ドゥーマー・サッド・ボーイ|Quadeが2ndアルバム『The Foel Tower』を発表

人里離れた谷で過ごした10日間

 

 

Quadeは2ndアルバム『The Foel Tower』の制作のため、ウェールズの山間の谷に佇む古い石造りの納屋にこもった。

 

その谷は荒涼とした風が吹き抜け、日照時間も少ない場所だった。メンバーは毎晩、パチパチと音を立てる焚き火を囲みながら過ごした。「まるで社会の端っこに追いやられたような感覚だった」と彼らは語る。「私たちの背後には、最後の人里が広がり、その先には容赦のない荒れ果てた荒野がそびえていた。」

 

この環境は、バンドの音楽性を大きく形作ることになる。ブリストル出身の4人組、Barney Matthews、Leo Fini、Matt Griffiths、Tom ConnollyによるQuadeは、この地で特別な作品を生み出す。それは夢見心地でありながら哀愁を帯び、静かで優しいと同時に、力強さと衝撃を持ち合わせた。ウェールズの広大な丘を吹き抜ける風のようにジャンルを横断し、バンドが半ば冗談めかしながらも的確に表現する「ドゥーマー・サッド・ボーイ、アンビエント・ダブ、フォーク、実験的ポストロック」というサウンドにたどり着いた。

 

Quadeはバンドであると同時に、幼少期からの親しい友人同士でもあり、音楽を通じて互いの心の探求と繋がりを深めている。「ここ数年、メンバーそれぞれが多くの困難を経験してきたが、Quadeはそうした現実から避難する場でもあった」と彼らは語る。「だからこそ、私たちはお互いの悩みや問題について頻繁に話し合い、それが『The Foel Tower』の中心的なテーマにもなっている。」

 

この作品は、単なる作曲、編曲、録音の枠を超え、深く意味のある創作過程となった。「アルバムの重要なテーマのひとつは、私たちがなぜ特定の場所に深く惹かれるのかということ。」とバンドは説明する。「私たちはよく、人里離れた谷にこもり、個々の苦しみから逃れる。そこは、メンバー全員で浄化し、新たな希望を見出す場所となる。このアルバムは、私たちがそうした場で得た安らぎへの讃歌でもある。」

 

このアルバムは、Ursula La GuinやCormac MacCarthy、さらにはRS ThomasやYeatsといった文学・映画・音楽の影響を受けつつも、内省的で不安を抱えながらも、洗練され、繊細でありながらも力強い作品となった。

 

プロデューサーのJack OgborneとミキサーのLarry ‘Bruce’ McCarthyとともに制作された本作は、壊れやすく親密な一方で、パワフルで広がりのあるサウンドを実現している。内省的でありながらも壮大で、細やかでありながらも広大なスケール感を持つ。

 

アルバムタイトルの由来となった「Foel Tower」も、このアルバムに大きな影響を与えた。ウェールズのこの人里離れた谷には、貯水池の水位を調整し、最大110km離れたバーミンガムまで水を送ることができる石造りの建造物がそびえている。しかし、1800年代後半まではこの土地には何百もの農家や家族が暮らしていたが、英国政府が土地を買収し、住民を強制的に移住させてしまった。そして、この水は急速に発展するイングランドの工業都市へと供給されるようになった。バンドはこの歴史と政治を掘り下げ、それをアルバムのテーマと融合させた。「この緊張関係を、都会に住む私たちの視点から一方的に批判するのではなく、慎重に探求したかった」と彼らは言う。「そして、それが私たち自身にどう関係しているのかを考えた。環境と調和し、持続可能で誰もがアクセス可能な未来を、私たちはどう描くことができるのか。」

 

The Foel Tower』は特定の時間、場所、状況から生まれた記録。この作品には、ウェールズの田舎で過ごした10日間のすべてが凝縮されている。バンドがその時抱えていた感情や不安が、奇跡的にテープに刻まれた。「このアルバムは、私たちにとってこの谷そのもののように感じられる」と彼らは言う。「ここで交わした会話や体験が詰まっており、それが強く胸を打つ。私たちが経験する苦しみから一時的に解放される場を象徴しているが、その刹那的な性質が逆に深い悲しみをも呼び起こす。実際、このアルバムには多くの哀しみが詰まっている。でも、それと同時に、どこか希望も感じさせる作品なんです。」

 

 

Quade – The Foel Tower

Label : AD 93

Release date : April 18 2025

Pre-order / Stream : https://ad93.lnk.to/TheFoelTower

 

Tracklist

1. Beckett

2. See Unit

3. Bylaw

4. Nannerth Ganol

5. Canada Geese

6. Black Kites

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