Thinking Framework – 考える枠組み vol.1

1. 2018年代

 

by Daiki Miyama

 

現代史は10年を単位としたディケイド、つまり年代で区切られ語られることがある。特に音楽やファッションなどのカルチャーはその様式の記号として年代が使われる。このスネアのリバーブは80年代っぽいとか、このスニーカーのハイテク感は90年代っぽいといった具合に。

 

しかし変化の進みが早く多様な音楽やファッションの様式を10年という単位で区切るのは無理があるように思う。音楽で90年代と言って思い浮かべるのはグランジだろうか、アシッドジャズだろうか、それともドラムンベースだろうか。ファッションにおいてもそうだ。90年代に今につながるハイテクスニーカーの多くが発明されブームになったのは確かだ。ただ 90年代の足元がすべてハイテクスニーカーだったかというと、当然そんなことはなく、ドクターマーチンなどの定番はもちろん、レッドウイングのエンジニアブーツや UGGのムートンブーツなどもブームになりよく履かれていたように思う。

 

それでも、10年という区切りが有効な分野もある。そのひとつが進みの遅い音楽メディアの物理フォーマットだ。リスナーが音楽を安心して購買し収集できるようにするためには、音楽メディアの物理フォーマットはファッションのトレンドのようにシーズン毎に変わるわけにはいかない。

 

レコードブームと言われて久しい昨今だが、アメリカに端を発するレコードブームはがいつから起こったかを考えるとそれは 2008年頃であったように思う。アメリカのレコード会社の業界団体であるアメリカレコード協会(RIAA)のデータによると CDの登場により落ち続けたレコードの売上が初めてプラスに転じるのは 2008年からだ。

 

USでのレコードの売上枚数。濃い青はアルバムとEP、薄い青はシングル盤を示している。これを見ると90年代のレコードはシングルで成り立っていたことがわかる。参照元:https://www.riaa.com/u-s-sales-database/

 

その 2008年に何が起こったかを振り返ると Captured Tracks、Mexican Summer、Acéphale、Big Love, The Trilogy Tapesや PANなど今に繋がるインディーシーンを作り上げたインディーレーベルがこぞって設立されたのが、この年だということに気づく。その前後も含めると Italians Do It Better、Secred Bones、DAIS、Burgerなどが2007年で一年早く、Posh IsolationやR.I.P Societyが2009年となる。これらのインディーレーベルの主要なメディアがレコードであることを考えると、2008年から続くレコードブームは彼ら新興のインディーレーベルが主導したブームであると言えるのではないだろうか。

 

また、スマートフォンや音楽関連のサービスを眺めてみると、世界で最初のスマートフォンであるiPhoneが登場したのが 2007年で、日本ではじめて発売されたiPhone 3Gが2008年。対抗する Androidも2008年に登場している。インディーレーベル御用達の Soundcloudと Bandcampができたのは共に 2007年なので、2008年は今に続く環境が一通り揃った年だったとも言える。

 

本連載『Thinking Framework – 考える枠組み』では、今に続くレコードブーム/インディーシーンの起源である 2008年をひとつの時代の始まりと捉え2008年代と呼ぶことにする。そうすると 2018年は必然的に 2018年代という新しいディケイドの最初の一年ということになり、今年 2019年はそのディケイドの二年目ということになる。

 

これは自分だけではなく、多くの人に共感してもらえる感覚ではないかと思うのだけどここ1、2年で何かが大きく変わるんじゃないかというゲームチェンジの予兆みたいなものがある。『10年後から振り返ればここが節目だった』本連載では、そういった視点で現在を捉え、ひとつの目として感じたことを伝えていければと思う。今の時点で振り返れば2008年がいろいろな始まりであったように、2018年は今後の 10年の方向性を決定付ける新しいディケイドの始まりとして後年に記憶される年となるような何かを。

 

Text by Naohiro Nishikawa

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