2024/11/01
起伏の真ん中にあるものとどう付き合っていくか
皆さん、こんばんは。Kenjiです。建築の設計の仕事をしながら音楽や映像の作品を作ったりしています。
自己紹介も兼ねて、私は自分の感情的な性分に依存する制作が非常に多いです。個人的な問題でセルフネグレクトに陥ったことの記録として制作した「Edge of the City」(2021)、その後のほのかに上向いていく生活の期待感について歌った「Covers for Sex Magazine」(2022)、それらをスクリーニング作品としてまとめた「奇妙な海」(2023)など、ここ数年は特にその傾向が強く、あえてこういう言葉を使用すると”繊細ぶっていた”。
怒り、憎しみ、悲しみ。マイナスの感情は個人の主題として今後も大きな存在やテーマである反面、それらは制作において非常に描きやすいという自覚も大いにあります。記号として”エモい”に括られることにも現れている気がする。そして時流とともに死語になる。私的なことなんだ、そんなことはどうでもいいんだと忌避しながらも上手くは逃げられない。個人の事情に対して酷い話だけども大勢からはそれが現実でしょうし。
2024年11月の現在、私は数年前に経験したセルフネグレクトの状態からは完全に立ち直っています。その時の一切はここにはありません。転職も成功して週末はゆっくり過ごせるようになった(前職がとにかく酷かった)、どん底だった反動から承認欲求が爆発したことでBlue Xp(mixシリーズ)やmemoir(パーティー)のような対外的な活動も出来るようになった、過程での制作に狭小ながらも認知の広がりが伴った。つまり、安定した。では、これらを経て起伏の真ん中に比重が大きくなったときに表現をどうするか。そこに大きな悩みが生まれるようになってしまいました。その手段を特に弁えていなかったからです。捉えやすかったものが薄らいだとき、自分の制作に意義が見出せなくなりました。今って何がしたいんだろうなという疑問がよく浮かぶようになりました。単純に制作の引き出しが少なかったのだと思う。
しばらくの時間のあと。では、この平らな部分、暑くも寒くもない温度、掴みづらい感触について描くことそのものを受け入れるしかないし、受け入れるべきだろうと考えました。安定したと言いつつ相変わらず波はあるのだし、露悪的な映像に優しい言葉が重なっていたり、その逆の関係性だったり。そこに生まれる天邪鬼なもの、割り切れないものを意味性を持たせることばかりに取り憑かれないようにして自然体で並べる作業が自分には必要だと思いました。
ですので、この「BLESSED」という作品に特定の意味はありません。ストーリーもないし、映像と言葉の接続は曖昧であるように意識しています。読み取れるわけのない文章の切替の速さはYouTubeで再生を停止することを前提とし、会場でのスクリーニング行為との相性の悪さが目立つようにしており、ある種の”軽さ”があるものとなればよいと考えています。言葉の提供にTarah Kikuchi、uku kasai、川の3名を招きました。彼らの言葉にも相互の関係性はなく、簡単なキーワードのもとで自由に作詞をしていただいています。
ただ、視聴後にほんの少しだけ柔らかい空気が広がってほしい。差し引きの結果に微量の綺麗なものがあるぐらいが理想。そのバランスにしか生まれない安心感にしばし身を預けていたい。預けれるようになりたい。温かい嵐とその後の街、みたいな?そんな景色にこの映像を御守りみたいに持つ自分がある感じ。それが詩的であれば尚のこと良い。ロマンチストなので。
‘BLESSED’ (2024) FILM by Kenji
Screenplay: Kenji
Direction: Kenji
Words: Kenji, Tarah Kikuchi, uku kasai, 川
Kenji https://www.instagram.com/supernalsofttouch/
Tarah Kikuchi https://www.instagram.com/tarah_kikuchi/
uku kasai https://www.instagram.com/urayam_i/
category:NEWS
tags:Kenji
2022/10/17
Yoyouが手掛けたMVが公開 100 gecsやDrain Gangが表紙を飾り、Asher Pennが編集長を務めるUSカルチャー誌「Sex Magazine」に、Kenjiが新作ミックステープ「Covers for Sex Magazine」を提供した。アートワークはsudden starが手掛けている。 「Sex Magazine」のサウンドクラウドで公開されたDJミックスバージョンではKenji自身の楽曲を中心に、Yoshitaka Hikawaと堀池ゆめぁの未発表曲を収録。そして、今回のDJミックスのために制作した楽曲をまとめた『Covers for Sex Magazine』を自主レーベル〈supernalsofttouch〉よりリリース。さらにYoyouがディレクションを務めた収録曲「angel 4 lounge 5」のMVが公開。本楽曲のサンプリングソースはNozomu Matsumotoによる同名の未発表曲の一部とのこと。 – テーマについて – by Kenji – 「Covers for Sex Magazine」はJ-POPのサブジャンルである「セツナ系R&B」に主なインスピレーションを受けて製作しました。安っぽいストリングスや恋愛をテーマとした稚拙な歌詞などは聴くに耐えないと評する人も多いかもしれません。しかし、そうした評論的な態度を持ち合わせず、前向きに信奉し、「セツナ系」という、バイブス一本で乗り切ろうとする非常に抽象的な言葉でグルーピングする様はとてもピュアというか、自分にはないものだと感じました。改めて聴くとそのいたないと思っていたサウンドも(キラキラとしたサウンドエフェクトを採用しているケースが多いのもあって)輝いており、自分の好みだと気づきました。 前作の「Edge of the City」ではセルフネグレクトや鬱病、その受容と微かな前進をテーマとしましたが、今作は体感として分かりやすく心が開いていった2022年の春から夏にかけての時間で製作したものです。そこで先の「セツナ系」が持つピュアネスは私にとって非常に前向きな力を与えてくれました。「セツナ系」には何ら関係のない楽曲も多く収録していますが、同じタイムラインで出来ていったものをパッケージした形です。2022年は自分にとって間違いなく良い年で、そんな確信が表出していればいいなと期待しています。 DJ mix tracklist yoshitaka hikawa – icarus kenji – short mix ‘b’ kenji – orb kenji – e kenji – nai! kenji – short mix ‘tokyo style’ 堀池ゆめぁ – 約束 brother sun, sister moon – ghosts
2021/11/30
収録曲「綴り」の映像公開 Kenjiが16曲入りの新作アルバム『Edge of the City』を本日リリース。本アルバムからspeedy lee genesisがディレクションを手掛けた「綴り」の映像作品が公開。 また、各曲にはcristel bere、shintaro matsuo、paraselene、alma、uxyag kcolbgofが参加し、それぞれの映像ディレクションを聖子、廃材video、pootee、gond、hiroki yamasaki、miki nigoが務めている。 ①告白詩について 1959年に発表されたロバート・ローウェル著『Life Studies in the Nation』では、ローウェル自身が経験した夫婦喧嘩やメンタルヘルスの問題について赤裸々に綴られていました。そうした「個人的なこと」は彼の作品の以前にも詩作におけるテーマにはなっていましたが、評論家ローゼン・タールによると、ローウェルの作品について「それまでの詩人が自分の人生について書くときに被っていた”仮面”を外したのだ」と評しました。「恥ずかしくて、名誉のために明かしてはいけない個人的な告白の連続」でした。「抽象的で普遍的な詩人としてではなく、特定の場所と時間にいる特定の人物として、自分を利用できるようにすることが革新だった」。彼らは私的な生活や経験のための新しいゾーンを切り開いていきました。暴露し、告白し、共有することを目的とした、さまざまな社会的、芸術的実践を開始するのにそれらが役立ちました。(その極めて内省的な姿勢を後に嘆く人物も居ました。それもまた正しいと思います。) ②セルフ・ネグレクトについて 人間関係上の問題を契機として、私は2020年夏頃から、自己放任=セルフ・ネグレクトに陥っていました。自らの生活の営みやケアを放棄する症状です。新型コロナという時世もありましたが、仕事以外の外出は全くせず、休日に食事をする場合は近所のコンビニに行くことも難しくなり、出前を頼み、それらで発生したゴミ等は全てそのまま床に捨てるような生活でした。比喩でなく足の踏み場も無いほどに部屋中がゴミで溢れ、多量の小蝿が飛び、ヘドロ化した生ゴミの臭気が部屋に充満していました。その中でひと一人分だけのスペースが空いたマットレスの上で入浴もせずにずっと寝ていました。排泄と出前の受け取りに伴う歩行以外はしないような生活でした。並行して不眠がちになり、午前5時ぐらいまではスマホを触って、1時間程度の睡眠後に出勤という生活を送っていました。平均的に午後10〜11時頃までは仕事をしていたので、思考がますます鈍化し、何のために働いているのか、そのお金もぶくぶくと太る醜い身体のための食費ぐらいにしか使っておらず、生きている意味が分かりませんでした。ある日、周りの社員が全員退勤したなかで一人で夜遅くパソコンで作業をしていた際に自然と涙が出てきてしまい、もう私の「生」が限界だと悟りました。人生で一番「死」が近い時間でした。 ③「Edge of the City」について 「Edge of the City」は告白詩ムーブメント(①)における代表的な人物である、Anne Sextoneの「Wanting to Die」という詩の朗読から始まります。本作では彼女の存在が大きく、特に「Suicide Note」という詩は、私の友人であるCristel Bereによる朗読を2曲(’Death Poem’,’ループ’)に亘り採用しています。彼女たちの言葉は極限的な個人のトラウマ等について、内省的で、心を突き刺すような悲哀を帯びていました。それが私の物語(②)に不思議と重なる瞬間がありました。彼女は彼女についての言葉を綴って、それが他人である私自身の言葉のように映る偶然の関係性に、今までになく心を打ちました。話者と受け手の距離感に居心地の良さを感じました。また、心身共に追い詰められていた際にBooks and Modernで観たジョナス・メカスの映画により、日記、つまり記録に対しての意識が強く芽生えました。写実的に自身を暴露、解放したい衝動に駆られました。 私の活動遍歴は、アウトプットとしてはフェルナンド・ペソアに憧れていた背景よりオルター・エゴを演出し、数多の名義を使い分け、夥しい量のサンプル・ソースを注ぎ込んだ粗雑で抽象的な、コンセプチュアルなコラージュ音楽が中心でした。私自身は純粋に楽しんでいたに過ぎませんが、客観的には当時隆盛していたヴェイパーウェイブの文化も手伝ってアイロニックに映ったかもしれません。そこで音楽に自身の声を取り入れる発想は当時無かったのですが、メンタルヘルスの問題に対峙する「Edge of the City」に何より必要だったのが、告白するための自身の声でした。過去の作品と決定的に異なるのがその点です 本作はセルフ・ネグレクトの状態から一人で太平洋の海を見に行ったこと、そこで何をするでもなく過ごした数時間、仕事帰りにした友人夫婦との電話、そこで認識した社会的繋がり、受容と前進、祝福についての音楽です。これからも都市の端で音楽や写真、言葉を重ねていくことの宣言でもあります。私は私の音楽をようやく製作することができて、副次的にも、偶然にも、それが誰かにとって共感するものであれば、それは私とAnne Sextoneらとの距離感のようで、ささやかながらに嬉しく思います。 Kenji – Edge of the City Release date : 30 November 2021 Stream : https://linkco.re/f6UV5uMN Support : supernalsofttouch.bandcamp.com/album/edge-of-the-city Tracklist 1. Edge of the City 2. serotonin 3. 詩集 4. Great Moments 5.
2019/02/15
Wasabi TapesファウンダーKenji新曲。 ベルギーはブリュッセルを拠点にするコレクティブ/イベントSlagwerkはこれまでにも、日本のCemetery、RUI HOの別名義DJ Ruan、ssalivaなどをリリースしてきた。シングルに特化したシリーズを更新し、イベントではファウンダーであるOtisがレジデントDJを務める。 今回Slagwerkから新たなリリースアナウンス。Wasabi Tapesを主宰するKenjiの新曲『Haneda』である。美しさと妖しさが同居したピアノの音を軸に彼らしいサンプリングがグロテスクに鳴り響く。 『Haneda』はbandcampでname your priceで購入可能。こちらから。
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