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読書実録 #4

不定期にお届けするKentaro Mori(世界的なバンド)のコラム。

 

 

■8/7

 

 

『カメラを止めるな!』の監督の短編。

映画の中に現実が組み込まれるメタ映画だが、まったく破綻するスキがない脚本構造の強さ。あと、花嫁、好き。

 

今日からは『舞踏会へ・・・』下巻。

 

「すべての言説はその時代の産物である。この言説にしても」。

 

 

■8/9

 

 

こんなの出てたなんて知らなかった・・・!!!やっぱりこのドラムすごすぎる。

 

1年半ぶりでスタジオ入りしたマイルスは非常にモチベーションが高く、両手に掴んでいたのはスライ&ザ・ファミリー・ストーンとカールハインツ・シュトックハウゼンでした。

(菊池成孔・大谷能生『M/D マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究』)

 

 

ようやく『舞踏会へ・・・』読了。

芸術論、写真論、メディア論、小説論、歴史論、すべてが絡まりあって進行していく小説は、ピンチョン的な複雑さがありながら不思議と読み進められた。

 

我々はフィルム上の出来事に反応しているのではなく、自分の心のなかにおいて同時進行で編集している無数のリールに反応しているのだ。

 

 

■8/11

 

 

河野裕子・永田和宏『たとへば君』(文春文庫)を読む。

歌を詠みあうことでよってしか成しえない家族のコミュニケーション、愛、があった。それはいびつなものだったかもしれないが、歌の中が真実だったようにも思える。

 

一日に何度も笑ふ笑ひ声と笑ひ顔を君に残すため(河野)

 

一日が過ぎれば一日減ってゆく君との時間 もうすぐ夏至だ(永田)

 

 

■8/12

 

 

カルヴィーノ『むずかしい愛』(岩波文庫)を読む。

十二の短編集。痴漢小説「ある兵士の冒険」とオタク小説「ある写真家の冒険」が面白かった。

 

彼女を大きなソファーに座らせると、かれは写真機についている黒い布の下にもぐりこんだ。それはあの後ろの壁面がガラスになっている箱のひとつで、ガラスのところに、乾板に映るのとほとんど同じ像が、時空間内のあらゆる状況から切り離された幽霊のようにかすかに乳色に滲んで映るものだった。アントニーノはビーチェをはじめて見るような感じがした。やや重たげにまぶたを閉じるときや、首を前に突き出すときに彼女がみせる従順さの奥には秘められた何かがあるような気がして、彼女の微笑みも微笑むという行為そのものの背後に隠れているように思えるのだった。

 

鹿島和夫編『一年一組せんせいあのね』(理論社)が、驚愕の一冊。

子どもたちの感性も素晴らしいが、それを汲み取ることができる先生があってこそ。

子どもたちに詩を書かせることで、子どもたちの潜在的な感情を知る、一種の「箱庭療法」みたいなものともいえるのか?

 

きがかぜにのっていました

はっぱがいっぱいありました

だから おんがくになるのです

(「き」)

 

ねるときは

もっとおきときたいのに

おきるときは

もっとねたい

(「へんなこと」)

 

 

 

■~8/19

 

 

こないだのMarker Starlingとのツアーも最高だったNicholas Krgovichの新作が、もう!この曲、ライブでやってたな。

 

旅行中はSuchmosばかり聴いていた。生まれ変わったらSuchmosになりたい。

 

木庭顕『誰のために法は生まれた』を途中まで。

溝口健二の「近松物語」やギリシャ悲劇を読みながら、法とはなにかを考える本のようで、最初は、なんで演劇なの???と思っていたけど、法って演劇的な空間なんだ、ってことのようです。2千年以上前のギリシャからすでにこのシステムができていて、現在もそれに基づいていることに驚く。面白くなってきたけど、ちょっと疲れたので、今日はこのへんで。

 

法というのは、以上のような普通の裁判をするのでなく、劇中劇をさしはさんでまずは権力をブロックする、そして劇中劇の外の舞台から、舞台の外、劇場の外にそのまま出て、[・・・]じっくり議論して事柄を吟味し、最終的にどちらの勝ちかを決める、そういうシステムなのです。

 

旅先で買った、牧野伊三夫『仕事場訪問』(港の人)が素晴らしい。

葛西薫、立花文穂、福田尚代など9名の芸術家を訪ねる。

平易で誠実な文章に引き込まれる。

筆者の芸術への誠実な向き合い方が、文体からうかがえる。

 

この日、話をうかがいながら、偉そうに、安易に「芸術とは」などと定義するよりも、僕は、まずとことん描いて、そのことを楽しむべきだろうと思ったのだ。

 

 

 

森美術館の『建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの

 

が、腰を抜かすほどの素晴らしさだった。濃厚さだった。

「西洋で生まれたモダニズムは、日本にもともと内蔵されていた」、という指摘や、青木淳「ルイ・ヴィトン」の「包装紙としての建築」という和、「内部」と「外部」を入れ子状にする藤本壮介の建築が「和室」の構造からきていることや、「内部=外部」関係をゆるやかに接続する妹島和世=SANAAの「京都の集合住宅」は斬新で、生活の広がりを感じられたし、一方でそれらが注目を集めるほど、坂茂の「紙の建築」は特異であるとも感じた。

これだけ濃密で、知的好奇心を刺激された展示は今まで見たことがなかったと思う。まだの方はぜひ行ってみてください。

大好きな近藤聡乃のアニメーションも面白かった。この人の描く人物の、太ももの太さ。整然とした手書き文字。

 

 

TEXT:Kentaro Mori(世界的なバンド

category:COLUMN

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