この夢がずっと続きますように|iVy 1stワンマン「秘色庭園」ライブレポート

2025年8月15日 渋谷WWW

 

 

Text : つやちゃん

Photo : 米澤桃子

 

夢みたいだった。夢にあふれていたね。夢だったのかもしれない。

 

8月15日、渋谷WWWにて披露された、iVyのワンマンライブ「秘色庭園」。会場に入るといろいろなところに写真やイラストが貼られて、そこは天国になっていた。描かれた架空のキャラクター・iVyちゃんがきらきらと輝き、皆が写真を撮っている。物販の列は長蛇で、思い思いのスタイルに身を包んだ人たちがステッカーやZINEを買っている。楽園みたいだった。幸せにあふれていたね。楽園だったのかもしれない。

 

 

この日の公演はソールドアウト、フロアはぎゅうぎゅう。ステージで煌々と光る剣、マイクや機材に絡まるツタ=ivy。皆が静かに見守る中、二人が現れる。白を基調としたウィッシュコアな衣装に、天使の羽根。「秘色庭園」の世界観が具現化され、「ホワイト・リバー・ジャンクション」からライブは始まる。実写とイラストが入り混じった映像とともに、iVyは真剣にサウンドを奏でていく。「頭が真っ白なって/かたちつくっても/しょうがないの/真っ白真っ白/真っ白真っ白」と歌い、フロアの空気が純白に染まっていく。

 

 

アップテンポな「tea time mystery!」、浮遊感ある「楓桜」、サイケデリックな「ユーガッタメール」、ポエトリーリーディングが映える「pupu6」と、冒頭から次々とスイートでエネルギッシュな音像が披露され、観客は皆うっとりと見惚れる。随所で二人が顔を見合わせて、幸せを確かめ合う。その笑顔が幸福感に満ちていて、自然と涙があふれ出る。生で聴くiVyサウンドは思ったより豪快で、ベッドルームから生まれた脆い音楽が力を与えられ、むくむくと広がっているみたいだった。

 

 

シュールなVJとともに「ファミレスロック」で楽しくなる。テンションが上がったキーボード/ボーカルのpupuが、ボールを次々と客席に投げ入れる。会場の空気が和らいで、笑顔が満ち満ちて、ここからEP『幽泳プログラム』の「kirakirakiller」「ゆりコは樹海」が届けられる。ギター/ボーカルのfukiは、繰り返し「ありがとう」と言う。pupuはずっと笑顔だ。その後二人は新曲も楽しそうに演奏し、ユニットセットの最後を「ヴァンパイア」で締めた。どこか空想的で、現実のものとは思えないようなふわふわしたiVyの音楽に、手触りと匂いが与えられていく。あぁ、存在したんだ、と思う。iVyの音楽は、この世に在った。『幽泳プログラム』も、『混乱するアパタイト』も、夢じゃなかった。

 

 

転換でVlogのような二人の日常を捉えた映像が流れたのち、ライブは第2部のオーケストラセットへ。〜離、brain node、Cwondo、穂ノ佳、小松成彰、toulavi、ゆnovationら、インディペンデント・シーンの奇才たちオールスターがステージに集まり、楽団「iVy コンテンポラリー・パーク・オーケストラ♪」として「ツキノカケラ」をジャム演奏する。スクリーンには演奏する皆の姿が映り、その楽しそうな表情を見ていると、二人だけの親密な関係がたくさんの人に伝播して広がっていくみたいで、心がほどける。キラキラした音、まばゆい音、華やかな音、さまざまな歪さの中でかけがえのない音が粒立って、fukiとpupuと穂ノ佳と小松成彰の声が重なって、「ツキノカケラ」がどんどん膨らんでいく。全員が、iVyの世界を祝福してる。

 

 

「秘色庭園」は、私たちをどこまでも連れていく。第3部はバンドセット。雪国の木幡徹己(dr)、京英一(g)、yonawoの田中慧(b)、ひとひら/その感激と記録の山北せな(g)が現れ、「any n○ise」から三本のギターで骨太なバンドサウンドを聴かせる。「Hello pihla!」や「カラクリ関係」「クラスルーム」といった、音源では軽やかで柔らかいテクスチャの楽曲も、強い感触と重層的な音圧でぐんとアップデートされる。iVyの衣装はカジュアルになり、天使のヘアピンは星に変わっていた。USインディのガールズバンド風のたたずまい? カッコいいiVyも素敵。fukiのボーカルもどんどん骨太になっていく。特に「SCF空蝉」は強烈で、どこまでも伸びる声と破裂しそうなシューゲイズサウンドが渾然一体となって、フロアの空気を切り裂く。

 

 

ドキドキしたまま本編が終わり、アンコールへ。たくさんの仲間とともに輪を広げたのちに、またiVyは二人だけの世界になって戻ってきた。なんと、今回のワンマンライブのために作ったという新曲を弾き語りで。照明がはっきりと二人をとらえて、繊細な音にいのちが注入されていくようだ。あと少しで、この夢のような楽園が終わってしまう。最後は、バンドメンバーを呼び戻して再びの「ホワイト・リバー・ジャンクション」。とんでもない演奏。オルタナティヴで、ドリームポップで、でもどこまでもシューゲイズで、頭が真っ白になる。「頭が真っ白なって/かたちつくっても/しょうがないの/真っ白真っ白/真っ白真っ白」。

 

 

iVyのワンマンライブ「秘色庭園」は、夢のような楽園だった。空想と現実を往復する幻想的なキャラクター性。ベッドルームから広がった音楽を強靭なものに変換する、ライブ・パフォーマンス。そして、仲間や観客を巻き込む祝祭コミュニティの中心にいる二人。iVyの音楽は、元来、脆く儚く、DIY的な小さな音楽だ。でも、そこを起点にしながら、ライブ空間では力いっぱいのエネルギーを帯びていく。仲間とともに、一定のフォーマットに収まらず、常に変奏しながら多面性を見せる。fukiとpupuの世界が、なぜ今これほどまでに熱狂を生み始めているのか。「秘色庭園」には、その答えが詰まっていた。

 

 

fukiは最後に、「こんなに暑い中、皆さんそれぞれ生活があるのに、今日この場を選んでくださってありがとうございました」と言っていた。恐らく、これからiVyは、もっとたくさんのそれぞれの生活の中に秘色庭園を作って、夢みたいな楽園をどんどん生み出していく。そこには、いろんな音楽や写真やイラストがあって、iVyちゃんも描かれていて、とてもとても幸せで。どうか、この夢がずっと続きますように。最高のライブでした。

 

 

 

 

iVy 1st oneman show “秘色庭園”

日付:2025年8月15日(金)

会場:WWW Shibuya

開場 18:30 / 開演 19:30

Supported by AVYSS

 

iVy Band set : iVy + Gt.京英一(雪国), Gt.山北せな(ひとひら/その感激と記録), Ba.田中慧(yonawo), Dr.木幡徹己(雪国)

 

iVy コンテンポラリー・パーク・オーケストラ♪ : iVy,  〜離, brain node, Cwondo, toulavi, ゆnovation, 小松成彰, 穂ノ佳

 

VJ Direction : JACKSON kaki

VJ:Yo Oyama

Hair & Makeup : Lisa

Styling : Tatsuki Itakura / iVy

Staging : yoh / iVy

Still : momoko yonezawa / lisa nishikawa

 

– Flyer credits

Photo: マ

Styling: Tatsuki Itakura

Hair & Makeup: alien.melissa

Illustration: pupu

Graphic Design: Yosuke Tsuchida

Produced by AVYSS

category:FEATURE

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この夢がずっと続きますように|iVy 1stワンマン「秘色庭園」ライブレポート

2025年8月15日 渋谷WWW

 

 

Text : つやちゃん

Photo : 米澤桃子

 

夢みたいだった。夢にあふれていたね。夢だったのかもしれない。

 

8月15日、渋谷WWWにて披露された、iVyのワンマンライブ「秘色庭園」。会場に入るといろいろなところに写真やイラストが貼られて、そこは天国になっていた。描かれた架空のキャラクター・iVyちゃんがきらきらと輝き、皆が写真を撮っている。物販の列は長蛇で、思い思いのスタイルに身を包んだ人たちがステッカーやZINEを買っている。楽園みたいだった。幸せにあふれていたね。楽園だったのかもしれない。

 

 

この日の公演はソールドアウト、フロアはぎゅうぎゅう。ステージで煌々と光る剣、マイクや機材に絡まるツタ=ivy。皆が静かに見守る中、二人が現れる。白を基調としたウィッシュコアな衣装に、天使の羽根。「秘色庭園」の世界観が具現化され、「ホワイト・リバー・ジャンクション」からライブは始まる。実写とイラストが入り混じった映像とともに、iVyは真剣にサウンドを奏でていく。「頭が真っ白なって/かたちつくっても/しょうがないの/真っ白真っ白/真っ白真っ白」と歌い、フロアの空気が純白に染まっていく。

 

 

アップテンポな「tea time mystery!」、浮遊感ある「楓桜」、サイケデリックな「ユーガッタメール」、ポエトリーリーディングが映える「pupu6」と、冒頭から次々とスイートでエネルギッシュな音像が披露され、観客は皆うっとりと見惚れる。随所で二人が顔を見合わせて、幸せを確かめ合う。その笑顔が幸福感に満ちていて、自然と涙があふれ出る。生で聴くiVyサウンドは思ったより豪快で、ベッドルームから生まれた脆い音楽が力を与えられ、むくむくと広がっているみたいだった。

 

 

シュールなVJとともに「ファミレスロック」で楽しくなる。テンションが上がったキーボード/ボーカルのpupuが、ボールを次々と客席に投げ入れる。会場の空気が和らいで、笑顔が満ち満ちて、ここからEP『幽泳プログラム』の「kirakirakiller」「ゆりコは樹海」が届けられる。ギター/ボーカルのfukiは、繰り返し「ありがとう」と言う。pupuはずっと笑顔だ。その後二人は新曲も楽しそうに演奏し、ユニットセットの最後を「ヴァンパイア」で締めた。どこか空想的で、現実のものとは思えないようなふわふわしたiVyの音楽に、手触りと匂いが与えられていく。あぁ、存在したんだ、と思う。iVyの音楽は、この世に在った。『幽泳プログラム』も、『混乱するアパタイト』も、夢じゃなかった。

 

 

転換でVlogのような二人の日常を捉えた映像が流れたのち、ライブは第2部のオーケストラセットへ。〜離、brain node、Cwondo、穂ノ佳、小松成彰、toulavi、ゆnovationら、インディペンデント・シーンの奇才たちオールスターがステージに集まり、楽団「iVy コンテンポラリー・パーク・オーケストラ♪」として「ツキノカケラ」をジャム演奏する。スクリーンには演奏する皆の姿が映り、その楽しそうな表情を見ていると、二人だけの親密な関係がたくさんの人に伝播して広がっていくみたいで、心がほどける。キラキラした音、まばゆい音、華やかな音、さまざまな歪さの中でかけがえのない音が粒立って、fukiとpupuと穂ノ佳と小松成彰の声が重なって、「ツキノカケラ」がどんどん膨らんでいく。全員が、iVyの世界を祝福してる。

 

 

「秘色庭園」は、私たちをどこまでも連れていく。第3部はバンドセット。雪国の木幡徹己(dr)、京英一(g)、yonawoの田中慧(b)、ひとひら/その感激と記録の山北せな(g)が現れ、「any n○ise」から三本のギターで骨太なバンドサウンドを聴かせる。「Hello pihla!」や「カラクリ関係」「クラスルーム」といった、音源では軽やかで柔らかいテクスチャの楽曲も、強い感触と重層的な音圧でぐんとアップデートされる。iVyの衣装はカジュアルになり、天使のヘアピンは星に変わっていた。USインディのガールズバンド風のたたずまい? カッコいいiVyも素敵。fukiのボーカルもどんどん骨太になっていく。特に「SCF空蝉」は強烈で、どこまでも伸びる声と破裂しそうなシューゲイズサウンドが渾然一体となって、フロアの空気を切り裂く。

 

 

ドキドキしたまま本編が終わり、アンコールへ。たくさんの仲間とともに輪を広げたのちに、またiVyは二人だけの世界になって戻ってきた。なんと、今回のワンマンライブのために作ったという新曲を弾き語りで。照明がはっきりと二人をとらえて、繊細な音にいのちが注入されていくようだ。あと少しで、この夢のような楽園が終わってしまう。最後は、バンドメンバーを呼び戻して再びの「ホワイト・リバー・ジャンクション」。とんでもない演奏。オルタナティヴで、ドリームポップで、でもどこまでもシューゲイズで、頭が真っ白になる。「頭が真っ白なって/かたちつくっても/しょうがないの/真っ白真っ白/真っ白真っ白」。

 

 

iVyのワンマンライブ「秘色庭園」は、夢のような楽園だった。空想と現実を往復する幻想的なキャラクター性。ベッドルームから広がった音楽を強靭なものに変換する、ライブ・パフォーマンス。そして、仲間や観客を巻き込む祝祭コミュニティの中心にいる二人。iVyの音楽は、元来、脆く儚く、DIY的な小さな音楽だ。でも、そこを起点にしながら、ライブ空間では力いっぱいのエネルギーを帯びていく。仲間とともに、一定のフォーマットに収まらず、常に変奏しながら多面性を見せる。fukiとpupuの世界が、なぜ今これほどまでに熱狂を生み始めているのか。「秘色庭園」には、その答えが詰まっていた。

 

 

fukiは最後に、「こんなに暑い中、皆さんそれぞれ生活があるのに、今日この場を選んでくださってありがとうございました」と言っていた。恐らく、これからiVyは、もっとたくさんのそれぞれの生活の中に秘色庭園を作って、夢みたいな楽園をどんどん生み出していく。そこには、いろんな音楽や写真やイラストがあって、iVyちゃんも描かれていて、とてもとても幸せで。どうか、この夢がずっと続きますように。最高のライブでした。

 

 

 

 

iVy 1st oneman show “秘色庭園”

日付:2025年8月15日(金)

会場:WWW Shibuya

開場 18:30 / 開演 19:30

Supported by AVYSS

 

iVy Band set : iVy + Gt.京英一(雪国), Gt.山北せな(ひとひら/その感激と記録), Ba.田中慧(yonawo), Dr.木幡徹己(雪国)

 

iVy コンテンポラリー・パーク・オーケストラ♪ : iVy,  〜離, brain node, Cwondo, toulavi, ゆnovation, 小松成彰, 穂ノ佳

 

VJ Direction : JACKSON kaki

VJ:Yo Oyama

Hair & Makeup : Lisa

Styling : Tatsuki Itakura / iVy

Staging : yoh / iVy

Still : momoko yonezawa / lisa nishikawa

 

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Styling: Tatsuki Itakura

Hair & Makeup: alien.melissa

Illustration: pupu

Graphic Design: Yosuke Tsuchida

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