「一途」な表現の先に立ち上がる美学|cosgaso & a春 interview

Supported by O株式会社

 

 

O Ltd./ O株式会社は、(以下、O)アメリカのロードアイランド・スクール・オブ・デザイン在学中にアーティスト/CEOのa春(a_haru)が立ち上げたスタートアップ。「ディープ・クリエイション」を目指し、新しい思考表現のためのコンピュータ・プログラムの構築を進めている。そのなかでアイデアの想像とクリエイションの進行を両立するためのメタバースプラットフォーム「MEs」を自社プロダクトとして開発。人間の創造性を視覚化して引き出すプラットフォームを軸に、さまざまなアーティストとのコラボレーションも実践している。今回Oは、イラストレーターのcosgasoと共同でMEs上にオリジナルワールドを作成。3D空間上に日本の田舎の自然を表現しつつ、ワールド内に展望台を設置し作品展示やアイデア共有の場としても活用できるバーチャル空間を設計した。今回、AVYSSではcosgasoへのインタビューを試みるとともに、Oのプロダクトが目指す未来について伺った。

 

Text by NordOst

 

――O株式会社さんは「cosgaso君の作品と世界観には特有の儚さがある」ということで今回の依頼をしたと思いますが、cosgaso君にとって自分の「儚さ」っていうのはどういうところからスタートしていると思いますか?

 

cosgaso:たぶんそういう儚い部分とかを受け取ってくれたのは、キャラクターデザインの部分かなと思ったんですけど。イラストの部分と普段から僕がモチーフにしている空だったり、人がいない空間だったり。自然環境みたいなものをよく背景のモチーフにしているんですけど、「有機的な背景」と「萌えイラスト」という一見対極に見えるところを引き合わせてる点に、ある種の儚さを感じ取ってもらえたのかなと。

 

 

――人がいない、というとすっかりトレンドとして定着した”Liminal”だったりとか、あるいは”Frutiger Aero” (Windows Vista期のデザインに基づくミーム的美学)などの概念とも呼応しているような。

 

cosgaso:ですね。背景を入れるとき意識してるのが、なるべく広くてあまり人のいない空間であること、それか自然や海、雲の中とかになったりするんですよね。自分が普段見てる景色がもう本当に誰もいない田舎なので、そこともリンクしてるっていうか。

 

――そこにはある種の孤独感もあるんでしょうか。つまりcosgaso君が普段見ている郊外の景色には他者の目があまり介在してなくて、誰もいないからキャラクターにいてもらうみたいな。

 

cosgaso:そうかもしれないです。といっても、孤独感自体は普段感じることはあまりないですけど。周りになにもなくてもインターネットがあるし、KAIRUIって友達も地元にいるし。見てる景色をそのままイラストに描き起こそうとしてるのは、たぶん自分の体験をキャラクターにリンクさせたいっていうのと、その景色の中にいてくれたら嬉しいっていう気持ちがあってのことで。最初に送ったリファレンスも僕が学校の近くで撮った写真とかを送って、こんな感じがいいですみたいな要望を出させてもらって。

 

――なるほど! KAIRUI君といえば、以前別の媒体でダブルインタビューっていうのをやらせてもらったことがありました。そこからだいたい1年半ぐらい経ったんですけど、その間cosgaso君のなかでクリエーションへの意識とかって何か変わりましたか?

 

cosgaso:変わったと思います。ここ最近で一番影響を受けたものがあるんですけど、〈ケロQ〉の『素晴らしき日々』(注1)ってゲームで。それを去年の冬ぐらいからプレイしたら、作品が持つ世界観や音楽に強い感銘を受けて。〈ケロQ〉のイラストレーションって、CGとかスチルとかは明瞭な質感で、背景はだだっ広い空間や風景に焦点が当たっているというバランス感なんですが、それも刺激的でした。去年まではグラフィックデザインと萌えキャラを結びつけるみたいなイメージだったんですけど、『素晴らしき日々』以降は空間全体を意識するようになったと思います。

 

注1:ムーンフェイズ株式会社の美少女ゲームブランド〈ケロQ〉から2010年3月にリリースされた作品。同ブランドのいわゆる「三大電波ゲー」とされるカルト作『終ノ空』の世界観やストーリーラインを継承し、内容やデザインを一新した。

 

――「すば日々」をスタート地点として変わったと。

 

cosgaso:そうですね。すば日々をきっかけに美少女ゲーム自体をいろいろやるようになったり、その時期の同人誌や画集を集めるようにもなりました。(紙媒体には)当時のイラストレーションに対する考え方がインタビューとかに載ってて、そういうところから強く影響を受けてます。

 

――Webから紙媒体への回帰、すごくいいですね。読んでいったなかで、自分にとってエポックかもしれないなって思ったような言及とかクリエイターの考え方って何かありましたか?

 

cosgaso:〈ケロQ〉&枕のイラストレーターをやってる基4(もとよん)先生って方がいるんですけど、その人の古い画集の最後に載ってるインタビューのなかで、グラフィッカーの人がイラストの色を塗るときに注意していることとかを話してて。現代のイラストって3D的な意識がたぶん強くて、その落ち影のつくところにすごいリアリティがあるんですよね。グラフィッカー曰く、基本とか理屈を無視してとにかくかっこいい影をつけていくそうなんですが、その感覚にかなり感銘を受けました。今までは割とイラストレーションをやっていたとしてもセオリーとしてあるリアリティって大事だよなと思っていたんですけど、それを乗り越えないと創作活動をやってる意味はないよね、って気づきがあったというか。

 

――〈ケロQ〉の作品にはまさしく2010年代前後の、ゼロ年代でも10年代でもないセンスが感じられますね。それで言うと、近作のゲームやアニメ、漫画などで影響を受けたものはありますか?

 

cosgaso:『16bitセンセーション』(注2)っていう今期アニメがあるんですけど、あれって原作が同人誌(※みつみ美里・甘露樹・若木民喜による合作)なんですよ。『うたわれるもの』(注3)とか『To Heart2』(注4)のイラストレーターをやってた人たちがモデルになってて。その原作本に書いてある美少女イラストレーターたちのイラストに対する向き合い方とか、セリフの一つ一つが刺さりましたね。下田かおりさんっていうキャラクターがいるんですけど、その人が主人公に向かって「最初の美少女ゲームの最初の立ち絵はプレイヤーが一番最初に出会う人だから一目惚れさせないといけない」ってことを話してて。イラストってやっぱり、音楽と違って目に入った瞬間に全容がほとんど見れてしまうので、その一瞬に懸けてる気持ちの強さにすごく感銘を受けた。すごい言葉だな……って思って。

 

注2:美少女ゲーム制作会社を舞台に、90年代当時のPCゲーム業界をリアルに描写した作品。原作同人誌はみつみ美里・甘露樹・若木民喜による合作。2023年秋にアニメ化し話題を集めた。

 

注3:AQUAPLUS社の美少女ゲームブランド〈Leaf〉から2002年4月にリリースされた美少女ゲーム。戦国を舞台にアドベンチャーとシミュレーションRPGをかけ合わせた内容でヒット。

 

注4:同上ブランドより2004年12月にリリースされた全年齢向け美少女ゲーム。1997年発売の学園ものを代表する作品『To Heart』続編として制作された。のちに18禁版として『ToHeart2 XRATED』が発売。

 

 

――僕は美少女ゲームだとやっぱりKeyなんですが、たとえば『AIR』(注5)だったら最序盤にすごい完成度の高いOP映像が入ってきたり、ヒロインの神尾観鈴が出てきたときの一枚絵の圧倒的な感じとか、そういうものにはたしかにかなり心を揺さぶられてきました。

 

注5:株式会社ビジュアルアーツの美少女ゲームブランド〈Key〉が2000年9月にリリースした2作目の恋愛アドベンチャーゲーム。いわゆる「泣きゲー」とされる感動的作品の金字塔的タイトル。

 

cosgaso:アニメとかゲームって、たぶんキービジュアルが出た瞬間にそれまでの何もわからなかった状態から決定的な「出会い」を感じさせてくれて。制作決定だったり公開決定みたいな話が情報として出ていたとしても、やっぱりキービジュアルが出た瞬間のすごさってあるじゃないですか。本とかの表紙とか、音楽のアートワークとかにも言えることですけど、ビジュアルのすごさってそこにあるのかもな、と。

 

――たとえばライトノベルっていうものが普通の文庫本と同じ装丁だったらここまでの文化になっていたかというと、そうじゃないかもしれないですしね。そこには情報量とか言葉では説明できない感動があって。

 

cosgaso:2,3年前とかにツイッターのタイムラインで一瞬流れてきた絵でも忘れられないものがありますし。圧倒的ですよね。

 

――すごい昔に眺めたイラストと偶然もう一度出会ったときの感動みたいなものもありますよね。

 

cosgaso:わかります。そういうときは「また会えたね」って気持ちになりますね(笑)。誰かが描いた一枚の絵に、まるでその人と久しぶりに再会したみたいな感動があるっていうのは、やっぱりすごいことだなって思いますね。それだけの力が美少女イラストにはあるんじゃないかと。

 

――cosgaso君のイラストのあの感じって2000年代の中でも後期のほうで、10年代初頭までぐらいの萌えの質感を美学として継承してると思うんですけど、歴史上にはたとえば80年代の『うる星やつら』とか90年代後期の樋上いたる絵とか、年代ごとの中心となるエポックな作風が生まれてきたわけじゃないですか。そのトレンド感についてはどう捉えてますか?

 

cosgaso:たとえば「葉鍵」って言われるような〈Leaf〉や〈Key〉作品の絵がありますけど、あの独特の感じからちょっとフラットめな〈ケロQ〉の質感に変化していって、でも同じ2010年代の中でキービジュアルだったりとかキャラデザの感じ、あと塗りの質感とかもかなり変わってくるんですよ。

 

――最初はただ「アニメ」としてしか観れなかったものが、だんだん「あ、これっていかにも2012年だ」みたいな感じで徐々に分かってくると思うんですけど、その感覚で後から作品について調べると納得もあって。なぜ、同時代的にそういう感覚が生まれていくんだと思いますか?

 

cosgaso:ああ! その感覚、すごいありますよね。印象でも大丈夫なのであれば、やっぱりそれは年代ごとに話題になった、いわゆる「覇権」みたいなタイトルの影響が一番強いかなと思います。たとえば、僕の絵には2010年前後の感じがあると思うんですけど、それ以降の物事の影響下にないのって、ソシャゲを通ってないからなんですよね。

 

――なるほど!

 

cosgaso:一時期はエロゲーブームみたいなものもあって。エロゲが下火になった後にアニメブームが来たりとか。で、その後ソシャゲ全盛期が来て、全体的にキービジュアルがリッチな質感になったりしたように思ってます。キャラクターの属性も、ある時期は「ツンデレ」とか「学生服」がすごい多かったんですけど、ソシャゲの時代からはトレンドがファンタジー寄りになっていったんじゃないかな、と。ライトノベルでもなろう系っていうのが台頭してきて、異世界ファンタジーものに寄っていって現実的な服装をするキャラクターが減ったような気がしてて。

 

 

――逆にゼロ年代後期~2010年以前だとそれこそデ・ジ・キャラットのように、ファンタジーな格好だけど現代が舞台になってる作品も多くて。日常的な空間の中に非日常的なキャラクターがいるコントラストを楽しむ時代もあったのかなと。現代なら『邪神ちゃんドロップキック』はその系譜にあるような。で、古い/新しいで言うと、そうならないものもあるわけじゃないですか。それこそ『らき☆すた』なんて2007年の作品ですけど、まったく古さを感じないのが不思議で。2006年の『涼宮ハルヒの憂鬱』は確かに今観るとちょっとだけ古さ、というか2000年代の感じが伝わるんですけど、『らき☆すた』のキャラデザは歴史に対して垂直にあるような感じというか……。そういった、同時代性を帯びない「新たな普遍性」のようなものを帯びた作品って、なぜ生まれるんでしょう?

 

cosgaso:そうですね……一番強いのは、まず絵柄自体が独特っていうか。その時のトレンド感とかを汲んではいるんですけど、基本的にそういう作品はどれも特徴的なような気がします。だからこそ、どんなにキャラデザが違う創作でも「これは『らき☆すた』をイメージしてるな」っていうのが伝わったりしますし。あと、そういう作品ってデフォルメが強いじゃないですか。線の感じとかもシンプルで。やっぱり、どうしてもディティールを詰めていくとその時の時代性がどんどん反映されていくと思うので。そこをうまいことマスキングしているものは古さを感じさせないのかな、って思います。

 

――考えてもみなかったことですね、ありがとうございます。じゃあたとえば、今後自分の中でそういう同時代性を帯びず、古くならずに残っていくだろうなって今思っている作品ってなにかありますか?

 

cosgaso:単純に僕が一番今すごいなって思ってる作品は、やっぱり『ブルーアーカイブ』(注6)ですね。あれって、もともと日本の美少女ゲームを参照して作られているのもあるんですけど、スチル自体はシンプルで線画も細くてパキッとしてて、でもわかりやすいデフォルメ感もあって。新規性はないのに新しいのがすごいですね。逆に最新のキャラクターデザインがなにかと言うとそれはVTuberで、あれは顔をアップにしても情報が減らないよう過剰な造形やテキスタイルになっているんですけど。

 

――この30年ぐらいを辿っていくと、画風のトレンドは大きく変わっていったわけじゃないですか。言ってしまえばいわゆる「萌え」っていう概念がなにを指してるのか、という価値観の変化も大きくて。

 

cosgaso:昔のインターネットで揶揄されることもあった「いたる絵」(注7)の独特の感じとか、多数派には受け入れられにくかった要素もだんだんとアリになっていった感覚はあるのかな。たとえば『魔法少女まどか☆マギカ』(注8)の前は、蒼樹うめのイラストレーションって独特とされてたと思うんですけど、いつしか普通のものとして浸透していきましたし。

 

注6:2021年2月にリリースされたソーシャルRPGゲーム。中国・韓国のアジア圏発でありながら日本の萌えコンテンツを下地として、日本をメインターゲットとして捉えた点が特徴的であり、統括プロデューサーのキム・ヨンハ氏がプレイヤー発信による二次創作文化の発展を重視するなど独自路線で人気を集めた。キャラクター層の幅広さからも各方面で高い人気を誇る。

 

注7:前述〈Key〉作品のメインビジュアルを担当する絵師・樋上いたるの独特の画風の総称。大きく描かれた瞳などが特徴的で、ゼロ年代オタク文化のアイコン的存在感を示した。

 

注8:2011年1月より放映されたアニメシリーズ。漫画家・イラストレーターの蒼樹うめがキャラクター原案・デザインを務めた。株式会社シャフトが制作し、監督・新房昭之(数々の萌えアニメを輩出)、脚本・虚淵玄(美少女ゲーム業界でも活躍)のタッグが「魔法少女もの」をダークに描写した。

 

――昔Telematic Visions君が「どれも自分の世代とかけ離れてるから、2005年のKanonと2010年代の作品にあまり差を感じない」っていう旨の発言をしてて、それは自分にとってすごく衝撃的だったんですよ。cosgaso君は今20代前半で、いわば10代以降の世代との中間的存在にあたるわけじゃないですか。自分より下の年代におけるイラストレーションの質感はどうなっていくと思いますか?

 

cosgaso:技巧的な部分はもう完全に成熟しきっている気がしてて、中高生とかがプロ級のイラストを普通に描いてる世の中ですし。チュートリアルとかも本当にたくさんあって、たぶん音楽よりイラストのTipsのほうがインターネットには多いんですね。だから平均水準の上がり方がものすごくて。そこに生成AIイラストとかも登場して、もはやクオリティの高いイラストってあまりにも飽和している気すらします。だから、今後はクオリティ面とは別の方向に進んでいくんじゃないかな、と。

 

 

――DAWの技術的発展やサンプルパックの登場などによって、音楽でもまさにcosgaso君の言っていたのと同じことが起きているような気もします。ただ、クオリティが担保されている分メッセージや美学的なところが弱いと全部同じに見えてしまう懸念もあって。「良すぎる」がゆえの新たな課題なんじゃないかなと。

 

cosgaso:昔は美意識を伸ばすハードルも、技術を伸ばすハードルも両方高かったのでまず技術を磨く必要があったんですけど、今は技術的なレベルを上げやすい時代ですよね。むしろ美意識や美学を育てる方に集中できる時代になったから、この先ものすごいものが生まれるかもしれないとも思います。あと、リバイバル的なトレンドについては、僕もそれにあやかっている側ですから素直にありがたいな、と。だからこそ、時代性へのリスペクトは絶対欠かさないようにしたいっていうか。それで画集とかを参照するようになったところもあるかもしれないです。

 

――技術を高めやすい分、規定された枠組みの外を目指すのが難しい時代なのかなとも思います。そういう意味では越境的な存在っていうのは生まれなくなってるのかもしれませんね。ちょっと答えづらい質問かもしれませんが、cosgaso君が観測しているなかで「これはちょっと違うのでは?」と疑問に感じたものとかってあるんでしょうか。

 

cosgaso:インターネットって年齢が見えないから「いい絵」を描いてる人ってずっとそれを実現しているように見えてしまう、というのはどうなのかなと。みんな最初はできなかったのに、最初から超人的に見えてしまいやすいですよね。あと、「いい絵」と「質の高い絵」ってやっぱり違うと思っていて、たとえばラフっぽい感じでサッと描いたものって良くなるんですよ。先ほどパッと見の良さを大切にしたいといっておいてなんですが、逆にそこにとらわれすぎている感じもあるのかなと。それこそPinterestとかを参照してゼロ年代っぽいっていう感じを出すのはそんなに難しくないことなんですけど、やっぱりどうしても「それっぽさ」で止まるじゃないですか。そこから先の解像度を上げたり、リファレンスについての理解度を高めたりすることを気にしてない人の方が多いというか。第一印象的なものを乗り越えた先にあるさらなる質の良さっていうのは、自分も模索中でしかないんですが……。

 

――それこそ技巧と美学のバランスの話でもあって。質ばかり高めていった結果、美学的なところが揺らいでるってことですかね。逆に、質をあえて劣化させる表現も最近はトレンド化しつつありますが。

 

cosgaso:画質とか音質をわざと落としているような、インターネットの「○○コア系」の質の悪さっていうのにも、僕たちはちょっと甘えすぎているような気もします。すごく好きなムーブメントなんですけど、ああいうエディットってあくまで素材の質が高い過去のアーカイブを流用してるから成立しているわけで、自分がそれをやるためにはもっと美学に基づいて素地を固めたいな、と。なんというか、ブートレグの下地となるものを自分で完全に納得した形で作れるようになってから、さらにセルフパロディしていきたいんですよね。たぶん、普通のイラストレーターさんは自分の絵をぼかされたり、改竄されたりするのは本当に嫌だと思うんですけど、僕は多分あんまりそういう感覚がなくて。でも、やるならベースとなるもの自体がカッコよくなきゃな、と思います。

 

――極論を言えば、自分の作品をコラージュ素材のように切り刻んでもらっても構わないけど、やるならかっこよくやってくれ、ということですかね。

 

cosgaso:そうですね。僕自身、元々ストリートグラフィックをやってて、インターネットともずっと付き合ってきたので、自分の著作物に過度な権利意識があるわけではないので。

 

――技巧的なところで言うと、いまって及第点を越えた優秀なものはたくさんあっても、それは本当にただ及第点をそつなくこなしているだけになっちゃっているような感じですよね。本当の意味で人の欲望や美学に向き合っている人は、実はいくら母数が増えてもそんなに増えていないんじゃないかな、と思ってまして。

 

cosgaso:その人がやりたくてやってることじゃないと意味がないと思うので強要すべきではないと思いますけども、もっと一途になってほしいですね。ある種の狂気的な向き合い方には他人を巻き込んではいけないんだけど、自分からならいくらでもやっていけるべき、というか。ありがたいことに、自分の周りの創作者の人とかもみんなすごい一途なんですよ、イラストや音楽にかかわらず。その一途さに影響を受けてるところもあるし、それは自分の中にもあるから、いまこうして色々やれてるのかもな、とか。最近だと、イスカリオテというイベントのフライヤーが本当に衝撃だったんですよ。

 

――鬼車君のイラストですね。彼はまだイラストレーションをはじめたばかりらしくて、出演機会をいただいた僕もかなり驚きました。

 

cosgaso:出演者全員の立ち絵を描くっていうアイデアは僕も思いついたことがあったんですけど、それを実行に移すまでアクセルを踏み切れないというか。しかも元のキャラデザとかが別にあるわけじゃない人ばかりで、それを全部デザインして1枚のフライヤーに落とし込むっていうのが本当にすごすぎて。工数とか手間っていうのを少しでも惜しむと絶対にできないようなある種狂気的な行動というか。しかも誰に頼まれるでもなくやっているっていうところがすごく素敵だなと思いました。

 

 

――インターネットとストリートで出発したcosgaso君が、そこに引き続き刺激も受けつつも「好き」を一途に突き詰めたのがこの2年ぐらいのことだったと思うんですが、今回話してもらったように考えていることも目指す点も大きく変わったんだろうな、と思います。いま、どんなことを目標にしていますか?

 

cosgaso:いまの自分の悩みどころでもあるんですけど、クライアントワークがかなり多いんですよ。アートワークとかビジュアルをやったりするのはすごく楽しくて貴重な経験ではあるんですけど、基本的には他の人の世界観が下地にあってそれを見える形でサポートするっていうイメージではあって。それだけだと自分の世界観や美学を伝えきれないな、と思い同人誌を自分だけで作ってみたりしてるんですけど、そういう「cosgasoがcosgasoとして出したい」という気持ちを込めたものをもっと作りたいですね。

 

――いまはある種、自分から他者をもっと巻き込むような存在として活動していきたいということでしょうか。それってすごく大きな変化じゃないですかね。

 

cosgaso:そういう気持ちはありますね。それこそビジュアルノベル(美少女ゲーム)に強い影響を受けてるんでそれも絶対作りたいし、本も同人誌ももっとコンセプチュアルなものを作りたいし。

 

――と、いったようなお話がありましたが、a春さんの方はいかがでしょうか。今までの話題を踏まえ、cosgaso君に聞いてみたいことってありますか? もしくは、貴社のプロダクトがどのようにクリエイターへ貢献できそうか、という展望についてでも結構です。

 

a春:いやあ、最近の数ヶ月のなかで一番面白い話だったかもしれないです(笑)。そうですね、いま我々が作っているMEsというメタバース・プラットフォームは、リサーチした事柄から受けたインスピレーションを自由に配置したり保存したりしつつ育てていけるもので、新しいアイディアを育てるツールとして使っていただけたらと思うんです。それで言うと、先ほど話題に挙がったテクニカル面と美意識の話では、つまり「かつて両輪で進んでいたものがスキル先行になっている」ということですよね。美意識を育てていくにはディープシンク、深くじっくり考えていく思考サイクルが求められると思うんですが、MEsというツールが言語化しづらい事柄を発展させることに寄与させられれば、と。いまって、どのプラットフォームでもインスタントにコンテンツを積み上げよう、数を集めようといったことを志向していて、だから使いやすさやシンプルさのようなところでUX/UIを目指していると思うんですが、私たちの目指しているのは「ディープ・クリエイション(Deep Creation) のためのメタバース」なんですね。それはつまり、ふとした瞬間のセレンディビティ(偶然から幸運をもたらすこと)から自分の心の動きやインナーワールドと向き合える体験を提供したい、ということでもあって。

 

――近年の文化は、イラスト然り音楽然り、動画もそうですが、プラットフォームとの結びつきで生まれることが多いですもんね。ただ、いま説明いただいたようなビジョンを持ったツールってあんまり世の中には無いような気もします。だからこそ、本当の意味で個々人のクリエイションを大事にしているのかな、と。だからこそ、今回のワールド制作はcosgaso君の原風景からスタートしているのかな、と思いまして。機能面の説明ではなく、自分のパーソナリティを投影できるプラットフォームだということを伝えたいってことでしょうか。

 

a春:そうです。たとえばDiscordとかに代表されるコミュニケーションツールでは、どうしてもテキストベースになるので表現力が限定されてしまいますよね。もちろんその制約から生まれることもあるとは思うんですが、やっぱりそれだけだとイマジネーションは深化していかないとも思うので。そこをもっと拡げていこう、と思うなかで、今回cosgasoさんがどんなワールドを作りたいかっていうところで、この風景がもうすでに彼の中に存在していたんだと思っていて。それをOとしてどれだけ高められるか、というのはありましたね。

 

cosgaso:最初に、リファレンスとかムードボードをめちゃくちゃたくさん送っちゃって……(笑)。影響を受けてる音楽とかまで送っちゃったんで、ちょっとやりすぎたかな? と思ってました。

 

a春:いやいや、たくさんある方がいいです! ありがとうございました。その分こちらも全力で向き合えたと感じてます。

 

cosgaso:恐縮です……! 進捗を送ってもらったとき、もう本当に本気で「田舎」を作ってくれてて、それは僕が本当に見たかった景色っていうか。それをそのままあの形にしてくれてて本当に嬉しかったです。

 

――プラットフォームの話で言うと、たとえばニンテンドーDSの「うごくメモ帳」から個性的な創作が生まれたりとか、SoundCloudから想像もつかないような音楽が日々誕生していくとか、やっぱりいまインターネットを介した創作とは切っても切れないものだと思うんです。Oさんのプロダクトもそうなることを祈うばかりです。という感じで、最後にa春さん側からcosgaso君に向けた質問がなにかあれば!

 

a春:ちょっと気になってたのが「クオリティの先は何になるか」っていう話題で。スキル面のTipsが溢れてて、AIも登場した今、cosgasoさんとNordOstさんの話のなかで「アイコニックかどうか」などの話もあったと思うんですが、これからのイラストレーターたちが使うツールはどのように新しい考え方や新しいプロセスを生み出すのかなってずっと考えていました。cosgasoさんのツールに関する考えとかがあればぜひ伺いたいです。

 

cosgaso:そうですね、僕は普段CLIP STUDIOっていうソフトを使って絵を描いてるんですけど、それ以外にBlenderとかPhotoshopも使うんです。周りの絵描きの人にも3Dソフトを使っている人がいて、たぶんイラストやイメージをビジュアルに昇華させるとき、いろんなツールをまたぎながら制作をしている人が多いんですよ。それは個々のツール特有の機能とか得意分野が違うからなんですが、クリスタにもアップデートで軽めの3D機能が実装されたりとか、フォトショにAI拡張が実装されたりとかしてて、そういう機能がどんどんひとつに集約されてっていくのかな、と思っていて。でも、イラストレーターだったり漫画家、VJとビジュアル表現の出自によって選ぶツールが異なるのは変わらないのかな、とも思うんです。各ツールが下地にしている文化や対象で、毛色が異なるっていうのはあるのかなと。

 

――ちなみに、cosgaso君的には、複数のツールを横断していくのと単一のプラットフォームに機能が集約されているのと、どちらがいいですか?

 

cosgaso:うーん、難しいですね……僕は今の状態(ツールの横断)で制作をするのは結構気に入ってて。たとえばBlenderで3Dをやるときとか、イラレを開いてロゴを作るときとかって、ツールを開くたびに制作のプロセスへの向き合い方が変わるので。立ち上げ画面を目にすると気持ちが切り替わったりするのは、めんどくさいところもあるんですけどその手間ごと楽しめて良いですね。

 

――プラットフォームを制作している側のa春さんはどう思います?

 

a春:すごく面白い考えだな、と。ツールの立ち上げ自体に儀式的な側面が生まれているということだと思うんですが、たしかにその一瞬の待ち時間で出るアイデアも変わっていきますよね。つまり、そういった体験そのものに自分にしかない表現の可能性が詰まっているということでもあるので、プロダクトをつくる側としては刺激になりますね。となると、逆にこれからはその体験自体を磨いていく意味でも、「自分のツール」を作っていくっていうのも今後大事になりそうな気がします。そういうエクスペリエンスの一つひとつが、自分しかない表現の可能性を拡げることにもなると思うので。我々としては、粘土のように自在に形を変えられるようなプラットフォームを目指していきたいですね。

 

 

Oが開発するMEsへのアーリーアクセス希望の方は、以下のフォームまでご応募ください。

記事内で紹介されたcosgasoさんワールドを、是非アバターで探索してみてください。

(リファラルコード:AVYSSO)

https://bit.ly/46XVOX9

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