児たちというのは、やはり現代社会に生まれた若者たちを投影しているように思う。何をするにも不器用な彼らがジェシカと出会い心を開いていく感動のSFと言いたいところだが、そんな簡単な映画でもない。そこに何を感じるかは観た人が考えて話すことなのだと思うのだが、この映画は若者の為の映画であることは間違いない。

 

 

 

初めてオリヴィエ・アサイヤスの『デーモン・ラヴァー』を学生時代に観たときのなんだかわからないけど最高という感覚が蘇った。本作がアンスティテュフランセでの上映された際に登壇したリベラシオン紙の方が話していた「全く過去に結びつかない映画」という表現は正しいと思う。この映画は今の感覚のカップルが作り上げた孤独な墓碑なのかもしれない。海外の映画批評サイトの評価を見ればすぐわかることだが、簡単に批判することができる映画だろう。この映画は文脈や前の時代に囚われるあまり、若い世代をがんじがらめにしているこの世界そのものに対するジェシカとはぐれ者たちの逃走の記録なのではないか。そして今回も「マルタンは咆哮する」と同様に使われている音楽は監督がリアルタイムに聴いている音楽だと思う。自身が聞いていた音楽をそのまま同時代の映画に使用するというのは本当に素晴らしい。80sに毒された”新作の青春映画”なんていらないですからね。

 

 

本作はヒューマントラストシネマ渋谷での上映の後、1/31より青山シアター内にて期間限定配信上映されるようです。関西での上映もアナウンスされています。

 

詳しくはこちらから:https://aoyama-theater.jp/feature/mitaiken2020

 

TEXT:Kenji Komine / LSTNGT

category:FEATURE

tags:

RELATED

FEATURE

2020/02/25

MAKA & SATORU interview

足利の最強コンビがアンダーグラウンドから矢を放つ
 more

2020/02/19

♡ LOVELESS WITH ROLAND ♡ |ROLANDは愛の救世主

by YUEN HSIEH / DAZED CHINA more

2020/02/04

Rave Traveller in South London

サウスロンドンで見たある夜の思い出
 more