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金子尚太 インタビュー

Teen Runnings、Young Agings、Sauna Cool、金子尚太の現在。

 

 

金子尚太は、2010年に自身のプロジェクト/バンドFriendsとしてカセットEP『Young Days Forever』でデビュー。後にTeen Runningsと改名し、京都のレーベルSecond Royalから2012年に『Let’s Get Together Again』、2014年に『NOW』という、2枚のアルバムをリリースした。その後、自身が主宰するレーベルSauna Coolの活動を始めるが、2016年にTeen Runningsが一旦終了し、カナダへ移住、さらに現在は地元神戸に移ったようだ。今回は11/28にSauna Coolからリリースされる金子の別名義Young Agingsの作品のことを中心にメールインタビューを行った。Cuz Me Pain周辺、Hotel Mexico、möscow çlub、SUPER VHS、といった名前が並ぶシーンの中に存在し、現在のDYGLやTAWINGSといったバンドまで続く日本のインディ(インディーズという意味ではない)シーンの文脈に名を残している金子の活動や作品。そんな文脈なんか知らなくても、現行の日本のインディは楽しめる。楽しめるけど、知っているとそういった音楽を楽しむ生活が少しだけ豊かになる気がするのだが、どうだろう。

 

 

– 元気ですか?

 

金子尚太(以下、金子) – 元気ではない時の方が多いです。

 

– なぜこのタイミングでTeen Runningsではなく、Young Agingsの作品をリリースしようと思ったのですか?

 

金子 – 東京、カナダを経て地元の神戸に帰ってきて、何か外から見える動きが必要だなと思ったのですが、カナダで作ったTeen Runningsの新しい曲はまだまだリリースできる段階ではないですし、Teen Runningsの新しいモードについて考えて、それにとらわれすぎることがあって、一旦、頭をリセットするためにYoung Agingsの曲をサラッと作ってみようと思いました。リリースしたいアーティストがほとんどいないのと、Young Agingsをいつかリリースしたいという考えがタイミングよくハマってリリースに至りました。

 

– そもそもTeen RunningsとYoung Agingsの違いや、すみ分けを教えてください。

 

金子 – Young Agingsは遊びのプロジェクトみたいなものですね。はじまりは2012年頃にSUPER VHSの入岡くんと「日本のアーティストであまり良いのいないね」と話していて、そこから遊びでFANTASINGという架空のレーベルを作って入岡くんのTALONと一緒にスプリットを発表していました。ほとんど誰も聴いていませんでしたが。あと、先ほど書いたことと関連しますが、Teen Runningsは色々考えてメロディー、コード進行、リズムが被らないように悩みながら作っているのに対して、Young Agingsは降りてきたメロディーを出来るだけ考えずにアレンジも適当でやっています。自分の中では頭のリセットや息抜きで楽しんで作っているので、コード進行などの手癖はかなり出ていると思います。また、自分の目指すTeen Runningsの音が変わっていっているので、カナダで作ったTeen Runningsの新しい曲のデモを聴いてもらえると、音の違いはかなりハッキリ出ていますね。

 

– 今作にも収録されている『Stars』のクリスマス感好きです。すみません、ただの感想です。

 

金子 – ありがとうございます。あれはFANTASINGのクリスマスEPに入っていたものの再録なのですが、Bメロは完全にSerena Maneeshの『Sapphire Eyes』をリファレンスにしたほぼパクリのメロディーなのですが、あとで聞き返してみたらThe Christmas Songという超有名な歌のメロディーとも似ていて・・・。手癖とかで曲を作っていると、直近の記憶から出てしまうことがたまにありますね。今回は2つの曲と被っているので逆転無罪かなと思って開き直っています。

 

 

– 今回のEP『Before I Go』はUSオルタナギターロック的な印象が少しありました。コンセプトはありますか?特に『You』に関しては良い意味で日本の叙情的なメロディーラインもアクセントになっています。

 

金子 – Young Agingsのコンセプトはシューゲイザーのような音楽をガレージのバンドの構成で演奏するというもので、シンプルでいてドラマティックな感じだと自分では思っています。でもおそらく直接影響を受けているものは20歳ぐらいの時によく聴いていたKyteやAlbum Leafなどのエレクトロニカやポストロックですね。You Found Meはその頃に作った曲ですし。あとはThe Get Up Kids、Jimmy Eat Worldなどのエモコアな空気ですね。日本のHusking Beeも入るかもしれませんね。音的にあまり無いものだと思っていたので、USオルタナと聞いて「なるほど、そう聴こえるのか」と思いました。『You』が日本的に聴こえるのはメロディーの起伏が激しいからだと思います。日本語詞も乗りやすいかなと。My Little Loverの『Destiny』や『Now And Then』のゴシックな曲が好きなので、その影響もかなり出ていると思います。

 

 

 

– 日本語詞に挑戦しようとは考えていたりしますか?

 

金子 – そうですね。近い将来、日本語詞で何かやろうとは思っています。また別名義にしますが。自分の曲は英語詞が乗りやすいメロディーなので英語で歌っています。それでも毎回母国語ではない英語で詞を作っていると、行き詰まったときに本当に時間がかかってしまって。今回の詞の内容は我ながらうまく表現できたと思っていますが、英語である以上、表現が直接伝わらないのがもどかしいなと思って、ますます日本語でやることへの興味が湧いてきましたね。

 

– 最近どんな音楽聴いていますか?

 

金子 – 恥ずかしいですが、Young Agingsをまとめた音源にしたかったので、出来上がった音源を聴いて自己肯定感を高めています。日常的には、移動中に聴くもの、お店で流すもの、ジョギング中に聴くものでだいぶ変わってくるのですが、新しいのをちょっとずつではなく、耳馴染みの良いものを回しながらよく聴く感じです。お店だと最近はJerry Paper、Dent May、Happynessとか、バラバラですがメロディーがあってうるさくない感じで。片付けの時は今年出たArctic Monkeysの新譜をよく流していました。これはリリース当時観終わったばかりのオルタードカーボンというNetflixのドラマのゴスな空気感とぴったりはまって。リズムのノリがすごくいいアルバムですよ。誰も聴いてくれませんが。ジョギング中だとSoundcloudにあるRoss From Friendsのmixとか90年代ジャパニーズヒップホップのmixとか、あとはメロコアで疾走感を演出しますね。Teen RunningsのリファレンスになるものもたまにYouTubeとかで掘ります。

 

– やはり90sメロコアからの影響は強いのですか?オススメのバンド教えてください。

 

金子 – そうですね。10代の頃に聴いていたのですが、その頃のものはずっと聴いていますね。とにかく良いメロディーにこだわるという点ではそうかもしれないですね。あと疾走感とか潔さ。Suicide Machinesのベースラインはめちゃくちゃ影響受けましたし、Useless IDの日本的メロディーはめっちゃハマりましたし、Alkaline Trioのゴスだけど3rdのジャンル分けしづらいメロディーラインが最近好きですし4th、5thのドラマチックな感じも好きですね。今回の作品の曲でメロコア界の異端児Bracketの曲をリファレンスにしたものもあります。他にもオススメはあるのですが、今も当時も「メロコア=ダサい」という考えは根強いので肩身が狭く「これかっこいいから聴いて」なんて言ったことなくて・・・。ただ、本当にダサいのもあって、メロコアとかパンクのジャンルは入りはじめにダサいバンドやアルバムを選んでしまうと嫌いになってしまうので、オススメは僕に直接聞いていただければ良いの教えますので。

 

 

– 今挙げてもらったバンドだとSuicide Machines以外は90年代から現在もまだ活動していますよね。ジャンルやシーンは違えど、海外のバンドは長く続けていける土壌があって羨ましいですね。

 

金子 – 本当にそうですよね。ローカルの繋がりもあると思いますが、自分のように世界のどこかで今も聴き続けている人がいるというのがすごく大きいんだと思います。だからこそ、自分も流行りはしなくてもいいので、長く聴き続けられるクオリティのものをアーティストとしてもレーベルとしても出し続けたいと思っています。

 

– 時系列を遡りますが、2016年Teen Runningsの日本での活動を一旦終えました。なぜですか?

 

金子 – 2010年ぐらいからやってきて、ある程度日本の業界のシステムみたいなのが分かって、2014年にリリースした『NOW』がウケなければ地元に帰ろうと思っていました。周りや業界のウケはよかったと思いますが、やはり横の繋がりが少なかったので、フェスなどほとんど呼ばれず今まで通りの活動に戻って。でも『NOW』のジャケットをせっかく永井博さんに描いてもらったのだから辞めるのはもったいないな、と思い、来日時に交流したTOPSの話を聞いて、じゃあ最後にカナダに行ってみようと思いました。

 

 

– その後、カナダに短期間移住しましたが、カナダでの生活はどうでしたか?何か得たものはありますか?

 

金子 – 9月から行ったのですが、3月ぐらいまで外が寒すぎてほとんど出られず、ほぼ部屋で曲を作るだけの生活でしたね。暖かくなりはじめた4月からライブに誘われて、それを観た人がまたライブに誘ってくれたり、気に入って2回ライブ観にきてくれた人がいたり。ライブは3〜4回やって、友達の友達に9月のライブを誘われたのですが8月に帰ることになっていたので、それは断りました。音楽に対する自分の限界が見えたような気がしていたし、たとえばカナダの日本食レストランで働いたりしてまで続けるのは違うなと思っていたので。生活に関しては、冬は寒すぎてイベントをやってない時期もありましたが、アメリカのバンドのライブを1000円とかでたくさん観れたのは大きかったです。色々あったのですが、やはりモントリオールに住んでいる人たち、街や公園などの空気感、夜の街の感じなど、言葉では説明できない部分で得られるものがたくさんありましたね。僕自身「せっかく来たのだから有意義に過ごそう」と考えていたのですが、日本での生活のように無為に過ごした日々も自分の中に何かを残していったんだなと実感します。これは実際に体験してみないと理解しづらいかなと思います。

 

– 以前AVYSSでArbutus RecordsのファウンダーであるSebastian Cowanのインタビューを行ってもらったのですが、Arbutus周辺と親交があったんですか?

 

金子 – そうですね。先に書いたTOPSの来日時に、無理やりイベントをねじ込ませてもらって、そのときにマネージャーって人に連絡したらそれがセバスチャンで、『NOW』の音源を送って「TOPSと共演させてくれ」って書いたら音源を気に入ってくれて。TOPSは来日時に原宿を案内して、カナダに行った時も初ライブを観に来てくれたりハウスパーティーに呼んでくれたり、他にもありましたが色々よくしてもらいました。セバスチャンの弟でBlue Hawaiiのアレックスも、Arbutusのスタッフもよくしてくれましたね。みんな本当にいい人でしたよ。

 

 

– 年上の女性から好かれるタイプじゃないですか?

 

金子 – いきなり何なんですか。女性とふれあう機会が少ないので分からないです。

 

– すみません。

 

金子 – そういう話、嫌いじゃないですよ。

 

– 現在Sauna Cool、Teen Runnings共に動き始めていますが、今後も継続的に活動していくのですか?

 

金子 – 一応そのつもりです。Sauna Coolは常にアーティストを探していますね。カセットリリースでハードルは下がりましたし、figureやYoung Agingsのようなプロジェクトをリリースすることで、ジャンルの幅も広げられたと思います。地元の神戸や関西のアーティストもできればリリースしていきたいですね。一緒にイベントもやりたいですし。Teen Runningsはひとまずカナダで作った曲たちを成仏させたいので、来年夏頃にリリースできたらな、と思っています。あ、自分は曲をリリースすることを成仏させることだと思っています。なんていうか、曲って自分の記憶の断片なので、「こんなことありましたよ〜」って空中に骨か何かを撒くイメージなんですよ。それを成仏というのか分からないのですが。話が逸れましたが、それ以降は未定で、他にやりたい音楽があるのでそちらに振れていくかもしれませんが、またTeen Runningsで作りたくなる時が来たら作ると思います。

 

– Sauna CoolのfigureのカセットEP『Parakalein』について聞かせてください。figureは決して活動的なプロジェクトではありませんが、なぜリリースに至ったんでしょうか

 

金子 – 東京、カナダを経て地元の神戸に帰ってきて、サウナクールの活動をもっと活発にしようと思って、それでもアクティブでないアーティストはCDリリースしないことになっていて、それだとリリースのペースがかなり遅くなる。レーベルのお手伝いをしてくれているディスクユニオンの担当の方に相談したところ、カセットという形で僕個人での販売ということなら大丈夫と教えていただき、それからアーティスト探しを進めていました。自分の知り合いの中には良い音楽をしていても認知されていない人がいて、今こそリリースを進めるときだなと思いました。figureの長谷部さんは元々顔見知りの関係でfigureというプロジェクトも知っていて、改めてSoundcloudの音源を聴いたときに「リズムが気になるけど、整理すればかなり良くなる」というイメージが湧いたので声をかけさせていただきました。

 

– それでリズムは整理されたんですか?

 

金子 – そうですね。ミックスを担当してくださったHARVARDのヤック(植田康文)さんの細かな作業によって整理されました。僕は「インディだからインディな感じでいい」みたいなのはあまり好きではなくて、何がきっかけで誰に聴かれるか分からないので、広く長く聴かれるようにそういうのに耐えうる音源を出したいと思っています。今の時代、どのバンドも音が綺麗ですし何の問題もないのですが、僕らの世代はローファイが流行った時期と被っているので、その辺の認識が甘いんですよね。

 

 

– あなたはUSインディシーンが大きく動き始めた2009年、2010年以降の日本で、Cuz Me Pain、Hotel Mexico、または『Ç86』に収録されているアーティスト共に海外のシーンと同水準で共振していました。あの頃を振り返ってみてどうですか?振り返りたくないですか?

 

金子 – Cuz Me PainやHotel Mexicoの活動を近くで見ていて、アティテュードや音楽面で優れているものがあっても、日本でやっていくには横の繋がりや大人の力、その他様々な条件が揃わなければどうにもならないと、そのとき思い知りましたね。当時のインディーで誰もなし得ていなかったHotel Mexicoや佐久間さんのプロジェクトJesse Ruinsの海外リリースも日本のメディアは見て見ぬ振りで、全てが盛り上がっていく条件が揃っていたはずなのに決定打がなく、徐々に忘れ去られていったように思います。インターネット系の人たちと違い、SNSへの接し方もクールな印象があるので、その辺も遠因としてあったのかもしれませんね。

 

 

 

– 日本の土壌を少しは耕したかもしれませんが、確かに”大人の力”と呼ばれるものは皆無だった気がします。レコード会社やメディアを含めて、アーティストをサポートする側が新しい音楽やシーンを知らないことが多いですかね。

 

金子 – そうですね。海外だと、そのクールな感じに、耳の早い大人が気づいてすぐに接触すると思うのですが、日本だとやはりそういうわけにはいかないですからね。個人的には、その教訓を生かして、レーベルをやるときにはかなりポップな印象や姿勢でいることに努めていますね。

 

– サウナクールミニを始めた経緯について聞かせてください。いつも店頭にいるのですか?というか何屋ですか?

 

金子 – 母親が副業でやっていた飲食店がありまして。いつもお客さんがほとんど入っていなくて勿体ないなとは思っていて。カナダから帰国後ぼんやりと「いつか自分の好きなものに囲まれた店をやりたいな」と考えていたので、ダメ元で言ったら「じゃあやってみな」と言われたので始めました。居抜きなのでほとんど費用はかかっていません。1人でやっているのでいつも店にいます。一応、たこ焼きなどを扱った飲食店、というかカナダで見た「軽く食べられるファストフード」的なものを目指しています。居心地の良さに定評がありますが、信用がないので普段地元のお客さんは来ませんね。全く。その分、レーベルでのやりとりなどができる余裕はありますが。。悲しいので会う人みんなに「来年には雑貨屋になる」と宣言していますが、実際、年明け前後で通販の物販を増やしたいと思っています。

 

 

– お店兼事務所みたいな感じですね。サウナクールミニでは何が人気商品ですか?

 

金子 – 牛スジが入っているたこ焼きの評判がめっちゃいいです。自分でも割とこだわったと思いますが、それでも驚いています。これがあるので雑貨屋になるのが少し勿体ないかなと思っています。

 

– 雑貨に牛スジ入れるのはどうですか?

 

金子 – インタビュアーとしての姿勢を問いたいですね。

 

– すみません。最近ブチ上がった出来事は何ですか?

 

金子 – ライブで東京に行ったのですが、毎日バンドメンバーと何かしら遊んでいて楽しかったですね。神戸に帰って来て、人の来ない自分の店にいて結構落ち込んだので、あの時は躁状態だったんだと思います。「ダンシングベイビーのモノマネやって!」 って言われて、やりましたからね。躁じゃないとやらないでしょ。ダンシングベイビーのモノマネなんて。

 

– 理想の未来を教えてください。

 

金子 – 個人的には、自分が儲けて、普段お世話になっている人たちに恩返ししたり、借金返したり、レコーディング機材揃えたり、海外旅行に行きたいですね。ただ、自分の人生にことごとく裏切られ続けているので、あんまり夢を見ずにダメだったらダメでもういいです。どうせいつか死にますし、下手すればこのインタビューの文言を送信した直後に死ぬ可能性もあるのですから、人に迷惑かけながら生きたいように生きて、もうダメだと思ったらカジュアルに死ぬぐらい人生軽くてもいいかなと思っています。世の中的には、良い音楽や作品を作っている人たちが煩わしいことを考えずに作品に打ち込める環境ができるようになっていってほしいですね。

 

 

 

 

『Before I Go』の詳細はこちらから。

 

 

実店舗での取り扱い:

Jet Set Records(京都/東京)

PALETOWN(東京)

waltz(東京)

Fastcut Records(大阪)

サウナクールミニ(兵庫)

 

デジタル音源の取り扱い:

bandcamp(https://saunacool.bandcamp.com)

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