新しい”swag”を真ん中から提示する|safmusic interview

みんなの生活とか暮らしのムードを変えていく

 

 

「オーシャン(海)」より「リバー(川)」を趣向し、ナチュラルな感性に基づいた繊細かつ爽快感あふれるサウンドメイキングやリリックが支持を集める横浜在住のSSW・safmusic。バンドサウンドとの邂逅などを経て、独特な距離感でSoundCloud発のジャパニーズ・デジコア・シーンでたしかな存在感を発揮するアーティストだ。2022年には1stアルバム『From this river, to the ocean』を、その翌年には「夏の呪い」をモチーフとしたコンセプチュアルな2ndアルバム『You are not rockstar, I’m not rockstar』を発表し、HIPHOPの文脈にもロックの文脈にも依拠しない独自路線の”オルタナティブ”を追求し続けている。

 

そのオルタナティブ精神は昨年末開催された『You are not rockstar, I’m not rockstar』のリリースパーティーにおいても余すところなく発揮され、PCブランドを規格・製造する〈株式会社サードウェーブ〉とカルチャープラットフォーム〈AVYSS〉によるサポートのもと、10分間での音楽制作動画シリーズ〈10min DTM powered by raytrek〉を、シリーズ初の公開収録としてイベント内で開催。あわせて、初のロング・インタビューを敢行し、「クラブでみんなとDTMがしたい」というシンプルながらイメージしづらいコンセプトを自在に具体化していく彼の音楽観やルーツ、制作背景や美学に迫った。

 

TEXT : NordOst

情報提供:株式会社サードウェーブ

 

 

──まずは「リリパ本当に良かったです!」 ってことを伝えたくて。

 

safmusic(以下、saf):ありがとうございます(笑)。

 

──saf君がどういう人たちと一緒にどういうものを作っていきたいのかっていうことがすごく分かったし、この「10 mins DTM」の公開収録っていうあまり前列のない試みについても、ちゃんとDTMもするけど音楽制作について知らない人もちゃんと巻き込んで楽しませる気持ちが伝わってきて。音楽の伝道師みたいな感じでしたよね。こうした形になった経緯みたいなものを簡単に聞かせてもらえますか?

 

saf:今までリリースパーティーみたいなものを一切やらずに来ちゃってたんですけど、去年『You are not rockstar, I’m not rockstar』を出したとき、周りに「やんなよ」って言われて。で、自分がイベントをやるならどうしようかなって思って、なんとなく「クラブでDTMしたい」ってつぶやいたり、場所は下北沢のSPREADがいいかな、とか考えたり。そういうのに詳しそうな人だとliQuidの拳くんが一番近かったんで相談してみたら、解放新平(melting bot)さんを紹介してもらって。そこで「クラブでDTMやってみたいっす」って伝えたら、ちょうどAVYSSとサードウェーブさんがこのシリーズをやってたタイミングだったんで、組み合わせたら面白いかもね、ってなっていって……ってのが流れですかね。

 

──周りの縁もあって次から次へと決まっていって。と考えると、昨年のAVYSS Xでのショットライブなんかも繋がっているような!

 

saf:バックDJありがとうございました(笑)。5分でどんだけ沸かすかみたいなのがあってめちゃ楽しかったですね。

 

──記憶に残る回でしたね。では話を変えて、せっかくの初インタビューなので今までの遍歴なんかも整理していけたらって思うんですけど、saf君の拠点は横浜ですよね?

 

saf:今はそうなんですけど、実は僕熊本の天草出身で18まではそこで暮らしてました。大学に上がったタイミングで住んだのが横浜市の金沢文庫ってとこで、なんかマジ大好きになって。学生時代のいろんな思い出も含め、この場所には思い入れあります。

 

 

──熊本にいた頃はどういう形で音楽に触れてましたか?

 

saf:15歳のときにバンドをはじめて、よくある高校生のコピバンみたいな。そこがたぶん一番最初のスタートでしたね。音楽的にはなんでも聴いてましたけど、メロコアとかエモが好きでした。で、熊本でそういうことをやってる学生ってあんまいないから、箱も2箇所ぐらいしか無くて。「KUMAMOTO Django」ってライブハウスで高校生が出れるイベントがあって、そこに出てたのが浅井杜人とか、moreruのドラマーのDex君(that same street)とかで、直接絡みはなかったけど、うっすらと知り合いになる、みたいな。でも、3人とも全然違う感じのバンドやってたんですけど(笑)。

 

──それで言うと、今はSSW兼ビートメイカーとして電子音楽の領域に生音を使いながらハイブリッドな形で関わるようになったわけで。そのきっかけってなんだったんですか?

 

saf:高校生ぐらいのとき音楽をディグってて、ゆらゆら帝国とかの動画を深夜YouTubeで観てたらPSGの「寝れない!!!」って曲が出てきて。めっちゃ変なビートで、最初は全然知らなかったから変わったサイケデリックロックだと思ったぐらいで。そんな感じでヒップホップみたいなものも気になりはじめたなかで大学に上がったら、そのときトキマ(TOKIO SHAMAN)の全盛期だったんです。釈迦(坊主)さんとかLEX、fox4Gとかを見て、「自分も作ってみようかな」って思って。そこからSoundCloudに興味が湧いてきて、前の名義での活動が始まってった感じです。で、その後いろいろ経てサンクラを聴かなくなる時期があったりしたんですけど、久々に会った友達に「trash angels知ってますか?」って聞かれて興味が出て。そこからramkoとかと仲良くなってって、改めて音とかもリスタートしてこう、と思ってsafmusicが始まりました。だいたい2年ぐらい前ですかね。

 

──safmusicの前にはDENYEN都市がありましたもんね。

 

saf:そうっすね。その頃はyoって名前で。その時期に知り合った山田ギャル神宮から「yo君の友達がイベントやりますよ」みたいに教えてもらって、それがfogsettingsで。

 

──そういえばfogsettings君とは大学の同級生だった、みたいな話がありましたよね。ライターのnamahogeさんも横浜の大学で。

 

saf:そうなんですよ。fogとは大学の初日の歓迎会で出会って、そのときから友達です。namahogeさんも友達の友達、みたいな感じで、音楽ライターになってて僕らに近いとこで活動するようになるとは思わなかったですね。(fogsettingsとは)andymoriとかが最初の共通点で、すぐ意気投合して軽音楽部にも一緒に入って。その時にfogsettingsに「サンクラって知ってる?」みたいな感じで、好きなアーティストをシェアしたりしてました。逆に、彼にはハイパーポップの流れをかなり早いタイミングで教えてもらったりしてて。

 

──まさかの! Demoniaとは不思議な縁があるんですね。

 

saf:それこそTOKIO SHAMANの渋谷WWWのライブ映像とかを見せて、これ知ってる? みたいな(笑)。そんな感じで過ごしてたので、今こういう形で活動してるのはなんか不思議っすね。

 

 

──奇跡みたいなつながりってありますからね。で、safmusicになってからは2年強でアルバムを2枚出してたりと、結構多作じゃないですか。それは自分が普段から多作なタイプなのか、それともなにか思い描いてたものをsafmusicとして一気に形にしていってるのか、気になってて。

 

saf:safmusicに関しては割とコンセプトがあって、yoって名前のときはそういうのなしでパッってやってたんですけど、safは自分のなかの「嬉しくも悲しくもない音楽をやりたい」って気持ちが軸になってますね。非日常的なものよりは、日常に寄り添うものを目指すっていうか。なんかいわゆる”ハイパー”って言われる音楽って、要は極端ってことじゃないですか。ディプレッシブな感じか、躁的な感じか、とか、あるいは宇宙的なサウンドスケープに向かってったりとか、どこかしらに当てはまっていく音楽が多いけど、僕はその真ん中をやりたくて。人間に波があるとしたら、波全体を表現したい、みたいな。たとえば僕が同じ横浜って郊外にいるのもそうなんですけど、東京に寄りすぎない、極端じゃない感じ、っていうか。

 

──中庸でありたい、という意味で考えると、たしかにsaf君の音楽にはどんなシチュエーションともマッチする肌触りが感じられます。

 

saf:僕は気持ちの波が激しいタイプで、それこそコロナ禍の時期とかはテンションに差があってすげーしんどくて。今、超楽しくてもこれから悲しくなると思うとネガティブになるし。そんな中でなにかに偏ること自体が辛くなっちゃって。そういう体験も繋がってるかもです。ちなみに、safの”F”は「Frequency(周波数)」のFで、真ん中にいながら移り変わるものをやりたい、ニュートラルから変わっていきたい、みたいなコンセプトもあります。

 

──ニュートラルな状態の気持ちよさ、みたいな。人間いろいろなコンディションになるし、何かひとつだけ切り取り続けるとどこかで演じてしまう自分も出ちゃうし。そうならず等身大から表現をしていこう、っていうのはすごく誠実な態度でいいな、と思います。

 

saf:だからその意味で言うと、暮らしに寄り添ってる感じもあるし、やっぱ川がちょうどいいんです。海だとデカすぎるし、川から人間の暮らしとか文化とか、始まってると思うんで(笑)。

 

 

──今聞いた遍歴のなかでいろんな人とのつながりが生まれていったと思うんですけど、出会った人でとくに自分の世界観とフィールしてる、もしくは近いと感じるアーティストっていますか?

 

saf:一番フィールしてて近いのは、やっぱ浅井(杜人)かな。ほぼ兄弟みたいな感じで。ここ何年かで言うと、ramkoですね。今でこそ音割れみたいなイメージですけど、最初に出してた『納涼collection』を聴いたときは「これやん!」みたいに感じて。軽やかさとか優しさがあるし、なんていうか一人ぼっちで公園散歩してるみたいな気持ちになれるってところが好きですね。海外のアーティストだとブロックハンプトンの影響が大きくて、サウンドメイクについてはBrakenceみたいなことをやるけど、実際歌いたいのはブロックハンプトンみたいな。あのノリとかアティチュードには感化されてますね。

 

 

──真正面からトラップやデジコアに向き合うというよりは、あくまでもハイブリッドな感覚で中庸を目指す、みたいな。それは川への憧憬も含め、1stアルバムの『From This River~』からずっと繋がってるわけで。あれはどういう気持ちで作った作品でしたか?

 

saf:コロナ禍が一旦終わる前みたいな感じの時期で、家で過ごしたり散歩したりする時間が多かったとき作ってて、なんか1ヶ月ぐらいで出来ちゃって。ただ、あれは自分ではアルバムとかミックステープって感じで作ったわけじゃなくて。そういう形にはなってるけど、あくまでも長いシングルって気持ちで、それがひとつずつ分割されてるだけって意識ですね。今ってどうしても長尺の曲って聴かれないから、フォーマットって別にどうでもいいんですけど、統一感を持たせて通しで作品を聴くことの大事さを伝えたかったんです。

 

──おそらく僕ぐらいからsaf君の世代まではアルバムをフルサイズで聴く、みたいな感覚を大事にしてると思うけど、今はすっかりプレイリスト単位での切り出しが当たり前ですからね。視聴体験を重視してるって意味で考えると面白いなと。

 

saf:それと「2022年の空気」みたいな。あの絶妙な時期の曲ってみんなの孤独感がやっぱりあると思ってて、それぞれが孤立してる感じが自然に作品に現れてるというか。あとは大学卒業するかどうかみたいな時期でもあって、いろんな悩みもあったんで転換期の葛藤とかも入ってたかも。

 

 

──コロナ禍後期の空気感をsaf君なりにスケッチしたものだったわけですね。そこから2ndアルバムに行くわけですけど、「君も僕も別にロックスターなんかじゃないよ」とでもいうような、挑戦的なタイトルをつけていて。あっちの話もぜひ聞いてみたいなと。

 

saf:1stはめっちゃ楽しく作ってたんですよ。制作が超楽しくてアイデアもどんどん出てくるみたいな。でも、『You are not rockstar, I’m not rockstar』は超苦しかった。制作ってこんな楽しくなかったっけ、めっちゃ辛くね? って。なんていうか、そんな感じで自己否定と自己肯定を繰り返し続けて出来た作品ですね。自分の場合、トラックメイクもレコーディングもミックス・マスタリングも、全部一人でやるわけじゃないですか。自分の声をずっと聴き続けるし、それは常に自分と向き合わなきゃいけない状態みたいな。だから明るさも暗さもすごい出てて。

 

──端から見ているだけだとスムーズな印象でしたが、かなり大変ではあったんですね……。そういう背景も含めると、やっぱりタイトルの問いかけもかなり印象深いなと。

 

saf:タイトルに関しては、「別に今って本当の意味でのロックスター、いないんだけどな」っていう問いかけみたいなところもあって。とくにヒップホップのシーンだと、MCやリリックのいろんな場面でいろんな人がロックスターって、Playboy Carti以降の感じで言ってると思うんですけど、本当に目指すところってそこでいいのかな? って。今、僕はヒップホップに近い場所にもいるけど、スタートはバンドだしロックだったからちょっと複雑で(笑)。

 

 

──でも、挑戦的だけど愛がないわけでもなくて。ネガティブでもない、っていうのが良いところですよね。

 

saf:たしかに! まあ、俺もそう(ロックスターじゃない)だし、みんなもほんとはそうじゃない?ってことです。シーンの中にはそういうことを言う奴がいてもいいかな、って気持ちも当時はあったかな。言ってもまだ小さい規模ですけど、ちっちゃいなりにもなんか意味があればいいな、って。

 

──『You are not rockstar, I’m not rockstar』には統一された美意識みたいなものも感じて。10曲入りの中でも生活音に近い、いわゆる音楽としてのアンビエントに寄りすぎない質感のスキットが挟まったりとか。シングルカットされている「eyes (feat.fox4G)」は~離くんのレーベル〈i75xsc3e〉からのリリースだったのも印象的でした。

 

saf:~離くんは音楽始めたての頃、僕がsafでもyoでもなかった時代、サンクラに初めて曲出した時期とかから知ってて超影響受けてたんですよ。DJも物語で繋いでる、っていうかストーリーテラーみたいな感じで他と全然違うし。1stアルバムのころはたぶん~離くんのDJ見て、最後のマスタリングとかの詰めがパーって進んでったし。そういうのもあって、~離くんのとこから一個出したいな、って。彼がSoundCloudとかから始まってるシーンに与えた影響って結構あると思います。お願いしたのが「eyes (feat.fox4G)」だったのは、シングルカットはこれと「A Day Of Summer」に決めてて、こっちの冷たくて白飛びしてるような感じが近いな、って思ったからですね。

 

──カラッとした陽気さのなかにこういうオフトーンな質感のトラックが入ってくるのもすごく印象深かったですね。

 

saf:(「eyes」は)めっちゃ苦労しましたね。ピアノの感じとかは、2018年ぐらいのSoundCloudのテンション(笑)。俺がめっちゃ聴いてた時期のタイプビートっぽいものをあえて作ろうと思って、けど制作には2,3ヶ月ぐらいかけましたね。サウンドメイクでシューゲイズの質感を出したいと思って多重録音で録ってみたり。2023年verのシューゲイズみたいな。それで構成とかが複雑に入り組んでっちゃって。ちなみに、その前のスキットの「gymnopedie no.1,crush」は逆再生すると、「A day of summer」のアウトロになってます。

 

 

──アルバムの構成は、前半の流れまでは快晴で清々しいイメージだけど後半で陰っていくような感じもコントラストに見えて。一日のサイクルみたいなものも考えて作りましたか?

 

saf:僕的には夜っていうより昼間を切り取ってるつもりで。「eyes」って実は昼の曲なんですよね。光がコンクリートに反射して視界が真っ白になっていく、あの眩しすぎる感じのイメージ。都会の人工的な感じで、それは地元の雰囲気とは全然違うんですよ。曲作るとき、僕は視覚的なイメージも超大事にしてて、聴いた時に何色の情景が浮かぶか、みたいな。

 

──という感じで2022年、2023年とそれぞれアルバムが出たり、色々なステージにも上がるようになったわけですけど、saf君って今どういうものを大事にしていきたいと思ってますか?

 

saf:大事にしたい……うーん、最近は”swag”ですね(笑)。

 

──swag! それは具体的には?

 

saf:最近、あえてswagってやたら言ってるんですけど、それってつまり俺らにしか共有できない良さって大事だなみたいに感じてるからで。世の中に普遍的にあるかっこよさと別で、一部の人と共有し合える良さってすげえいいなと思って。すごい小さなかっこよさというか、でもそれをあえて超自信満々にやるみたいな。たとえば、Drain Gangの魅力って僕は最初全然分かんなくて、okudakunとかに勧められたときも変わった音楽だなって感じだったんです。でも、その後に彼らのライブ映像を観たら、自分たちがカッコいいと思ってる感覚のままやってるのが分かって衝撃を受けて。「これってswagだな」って思いましたね(笑)。いわゆるシーンにすでに存在しているカッコよさとは違う、自分なりのカッコよさを自信満々に全力で表現してく感じも美学が伝わってきて、そういうスタンスがめっちゃいいなって後から思ったんですよね。だから、最近は自分とか仲間うちで共有できてるカッコよさを表現していきたいな、って意味でswagいいな、みたいな(笑)。

 

──ヒップホップとか、デジコアとか、そういうタグ付けでは見えてこないようなことを表現し続けていって目指すところ、みたいな。

 

saf:僕らがやってる、デジコアだったりハイパーポップって言われるシーンのことは大好きで、でもまだまだ小さくて。そんななかで独りだけご飯が食べられるようになってもしょうがなくて、みんなで好きに暮らして食べていけるようにしていきたい。そのためにはまず「俺らってこうなんで」っていうことを強く出してくべきだと思うし、より広く伝えてくために真ん中に立っていろんな物事を折衷していきたいんですよね。だから、僕が言ってるオルタナっていうのは音楽ももちろんなんですけど、マジで新しいものを目指すって意味でのオルタナティブでもあって。

 

 

──創作物から感じるswagってありますか?

 

saf:音楽からはちょっと外れるんですけど、僕はたとえば暗い映画で急に明るい曲が流れたりするようなのがマジで好きで。切ない、悲しいシーンで「翼をください」みたいな合唱曲が流れるような。

 

──ギャップというか、空気と演出にコントラストがあるものっていびつにも見えるけどその分強く心に残りますしね。

 

saf:悲しいときに悲しい曲が流れないのってマジでいいなって。そういう意味では、やっぱ嬉しいときに嬉しい感じ、悲しいときに悲しい感じっていうよりは、やっぱ嬉しくも悲しくもない感じでやっていきたいなって思いますね。

 

──さて、そんなswagモードに入ったsafmusicは、今年以降どういう形でそれを表現していくのかも気になるところで。今後のリリースなどの展開はどのようにしていきたいですか?

 

saf:うーん、ちょっと抽象的ですけど、やっぱ生活を変えたいっていうのが一番で。なんというか、音楽をただ作品として作るタイプのアーティストもある種プロだし僕もそういう作品好きだけど、ちょっと非現実的っていうか。作品を自分と完全に切り離してくと、空想上のことについて歌ったりすることが多くなるじゃないですか。僕はあんまりそういうタイプじゃなくて、自分らの周りのことや自分らの生活のことを歌うから、表現してる世界と現実の距離がめっちゃ近いんですよ。で、そうなると聴いた人の生活を変えられる音楽ってめっちゃいいな、みたいな。要はsafっていう世界観を、ファンタジーとかじゃなくて生活として提示したいんです。こういう生き方もいいじゃん、っていうのを示していきたい。

 

 

──それってまさにHIPHOP的なswagだと思います。それをジャンル的なマナーの外から、オルタナティブに表現していくという。

 

saf:そうかも、空想じゃないリアルさみたいな。目の前のみんなの生活とか暮らしのムードを変えていくきっかけになればいいな、って思いますね。「今までロックしか聴いてこなかったけどジャジーな朝を過ごすのもいいな」って。TohjiのヘッズってたぶんTohji聴いたらめっちゃ最強になれる感じあるじゃないですか。そうして自分の心を動かす音楽は好きだし、それを僕が思う「こういう瞬間マジでいいな」とか「こういう人生もアリでしょ」みたいな感覚で、生活をレペゼンしていく感じのまま実現したいなと思ってます。

 

──そうしたリアルな暮らしで感じたムードを形にしていきつつ、聴き手に自然な影響を与えていきたいってことですね。

 

saf:たとえば洋服のブランドってシーズンごとにコンセプトムービーを出したり、それこそショーをやったりするじゃないですか。とくにコンセプトムービーみたいなものだと、服単体のことだけじゃなくてそれを着た暮らしとかの感じを提示したり。ただ服を作ってるだけじゃなくて、その先のことを見てるような感覚で自分の世界を見せられたらって思います。それをMVとか映像だったり、音楽に限らずいろいろな形で表現していくのが目標、というかやりたいことですかね。2024年はとりあえず、生活を実際に変えていく音楽をやっていくつもりです。「〇〇でしか得られない栄養」みたいなスラングあるじゃないですか、あの感じで「safでしか得られない栄養」があるって言ってもらえるような(笑)。

 

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