iVyは心という概念|iVy interview

クラスで馴染めない暗さと諦めと一緒に生活していく

 

 

都内のライブハウスやクラブイベントでの活動を通じて、日増しに注目を集める二人組iVy。宅録ユニットとして活動を開始して1年、これまでSoundCloudやYouTubeで楽曲を発表してきた彼女達が、まとまった作品としては初めてとなる1st EP『幽泳プログラム』を7月にリリースした。シューゲイズ、ドリームポップなどのバンド・サウンドをベースに、ある種の危うさを持ったメロディーに載せられたネット世代の鬱が、なぜ普遍性を持ち聴く者を強く捉えるのか。爽やかなポップソングとして聴き流すこともできる楽曲に、なぜ夢中になる者が増え続けているのか。それは表層のかわいさやポップで耳馴染みの良い楽曲の裏に潜む何か、iVy固有のパーソナルな何かがあるからだろう。そしてそのパーソナルな何かが聴く者の別のパーソナルな何かに響くからではないだろうか。ではそのiVy固有のパーソナルな何かとは何か。たぶん言葉にはできないその何か求めてiVyの二人に聞いた。

 

Text by Naohiro Nishikawa

Photo by momoko yonezawa

 

 

──自己紹介をお願いできますか?

 

fuki(以下f):iVyのギター/ボーカルのfukiです。

pupu(以下p):キーボード/ボーカルのpupuです。

 

──iVyの自己紹介はどうですか?

 

f:iVyというのはiVyちゃんという架空のキャラクターをコンセプトにしている宅録ユニットです。

 

──iVyちゃんというのはどこから出てきたんですか?

 

f:もともとiVyは誰かの名前でiVyにしようとなって。そしたらじゃーiVyちゃんを作ろうと。pupuが一杯キャラクターをノートに書いていたので、そこから拝借して選ばれたのがiVyちゃんです。

 

──なるほど、女の子の名前なんですね。調べてみるとツタという意味もあります。

 

p:そうです。イギリスの可愛い女の子の名前にしようってなって、調べたらivyはツタっていう意味もあるし、広がるような意味もあってiVyちゃん。

 

──pupuさんはそういう架空のキャラとかをいろいろ書いているんですか?

 

p:そうですね。もともと絵を書くのが好きで描いていたんですけど、キャラクターというかデフォルメされたものがすごい好きで。絵柄的には村田蓮爾とか、ロボットと女の子とか動物と女の子とかそういうのを一杯スケッチブックに描いていて。それこそfukiちゃんとがっつりつながったきっかけが、絵と音楽でした。fukiちゃんに、初めて喫茶店で会ったときに自分はこういう人間ですって持ち歩いていたスケッチブックを見せたら、めっちゃ無言でずっと見てくれて。それでとりあえず一緒になにか作りたいねって話になって。それが別に音楽じゃなかったかもしれない。

 

 

──二人はそもそもどういうきっかけで知り会ったんですか?

 

p:学校が一緒だったんです。

 

f:学校が一緒だとSNSとかに繋がりができて。pupuともSNSでつながってかわいいなと思って。

 

──高校の話ですか?

 

f:大学。まだ出会って1年なんです。pupuは大学生で、こっちはもう卒業してます。

 

──大学のSNSで知り合って会おうとなったと。

 

f:そうです。喫茶店で遊んでから、波長がピッタリ合って次の週も会おう!ってすぐなって。pupuの作ったぬいぐるみと自分が作ったZineを交換こしたり、初めからお互いの大切にしているものを読み取って、今までにない速度で丁度良いコミュニケーションを築いていった感覚があります。pupuが描いたイラストブックとかに、自分の気持ちとかポエムを沢山書いてて。そういうのってめっちゃプライベートのものだから恥ずかしく感じる物だけど、自分は気持ちがすごいわかるから、すごくいいなと思って。まずは自分の写真とpupuのイラストを合わせたZineを作ろうって意気投合しました。音楽の趣味も合うし、死ぬまでに一緒にバンドやりたいよねみたいになって。で、去年私音楽作ってみるわとか言って、GarageBandで初めてiVyの曲の「Prologue」という、今YouTubeに出している曲を作りました。よく分かんないけどめっちゃ良いって2人でなりました。

 

 

──なるほど、じゃ初めは音楽から始まったというわけでもなくて、なんでもよかったけど何か表現したかったと。

 

f & p:はい。

 

──そのpupuさんのスケッチブックの絵は使っているけど、ポエムは使っていないんですか?iVyの曲の詞はfukiさんが書いているんですよね?

 

f:そうなんですよね。

 

──iVyの曲の特徴としてポエトリーリーディングが入るというのがあります。あれはどちらが書いて、どちらが読んでいるんですか?

 

f:今まで出している曲は、私です。読み上げる間隔とか、この音にはこの言葉しか当てはまらないみたいなのがあって、既存のポエムとかは使わないようにしています。

 

──pupuさんはそこはどうですか?自分の詩を使って欲しいとかは?

 

p:言葉(歌詞)ありきのものにしたいのは汲み取っているつもりです。fukiちゃんに言われたこの歌詞はこう言ってるからこうしてほしいみたいな要望は1番新鮮な状態の意思を受け取る身として、かなり感覚的なもので、空気を察することに近いかなと。それがiVyをやっていく中でやりがいを感じるなと思います。その流れでタイミングが合えば私も活動の中で詩を書いてみたいなと思っています。

 

f:歌いながら書いた後に、私は今こんな感情を持っていたんだと、気づけるからありがたいなって思います。

 

──fukiさんは詩的なブログも書いてますよね。

 

f:はい、だからなんか言葉にするのは好きで。

 

──なんでも良かったけど音楽に行った、そして作れたということですが、fukiさんはもともとバンドをやっていたんですか?

 

f:いや、バンドはやっていなくて。高校のときは軽音部だったんですけど、でもほとんどご飯を食べに行くだけの部活でした。なので一切音楽活動はしていなかったんですよ。曲作りとかは本当にしてなくて。

 

──音楽はiVyが最初ですか?

 

f:ソロでやったのが去年の4月くらいにSoundCloudに上げ始めて。元々なんか聴いてて綺麗だなとか、この感じいいなみたいなのはずっと一人で、iPadで声のない音楽をずっと作ってて。あとは作った動画に音楽をつけるっていう同期作業をよくしてました。それで去年の4月に思い立って、自分の声を入れてみようかなって思って。
『ゆうがたをすぎて』って曲をSoundCloudにアップしたのが初めての声入りの音楽だったと思います。

 

 

──それは今とはあまり変わらない感じなんですかね?

 

f:はい、全然変わらず。

 

──pupuさんは何か音楽はやっていたんですか?

 

p:私は幼稚園のときからピアノをやっていて、高校生のときはクラッシックギターをやっていました。お父さんが若いころバンドをやってたからベースやギターなど家にあってたまに触ってみたり。

 

──お父さんはどういうバンドが好きなんですか?

 

p:記憶に残ってるのはブルーハーツとか。

 

──たぶん二人の高校生ぐらいのときはバンドブームとかで、若い女の子はみんなバンドをやっていたイメージがあります。

 

f:めっちゃブームだったと思う。邦ロックみたいな。

 

──どういうのを聴いてました?

 

p:家の中でかかってたラウドやパンクにあまりピンと来てなっかた頃、ポケモンの映画をレンタルしたときに聴いたTommy February6で初めてこれだ!ってなりそこからTommyっぽさを求める日々を過ごしていて。そんな時にチャットモンチーの求愛ツアーに連れられたきっかけで、ライブというのをはじめて見てバンドに興味を持ちました。高校に入ったタイミングで友達からスーパーカーやフィッシュマンズ、くるりなど教えてもらってYouTubeでライブ映像やMVとか見てもっと自分が好きな感じを探すようになり。とあるライブ映像でシャボン玉を吹きながら轟音の中に立っている女の子を見てはじめてシューゲイザーというジャンルがあるのを知りました。今でもずっと好きな『溶けない名前』というバンドです。

 

f:小学校の時から、ボカロが大好きで、sasakure.UK、ぽわぽわP、古川本舗が大好きで、めっちゃ聴いてて。中学の頃は、椎名林檎やDAOKOにどハマりして。
高校になった頃、友達にサカナクションを観にフェスに連れて行ってもらったきっかけから、バンドを追うようになりました。放課後一人でライブハウスばかり行ってた。
当時tricotが大好きで、ライブがある度、毎月行ったり。ドミコも大好きです。語感や残響の感じ。とにかく色んな音楽を自分の足で聴きに行ってた。自分でやるっていうか、とりあえずライブ見に行くみたいな感じで、小さな箱に色々なバンドを聴きに行った。

 

──どの辺のライブハウスですか?

 

f:下北あたりです。放課後Twitter見て、今日はどこで何やってるかなーって。あとはコロナ禍で家にいる時間が多くて。その時に環七フィーバーズという番組があって。そこで今活躍中のインディーズのバンドみたいなのめっちゃ紹介されてたので見てました。ステレオガールやMINOR THIRDとかすごく大好きでした。

 

──確かにそういったバンドサウンドの影響みたいなのは感じますね。

 

f:pupuと一緒に初めて行ったのはSPOOLのライブでした。共通してすごく好きだったので。それからpupuと出会って一緒にいろんなバンド見に行ったりとかして。

 

p:それこそ今度対バンする*1 KhakiさんもWOZNIAK見に行ったときに初めて見たよね。Khaki見たことあった?そこで初めて見ていいなって思った。

 

*1 8/7に行われた渋谷クラブクアトロの自主公演シリーズ「LAUNCH vol.5」に出演。

https://www.club-quattro.com/sp/shibuya/schedule/detail.php?id=16086

 

──なるほど。去年の年末のAVYSSのリスト*2 も他の人とはちょっと違う感じで新鮮でした。そういう日本のバンドやシューゲイザーのシーンに自分達はいるんだということは思ったりします?

 

f:それは、しないです。色々経て自分も何作りたいのかまだ分からなくて。だから自分たちがバンドっぽくなろうとかは、その形態としてたまにやるのはありだなって思うんだけど、基本は二人でやりたい。今回のEPも若干そういうのもあって、バンドっぽい曲もあるけどエレクトロっぽい、ビートメイクしたものも入れたりして。所属したくないっていうか、してないっていう意識が大きいです。

 

*2 ✦AVYSS ENCOUNTERS 2023 vol.2✦

https://avyss-magazine.com/2023/12/25/48463/

 

──そこが面白いところですよね。好きだった人ってそういうところに行きそうな感じがするじゃないですか。それにfukiさんがやっているもう一つのバンド(fukiは東京を拠点に活動中の4人組のcephaloにギター・ボーカルで参加している)はそういうシーンに近いところにいるのかなと。それでもiVyはそうじゃないところというのはどういう意識からですかね。

 

f:誰かと音楽を作る意識というよりも、完全に2人きり、或いは1人きりで作って、狭い世界の状態のまま表現したいという感じです。手探りで、ずっと不器用に2人だけの砂の城を作ってるみたいな。

 

──でも技術がないって言うけど、バラエティーに富んでいて、どの曲もiVyに聞こえるし、ちゃんとしてるなって思います。曲の構成もちゃんと練られているし、ギターのフレーズとかもすごくいいなって思います。

 

f:嬉しいです。

 

──だから聴いていて、このひとは手馴れなのかフレッシュなのかって分からなかったです。前からバンドをやっている人なのかなって。

 

f:まだぜんぜんできてないから、ギターのソロとかも1個ずつ弾いて、繋げたりで。

 

──iVyのXのアカウントは @ivy_atlantideですが、アトランティスって読むのかな。これはどういう意味なんですか?

 

f:楽園だっけ? 天国とか楽園とか。

 

──架空の島、アトランティス島という意味もあると思いますが、どういう意味があるのかなって思って。

 

f:なんか、そういうのにしようってなって。架空の天国みたいな。

 

──iVyちゃんの苗字ではない?

 

f:はい、苗字ではないです。

 

 

──SoundCloudのタグがAlternative rockじゃないですか。Alternative rockにはこだわりがあるのですか?

 

f:ないです。

 

──さっき言ってくれたバンド達もなんて言うのだろう。邦ロックですが、シューゲイズとか?

 

f:ジャンルでなんて言うのかは分からない。

 

──SoundCloudとかのアイコンになっているのがiVyちゃんですか?

 

p:猫耳の帽子をかぶっている子がiVyちゃんです。それ以外は曲に合わせたやつです。今回のジャケットはiVyちゃんと私たちで、私たちがiVyちゃんのコスプレをしています。

 

f:SoundCloudのジャケットとかアートワークを大事にしてて。pupuの絵が土台だけど、一緒に二人で考えてて。

 

p:なんて言えばいいのかちょっと分からないんだけど、頭の中のイマジナリーの共有っていうか。それってあんまり人とするのって難しいと思ってて。でもfukiちゃんとはそれがうまくいく。でもたまに全然ピント合わない時とかあるけど。

 

f:なんか曲もそうね。これじゃん!みたいなのが2人は全部一緒だから。これはめっちゃ助かって。これや!みたいなのが一緒。だからずっとpupuとわたしは友達で、iVyは心。

 

p:iVyは心という概念。

 

──去年に宅録をはじめて、9月にsouj(Shine of Ugly Jewel)さんのイベントに出ていましたが、あれが初めてのライブですか?

 

f:そうです。soujさんが大塚の地底でやった『牧神狩り』が初めてのライブです。それはすごい大きなきっかけで、その時は自分たちは誰にも知られていないし、誰とも繋がりがゼロだったんですけど、soujさんがたまたま私のSoundCloudを知ってくれて、自分がiVyというユニットをやっていると言ったら、iVyで出させてもらって。

 

──それはfukiさんのソロのSoundCloudにメッセージが来たんですか?

 

f:SoundCloudにintagramのアカウントを載せてて、そこにメールをもらいました。

 

──fukiさんのソロでやりませんかと?

 

f:そうです。『牧神狩り』に出て、なんだこの未知の世界は?みたいに2人ともなって。見に来てくれた人とかが、ちょっとうちらのこと気になってくれて。そこから毎月ライブが入るようになりました。あと、去年のクリスマスのmemoirも大きかったですね。

 

p:そこでリスナーが増えた感じです。

 

f:つながりが増えたよね。交流が増えたっていうか。

 

──Kenjiさん主催のBlue XPのミックスもやっていますよね。

 

f:Blue Xpは去年の4月くらいに。まだ何も活動していない頃に誘ってもらいました。

 

 

 

──それから毎月ライブがあって、TDJのときはWWWβでしたね。

 

f:そうですね。あれも大きかった。

 

──あれは佐久間くんのブッキングなのかな?どういうきっかけで?

 

Sakuma(以下S):soujくんのイベントでライブやったのを知ってて、SoundCloudは聴いてたんですよ。で、TDJが前名義Ryan Playgroundでインディエレクトロニカ的なニュアンスのことをやっていて。インディの文脈も落とし込んで組めたらいいなと思って、誘いました。

 

f:それを経て、活動に対してのやる気っていうか、どんどんイベントを重ねるごとに増えてきて、じゃあ自分たちでもできることないかなって思って、自主企画『ゆめのつづき』をやったりとかして。

 

p:あれも大きかったね。

 

f:外で皆が広げてくれた、iVyってアーティストがいるよって巻き込んでくれたのを、 今度は自分から聴いて欲しい人に直接届けたいって思って。

 

──『ゆめのつづき』は漫画のイベントなんですよね?

 

f:そうです。今創作出来ている自分がいるのは、音楽もそうだけど漫画が大部分にあって。自分が漫画大好きだったから、 そのイベントを開こうと思いました。そして、活動のきっかけになったような方を誘ったり。コンセプトは少女漫画でした。

 

 

 

──参加されていた漫画家の梓義朗さんとはどういうつながりなんですか?

 

f:一緒にイベントを共催したピンキーポップちゃんという子がいて、ピンキーポップちゃんとお知り合いでした。自分も元々梓さんをを見てたりしてたので、是非参加して欲しいねってなりました。少女漫画がテーマではあったけれど、性別など表面上の物は関係なく、自分にとっての少女性を持ち合わせていたり、気になってる方をZineにお誘いしました。良い1日でした。

 

p:うん、結構成功だった。

 

f:Zineとか作ったから、成功というか楽しかったね。いろんな繋がりを半年くらいで得て、やっぱりみんな自分で巻き込んでいくんだなって学んで、じゃあそういう経験を一回はしてみようって。それで結構対外的なものを大事にしすぎて、今度は自分と向き合う時間というのが大事だったと思って、その『ゆめのつづき』が終わってからは、iVyについてだけ考えるようにしようって。

 

──AVYSSのプレイリストに入っていたのもみんなが知って聴くきっかけになったのかなと思います。さっきも聞いたかもですが、そういう感じに寄ってしまって。好きなバンドシーンとはちょっと違うと思うんですけど、違うところに来ちゃったなってのはありますか?

 

f:でもめちゃくちゃ嬉しいですね。 本当に心から。自分の知らなかったこととか、しかもイベントに出る度、影響されるから。出演者さんの音楽聴いてみてとか。 だから本当に自分にとってはプラスでしかないなと。本当それは音楽に限らず、 イベントのやり方であったりとか、その日の人選とかから、脈を読み取って、客観的な視点を知ることができる。

 

p:そういうので見たい

 

f:その日の感情とかも、良い意味でも悪い意味でも大きく揺れ動くことは自分にとって、嬉しいことです。

 

──そういったイベントに出て共感できる人がいますか?同じ感覚を共有できるような?

 

p :この間嬉しかったことは、SOM4LIのリリパでマコさんとお互いの絵をコラボさせようって話しになったり、松戸ビリーバーの”存在しない空の色”での装飾がおもしろかったり、共感というよりドキドキすることが多いです。

 

f :ドアに今日何しにきたん?って紙貼ってあって、めっちゃ面白かった。私は最近でいえば、「ほしのおと」とか。七夕ゼリーとか、ぬいぐるみ持ってきたり なんかそういう、小さな可愛らしい楽しみ方に共感した。目に見えない心の繋がりが、イベントを通じて形になる瞬間が嬉しいです。

 

p : わかる。「ゆめのつづき」の時に感じたけど、その人の好きがみえる瞬間、音楽だけじゃなくてもっと内側のなにかが受け取れるのって嬉しいよね。

 

f : 内側に触れる作業共鳴するのは、怖いなってなるけど、一緒にイベント出た人の音楽にしっかり影響されているというか、沢山の大好きが増えていきました。

 

──みんなバラバラなことをやってるのがいいっていうのもあります。

 

f:そうですね。バラバラでいい。それぞれでいいんだっていうのは、自分もそのままでいいんだなとか。公園コンサート*3 とかも。

 

*3 2008年12月より、東京、千葉、札幌などの公園で定期的に開催される直嶋岳史、kndらによるイベント。音楽だけでなく作品、パフォーマンスを公園などの公共の場で上演する。5/11の第59回公園コンサートにiVyも出演している。

 

 

──公園コンサートは皆さんなかなかユニークでしたね。

 

f:その日共演したnoripiさんも芝生の上で自由にカセットDJしてて。好きに人がやってるのを見るのが自分も好きだから。それを自分もやりたいし。どう受け取ってほしいとかはない。その日一緒に出たcocoaさんのDJも、とても好きです。『牧神狩り』で出会えて良かったです。なんかその人の好きが分かるものをやってる人たちずっと好き。

 

──今回のEPですけど、どういう風に作りたかったとかってありますか。

 

f:iVyは暗い曲多いんですけど、今回のEPにはそういうのは一切入れてなくて。前向きな気持ちがどんどんイベントに出るために増えてきて。最初それが辛くて。私は曲作る時に自分の辛い気持ちでしか作れなかったから。復讐心みたいなところでしか作れなかったのに、どんどん明るくなっちゃうみたいな。どんどん自分のデモが爽やかなサウンドになってしまうの、辛い辛いって思ったんだけどそういうのも自然に受け入れていくことを今回のEPを作った時に学んだ。明るくなっていく自分とか、悲しいけど。最初は自分の暗さに寄り添ってくれるリスナーもいたと思うから。そういうのを失うのは辛いけど。でも仕方ない、現状として明るくなってしまってる、そういうのを、ちょっと一歩引いた目で諦めてみるっていうか。指す光に仕方ないけど手差し伸べてみようみたいな一品にしたくて。どんどん感情的だったものが、感情的じゃなくなっていくことも、諦めて受け入れていく。それは生活の部分とかでも一緒な気がして、 みんな諦めていくっていうか。 でも諦めていくことを悲しいって思いたくないよねみたいな一品にしたかった。

 

──そういったiVyのもつ暗さ、歌詞とかを見ても、クラスの人と馴染めないとかそういうがベースに流れています。それは、どこから来ているのですか?

 

f:明るくなっているとは言ったものの、常にやっぱり自分はネクラで、マイナス思考の暗い人間だから。それはなんか、どんなに明るいことがあっても滲み出ちやうんだと思う。

 

p:グレ一色で吐き出すしかなかったことがあって。そういう言葉ってどこか暗いと感じるけど、でもちゃんとそういう言葉と一緒に生活していけることが、私たちなんだろうなって思います。

 

──そういうマインドになった何かきっかけはあるんですか?その辺がiVyの本質なのかなと自分は思います。

 

f:そうですね…。

 

──あ、言えないことは大丈夫です。たぶんそういうのが多くの人がiVyが良いと思っているところなのかなと。

 

f:人のこと好きで。温かいなって思うことも多いし。でも自分はずっと一人ぼっち。それは悪いことじゃない。一人ぼっちだけど、そういうことをやっぱり、音楽作り始めてから、より濃く考えるようになって。 もし誰かと愛し合っても、骨の髄まで分かり合えることはない。それは悲しいことだけど、pupuと一緒にいて、pupuとシンパシーを感じてもそういった感情になるから。みんなに一人じゃないんだよ、元気だそうとか私は伝えられなくて。それって悲しいことだよね、としか。

 

──人とは分かり合えない。

 

f:うん、自分は人とは分かり合えないと思う。分かり合えないけど、分かり合えないから、知りたいって思う。知りたいって思い続けることが生きることに少しづつ繋がってくる。

 

──そういうのはプロがいて。虚無のプロがいるので聞いてみますか?

 

S:「だけど人生ひとり」的なことですかね。諦めの気持ちは常にあります。

 

──諦めるってことは、理想としてはそうではない方が良いと思っているってこと?

 

S:諦めと前進する気持ちが並行してるって感じですかね。近くで見ているし、遠くからも見てる。どちらかにはならなくて。っていう自分を保ってるみたいな。

 

──そこ行っちゃうと飲まれちゃうのが怖いみたいなのがあったりするのかな。同化してしまうとヤバいんじゃないかとか。

 

S:ナチュラルにそうなっている感じでしょうか。

 

──理解できます?

 

f:そういう姿勢なんだ。

 

S:自分探ししてます。

 

──例えば今回のEPで言うと『クラスルーム』みんな好きな曲だと思うんですけど、あんまりクラスルームという言い方はしないなと思いました。教室とかクラスメートとかは言いますけど。

 

f:教室っていうイメージはなかったです。

 

p:クラスルーム

 

f:難しいね。クラスルームだなって思った。

 

p:クラスルームって。

 

f:クラスルームっぽいねってなった。

 

──今回のEP、自分から見ると結構良い反響があったかなと思うんですが、そのあたりはどうですか?

 

f:嬉しいです。自由に、自由に聞いて欲しい。

 

──反響を見て思ったのは、Xとかでコメントする人はですけど、やはり日本のバンドが好きな人が多いのかなと思いました。きのこ帝国とか羊文学とかスーパーカーとか。そのあたりは納得感はありますか?

 

f:きのこ帝国も羊文学も大好きで、スーパーカーも大好きで聞いてたんで嬉しいなって思う。でも全然違うことも多い。恐れ多いという気持ちで。

 

──佐久間くんがやっていたバンドもスーパーカーって言われたことがありました。

 

f:そうなんだ。

 

S:西麻布BULLET’Sで食品さんとかが出演してたイベントで、解放さんにナカコーさん紹介されて、Jesse Ruinsってのをやっていますって言ったら、「知ってますよ」って言われてめっちゃ嬉しかったっていう思い出。フルカワミキさんとかもいらっしゃって。

 

f:どんなコメントでも嬉しい。

 

p:でもEPとして初めて、聴いてくれてる人が可視化された気がする。

 

──なるほど。確かにあんまりSoundCloudとかだけ聴く人は感想は書かないかもしれません

 

f:なんかイベントに出ても、漠然とした不安があって。

 

──いま出ているイベントとかだと演者と見に来る人の距離が近いこともあってネットに書いたりしないってのはあると思います。

 

f:いろんな音楽に影響されてるから、○○っぽいって言われたら、それはそうだなってなる。そういうのも好きだったし。

 

──自分は初め「クラスルーム」を聞いときに、佐久間くんがやっていたJesse Ruinsっぽいなと思ったんですけどね。

 

f:Jesse RuinsのMV見たら佐久間さんいててびっくりした。

 

p:佐久間さん歩いてきたんですよ。

 

S:それは活動の後半のやつですね。西川さんが監督してたんですよ。

 

 

──初めの方に出てた曲が結構似ていて。ベースのあの感じとか。だから、佐久間くんが好きなのかなって僕は思いました。

 

 

──iVyはMVも作っていますね。

 

f:MVも、できる限りは自分たちでやりたいと思っています。でも、自分たちにできない幅にも挑戦してみたいけど。それは新しい協力者とかも頑張って探したりとか。基本的には自分たちでいろいろ小さなものを作っていきたい。

 

──どういうのを作りたいってのはありますか?

 

f:うーんどういうのか。

 

p:でも、あんまり今のスタンスは変えない。

 

f:素朴なものが好きで

 

──「クラスルーム」のMVだとvlogだったり、小さかった頃の弟さんの写真が出たりしています。

 

f:10年前くらいの日本のバンドのMVがめっちゃ二人とも好きで。とにかく、素朴な感じの映像が好きです。

 

 

 

──素朴ってのは普通にiPhoneで撮ったような。

 

f:そうそう。そういうのをやりたい。今もずっと。

 

──アートディレクションも凝ってますよね、写真とかも。ちゃんとセルフイメージが作れてるというか

 

f:pupuと私はなりたい自分像が近いところにあると思います。だからセルフイメージが作りやすい。2人とも好きなファッションが同じで、そこも大きいかも。

 

──そこは大事ですよね。特に下北っぽいバンドとかって割とラフなのがいいというか、カッコつけない方が良いってバンドも多いです。

 

f:どっちもかっこいいと思うんだけど。自分たちは、ステージとかに、あまりにも二人とも平凡なので、ステージに立つときくらいは、なりたい自分になろうぜっていう。やってみようって感じで、二人で何着るか会議してる。

 

p:ライブで着るためにね、服を買いに行っている。おしゃれに着るの楽しいですよね。

 

──確かにいつもライブでは変えてますよね。ちょっとイベントのコンセプトに合わせてみるとか。

 

p:イベントに合わせて選んでます。

 

──白かったり黒かったりね。

 

p:それ好きです。

 

──すごくいいと思う。みんな楽しみにしてるんじゃないかな。

 

f:自分たちってこうなんだよねって表明することが苦手なので。八方美人っぽくなっちゃうけど、それが自分だから、関係してるのかな。色んな自分になりたいし、理解したい。そうして心も豊かになる。

 

──fukiさんはもう一つcephaloというバンドにも参加しています。どういう感じで参加したのですか?

 

f:あれは掲示板で。

 

 

──メンバー募集ですか?

 

f:ギター・ボーカルが募集されてたのに応募しました。

 

──曲は誰が書いているのですか?

 

f:基本はギターの人が作って自分がメロディーと詞を載せています。だからiVyとは全然違う。

 

──cephaloとiVyでは、どう切り替えてやってるんですか?

 

f:cephaloはバンドで、みんなバンドが好きな人で自分よりも曲を知ってて。楽曲をより良くするっていう方面で考えて曲作りをしてるので、あんまり歌詞とかもiVyほどプライベートじゃないというか。どうしたら曲がもっと、かっこよくなるかを考えている感じです。どっちかって言うとiVyはもっとプライベートですね。別に受けなくても良いし、伝わらなくてもいい。cephloはパワーがもっとバンドっぽい。

 

──pupuさんは他には何かやっていますか?

 

p:いや何もやっていない。

 

f:pupuはiVy専属です。

 

──ちなみに大学って何を専攻してるんですか?

 

p:私は服作りです。

 

──卒業しての予定は?

 

p:iVy一本ですね。

 

──素晴らしい。

 

f:iVyはジャンルとかがないので、自分の思想と心を音にしてたら、シューゲって言われたり、ドリームポップって言われたりして、嬉しいんですけど。

 

p:思想がiVyの曲になっていると思っていて、だからジャンルとか一概には言えない。

 

──iVyっていうジャンルにしたいと。

 

p:そんな気がする。

 

f:逃げ場をいっぱい作りました。EPの中に。

 

p:感情的な音楽だけど、ちゃんとみんなには受け取れる必然性っていうか、ぐちゃぐちゃではないし、みなさんにとってかけがえのない音楽になればいいなと思います。

 

 

iVy – 幽泳プログラム

Release date : July 10 2024

Stream : https://linkco.re/vUheAXB2

 

Tracklist

1. Hello phila!

2. クラスルーム

3. ゆりコは樹海

4. kirakirakiller

5. カラクリ関係

6. ツキノカケラ

 

 

iVy – 幽泳プログラム / ぼくらのおまじない

Label : Solitude Solutions

Release date : July 20 2024

CS / MD with DL code

JPY1,800

CS : https://solitudesolutions.bandcamp.com/merch/kdk-23-ivy

MD : https://solitudesolutions.bandcamp.com/merch/kdk-23-ivy-md

 

Side A:

1. Hello! phila

2. クラスルーム

3. ゆりコは樹海

4. kirakirakiller

5. カラクリ関係

6. ツキノカケラ

 

Side B:

1. Prologue

2. クラスルーム(教室の外編)

3. SCF空蝉

4. 朝霧

5. A horde sleeping underground

6. ププの記念日

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