2025/01/16
『Lemuria』リリースパーティー開催
2024年も終わるころ、雪国の1st EP『Lemuria』を聴きながら取材先の都内某所まで歩いた。視界に映るイルミネーションの輝きや、夕暮れを過ぎて夜がやってくる瞬間のあの感じと本作が、怖いぐらいの解像度でリンクしていて目眩がしたことが忘れられない。
そのとき脳裏をよぎったのは、múmやSigur Rósといった寒い国のフォークトロニカ~ポストロック……の影響下で音楽を生み出していた日本のインディーバンドをライブハウスの隅でじっと観ていた2010年代の日々のこと。そんな恥ずかしい感傷につい飲み込まれそうになるほどに陶酔的なサウンドスケープを、自分よりも一回り以上下の2003年生まれの世代が築き上げているという事実にも面食らった。
同時多発的に巻き起こったポスト・シューゲイズのようなムーブメントがある(かもしれない)昨今、その文脈のなかでも突き抜けた秀作として耳目を集めた雪国の1stアルバム『pothos』は、2020年代初頭の共通項である「マキシマリズム」を想起させるラウドな音像を、スリーピースというミニマルな編成でたおやかに展開する美しい作品だった。
しかしながら、彼らはそうした場所から出掛けて、とっくに別の地平を目指しはじめている。それは2月3日(月)に開催される『Lemuria』のリリースパーティーの、バンド発信の催しとしては稀有な「リスニング体験」に振り切ったラインナップからも見て取れる。
今回AVYSS Magazineでは、雪国のコンポーザーとフロントマンを務める京英一と、リリースパーティーの共同オーガナイズを務めるイベントシリーズ〈ephemeral〉を主催するDJ・myeinへクロスインタビューを敢行し、「かつて夢想された存在しない大陸」を意味するLemuriaというタイトルに託された意図、そしていま揺籃期を終え次のフェーズに進もうとしている20年代以降の音楽シーンの在り方など、リリースパーティーに紐づくさまざまなトピックについて伺った。
Photo by Momoko Yonezawa
Interview&Text by NordOst / 松島広人
──よろしくお願いします。まずはデビューアルバム『pothos』から新作EP『Lemuria』に至るまでの足跡について聞かせてもらえればと。前作とは大きく異なるトーンで、個人的にはより一層グッと来るものがありました。
京英一(雪国):基本的に、楽曲は活動の流れとは別で常に作るようにしてて。「ワンマンをやる」とかを理由に、そこに向かって作ろうとするようなことはないですね。できていった曲をタイミングで区切って作品にまとめる感じです。『Lemuria』の収録曲を作ったのは、『pothos』のレコーディングが終わってからリリースまでの半年ぐらいの期間で。その時期のムードが今回の作品に反映されているのかなと思います。
https://friendship.lnk.to/pothos
──トラックの骨子を作っている京くんから出てくる物事を集約したものが『pothos』で、そこからさらに飛び出したものが今回の5曲になるわけですね。今作は1stの延長線上でありつつ、ここ半年ぐらいのモード感が反映されているというか。
京:『pothos』は雪国というプロジェクトの一旦の完成形として出来上がった曲をまとめたものでした。だから特別な作品になったのかなと思います。一方で初期衝動的に作った『pothos』は全体的に音像がラウドすぎて「それって俺たちにとってどうなんだろう?」という反省もあって。それを踏まえて、音色の差し引きで繊細な曲を作り込んでいきたかったんですよね。
──音像の大きさからいわゆるネオ・シューゲイズ的なムーブメントと結びつけて語られることもあったけど、『Lemuria』の5曲をしっかり聴いてみると、むしろ逆方向に向かっているような気がして。それは2010年代の、海外のサウンドを換骨奪胎した日本的なインディーポップとも重なるような感覚ですよね。だからこそ、音楽的になにを吸収した上で今作が生まれたのかが気になって。
京:前からいわゆる北欧的なインディーポップの要素が好きだったんですよね。
──なるほど。かすかに鉄琴のようなサウンドが織り込まれてる点ひとつとってもそうだし、そもそもバンド名もズバリ雪国だし(笑)。
京:そうですね(笑)。そういう点もありつつ、今作からシンセサイザーとか新しく手にした機材を取り入れたことで、ギターの音量の大きさに依存しなくても新しい展開が作れるっていうことに気づいて。それが今回の作品の肝になっている部分かなと思います。
──同名の伝説的なインディー/エモバンドもニューヨークに存在しますが、『Lemuria』っていうタイトルの意味自体は「かつてあった仮想の大陸」みたいなものですよね。そうしたファンタジックな概念を下地にしているんでしょうか。
京:(Lemuriaという単語については)myeinに教えてもらいました。俺がダンスっぽくない質感のDJmixに興味が湧いて、一緒に作ろうよって流れになったとき、あらかじめその名前がつけられたプレイリストが送られてきたことがあって。そういうのも印象的だったし、「レムリア」って単語自体が直近で作った曲たちと結びつくアイコニックなワードとして今回立ち上がってきたので、そのままタイトルとして使わせてもらうことになりました。いまの雪国のモードとして、アンビエントとインディーロックの有機的な部分みたいなものを融合させるような取り組みに挑戦したいという気持ちもあったし、今回のリリースパーティーにもつながるよな、と思って。
──EP自体も素晴らしい完成度なのはもちろん、現代的なプレイリスト、楽曲単位での聴取態度の外側でやっていくという強い意志も感じられる内容で。もちろん曲単位で切り取っても楽しめるんですけど、5曲・23分をひとつのまとまりとして聴き通すことでしか得られないような感覚も詰まっていて。ごく私的な感想ですが、雪国のこれからにとっても記念碑的な作品になっていくような気さえします。
京:俺たち的にもその感覚はあって、『pothos』よりも大事な作品として後々残っていくんだろうな、という気がします。
──今回シンセサイザーとして入っているのが、先日”After the quake”というmyeinさんの〈ephemeral〉や今回のリリースパーティーにも連なるような企画を開催されてたriliumさんみたいですね。
京:彼女はいま、実質的にはほぼ雪国の一員なんですよ。スリーピースだけどライブは5人編成でやっていて、riliumともうひとりのギターが重要なサポートメンバーとして俺たちを支えてくれてます。
──雪国については、スリーピースというバンドとして一番プレーンな形を取りつつも、決してサウンド的に目指している場所はそこじゃないというのも印象的で。いわゆるバンドシーンにも背を向けずコミットしつつ、そこに収まらない形を模索した結果が作品づくりだけじゃなく、今回のWWWでのリリースパーティーのような試みにもつながっているのかなと。それは以前取材したときにも言っていた「仕組みの外側で居場所を作る」という意思ともリンクしてますし。
https://avyss-magazine.com/2024/06/12/51964/
京:それはまさにそうですね、結果的にそうなったというのが正しいですけど。リスニングに振り切ったリリースパーティーをやるというのも、音源とはまた違う形での俺たちの表現の一形態、のような感覚ですね。
──『pothos』以後の半年強の期間で、京くんとはかなりいろんなパーティーでバッタリ会ったりもしたし。そういうところでまた違うインスピレーションを蓄えていったのかなと。
京:「もっといろんなイベントの形があっていいんじゃないかな?」っていうのは、自分の職場でもある渋谷WWWを通して色々な催しを観てずっと思ってきたことで。たとえばWWWβの〈loopな〉もそうだし、今回リリースパーティーのオーガナイズに入ってもらったmyeinが調布Crossでやっている〈ephemeral〉のようなイベントもそうで、ありそうでなかったことを形にしてるなと。そういうサジェストを、より大きな形でやってみることがいま大事なんじゃないかな? と思ったことも今回のリリースパーティーのきっかけになってます。
──私見ですけど、コロナ禍以降に立ち上がったいろんなムーブメントの残り香が違う形に転化したものが、2023年~2024年にかけて具体化されていったなと思ってて。その一環として、ラウドな方向性やマキシマイズ的なアプローチの反動で、よりプレーンで繊細なものに立ち返っていってる流れがあるというか。
京:それはたしかにそうかも。
──だから、京くん自身がスタッフとして大きな場所で働きつつ、そこにはない物事への興味も強まっていったことがいまのスタイルに反映されてるのかな、とも思ってて。具体的にはどういう物事に感化されました?
京:きっかけは明確にあって、下北沢SPREADでケイタ君という同い年のオーガナイザーが手掛けていた〈uncircle〉に出演したことなんですよね。各回全然違う形のチャレンジをしてるような感じで。そもそも『pothos』のリリースパーティーのとき、あえて会場を分けて別々のコンセプトに基づいてやってみたのも〈uncircle〉が着想源になってて。それからmyeinとの交流が生まれたり、クラブに行ったりといろんな体験を経たことが、俺たちのいまのモードに繋がってるのかなと。
──〈uncircle〉から出発して〈ephemeral〉へ、という流れも気になるので、myeinさんについての話も伺えれば。DJやキュレーションのサポートをお願いしようと思ったきっかけは?
京:SoundCloudで彼女のDJmixを聴いたのがきっかけでした。そもそもクラブやダンスミュージック自体にほとんど触れてきてなくて、入口も以前リリースパーティーを一緒に作ってもらったatriくんのイベント〈投擲〉になんとなく行ったぐらいだったので、当初はオンビートで激しめな表現という認識だったんですよね。でも、myeinのDJmixはアンビエント的なサウンドスケープが広がるような感じのオフビートな表現で、しかもそれがイベントで披露されたものだった、ってことに衝撃を受けて。過度に盛り上げず、異なる曲を通じてひとつの世界観を作り込むようなことを、クラブっていう場所でやるのってアリなんだ! って。その後実際に足を運んで聴きにいったりした上で「呼ばせてください」って声をかけたところがスタートでした。
──そういう原体験のしかたもすごく現代的だなあと。myeinさんはDJ自体はどれぐらいやられてるんですか? 〈ephemeral〉の立ち上げの以前からなのか、それともイベントシリーズを始めてからなのか、そのあたりの遍歴もすごく気になります。
myein(ephemeral / 調布Cross):DJは2022年の秋頃からなので、だいたい2年弱ぐらいですかね? 実は私、調布Crossで働き始めるまではクラブとかライブハウスに一切行ったことなくて。働きはじめてからそこにある機材をなんとなく触るようになったのがきっかけでした。
──僕自身DJをはじめたのがコロナ禍の2021年頃だったのでその感覚は分かりつつ、でも同時期にスタートした人の大多数はアッパーな感覚でオンビートな表現にトライするところから始まっていったと思うんですよね、レイヴ~ハードコア・テクノみたいな当時のムード的にも。だから、最初からアンビエントやドローンといったダウナーなスタイルに行き着いているのも不思議に思えて。
myein:それは自分の趣向がそうだったからかも。DJを始めたてのころからBPMとかに一切とらわれず、お気に入りの曲をセレクター的にかけることが多くて。たとえばフライング・ロータスのような、なんというかスピリチュアル・エレクトロニカみたいな感じの音楽は元々好きで聴いてましたし。
──myeinさんの音楽的な原体験はどういうものだったんでしょうか?
myein:いわゆるメジャーな洋楽のヒットチャート的な音楽やThe 1975みたいなバンドが好きで。その後、自然といまかけているような音楽をじっくり聴き入ることを自然とやるようになりました。逆に邦楽はPerfumeとかぐらいしか分からなくて、たとえばボーカロイドの文化とかは私の世代ではすごく大きいものだけど、そういうものは全然通ってきてなくて。でも、DJをはじめてからはダンスミュージックやヒップホップの良さもわかるようになりました。
──ドローン的な美学を最初から貫いてる人の指すヒップホップ像というのも気になります(笑)。
myein:それもオルタナティブ・ヒップホップっていうのかな? 日本だとDos Monosがやっているような、ああいうバランス感のものが好きですね。あと、調布Crossがすごくブーンバップ的な、トラッドなヒップホップに強い箱なのでそういう物事を観て色々と得るものもありました。
──ベーシックなライブハウス的なイメージだったんですが、実はコンシャスなラップが根強い場所なんですね。結構意外です。つまり衝撃的な出会いがひとつあったっていうよりは、自然と行き着いたのがいまのスタイルだったというか。
myein:そうですね。あとは幡ヶ谷FORESTLIMITや〈K/A/T/O MASSACRE〉とかに行って、本当に自由で幅広いスタイルをたくさん目にしたのは大きかったかな。「いろんな形があるんだな」っていうのも、たとえばcocoaさんっていうDJのファンシーで独自のスタイルが確立されている表現に触れたりしたことで発見していったというか。DJって、踊らせるだけじゃないんだなと。
──といった遍歴を、より具体的に形取ったものが主催シリーズの〈ephemeral〉だと思うんですが、こちらはどのようなコンセプトのもと立ち上がったんでしょうか。
myein:以前調布Crossで”Fatum”というリスニング~エレクトロニカ系のイベントをcocoaさん、shinnosukeohiraくん、shiranaihanaさん、necochangさん、吉村晶さん、私というメンバーで開催して。リスニングを軸にしつつ、もう少しイベントとして強固なものをやりたいなと思った最初のきっかけでした。
https://www.instagram.com/p/C0KAWvUhGY3/
──以後、複数のコンセプトで主催イベントを展開していって、それらが〈ephemeral〉に統合されていきつつ〈ほしのおと〉のchihoさんとの共催イベント〈羽化〉などに繋がっていった感じですかね。
myein:リスニングパーティーといってもシリアスすぎず、お客さんとアクトの関係が一方向的じゃないような取り組みを、もう少しショウアップした形でできないかなって思って。その過程で、自分のDJもよりコンセプチュアルなものになっていきました。心境を自分の感覚として実写化させる、みたいな感じですかね。組み合わせでひとつの世界観を作るみたいなことは、〈K/A/T/O MASSACRE〉でのDJsetなんかに現れている気がします。
解放新平(melting bot / Local World / WWWβ):初回の〈ephemeral〉、あまり長居できなかったんですけど僕も行きました。率直に言えば、いわゆるリスニングパーティーのなかでも世界観が一番確立されてるパーティーだなと思って。プロモーター/ブッカーという自分の視点から見ても、いろんなものを見たなかで取捨選択してるっていうのがわかるというか。キュレーションの意義、キュレーターとしての姿勢のようなものを感じましたね。
──個々のアーティストの表現のパワーに頼るのではなく、それをまとめて立ち上がる世界観を出現させるような取り組みを形にできてる人はそう多くないと思いますし。〈ephemeral〉自体も各回が明確なコンセプトのもと独立していて、本当の意味でシリーズになっているというか、企画それ自体が独立しつつも連作のようになっている印象を受けます。
京:それで言うと、〈ephemeral〉の第二回(series ii “Crevasse”)は雪国を軸に組んでくれたイベントで。あれも良かったな。そもそも、俺が前から調布Crossで起きてることに結構食らってて、まだ仲良くなる前のmyeinに「(1stの)リリースパーティーに出てくれませんか?」みたいなコンタクトを取ったのがはじまりだったんですよね。
https://www.instagram.com/p/C9MyAjBSDQt/
myein:そう、「なんか知らない人から連絡来たな」って思って(笑)。
京:DJをブッキングする、ということ自体がまったく初めてのことだったし、ライブハウスの転換DJ文化とかを考えると「転換をお願いするのって冒涜的なことなんじゃないか……?」とか、色々不安にも思いつつ(笑)。その後Crossに出たいな、とも思って声をかけたらああいう内容を組んでくれたりとか、そもそも『pothos』のレコーディングも調布でやってたりとか。だから、調布って土地も雪国的には重要なスポットですね。
──繁華街とか都市ではなく大自然でもない、どちらかというと郊外みたいなところの落ち着きが重要なんですね。多摩地区ってそういう意味では独特だし、多摩川をたどればtmjclubのホームである玉川上水なんかにも繋がってきますし、言うなれば「多摩Swag」みたいな感覚もあるかも? と(笑)。どちらに偏っていても生まれないような独特なムードが、雪国とephemeralに共通しているような気もします。
京:自分の住んでる場所も調布寄りで、楽しいし、近いし、終電気にしなくていいから自然とイベントだけじゃなく、バー営業の日とかにもCrossに入り浸るようになっていって。今回のリリースパーティーをこういう形にするのは最初から決めてたんですけど、DJ陣を加えるならどうしよう、という相談事なんかもCrossでしていくうちに、いっそmyeinと〈ephemeral〉に託しちゃってもいいんじゃないかな? っていう感じになって。
──なるほど! じゃあ、ライブアクトは雪国サイドが決めていって、DJサイドを〈ephemeral〉がキュレーションする、というような役割分担があったわけですね。
myein:完全に分かれつつも、話し合いのなかでavissiniyon(uami+君島大空)の名前が挙がったりとか。
京:uamiさんにお声がけすることは決まってて、それならavissiniyonもよくない?みたいな。俺もavissiniyonのワンマンを観に行ったりしてたから、それだ!と思って追加出演者という形で呼ばせてもらいました。
──こういうバンド発信のもので、アッパー的でないムードのイベントって先例もそう多くないような気がします。とくにある程度の規模感のものでは、No BusesとCwondoさんが手掛ける〈I’m With You〉ぐらいしかなかったんじゃないかなと。雪国を知ってる人はもちろん、雪国のことを知らない人も気になるイベントになっていると思いますね。そういう点にもキュレーションの妙を感じますが、個々の出演者にはどういうふうに声をかけていったんでしょうか?
京:まず宇宙ネコ子さんは、バンド自体の由来というかルーツになっているアーティストで。だから真っ先に、絶対に必要だから誘おうと思ってお声がけしました。そこから考えていって順当にいくと、ほかの近しいバンドに声をかけていくのがバンドシーン的な動き方でいえば自然なんですけど、今回表現したいアンビエンスの感覚や、いまの新しい流れみたいなものを考えるとそうじゃないな、と思って。だからiVyやavissiniyonの存在は欠かせなかったというか。
──同じ価値観を共有できるような人が、やっぱり仲間にいてほしいなっていう気持ちもあって。
京:それもそうだし、俺たちのいまのムードに連なるものの根底としてやっぱりuamiさんのようなアーティストの繊細な表現は欠かせなくて。君島さんの表現も、俺たちがルーツとしてるロック的な感覚が強くあるし。
myein:uamiさんはなんというか、こういう営みをやる上で一番必要になる最後の1ピースみたいな感覚ですね。私も出させてもらった、illequalさん・サ柄直生さんの〈eura〉が主催したFORESTLIMITでの〈えん〉でもそういう感覚をすごく感じて。そもそも私自身もファンだし、1回目の〈Spring Ephemeral〉にも出てもらってますし。
https://www.instagram.com/forestlimit_info/p/C_fOGhmS953/
https://www.instagram.com/p/C4ILlG3yxwj/
──DJ陣を〈ephemeral〉としてキュレーションして集まったnano odorine(ナノ・オドリネ)、Ole Lukøje(オーレ・ルゲイエ)、~離(ユーリ)、Tomo Takashimaといった面々についてはどういう感覚で声をかけていったんでしょうか。
myein:Ole Lukøjeさんたちにもuamiさんと同じく第一回目に出てもらって。
──なるほど。〈ephemeral〉のコアの部分というか。
myein:だし、いろんな催しで一緒になってコミュニケーションを取っていくなかで、今回の美学みたいなものに共鳴してもらえそうだなと思って。
──個人的にはTomo Takashimaくんという、他のアクトよりさらにディープなクラブシーンで活躍しているクラシック〜エクスペリメンタルのヴァイナル・セレクターを、今回のような催しにブッキングすることにも意外性と納得の両方があって感銘を受けたんですが、彼との縁も結構深いんでしょうか。
myein:2,3回ぐらい共演させてもらったなかでアプローチへの共感もありましたし、Ole Lukøjeと同じくクラシックのような音楽が軸にあるってところも共通項だなあと。
京:nano odorineさんについては、唯一自分が思いついたアクトで。DJを観たりするなかでこの人以外に選択肢はないな、と思って。その延長線上としての選択肢をmyeinに委ねた感じですね。
解放:電子音楽的に見ると、いわゆるハイパーみたいなヒップホップやクラブ軸のものがダンスミュージック的に出てきた流れが一段落ついたなか、ムードとしてのアンビエンスっていうのをすごい突き詰めて紐解いていくと、ある種究極のリスニング形態であるクラシックやジャズのような、「伝統」みたいな硬さが自然と求められるようになりつつあるのかな、と。
──ちょっと議論を生みそうな話なのでなんとも言えませんが、いまってオルタナティブなものが飽和してきてて、オーソドックスなものにオルタナティブ性が宿るって逆転現象が起きはじめてますよね。いわば「オルタナティブに対するオルタナティブ」というか。そうなると大樹みたいな、年輪をいくつも重ねたような音楽の凄まじさが新鮮みを伴って伝わってくる。さらに言えば「そうした物事を新しい感覚で咀嚼していく」というのも今後重要な要素になるような気がするんですが、今回その役割を背負っているのが〜離くんなのかなと。
京:〜離さんはしっかり雪国を聴いていただいているようなこともツイッターとかで言及されてましたし、そもそも一回一回のDJや作品を通した表現の深度とかも圧倒的で、ちょっとヤバいなと。
myein:2回目の〈ephemeral〉(series ii “Crevasse”)をやったときに、抽象さんというアーティストをお呼びしたんですけど、その人も〜離さんのレーベル〈i75xsc3e〉からリリースをされてて、uamiさんも同じく〈i75xsc3e〉からのリリースがあったりして。雪国と抽象さんを呼ぼう、と思ったのも〜離さんのTwitterに並びでコメントが出てたのを見て「いいな」と思ったのがきっかけだったので(笑)。
──今回のDJ陣になにか共通点があるとすれば、とにかくすごいディープ・リスナーの5人って感じですよね。どの人もトレンドやムードとは別のところで音楽をすごく能動的に聴く人で、しかもクラシックな面を熟知した上でそうした音楽をフレッシュにかけてる人もいて。クラブによく行く自分のような層からしたら、極論DJだけを観にいってもいいな、と思うような取り合わせにすら感じてて、それもすごく魅力的だなと。
京:今回の裏テーマじゃないですけど、ライブイベントってどうしてもライブアクトに注目度が偏りがちじゃないですか。そこの壁をなくせないかな? とも思ってて。だから理想はライブフロアとラウンジフロアの人口密度が同じぐらいになることですね(笑)。
──行き来もしつつ、いずれかのフロアから離れられなくなるような体験ができると、ずっと記憶にも残るし。デコレーションを担当するSHIBERIAさんとyarilaさんはどういう方々なんでしょうか。
myein:SHIBERIAさんはバンドをやりつつ雑貨屋さんもやられてる方なんですけど、以前私が遊びに行った〈魑魅魍魎〉という新宿SPACEのネオ・ゴスみたいなパーティーでも装飾を担当されてて。その後〈ephemeral〉にも来ていただいたりするなかで、ずっと一緒にやりましょうと話をしてて、今回やっと実現できたような感じですね。yarilaはOle Lukøjeのメンバーの美波(sugar meiha)さんがやられているドールのプロジェクトで、雰囲気的にもピッタリだな、と思ってお願いしました。デコレーションの質感については、一応イメージボードはお渡ししつつ基本的には自由にやってくださいとお願いしてます。
https://www.instagram.com/shiberiantiques/
https://www.instagram.com/yarila.doll/
──先ほど「心境や世界観を実写化する」ようなイメージでDJをしているとも言っていたように、ほぼ脚本家や映画監督みたいな感じでキュレーションに取り組んでるんですね。コンセプチュアルな表現をするにあたって、突き詰めて考えつつもその人の表現や世界観を信頼して託す、というようなバランス感もあるなと。
myein:それこそ松島さんとmewetaくんの”nuzzle”もそういう感じでしたよね。アンビエントとエレクトロニカの有機的な感じに、ダンスミュージック軸なんだけど違う方向を向いてアプローチしている感覚がありましたし。コンセプチュアルだけど、そこに則った上で自由があるみたいな。
京:俺たちのバンド名もまさにだし、北欧的なフォークトロニカ~ポストロックにも影響を受けてきたし、っていうので、1,2月のこの時期に作品を出して、コンセプチュアルなリリースパーティーをやるという一連の流れ自体になにかを感じてほしい、みたいな気持ちもありますね。
──たとえばファッション的なトレンドでいうと”フェアリーグランジ”や”フェアリーコア”というタグがあったりするし、全体的にそういうファンタジックな美学への目線みたいな、言語化されてない価値観がたぶんいろんな人の共通項としてうっすら共有されているのかな、とも思います。
myein:それはそうかも! そもそも〈ephemeral〉自体、「〇〇コアみたいなものから派生したパーティーってあるけどフェアリーコアのパーティーって無いよね?」みたいな話からはじまったパーティーでもあるので(笑)。
雪国 pre. “Lemuria” – 雪国 1st EP 『Lemuria』Release Party –
2025/02/03 MON at WWW
OPEN / START 17:30
TICKET: SOLD OUT
LIVE:
雪国
宇宙ネコ子
iVy
avissiniyon (uami x 君島大空)
DJ:
nano odorine
Ole Lukøje
Tomo Takashima
~離
myein
Decoration: SHIBERIA, yarila
Flyer Design: Karen Nakahara
Curation Support: ephemeral
雪国 – Lemuria
Release date: January 15 2025
https://friendship.lnk.to/Lemuria_ykq2
Tracklist
01.Blue Train
02.時間
03.レムリア
04.金星
05.架空の君へ
Credit:
All Music/Lyrics: 京 英一
Arrange: 雪国
Recording/Mixing/Mastering: Kensei Ogata
Artwork: Yuto Odagiri
category:FEATURE
tags:雪国
2024/12/13
人生に架空の意味付けをしていく様を描いた作品 東京を中心に活動するインディロック・バンド雪国が2025年1月15日に1st EP 『Lemuria』をリリース。記念となるリリース・パーティを2025年2月3日に渋谷WWWにて開催。 『Lemuria』は偶然この星に産み落とされた人々が、苦しい思いをするたびに生きる理由を探るような過程の中で、その人生に架空の意味付けをしていく様を描いた作品。 リリース・パーティではインディロックとアンビエント・ミュージックの有機性に焦点を当て、メインフロアにはライブアクトに宇宙ネコ子、iVy、DJにmyein、バーフロアにはパーティーシリーズephemeralによるキュレーションの元、DJにnano odorine、Ole Lukøje、Tomo Takashima、~離を迎える。会場全体の装飾をSHIBERIA、yarila、フライヤーデザインをKaren Nakaharaが担当。追加アクトは後日発表予定。 雪国 – Lemuria Release date: January 15 2025 Tracklist 01.Blue Train 02.時間 03.レムリア 04.金星 05.架空の君へ Credit: All Music/Lyrics: 京 英一 Arrange: 雪国 Recording/Mixing/Mastering: Kensei Ogata Artwork: Yuto Odagiri 雪国 pre. “Lemuria” – 雪国 1st EP 『Lemuria』Release Party – 2025/02/03 MON at WWW OPEN / START 17:30 U20 ¥2,000 / ADV ¥3,000 / DOOR ¥3,500 (+1D) TICKET: https://t.livepocket.jp/e/20250203www LIVE: 雪国 宇宙ネコ子 iVy + more DJ: nano odorine Ole Lukøje Tomo Takashima ~離 myein Decoration: SHIBERIA, yarila Flyer Design: Karen Nakahara Curation
2024/06/12
6/15 投擲vol.7 at SPACE 首都圏でDJとして活動するatriが、自身がオーガナイズするパーティー〈投擲〉の第7回目として雪国の1stアルバム『photos』のリリースパーティーを開催する。〈投擲〉は首都圏のコミュニティに基づくシーンの形成に別のコンテキストを付与すべく断続的に開催されている実験的クラブイベントで、各回ともにコンセプチュアルかつキッチュな展開で支持を集めている。雪国は2003年生まれのメンバーで構成されたスリーピースのバンド・プロジェクトで、旧来的なバンドシーンの構造とは異なる道筋でオルタナティブな表現を突き詰めている。両陣営のコラボレーションのもと、投擲vol.7 ver.MiD-AiD feat.Schizoを6月15日(土)に開催。それに伴い、出演陣から~離主催〈i75xsc3e〉からのリリースも話題となったOne Boiling Pointを招き、雪国のコンポーザーを務める京、〈投擲〉オーガナイザーのatriとともに鼎談形式でのクロスインタビューを行った。 Text: NordOst Photo: いのジ ──雪国のリリースパーティーをatri君の投擲との共催という形で開催するにあたって、今回鼎談に参加しているOne Boiling Point(OBP)君も含め、まずは三者それぞれのことを教えてもらえたら。 京(雪国):雪国のコンポーザーをしている京と言います。普通に下北とかのバンドシーンで活動してて、結成は2023年の3月ごろです。最近やっといろんな個人企画に出演しはじめたような感じで、バンドの助走みたいな部分がちょうど終わったぐらいです。それに合わせてアルバムの制作も一緒に進めてって、やっと出せることになりました。 ──雪国っていうバンドはどういう感じで始まっていったんですか? 京:ドラムの徹己君と僕が高校、大学と同じで、音楽サークルでコピーバンドをやろうってときに今のベースの大澤君と出会って。僕はサークルには入らずに外で別のバンドをやったりしてたんですけど、そこでは自分がやりたいことができなくて。その間ずっと温めてた曲を形にするために立ち上げたのが雪国です。もちろんベースとドラムにもそれぞれ自分なりのスタイルがあって、それが本当にたまたま僕の曲に合ってた感じで結成しました。 ──大澤君がスロウコア好きだったりとか、徹己君が8485とかを好きでありつつ羊文学やSnail Mailの名前を挙げてる感じとか、やっぱり現代的なミクスチャー感覚みたいなものを標準的に備えたバンドなんだなという印象です。 京:最初のデモとか曲のコアな部分を作るのは僕なんですけど、それをどうアレンジしていくかが大事だと思ってるので、その部分をしっかり3人で話し合って作り込んでますね。各パートの楽器の人っていうより、ソロプロジェクトを3人で動かしてるイメージ。 ──アンサンブルで作るというよりは、京君のアイデアを合議制で膨らませていく感じなんですね。ではOne Boiling Point君についても聞かせてもらえれば! OBP:よろしくお願いします! 音楽を始めたきっかけが就職で、仕事ばっかで「呼吸してるだけ」みたいな感じがまずいな……と思って真剣に向き合いはじめました。 ──もともと音楽自体は好きだったんですよね? 聴いたり作ったり。 OBP:そうです、それこそ軽音サークルみたいな所にも入ってたんですけど、そのときはバンドを組むまでは行かず趣味でやっとけばいいかな? って感じでした。safmusicとかfogsettingsとかが同じサークルにいて一緒に音楽をやってて、safとかがめちゃめちゃ音楽頑張ってるってのは知ってて。横目にすごいな、って思ってたのもあって、僕も頑張ろうと決意しました。その後、~離さんの〈i75xsc3e〉から『浮分離』というEPを出させてもらった辺りから少しずつ聴いてくれてる人も増えていって、今はライブや曲を作ったりしてます。 ──世代的にはatri君、OBP君が近くて25歳ぐらい、京君がその下の20歳ぐらいの世代で僕が30歳になったぐらいなので、今日は1世代ずつスライドしてる感じがあって。その辺の感覚で言うと、いま25歳ぐらいの人だと音楽の受容のされ方がちょうど過渡期ぐらいの感じになりますよね。OBP君はどういう形で音楽に触れてましたか? OBP:自分はめっちゃバンドが好きで、ただそれはポストロックみたいなものが多くて。その後電子音的なものに惹かれていってテクノやハウスとかを聴きはじめました。いまはサブスクなんかでバンドとテクノ、ヒップホップも、全部聞きますみたいな人は珍しくないと思いますけど、自分が中高生ぐらいのころはカルチャーも含めまだ分かれてて。いろんな音楽に触れられるようになったのはたぶん自分たちの世代からで、いろんなものが混ざり合う感覚は自然と身につきました。ただ、さらに下の世代はそれが最初から当たり前なんで、ちょっと違う感性だなっていうのはあるかも。僕らは狭間の世代みたいな感じですよね。 ──音楽とは違う話ですけど、僕の世代ぐらいまでは匿名性の高いインターネットを見てきたり、知識が体系化するのは後天的なことだったりしてて。その狭間ってことですね。 OBP:ですね。二択のどっちかを取ることも両立もできる、みたいな。新しい感覚がある方ではあると思うんですけど、当事者ではなくて一歩引いた俯瞰的なところで見聞きしてるのかなと。 ──OBP君はポストロック寄りのバンドが出自みたいですが、ソロでエレクトロニック的な表現をやろうと思ったきっかけって? OBP:自分の選択肢の中でバンドっていうのはなくて。個人で完結できる音楽っていうのを考えたときにバンドを経て好きになった電子音楽が出てきて、同時にいわゆる実験音楽とかを聴いていくなかで馴染み深い音色が結構あるなってことに気づいてですかね。ただ、あんまりそっちに振り切りたくないなっていう気持ちもあって。安易な言い方で言うとポップスみたいな感じですけど、歌を入れることに対して特に最近は自覚的になってて。なので、エレクトロニカとかエクスペリメンタルみたいな所に接近しながら、今まで聴いてきたポップス的な音楽とかも同時にできればいいな、と思ってこういう感じになりました。自分の趣味って特定のジャンルが好きっていうよりは音楽自体が好きだから、なるべく折衷的でありたくて。名前がついているジャンルをやってる方が賢いかなと思うんですけど、自分はまだ名前がついてない音楽をやりたいので。 ──すばらしい姿勢。そして今回のリリースパーティーを共催という形で作っていったatri君ですが、どういう経緯で今の活動に行き着きましたか? atri(投擲):僕は中高時代が岡山で、カルチャーからはかなり断絶された世界にいて。中学生の頃、ULTRA JAPANが日本に入ってきてそれでEDMってものを知るようになって、それを入口にSkrillexとかPorter Robinsonとかを知って、素直にめっちゃ良いなと思って。学校を無理して休んで〈Shelter Live Tour〉(2016)とかに行ってみたり。で、音楽ブログとかを読みながらEDMから色々知ってくなかでサブジャンルっぽい方が好みかも、とか文脈的に音楽を拾うようなことが原体験でした。あと、自分の地元周りはいわゆる大箱的なロックフェスが盛んで、メロコア以降のバンドとか、邦ロックの中でもちょっと逸れたやつとかを観に行ったり。なので、音楽体験としてなにか特異なものがあったわけではなかったですね。 ──その後、徐々に自分もオーガナイズやDJをしていくようになっていくと思うんだけど、どういう流れでそうなったんでしょう。好きなものを吸収していく中で自分も何か動いてみたい、って感化されたって方が近いのかな。 atri:感化もありますし、単純に他人の表現を見ていくなかで「自分だったらこうやってみたい」っていう自意識が芽生えて……(笑)。コロナ禍前後から僕はずっと自分が表現として何か出力できる場所をずっと探してて。大学入ってからしばらくは小規模な劇団で劇団員をやってみたりしてたんですけど、それもコロナでいろいろ難しくなってしまって。そこで改めて原体験的な電子音楽だったりとかダンスミュージックのことを考え始めて、ちょうど近いタイミングでコロナ前にJUN INAGAWA君のWANKとか全感覚祭とかに足を運んでたりした体験が合流してきて。そのタイミングで親交のあったアニソンDJの方からやってみない? って誘ってもらって、最初はアニクラとかに出始めました。 ──それがしばらく経って、投擲っていうオルタナティブなイベントを主催するようになるわけじゃないですか。結構距離があると思うんですけど、そういうモードの転換点は? atri:しばらくはアニクラっぽいところにいたんですけど、その後中野heavysick zeroのパーティーでラウンジDJをやってみないかって誘われて。そこでG4CH4さんっていうビートメーカーの方に今日のMix良かったから再現録って送ってよ、って言ってもらって、それがきっかけでもっといろんな場所で頑張ってみたいな、と思いはじめました。ただ、そのラウンジの感じには内輪感も正直あって。自分は音楽っていうものがローカルなコミュニケーション手段じゃなかったし、純粋なインターネットネイティブでもなかったのでそのソーシャルさに違和感があって……(笑)。だから、いつか非ソーシャル的なパーティーをやりたいな、っていうのを強く思ってて。せっかくやるならコミュニティを形成するんじゃなくてむしろ反対のことをやってみたい、っていうのが投擲を始めるキッカケでした。なんていうか……すごく簡単に一言で表すとひがみなんですよ、やっぱ(笑)。 ──すっかり嫌われた「界隈」っていう言葉が指すものというか、もしくは首都圏の感じというか。ローカルシーンにも当然それはあるんだけど、やっぱりその内容だったり母数だったりには格差に感じてしまうわけですね。 atri:もちろん全否定はしないですけど、たとえば接近したいコミュニティがあるとしたら自分の方からそこに波長を寄せて入らなきゃ、っていうようなところがあって。でもそれだけだと「自分ってなんだっけ? 何のためにやってるっけ?」ってなるし。そういう葛藤が長く続いた中で、じゃあ自分で場所を作ってみよう、って感じでスタートしました。 ──という、かなり出自の違う3人が合流していったきっかけも気になるところですが。どうですか? 京:本当に直近の話なんですけど、ここに繋がるところがあって。実は僕のクラブの現体験って投擲だったんですよ。 全員:うおー! ──いい話! どんな点に惹かれました? 京:いいなって思った部分が、最初の会場だったorってスペースに独りでいることに何も嫌な部分がないって感覚で。自分は渋谷WWWで働いたりもしてて、ライブハウスとクラブの両面を見てるんですけど、クラブのそういう部分いいなって。バンドシーンより自由な部分に魅力を感じたし、単純に電子音楽の良さも投擲で学べたし。それで話を受けたときは、マジでありがたいなと思いました(笑)。 OBP:僕は正直クラブとかあんまり行ってないんで、あんまり分かってないんですけど。 ──逆にクラブと縁が遠いなりの見え方みたいなのもあると思うから、OBP君のクラブへの印象も知りたいところです。 OBP:たまに行くと、「あ、知り合いの人が知り合いの人と喋ってるな」って……(笑)。まあ、ある種社交的な機能っていうんですかね。なんか待合室の雰囲気っていうか、そういう集まる場所と同じなのかもな、みたいな。 京:僕は最近はクラブのそういうとこも好きになってきましたね。 OBP:うん。でもやっぱり音楽好きだから聴きに来るんじゃないのかな……っていうのはありますね。でも自分が今回出る投擲は、まずお客さんとして遊びに行くの自体が面白そうだなっていうのを感じて。ジャンルとか集客性とかそういうしがらみを一旦置いといて、また違う共通点みたいなところを見つけて人を呼んでるところも良いなと思います。あと、クラブでバンドとDJと(電子音楽の)ライブとかってもっとやってもいいのにって思ってたので、そういうライブハウスでは珍しい感じの多様性みたいなものがあるのもいいなって。 ──と、いう話を聞いてatri君はどう思う? やっぱり嬉しいですよね。 atri:コミュニティ的な部分から離す、っていう意図が伝わってるのはすごく嬉しいですね。もちろんコミュニティに沿ったパーティーってクラブ文化そのものだと思うし絶対必要ではあって、ただそこで行われる行為ってある種の再確認だったりするのかな、って思ってたので。今でこそ大事さが分かりつつも、そもそもが地方の部屋の中で始めたみたいなところもやっぱあって、そういう思いが汲んでもらえたって。 ──OBP君の作品もニュートラルな位置を持たないものって印象が強かったし、それは今回に合ってる感じがしますね。 atri:これはみんな思ってると思いますけど、ハイパー的なバイブスの反動でアンビエントに行く流れってあったじゃないですか。今回はそういう疲れからたどり着くアンビエントではあるんだけど、そこだけじゃなくてもっと身体に寄せた、そこから立ち上がるダンスの感じが欲しくて。OBP君のやってる音楽って単純なノンビートではないし、いわゆるシンガー的な動きともまた違う、拠り所がない音楽だと思ってて。実際〈uncircle〉ってイベントで観たライブもすごい良くて、パーティー組み立てる上で絶対自分の予想を超えてくるポテンシャル持ってるだろうなって。 ──せっかくDIYでやるなら、やっぱり化学反応を起こすためにやるっていうのもひとつの意義ですしね。そうしたシナジーのことも意識して、今回は雪国のリリースパーティーとして共催って形を取ってると思うんですけど、こうして三者で話そうと思ったのはどうして? atri:ぶっちゃけ僕があんまり音の話できないっていうのもあるんですが、投擲のことを汲みとってもらえつつDJでもバンドでもないフォーマットで表現をしているOBP君ともぜひ話しておきたいな、と思って。 OBP:ありがとうございます。そういえば(雪国の)アルバム聴きましたよ。めっちゃ良かった! 京:え? いやいや(笑)。いきなりでびっくりしましたけど、うれしいな。ありがとうございます。 atri:僕は京君の何が好きかって、内向きじゃないところで。いきなり15曲入のアルバムをバンドで出すのも覚悟を感じるし、でもフットワークの軽さとかは非バンド的だなって。投擲をスタートさせたときも絶対に来て! っていう誘い方をしたわけじゃなくて、「こういうことやってるんだよね」くらいの話題として話してて。それだけで遊びに来てくれて、自分なりになにかを持って帰ってくれて……そういう偏りのない音楽の聴き方を現場ベースでできる人って、クラブでもそうかもしれないけどバンドシーンだとより貴重なのかもなって思います。 ──それで言うと、京君はバンドシーンとクラブシーンの良し悪しというか、差異みたいなものを比べたりすることはありますか? それぞれ一長一短なところはあると思うんですけど。 京:バンドってアルバム作ったりしていろいろ頑張っても通過点でしかないよな、っていうところを感じることがあって。自分で飛び込んでみて、「ここでこういう感じで頑張れたらメジャーに行けるかもよ」とか、そういう話ばっかりされたり。上の方の人たちが夢を売る感じとか、そこに従っていける人が評価されていく仕組みとか、言い方は悪いですけど構造が出来上がっちゃってて、やりたいことをやってるだけだと排除されてしまうような気がするんですよ。就活みたいなのが嫌で音楽やってんのに、なんでまたそういうことやんなきゃいけないんだろ? って……(笑)。 ──これはシーン問わず悩んでそうな人も多い課題でしょうね。 京:そうした仕組み自体に影響を与えられないかな、って雪国としても〈Schizo〉っていう自主企画をやってて、今回のコラボも含めてリリースパーティーとして4回開催していく予定です。投擲のあとに続く3回は、メンバーそれぞれが1回ずつ自分の色でイベントを組んでく感じになりますね。大阪編をやろうって話もあります。 ──つまり、一元的なパワーバランスのライブハウス文化みたいなものをズラしていきたいと。 京:そういうライブハウス文化で育ってきたバンドが好きだし影響を受けてきたからこそ、もちろん残ってほしいっていう気持ちもありつつ、自分のオリジナルな新しい表現をする人が育つ土台みたいなのもちゃんとないとなんも変わんねえんだろうなっていうのがあって。 ──投擲と、その後は6/30に下北沢SPREAD、7/11に下北沢LIVEHAUS、8/20に恵比寿BATICAとやっていくわけですけど、個々のコンセプトについても教えてもらたいです。 ☃️Release party☃️ Schizo ~1st full album release party series~ 2024.6.15 投擲×雪国 Pre. @新宿Space 2024.6.30 Gt,Vo Pre. @下北沢SPREAD 2024.7.11 Ba Pre. @下北沢Livehaus 2024.8.20 Dr×BATICA Pre. @恵比寿BATICA 2024.9.25 雪国 Pre. @心斎橋 Hokage ←🆕🌱 pic.twitter.com/EDVhLtZWAv — 雪国 (@ykq2_) June
2024/03/18
ベッドルームの外へ “HEAVEN”のメンバー。 2018年に音楽活動をスタートし、2019年にソロプロジェクトLil Soft Tennisとして活動を開始。昨年にはアルバム『i have a wing』をリリースし、ジャンルやシーンの垣根を越えてさらなる飛躍を見せた。今年5月には〈POP YOURS〉への出演も決定するなど、インディーなサウンドからの影響を色濃く残しながらもオーバーグラウンドな領域へと歩を進める稀有な存在だ。 今回、クリエイター向けPCブランド〈raytrek〉を使用した10分間での音楽制作動画〈10min DTM powered by raytrek〉の収録へ参加。大きな飛躍を感じさせる彼のオルタナティブ観、今まさに抱えている希望や葛藤、さまざまな心情に迫った。 TEXT : NordOst 情報提供:サードウェーブ ──lil soft tennis君へのインタビュー(※)は〈PURE2000〉の頃ぶりで。覚えてますか?(※…2021年6月刊行のZINE『MISTRUST 20-21』にて。) lil soft tennis:もちろん覚えてます。 ──あれからもう3年半ぐらい経つことになるわけですけど、本当に〈PURE2000〉以降から周りの景色が変わりはじめたような気がしてて。 lil soft tennis:なんていうか、ぐねぐねしてた感じがしますね。 ──そこからの3,4年で、音楽への向き合い方や大きな変化って自分の中でなにかありましたか? lil soft tennis:一番大きな変化はまず上京したことと、音楽で生活するようになったことですかね。前はまだ学生やったし。始まりの段階ではコロナにやられてた感じもありましたけど。ちょっと前とかは「ラッパーでもないアーティストでもない、ただのニートやん」みたいに自分的には感じてた時期があって。〈PURE2000〉の1年後ぐらいはまだそういう感じやったんですよ、この先どうしていきましょうか、リアルにヤバいやん、みたいな(笑)。 ──不安を抱えつつも。コンスタントに制作・出演を続けていった結果飛躍していったように見えますけどね。 lil soft tennis:まあそうっすね。大きい制作はそれ以降やとアルバムは2枚ぐらい? EP1枚と最近のアルバムと、あとHEAVENでも1枚。その時の気持ちは記録しとこうって想いは一応あって。HEAVENのも自分の前のアルバムも、感情とか全てにおいて内向きなベクトルな作品やけど一応作っとこう、今やれることやっとこ、みたいな感じで詰め込む気持ちはあったっすね。で、今回のアルバムでまた最初の頃ぐらい外向きな感じになってって。 ──『i have a wing』とかを聴いていて思ったのは、テニス君のモードが今まで以上に開けた感じに変わったのかな、という。 lil soft tennis:最初の『Bedroom Rockstar Confused』のときはベッドルームっていう名も冠してるし、あくまで自分の内的な感情を記録したっていう、自分の中で渦巻いてる気持ちとかを歌に翻訳して外に伝えるような感じでやってて、『i have a wing』はそこから飛び立てたっていう感じやったんですけど、シーンのリアリティが変わったのかなって思う。自分はまだベッドルーム・ヒップホップみたいな感じは保ってますけど、抜け出したいみたいな気持ちもありますね。前は居心地がよかったですけど、今はもうベッドルームにいていいような年じゃないんで。 ──音楽が仕事になっていって、青年期や少年期みたいなものが終わったような感覚なんでしょうか。 lil soft tennis:なんか『NARUTO疾風伝』っていうか第二部的な、そういう感じっすね。 ──もう中忍とか下忍がどうっていう状態じゃなくなったな、みたいな感覚ですかね。 lil soft tennis:まあそうっすね。ベッドルーム的なところから生まれるものに対してどうこうではなく、単純に自分がより広いところに出ていろいろ見たい、という。自然と里の外に出たくなった、といった感じでしょうか? ──そうして拠点はもう東京に移ったけど、いまだにフッドの関西との繋がりが厚い感じは見てて強く感じます。 lil soft tennis:まあ音楽どうこうの前に、普通にフッドの友達みたいな。西の子たちにはすごくそれを感じていいっすね。それ、俺もやっとけばよかったかな、とか最近めっちゃ思ってて。一緒にヒップホップとか聴いて高めてた友達とか、常に俺の一緒にライブ来てくれた友達とか、遊びに行ってた友達とか結構おったんやなぁって。もうちょい気合あれば、みんなでこっち来れてもっといろいろ作れてたかもな、とか。 ──でも、ある種テニス君やRY0N4君が先陣を切って東京に来てくれたお陰で、今関西から東京に出てきてるアーティストの励みにはなったんじゃないかな、とは思います。 lil soft tennis:なんか背中を見せる側じゃないですけど、そういう気持ちはちょっとあったっすね。まあ、それも最近はいい意味でちょっと薄れてきてるっていうか、みんなのフィールドも出来てきてるんで、ほんま安心してます。じゃあ自分はホンマにやりたい、研究したいことだけやろうみたいな。足場は固まったから新しいこと開拓できるな、って思います。まあ、誰々がやってるから、とかじゃないっすけど、みんな頑張ってるのは上がるっすね、普通に。 ──自分の後に活躍しはじめたアーティストに感化されるようなこともあるんでしょうか。 lil soft tennis:やっぱvqくんっすかね。なんかもう凄すぎる。どこにもいない存在というか。ちょっと変な言い方になっちゃうんですけど、全部を今いい感じに評価されてるってよりも、そこでもっとフィルターを通して変形させて、いい感じで独り突き進んでる感じがヤバくて。無限に自分を展開してって端っこを見てるんやと思ってて、自分の中でフィードバックを起こし続けてる感じはやっぱ刺激的やし。 ──年代は関係ないといっても、若い世代であそこまですべてを捧げるようなパフォーマンスをしてる人もあまりいないですしね。 lil soft tennis:さっき仲間の話をしたっすけど、仲間がいるからこそ出来ることと、逆に仲間のことを考えてると出来ないなってこともあって。別に周りの友達とか仲間もいるけど、あくまで自分の表現は超パーソナルに尖ってる、っていうのはあんまりいない存在ですよね。音源でもライブでも聴くたびに「これヤバいなあ、こんなやつどこにもおらんな」って。もっともっと評価されてほしいです。 ──『I have a wing』の客演で言うとVaVaさんとかchelmicoとか、いま第一線で活躍してるアーティストが加わったり、半ば相棒なRY0N4君がいたり、新しい流れでkegøn君が入ってきてるのとかも、音楽で飛躍するだけじゃなく最初からあったつながりをずっと大事にしているからなのかな、と思いました。 lil soft tennis:そうっすね。kegøn君も最高っす。(アルバムの人選は)二面性をしっかり同じ空間上で同期させようっていう気持ちではありましたね。しっかり同じ空間に表現をパッケージングしたいなーっていう。 ──リリパで撮影された映像も見ましたけど、そこでは感動的なことが起きてるように感じられて。みんなで上がっていくためには、誰かしら率いる存在が必要になっていくんじゃないかなって思うんですけど、まとめ役とまではいかずともそうした役割を引き受けてるのかな、ともテニス君を見ていて思います。 lil soft tennis:まあなんていうんですか、それもひとつのHOODみたいな。大阪のリリパやったら、マジでLINEの友達から探したり(笑)。普通に喋って楽しい友達で、かつやってることがおもろくてかっこいいって思う人たち。近い距離感で連絡取ってる友達とできたんですごい嬉しかったですね。 ──あの「F***ed
『Lemuria』リリースパーティー開催
2024年も終わるころ、雪国の1st EP『Lemuria』を聴きながら取材先の都内某所まで歩いた。視界に映るイルミネーションの輝きや、夕暮れを過ぎて夜がやってくる瞬間のあの感じと本作が、怖いぐらいの解像度でリンクしていて目眩がしたことが忘れられない。
そのとき脳裏をよぎったのは、múmやSigur Rósといった寒い国のフォークトロニカ~ポストロック……の影響下で音楽を生み出していた日本のインディーバンドをライブハウスの隅でじっと観ていた2010年代の日々のこと。そんな恥ずかしい感傷につい飲み込まれそうになるほどに陶酔的なサウンドスケープを、自分よりも一回り以上下の2003年生まれの世代が築き上げているという事実にも面食らった。
同時多発的に巻き起こったポスト・シューゲイズのようなムーブメントがある(かもしれない)昨今、その文脈のなかでも突き抜けた秀作として耳目を集めた雪国の1stアルバム『pothos』は、2020年代初頭の共通項である「マキシマリズム」を想起させるラウドな音像を、スリーピースというミニマルな編成でたおやかに展開する美しい作品だった。
しかしながら、彼らはそうした場所から出掛けて、とっくに別の地平を目指しはじめている。それは2月3日(月)に開催される『Lemuria』のリリースパーティーの、バンド発信の催しとしては稀有な「リスニング体験」に振り切ったラインナップからも見て取れる。
今回AVYSS Magazineでは、雪国のコンポーザーとフロントマンを務める京英一と、リリースパーティーの共同オーガナイズを務めるイベントシリーズ〈ephemeral〉を主催するDJ・myeinへクロスインタビューを敢行し、「かつて夢想された存在しない大陸」を意味するLemuriaというタイトルに託された意図、そしていま揺籃期を終え次のフェーズに進もうとしている20年代以降の音楽シーンの在り方など、リリースパーティーに紐づくさまざまなトピックについて伺った。
Photo by Momoko Yonezawa
Interview&Text by NordOst / 松島広人
──よろしくお願いします。まずはデビューアルバム『pothos』から新作EP『Lemuria』に至るまでの足跡について聞かせてもらえればと。前作とは大きく異なるトーンで、個人的にはより一層グッと来るものがありました。
京英一(雪国):基本的に、楽曲は活動の流れとは別で常に作るようにしてて。「ワンマンをやる」とかを理由に、そこに向かって作ろうとするようなことはないですね。できていった曲をタイミングで区切って作品にまとめる感じです。『Lemuria』の収録曲を作ったのは、『pothos』のレコーディングが終わってからリリースまでの半年ぐらいの期間で。その時期のムードが今回の作品に反映されているのかなと思います。
https://friendship.lnk.to/pothos
──トラックの骨子を作っている京くんから出てくる物事を集約したものが『pothos』で、そこからさらに飛び出したものが今回の5曲になるわけですね。今作は1stの延長線上でありつつ、ここ半年ぐらいのモード感が反映されているというか。
京:『pothos』は雪国というプロジェクトの一旦の完成形として出来上がった曲をまとめたものでした。だから特別な作品になったのかなと思います。一方で初期衝動的に作った『pothos』は全体的に音像がラウドすぎて「それって俺たちにとってどうなんだろう?」という反省もあって。それを踏まえて、音色の差し引きで繊細な曲を作り込んでいきたかったんですよね。
──音像の大きさからいわゆるネオ・シューゲイズ的なムーブメントと結びつけて語られることもあったけど、『Lemuria』の5曲をしっかり聴いてみると、むしろ逆方向に向かっているような気がして。それは2010年代の、海外のサウンドを換骨奪胎した日本的なインディーポップとも重なるような感覚ですよね。だからこそ、音楽的になにを吸収した上で今作が生まれたのかが気になって。
京:前からいわゆる北欧的なインディーポップの要素が好きだったんですよね。
──なるほど。かすかに鉄琴のようなサウンドが織り込まれてる点ひとつとってもそうだし、そもそもバンド名もズバリ雪国だし(笑)。
京:そうですね(笑)。そういう点もありつつ、今作からシンセサイザーとか新しく手にした機材を取り入れたことで、ギターの音量の大きさに依存しなくても新しい展開が作れるっていうことに気づいて。それが今回の作品の肝になっている部分かなと思います。
──同名の伝説的なインディー/エモバンドもニューヨークに存在しますが、『Lemuria』っていうタイトルの意味自体は「かつてあった仮想の大陸」みたいなものですよね。そうしたファンタジックな概念を下地にしているんでしょうか。
京:(Lemuriaという単語については)myeinに教えてもらいました。俺がダンスっぽくない質感のDJmixに興味が湧いて、一緒に作ろうよって流れになったとき、あらかじめその名前がつけられたプレイリストが送られてきたことがあって。そういうのも印象的だったし、「レムリア」って単語自体が直近で作った曲たちと結びつくアイコニックなワードとして今回立ち上がってきたので、そのままタイトルとして使わせてもらうことになりました。いまの雪国のモードとして、アンビエントとインディーロックの有機的な部分みたいなものを融合させるような取り組みに挑戦したいという気持ちもあったし、今回のリリースパーティーにもつながるよな、と思って。
──EP自体も素晴らしい完成度なのはもちろん、現代的なプレイリスト、楽曲単位での聴取態度の外側でやっていくという強い意志も感じられる内容で。もちろん曲単位で切り取っても楽しめるんですけど、5曲・23分をひとつのまとまりとして聴き通すことでしか得られないような感覚も詰まっていて。ごく私的な感想ですが、雪国のこれからにとっても記念碑的な作品になっていくような気さえします。
京:俺たち的にもその感覚はあって、『pothos』よりも大事な作品として後々残っていくんだろうな、という気がします。
──今回シンセサイザーとして入っているのが、先日”After the quake”というmyeinさんの〈ephemeral〉や今回のリリースパーティーにも連なるような企画を開催されてたriliumさんみたいですね。
京:彼女はいま、実質的にはほぼ雪国の一員なんですよ。スリーピースだけどライブは5人編成でやっていて、riliumともうひとりのギターが重要なサポートメンバーとして俺たちを支えてくれてます。
──雪国については、スリーピースというバンドとして一番プレーンな形を取りつつも、決してサウンド的に目指している場所はそこじゃないというのも印象的で。いわゆるバンドシーンにも背を向けずコミットしつつ、そこに収まらない形を模索した結果が作品づくりだけじゃなく、今回のWWWでのリリースパーティーのような試みにもつながっているのかなと。それは以前取材したときにも言っていた「仕組みの外側で居場所を作る」という意思ともリンクしてますし。
https://avyss-magazine.com/2024/06/12/51964/
京:それはまさにそうですね、結果的にそうなったというのが正しいですけど。リスニングに振り切ったリリースパーティーをやるというのも、音源とはまた違う形での俺たちの表現の一形態、のような感覚ですね。
──『pothos』以後の半年強の期間で、京くんとはかなりいろんなパーティーでバッタリ会ったりもしたし。そういうところでまた違うインスピレーションを蓄えていったのかなと。
京:「もっといろんなイベントの形があっていいんじゃないかな?」っていうのは、自分の職場でもある渋谷WWWを通して色々な催しを観てずっと思ってきたことで。たとえばWWWβの〈loopな〉もそうだし、今回リリースパーティーのオーガナイズに入ってもらったmyeinが調布Crossでやっている〈ephemeral〉のようなイベントもそうで、ありそうでなかったことを形にしてるなと。そういうサジェストを、より大きな形でやってみることがいま大事なんじゃないかな? と思ったことも今回のリリースパーティーのきっかけになってます。
──私見ですけど、コロナ禍以降に立ち上がったいろんなムーブメントの残り香が違う形に転化したものが、2023年~2024年にかけて具体化されていったなと思ってて。その一環として、ラウドな方向性やマキシマイズ的なアプローチの反動で、よりプレーンで繊細なものに立ち返っていってる流れがあるというか。
京:それはたしかにそうかも。
──だから、京くん自身がスタッフとして大きな場所で働きつつ、そこにはない物事への興味も強まっていったことがいまのスタイルに反映されてるのかな、とも思ってて。具体的にはどういう物事に感化されました?
京:きっかけは明確にあって、下北沢SPREADでケイタ君という同い年のオーガナイザーが手掛けていた〈uncircle〉に出演したことなんですよね。各回全然違う形のチャレンジをしてるような感じで。そもそも『pothos』のリリースパーティーのとき、あえて会場を分けて別々のコンセプトに基づいてやってみたのも〈uncircle〉が着想源になってて。それからmyeinとの交流が生まれたり、クラブに行ったりといろんな体験を経たことが、俺たちのいまのモードに繋がってるのかなと。
──〈uncircle〉から出発して〈ephemeral〉へ、という流れも気になるので、myeinさんについての話も伺えれば。DJやキュレーションのサポートをお願いしようと思ったきっかけは?
京:SoundCloudで彼女のDJmixを聴いたのがきっかけでした。そもそもクラブやダンスミュージック自体にほとんど触れてきてなくて、入口も以前リリースパーティーを一緒に作ってもらったatriくんのイベント〈投擲〉になんとなく行ったぐらいだったので、当初はオンビートで激しめな表現という認識だったんですよね。でも、myeinのDJmixはアンビエント的なサウンドスケープが広がるような感じのオフビートな表現で、しかもそれがイベントで披露されたものだった、ってことに衝撃を受けて。過度に盛り上げず、異なる曲を通じてひとつの世界観を作り込むようなことを、クラブっていう場所でやるのってアリなんだ! って。その後実際に足を運んで聴きにいったりした上で「呼ばせてください」って声をかけたところがスタートでした。
──そういう原体験のしかたもすごく現代的だなあと。myeinさんはDJ自体はどれぐらいやられてるんですか? 〈ephemeral〉の立ち上げの以前からなのか、それともイベントシリーズを始めてからなのか、そのあたりの遍歴もすごく気になります。
myein(ephemeral / 調布Cross):DJは2022年の秋頃からなので、だいたい2年弱ぐらいですかね? 実は私、調布Crossで働き始めるまではクラブとかライブハウスに一切行ったことなくて。働きはじめてからそこにある機材をなんとなく触るようになったのがきっかけでした。
──僕自身DJをはじめたのがコロナ禍の2021年頃だったのでその感覚は分かりつつ、でも同時期にスタートした人の大多数はアッパーな感覚でオンビートな表現にトライするところから始まっていったと思うんですよね、レイヴ~ハードコア・テクノみたいな当時のムード的にも。だから、最初からアンビエントやドローンといったダウナーなスタイルに行き着いているのも不思議に思えて。
myein:それは自分の趣向がそうだったからかも。DJを始めたてのころからBPMとかに一切とらわれず、お気に入りの曲をセレクター的にかけることが多くて。たとえばフライング・ロータスのような、なんというかスピリチュアル・エレクトロニカみたいな感じの音楽は元々好きで聴いてましたし。
──myeinさんの音楽的な原体験はどういうものだったんでしょうか?
myein:いわゆるメジャーな洋楽のヒットチャート的な音楽やThe 1975みたいなバンドが好きで。その後、自然といまかけているような音楽をじっくり聴き入ることを自然とやるようになりました。逆に邦楽はPerfumeとかぐらいしか分からなくて、たとえばボーカロイドの文化とかは私の世代ではすごく大きいものだけど、そういうものは全然通ってきてなくて。でも、DJをはじめてからはダンスミュージックやヒップホップの良さもわかるようになりました。
──ドローン的な美学を最初から貫いてる人の指すヒップホップ像というのも気になります(笑)。
myein:それもオルタナティブ・ヒップホップっていうのかな? 日本だとDos Monosがやっているような、ああいうバランス感のものが好きですね。あと、調布Crossがすごくブーンバップ的な、トラッドなヒップホップに強い箱なのでそういう物事を観て色々と得るものもありました。
──ベーシックなライブハウス的なイメージだったんですが、実はコンシャスなラップが根強い場所なんですね。結構意外です。つまり衝撃的な出会いがひとつあったっていうよりは、自然と行き着いたのがいまのスタイルだったというか。
myein:そうですね。あとは幡ヶ谷FORESTLIMITや〈K/A/T/O MASSACRE〉とかに行って、本当に自由で幅広いスタイルをたくさん目にしたのは大きかったかな。「いろんな形があるんだな」っていうのも、たとえばcocoaさんっていうDJのファンシーで独自のスタイルが確立されている表現に触れたりしたことで発見していったというか。DJって、踊らせるだけじゃないんだなと。
──といった遍歴を、より具体的に形取ったものが主催シリーズの〈ephemeral〉だと思うんですが、こちらはどのようなコンセプトのもと立ち上がったんでしょうか。
myein:以前調布Crossで”Fatum”というリスニング~エレクトロニカ系のイベントをcocoaさん、shinnosukeohiraくん、shiranaihanaさん、necochangさん、吉村晶さん、私というメンバーで開催して。リスニングを軸にしつつ、もう少しイベントとして強固なものをやりたいなと思った最初のきっかけでした。
https://www.instagram.com/p/C0KAWvUhGY3/
──以後、複数のコンセプトで主催イベントを展開していって、それらが〈ephemeral〉に統合されていきつつ〈ほしのおと〉のchihoさんとの共催イベント〈羽化〉などに繋がっていった感じですかね。
myein:リスニングパーティーといってもシリアスすぎず、お客さんとアクトの関係が一方向的じゃないような取り組みを、もう少しショウアップした形でできないかなって思って。その過程で、自分のDJもよりコンセプチュアルなものになっていきました。心境を自分の感覚として実写化させる、みたいな感じですかね。組み合わせでひとつの世界観を作るみたいなことは、〈K/A/T/O MASSACRE〉でのDJsetなんかに現れている気がします。
解放新平(melting bot / Local World / WWWβ):初回の〈ephemeral〉、あまり長居できなかったんですけど僕も行きました。率直に言えば、いわゆるリスニングパーティーのなかでも世界観が一番確立されてるパーティーだなと思って。プロモーター/ブッカーという自分の視点から見ても、いろんなものを見たなかで取捨選択してるっていうのがわかるというか。キュレーションの意義、キュレーターとしての姿勢のようなものを感じましたね。
──個々のアーティストの表現のパワーに頼るのではなく、それをまとめて立ち上がる世界観を出現させるような取り組みを形にできてる人はそう多くないと思いますし。〈ephemeral〉自体も各回が明確なコンセプトのもと独立していて、本当の意味でシリーズになっているというか、企画それ自体が独立しつつも連作のようになっている印象を受けます。
京:それで言うと、〈ephemeral〉の第二回(series ii “Crevasse”)は雪国を軸に組んでくれたイベントで。あれも良かったな。そもそも、俺が前から調布Crossで起きてることに結構食らってて、まだ仲良くなる前のmyeinに「(1stの)リリースパーティーに出てくれませんか?」みたいなコンタクトを取ったのがはじまりだったんですよね。
https://www.instagram.com/p/C9MyAjBSDQt/
myein:そう、「なんか知らない人から連絡来たな」って思って(笑)。
京:DJをブッキングする、ということ自体がまったく初めてのことだったし、ライブハウスの転換DJ文化とかを考えると「転換をお願いするのって冒涜的なことなんじゃないか……?」とか、色々不安にも思いつつ(笑)。その後Crossに出たいな、とも思って声をかけたらああいう内容を組んでくれたりとか、そもそも『pothos』のレコーディングも調布でやってたりとか。だから、調布って土地も雪国的には重要なスポットですね。
──繁華街とか都市ではなく大自然でもない、どちらかというと郊外みたいなところの落ち着きが重要なんですね。多摩地区ってそういう意味では独特だし、多摩川をたどればtmjclubのホームである玉川上水なんかにも繋がってきますし、言うなれば「多摩Swag」みたいな感覚もあるかも? と(笑)。どちらに偏っていても生まれないような独特なムードが、雪国とephemeralに共通しているような気もします。
京:自分の住んでる場所も調布寄りで、楽しいし、近いし、終電気にしなくていいから自然とイベントだけじゃなく、バー営業の日とかにもCrossに入り浸るようになっていって。今回のリリースパーティーをこういう形にするのは最初から決めてたんですけど、DJ陣を加えるならどうしよう、という相談事なんかもCrossでしていくうちに、いっそmyeinと〈ephemeral〉に託しちゃってもいいんじゃないかな? っていう感じになって。
──なるほど! じゃあ、ライブアクトは雪国サイドが決めていって、DJサイドを〈ephemeral〉がキュレーションする、というような役割分担があったわけですね。
myein:完全に分かれつつも、話し合いのなかでavissiniyon(uami+君島大空)の名前が挙がったりとか。
京:uamiさんにお声がけすることは決まってて、それならavissiniyonもよくない?みたいな。俺もavissiniyonのワンマンを観に行ったりしてたから、それだ!と思って追加出演者という形で呼ばせてもらいました。
──こういうバンド発信のもので、アッパー的でないムードのイベントって先例もそう多くないような気がします。とくにある程度の規模感のものでは、No BusesとCwondoさんが手掛ける〈I’m With You〉ぐらいしかなかったんじゃないかなと。雪国を知ってる人はもちろん、雪国のことを知らない人も気になるイベントになっていると思いますね。そういう点にもキュレーションの妙を感じますが、個々の出演者にはどういうふうに声をかけていったんでしょうか?
京:まず宇宙ネコ子さんは、バンド自体の由来というかルーツになっているアーティストで。だから真っ先に、絶対に必要だから誘おうと思ってお声がけしました。そこから考えていって順当にいくと、ほかの近しいバンドに声をかけていくのがバンドシーン的な動き方でいえば自然なんですけど、今回表現したいアンビエンスの感覚や、いまの新しい流れみたいなものを考えるとそうじゃないな、と思って。だからiVyやavissiniyonの存在は欠かせなかったというか。
──同じ価値観を共有できるような人が、やっぱり仲間にいてほしいなっていう気持ちもあって。
京:それもそうだし、俺たちのいまのムードに連なるものの根底としてやっぱりuamiさんのようなアーティストの繊細な表現は欠かせなくて。君島さんの表現も、俺たちがルーツとしてるロック的な感覚が強くあるし。
myein:uamiさんはなんというか、こういう営みをやる上で一番必要になる最後の1ピースみたいな感覚ですね。私も出させてもらった、illequalさん・サ柄直生さんの〈eura〉が主催したFORESTLIMITでの〈えん〉でもそういう感覚をすごく感じて。そもそも私自身もファンだし、1回目の〈Spring Ephemeral〉にも出てもらってますし。
https://www.instagram.com/forestlimit_info/p/C_fOGhmS953/
https://www.instagram.com/p/C4ILlG3yxwj/
──DJ陣を〈ephemeral〉としてキュレーションして集まったnano odorine(ナノ・オドリネ)、Ole Lukøje(オーレ・ルゲイエ)、~離(ユーリ)、Tomo Takashimaといった面々についてはどういう感覚で声をかけていったんでしょうか。
myein:Ole Lukøjeさんたちにもuamiさんと同じく第一回目に出てもらって。
──なるほど。〈ephemeral〉のコアの部分というか。
myein:だし、いろんな催しで一緒になってコミュニケーションを取っていくなかで、今回の美学みたいなものに共鳴してもらえそうだなと思って。
──個人的にはTomo Takashimaくんという、他のアクトよりさらにディープなクラブシーンで活躍しているクラシック〜エクスペリメンタルのヴァイナル・セレクターを、今回のような催しにブッキングすることにも意外性と納得の両方があって感銘を受けたんですが、彼との縁も結構深いんでしょうか。
myein:2,3回ぐらい共演させてもらったなかでアプローチへの共感もありましたし、Ole Lukøjeと同じくクラシックのような音楽が軸にあるってところも共通項だなあと。
京:nano odorineさんについては、唯一自分が思いついたアクトで。DJを観たりするなかでこの人以外に選択肢はないな、と思って。その延長線上としての選択肢をmyeinに委ねた感じですね。
解放:電子音楽的に見ると、いわゆるハイパーみたいなヒップホップやクラブ軸のものがダンスミュージック的に出てきた流れが一段落ついたなか、ムードとしてのアンビエンスっていうのをすごい突き詰めて紐解いていくと、ある種究極のリスニング形態であるクラシックやジャズのような、「伝統」みたいな硬さが自然と求められるようになりつつあるのかな、と。
──ちょっと議論を生みそうな話なのでなんとも言えませんが、いまってオルタナティブなものが飽和してきてて、オーソドックスなものにオルタナティブ性が宿るって逆転現象が起きはじめてますよね。いわば「オルタナティブに対するオルタナティブ」というか。そうなると大樹みたいな、年輪をいくつも重ねたような音楽の凄まじさが新鮮みを伴って伝わってくる。さらに言えば「そうした物事を新しい感覚で咀嚼していく」というのも今後重要な要素になるような気がするんですが、今回その役割を背負っているのが〜離くんなのかなと。
京:〜離さんはしっかり雪国を聴いていただいているようなこともツイッターとかで言及されてましたし、そもそも一回一回のDJや作品を通した表現の深度とかも圧倒的で、ちょっとヤバいなと。
myein:2回目の〈ephemeral〉(series ii “Crevasse”)をやったときに、抽象さんというアーティストをお呼びしたんですけど、その人も〜離さんのレーベル〈i75xsc3e〉からリリースをされてて、uamiさんも同じく〈i75xsc3e〉からのリリースがあったりして。雪国と抽象さんを呼ぼう、と思ったのも〜離さんのTwitterに並びでコメントが出てたのを見て「いいな」と思ったのがきっかけだったので(笑)。
──今回のDJ陣になにか共通点があるとすれば、とにかくすごいディープ・リスナーの5人って感じですよね。どの人もトレンドやムードとは別のところで音楽をすごく能動的に聴く人で、しかもクラシックな面を熟知した上でそうした音楽をフレッシュにかけてる人もいて。クラブによく行く自分のような層からしたら、極論DJだけを観にいってもいいな、と思うような取り合わせにすら感じてて、それもすごく魅力的だなと。
京:今回の裏テーマじゃないですけど、ライブイベントってどうしてもライブアクトに注目度が偏りがちじゃないですか。そこの壁をなくせないかな? とも思ってて。だから理想はライブフロアとラウンジフロアの人口密度が同じぐらいになることですね(笑)。
──行き来もしつつ、いずれかのフロアから離れられなくなるような体験ができると、ずっと記憶にも残るし。デコレーションを担当するSHIBERIAさんとyarilaさんはどういう方々なんでしょうか。
myein:SHIBERIAさんはバンドをやりつつ雑貨屋さんもやられてる方なんですけど、以前私が遊びに行った〈魑魅魍魎〉という新宿SPACEのネオ・ゴスみたいなパーティーでも装飾を担当されてて。その後〈ephemeral〉にも来ていただいたりするなかで、ずっと一緒にやりましょうと話をしてて、今回やっと実現できたような感じですね。yarilaはOle Lukøjeのメンバーの美波(sugar meiha)さんがやられているドールのプロジェクトで、雰囲気的にもピッタリだな、と思ってお願いしました。デコレーションの質感については、一応イメージボードはお渡ししつつ基本的には自由にやってくださいとお願いしてます。
https://www.instagram.com/shiberiantiques/
https://www.instagram.com/yarila.doll/
──先ほど「心境や世界観を実写化する」ようなイメージでDJをしているとも言っていたように、ほぼ脚本家や映画監督みたいな感じでキュレーションに取り組んでるんですね。コンセプチュアルな表現をするにあたって、突き詰めて考えつつもその人の表現や世界観を信頼して託す、というようなバランス感もあるなと。
myein:それこそ松島さんとmewetaくんの”nuzzle”もそういう感じでしたよね。アンビエントとエレクトロニカの有機的な感じに、ダンスミュージック軸なんだけど違う方向を向いてアプローチしている感覚がありましたし。コンセプチュアルだけど、そこに則った上で自由があるみたいな。
京:俺たちのバンド名もまさにだし、北欧的なフォークトロニカ~ポストロックにも影響を受けてきたし、っていうので、1,2月のこの時期に作品を出して、コンセプチュアルなリリースパーティーをやるという一連の流れ自体になにかを感じてほしい、みたいな気持ちもありますね。
──たとえばファッション的なトレンドでいうと”フェアリーグランジ”や”フェアリーコア”というタグがあったりするし、全体的にそういうファンタジックな美学への目線みたいな、言語化されてない価値観がたぶんいろんな人の共通項としてうっすら共有されているのかな、とも思います。
myein:それはそうかも! そもそも〈ephemeral〉自体、「〇〇コアみたいなものから派生したパーティーってあるけどフェアリーコアのパーティーって無いよね?」みたいな話からはじまったパーティーでもあるので(笑)。
雪国 pre. “Lemuria” – 雪国 1st EP 『Lemuria』Release Party –
2025/02/03 MON at WWW
OPEN / START 17:30
TICKET: SOLD OUT
LIVE:
雪国
宇宙ネコ子
iVy
avissiniyon (uami x 君島大空)
DJ:
nano odorine
Ole Lukøje
Tomo Takashima
~離
myein
Decoration: SHIBERIA, yarila
Flyer Design: Karen Nakahara
Curation Support: ephemeral
雪国 – Lemuria
Release date: January 15 2025
https://friendship.lnk.to/Lemuria_ykq2
Tracklist
01.Blue Train
02.時間
03.レムリア
04.金星
05.架空の君へ
Credit:
All Music/Lyrics: 京 英一
Arrange: 雪国
Recording/Mixing/Mastering: Kensei Ogata
Artwork: Yuto Odagiri
第1弾としてANORAK!とillequalによる「Re:Re:」がリリース
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