洞窟から聴こえる喪失と死のK電子ポップ|jinninがシングル「Goner」をリリース

トラウマとの対峙、カタルシスも解決もない

 

 

jinninの音楽は、コントロールの殻を破り、その下の生々しい神経を露出させる。彼女のサウンドはトラウマとの対峙であり、埋もれた記憶、被害の連鎖、吸収され、目撃され、暴力の執拗な発掘。ここにはカタルシスの幻想も解決もない。ただ、破壊と再生の可能性の間の緊張があるだけ。

 

彼女の前作となるEP『Sleet Comes Down』では、癒されていない傷を美学化し、歪んだレンズを通して記憶を再構築しようとした。シングル「Goner」では、喪失や痛み、死、それらの変容のプロセスを裸にする。アウトロの歌詞にある「足がなくなって、代わりに義肢をつけた」は比喩以上のマニフェスト。かつてあったものに戻ることはなく、ただ残骸から新しいものを創造する。

 

それでもjinninは自己破壊を見世物にすることに警戒心を抱いている。彼女は音楽を単なる苦しみの器としてではなく、変容が根付く空間として捉える。痛みは美学ではなく、降伏を要求するのではなく、再生の可能性を示唆する敷居。音楽的には、jinninの世界は両極端に存在する。洞窟から聴こえてくる歪んだシンセとベースとノイズの壁が、もろくも結晶のようなメロディーへと崩壊していく。反復と崩壊が一つに溶け合い、自己消去と再構築の絶え間ないサイクル。彼女は罪悪感から逃れようとするのではなく、罪悪の中に存在し、意味を書き換えることのできる空間を切り開こうとしている。

 

 

jinnin – Goner

Label : Perpetual Care

Release date: March 27, 2025

Bandcamp : https://jinnin.bandcamp.com/album/goner-single

 

Tracklist

1. Goner

2. Rip B

 

All tracks written, recorded, produced by: jinnin 

Additional Production by: Water Clear

Mixed by: Joel Eel 

Mastered by:  Gustav Brunn @  GG All In Audio

Art Direction by: jinnin

Artwork Illustration by: Mitchel Peters

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