1+1が2になっただけ|XIAN interview

デビューEP『蝶刻』リリース

 

photo by kirin

 

KLONNSや鏡といったハードコアパンク・バンドのベーシストとして暗躍する傍ら、ポストニューエイジなソロワークから劇伴まで手がける音楽家・剤電 a.k.a. ZIEと、2021年に〈手綱会〉より発表した単独作『Kanna – chan / Hachi – chan』における絶叫ポエトリーで圧倒的な存在感を示し、DJとしても特異かつ鋭利なパフォーマンスで知られるセーラーかんな子によるユニット・XIANのデビューEP『蝶刻』が、〈DISCIPLINE PRODUCTION〉からリリースされた。

 

この〈DISCIPLINE PRODUCTION〉は、東京・小岩BUSHBASHを拠点とするボーダーレスなパーティー/コレクティブ〈Discipline〉のレーベルライン。AVYSSでは作編曲/シンセ/ギターのZIEと、作詞/ボーカルのセーラーかんな子に加え、レーベルオーナーのSHV(KLONNS/SOM4LI)にも同席してもらい、XIANの音楽と美意識について語ってもらった。

 

text: 須藤輝

 

 

ー XIANを結成した経緯についてお聞きしますが、そもそもZIEさんとかんな子さんはどういう感じで出会ったんですか?

 

セーラーかんな子(以下、かんな子):剤電(ZIE)さんとの出会いについては記憶が曖昧で、どれが最初の接触だったのか……VAMPIRE†HUNTER™のときですか?

 

ZIE:いや、それは2回目か3回目じゃないですかね。僕はかんなさんの存在自体はめっちゃ昔から知っていて、2014年の3月か4月に§✝§(サス)のライブを観てるんですよ。

 

かんな子:え……。

 

ZIE:あ、覚えてないですか? たしか中野のheavysick ZEROでやってたイベントで、aBiSyEikAh⊆とかKURUUCREWが出ていて、なぜか僕もヒップホップとかポエトリーリーディングの人とインプロやったんですよ。そのときに§✝§も出てたんですけど、すごいかっこよくて。でも、初めてかんなさんと話したのはそれから4年後とかなんですよね。

 

 

ー じゃあ、けっこう最近なんですね。

 

ZIE:外川良(wagot)さんという、今、南新宿でTYONってカレー屋さんをやっている最高の男が、2018年の年始ぐらいに幡ヶ谷のFORESTLIMITでイベントをやったんですよ。かんなさんとかsouj(Shine of Ugly Jewel)さんがDJで出ていて、僕が大好きなHIMOがライブをやったんですけど、そこでかんなさんから話しかけてくれて。それが最初ですよね。

 

かんな子:あのときは、まだVAMPIRE†HUNTER™はやってない?

 

ZIE:やってないですね。

 

かんな子:当時、剤電さんのBandcampにブワーっていっぱい音源がアップされていて、どれを聴いてもすごくいいから、それで声をかけちゃったんです。

 

 

ZIE:そのときフォレストで、Stillっていうバンドの話をしたんですよね。恒松正敏がプロデュースしていた80年代の女性ボーカル・バンドで、僕はすごい好きなんですけど、周りに知ってる人が誰もいなかったんでびっくりして。

 

かんな子:たまたま横浜のレコード屋さんで、Stillの『Pale Face』っていう12インチが売っていたのをジャケ買いして……。

 

ZIE:あ、レコードで持ってるんですね。やば。

 

かんな子:私も大好きなバンドなんですけど、ネットで調べてもあんまり出てこないですよね。Discogsにはあるけど。

 

ZIE:全然ないですよね。で、「Still、すげえいいですよね」みたいな話から、例えばG-Schmittとか、日本の、メロがきれいでボーカルが女性のニューウェーブの話とかをしたんですよね。そのときもかんなさん、鋲ジャン着てDJやってましたよね。

 

かんな子:そうでしたっけ(笑)。

 

ZIE:鋲ジャンっていうか、鋲ドレスみたいな? そのあと僕は、さっき名前が出たVAMPIRE†HUNTER™っていう名義で一瞬、1人でライブをやっていた時期があって。それをかんなさんが観にきてくれたり、音源を買ってくれたりして、そしたら〈K/A/T/O MASSACRE〉に呼んでくれたんですよね。あれはなんだったんですか?

 

かんな子:あれは、カトーさんが「セーラーかんな子とVAMPIRE†HUNTER™でマサカーやりませんか?」みたいな。

 

ZIE:あ、そういう感じだったんですね。僕、それがすごいうれしくて。LSTNGTとかHegira Moyaとか、当時僕が憧れていた人たちも出ていて、しかもめちゃくちゃ人が入ってくれたマサカーだったんですよ。でも、VAMPIRE†HUNTER™もなんかうまくいかなくて、すぐやめちゃって、いろいろあってKLONNSに入ったりして、時が流れたりして……2020年の11月にKLONNSとMs.Machineで大阪に行ったことがあって。

 

SHV:ありましたね、〈Discipline〉の大阪編。

 

ZIE:心斎橋のclub STOMPでやったんですけど、そのときにかんなさんがソロの初ライブをやって、すげえよくて。もう、そこにいた全員が泣いてるみたいな。

 

かんな子:(笑)。

 

ZIE:マジでヤバくて、なんか、すごい状態になってたんですよ。それで、東京に帰ってからそのときのかんなさんの写真か動画をインスタに上げたら、かんなさんが「一緒に音楽やりたいです」って連絡くれたんで「じゃあ、なんかやりますか」って。そこから1年ぐらい準備して、2021年12月の〈Discipline〉でXIANの初ライブやらせてもらったっていう感じですね。

 

ー あの〈Discipline〉、神回でしたよね。1797071ことMAKO(Ms.Machine/SOM4LI)さんの初ライブも強烈だったので、よく覚えています。ついでにいうと、僕はそのときの物販でかんな子さんの7インチシングル『Kanna – chan / Hachi – chan』を買って帰り、それが即2021年のベストシングルに輝きました。僕の中で。

 

かんな子:わあ、うれしい。

 

ZIE:あれもマジでめっちゃヤバいっす。XIANをやり始めたとき、あのシングルに入ってる2曲の原型を聴かせてもらったんですよね。お互いの手札を見せ合うみたいな感じで。その原型の時点ですでにヤバかったんですけど、やっぱり完成形はより鋭さが増していますね。

 

 

ー ちなみにSHVさんとかんな子さんは、どのタイミングで知り合ったんですか?

 

SHV:存在自体はけっこう前からTwitterとかを通して知っていて「ヤバいなこの人」と思っていたんですけど、初めてしゃべったのはたぶん、2018年とか2019年じゃないかな。そのタイミングで〈Discipline〉に出てもらって……あれは2018年? 深夜にやったとき。

 

ZIE:2019年の4月ですよ。odd eyesが出たときですよね。

 

SHV:ああ、そうか。odd eyesと、Ms.Machineとsouj(PHOTON POETRY名義)くんとBUSHMINDさんと荒井優作さんが出てくれて。あとKLONNSとGranuleか。

 

かんな子:そのときは、私はDJで出たんですよね。

 

SHV:そうっすね。でも、その前にもしゃべったことがあるような……ちょっと記憶が曖昧で(笑)。

 

ZIE:2018年4月に渋谷のRUBY ROOMでVAMPIRE†HUNTER™が初ライブをやったときに、KLONNSも出てたじゃないですか。そのときもかんなさんが観にきてくれた。

 

かんな子・SHV:……。

 

ZIE:なんでみんな黙るの!?

 

かんな子:RUBY ROOMって、あの、ビルの2階にある?

 

ZIE:そうそうそう。

 

SHV:そのときVAMPIRE†HUNTER™出てた?

 

ZIE:オープニングアクトです。大恥をかき、笑われるみたいな。

 

SHV:あれって、TAWINGSも出てたやつですよね?

 

ZIE:そうそう。かんなさんはその前にも、僕が早稲田の茶箱でやったソロライブにも来てくれたましたよね。

 

かんな子:ああ、行きましたね。

 

ZIE:そこは早稲田大学の子がよくイベントやってるんですけど、僕は早稲田のMusic Innっていう音楽サークルと仲よかったんで、そういうイベントに呼んでもらえて。たぶん、1人で初めて人前で何かやったときに、かんなさんが来てくれた。

 

かんな子:もう、ただの剤電さんファンですね。

 

ー ファンだったから、ZIEさんと一緒に音楽をやりたかった?

 

かんな子:そうですね。単純に剤電さんの曲が好きだったので、マサカーでVAMPIRE†HUNTER™と共演したときから、うっすらと願望はあって。

 

ZIE:マジですか? うれしいです。

 

かんな子:あと、今もなんですけど、1人で音楽をやるのにあんまり自信が持てていないところもあって。だから剤電さんの手を借りたかったというのもあるし、剤電さんとならお互いを尊重しながらやっていけそうだと思ったんです。

 

ZIE:かんなさんが「やりましょう」と言ってくれたとき、僕は曲単位で考えていたというか、セーラーかんな子にトラックを提供するんだと思ったんですよ。そのつもりで作ったのが「エレジア」って曲で。たぶんこれが最初に作ったXIANの曲になるんですけど、そのあと改めてかんなさんが「いや、ユニットやりたいです」って。

 

 

ー 先ほどStillとG-Schmittの名前が出ましたが、ZIEさんとかんな子さんは音楽の趣味において共通点などはあったんですか?

 

ZIE:t.A.T.u.ですかね。

 

かんな子:t.A.T.u.と神聖かまってちゃん。

 

ZIE:あとこの間、ILL BONEとかの話をしましたよね?

 

かんな子:あ、そうですね。

 

ZIE:そういうILL BONEとかさっきのStillみたいな、日本の80年代ぐらいの翳りのあるインディーズとかが趣味としては被るのかな。でも、「これ聴いた?」みたいな話はあんまりしないですよね。今はかんなさんは広島に住んでることもあって、会う機会も限られてるんで。

 

かんな子:あんまり音楽の話では盛り上がらない(笑)。StillとかG-Schmittも、ちょうど剤電さんと初めてちゃんとしゃべったぐらいの時期にたまたま私がすごいハマっていただけで。昔からそういう音楽を聴いてきたわけじゃないんです。

 

ZIE:あ、僕もたまたまあの時期にああいうの聴いてたんです。あと、かんなさんはウィッチハウスとか好きですよね?

 

かんな子:好きというか……昔、DJを始めた頃にウィッチハウスを題材にしていたというか、ウィッチハウスのDJみたいな感じで始めたので。今、ウィッチハウスがどういうふうになってるのかはあんまりわかってないです。

 

ZIE:僕はウィッチハウスは全然通ってなくて、何も知らないですね。それこそ僕が多大な影響を受けてるMAKOちゃんとかは、ウィッチハウスすげえ好きじゃないですか。っていうか、けっこうみんな好きだと思うんですけど、ウィッチハウス自体は何を聴いてもかっこいいから、あんまり掘る気がしなくなっちゃって。

 

かんな子:それはわかります。

 

ZIE:どう転んでも絶対かっこいい音楽だなって。そういうものにあまり興味がない。

 

かんな子:たぶん、当時はそれがすごく新鮮で。私はヒップホップのつながりというか、トラップの派生みたいな感じでウィッチハウスを聴いていたから面白く感じたのかな。

 

ZIE:僕はLil Peepめっちゃ好きで、今でもGothBoiClique周辺のエモラップみたいなのを追いかけてるんですけど、かんなさんはそういうのも好きですか?

 

かんな子:トラップが流行ったときにそれなりに聴いていましたけど、あんまり詳しくはないんですよ。昔はヒップホップのイベントに呼ばれることがよくあったから、そのために聴いていたみたいな感じもあって。

 

ZIE:そうなんすね。僕は勝手に、かんなさんのボーカルスタイルとか歌詞にヒップホップ的なものを感じているんですけど。

 

ー 僕もかんな子さんのスタイルがどういうふうにできあがっていったのか、すごく興味あります。

 

かんな子:これといってが好きなジャンルがあるわけじゃないし、その時々で特定のジャンルを意識して曲を作っている感じでもないのかな? でも、ソロで出した7インチのA面に入ってる「Kanna – chan」はヒップホップの曲をサンプリングというか、コピーしてループさせてるから、ヒップホップを素材として使っている感じで。歌い方に関しては、XIANもTAMAKI(セーラーかんな子、ZIE、SHV、O.Tatakau(SOILED HATE)、AK.okamoto(KLONNS/家主/Material Gold Park)によって2023年に結成されたハードコアパンク・バンド)もそうですけど、歌うことにちょっと照れみたいなものがあって。

 

ZIE:メロディを歌うことに、ですよね。

 

かんな子:そうですね。だからラップもちょっと勇気がなくてできないけど、ポエトリーリーディングに近い感じだったら、抵抗でなくできるかなっていう。

 

ZIE:最初に§✝§のライブを観たときから、すげえスタイルだなと思って。絶叫してるし、ラップみたいでもあるし。やっぱそういう「抵抗なくできる」みたいな、作為的じゃないところから、その人のスタイルとかオリジナリティって生まれてくるんですよ。っていう話をね、僕らもけっこうしますよね、SHVさん?

 

SHV:うん、まさにそういうことだと思います。自然発生的な。

 

かんな子:でも、§✝§での歌い方は参考にした人たちがいて。パジャマパーティズっていう、〈Maltine Records〉からEPを出してるラップユニットなんですけど、ちょっとポエトリーリーディングみたいな感じもあるんです。あとは……。

 

ZIE:不可思議/wonderboy?

 

かんな子:そう。こういう方向性だったら私にもできるかもしれないと思って。それでやってみたのが、今も続いてる。

 

ー ところで「XIAN」というユニット名はどうやって決まったんですか?

 

ZIE:それにはヒストリーがあって。まあ、決まったときは普通に僕がかんなさんにLINEして「XIANってどうですか?」「いいですね」みたいな感じだったんですけど、「シアン」って、色の名前ですよね? 暗めの青っぽい色の。

 

SHV:コピー機とかで見ますよね。

 

ー 印刷におけるCMYKのC(cyan)ですね。

 

ZIE:そうそう。なんか、そのシアンっていう色がめっちゃあのユニットに合ってるなって。自分の中のなんとなくのイメージなんですけどね。あと僕は『パルムの樹』っていう、2002年公開のアニメ映画がすげえ好きなんですよ。子供向けの冒険ファンタジーかと思いきや内容がめちゃくちゃエグくて、たぶんGoogleで検索するとサジェストで「トラウマ」とか出てくる、観るたびに疲弊するアニメで。主人公のパルムは人間になりたいロボットで、彼が執着してる母親的な女性がいるんですけど、その人の名前がシアン(Xian)なんですよ。彼女はクロスカーラっていう幻の樹液を追い求めすぎて精神を病んで、自分の部屋に青いペンキをぶちまけて、真っ青な部屋で1人で「リーン、リリン、リーン」ってつぶやくんです。そのシーンに食らいすぎちゃって。これ、かんなさんにLINEしたときは全然言ってなかったですよね。

 

かんな子:あとで聞きました。

 

ZIE:「実はXIANて名前の由来は……」みたいな。だから今言ったシーンの圧倒的な青の描写と、シアンというキャラクターに惹かれて、そこから取りました。

 

photo by SHV

 

ー 2021年の11月に〈DISCIPLINE PRODUCTION〉からリリースされたKLONNSとSOILED HATEのスプリットカセット『DIFFERENT SENSES』で、ZIEさんはボーナストラックとして「EXECUTE (KLONNS SYNTH COVER) feat.セーラーかんな子」を作っていますよね。これを録ったのは、XIAN結成より前?

 

ZIE:いや、すでにXIANは始動していて、XIANの曲と同時並行で作りました。あの「EXECUTE」のカバーって、僕がコロナ禍で何もしていなかったときに、遊びで作ったトラックがもとになっていて。

 

SHV:そう。1回、トラックだけで送ってきましたよね。

 

ZIE:そうそう。トラックだけあって「でもこれ、誰が歌うんだろう?」っていう。当初は、KLONNSのライブで僕とSHVさんしか都合つかなかったときに、サイバーKLONNSみたいなのをやろうって話してたんですよね。

 

かんな子:(笑)。

 

ZIE:僕がトラックを流して、SHVさんが暴れ回る。

 

SHV:絶対やらないですけどね(笑)。

 

ZIE:で、SOILED HATEとスプリットを出すにあたって、カバー曲をボーナストラックに入れようみたいな感じになって。その頃ちょうどかんなさんと「XIANやろう」って話になってたから、かんなさんに「これ、どうっすか?」って「EXECUTE」のカバーを投げて、やってもらったんですよね。

 

SHV:まあ、XIANの匂わせ的な感じですね。

 

ー じゃあ「EXECUTE」のカバーとXIANの楽曲は、ZIEさんの中では地続きみたいな?

 

ZIE:地続きですね。実際、「EXECUTE」カバーも最初はXIAN名義にするつもりだったんですよ。でも、SHVさんが「いや、ここでXIANの名前は出さないほうがいい」って。

 

SHV:オリジナルの曲で初めて名前を出したほうがいいかなって。

 

ー 僕は「EXECUTE」カバーをXIANのパイロット版みたいに捉えていたのですが、ひょっとして「エレジア」のほうが先にできていたり?

 

ZIE:「エレジア」が先じゃないかな。最初にかんなさんが声を乗っけて送ってきてくれたのって、「エレジア」ですよね?

 

かんな子:そうですね。

 

ZIE:「XIANやりましょう」とは言ったものの、やっぱりかんなさんがどういう感じで歌を乗せてくるのかまだわかってなくて。たぶん5曲ぐらい一気に作って全部かんなさんに送って、歌を乗せてもらう感じでやったんですよ。「Mirage」もそのとき作ったから、「エレジア」と「Mirage」はXIANの曲のなかではめっちゃ古い、僕がまだ手探りの状態で作ったやつ。ただ「EXECUTE」カバーは、もともとかんなさんの声が乗ることを想定して作ってなかったから、音色とかは今のXIANの感じとは違うっていうのはあるんですよ。作った当時、Golpe Mortalさんに教えてもらったAidenとかエモゴス期のAFIとか、そういうのに影響されて勢いで作った感じ。

 

 

ー お話を伺う限り、曲を作るにあたって2人で話し合いをするようなことは……。

 

ZIE:1回もないですね。「僕がこういうオケを作ったら、かんなさんの歌がかっこよく映えるだろうな」っていう、それだけです。ただ、今回でいえば「天使」みたいな、僕が歌詞を書いて歌も歌っているような曲とか、あとまだ公開もしてないしライブでもやってないけど、かんなさんがサンプラーで作ったビートを僕が編集して作った曲とかもあって。「I got on it」って曲なんですけど。

 

かんな子:あー、はいはい。

 

ZIE:要は、かんなさんのソロ曲のXIANバージョンですね。そういう曲の場合は部分的に相談したりすることもあるけど、基本的に「こういうことをやろう」みたいな話はしたことないですね。

 

かんな子:例えば「エレジア」は、さっき剤電さんも言ってましたけど、私がソロでやってるポエトリーリーディングみたいな感じをイメージして作ってくれたのかなと思ったし、やりやすかったです。でも、やっぱり歌詞を書くのにすごい時間がかかって。半年から1年ぐらいかかったかな。

 

ZIE:いや、「エレジア」は速かった気がする。

 

かんな子:あ、そうか。「Mirage」が大変だったんだ。私は曲が送られてきたら、まず「こういうリズムで声を入れたいな」みたいなことを考えるんですが、いつも言葉が全然うまくハマらず、すごいつらい気分になって(笑)。「もうダメだ。できない」ってしばらく作詞が手につかなくなるんですけど、最初に作ったイメージをちょっとずつ妥協していくというか、そこに囚われなくなってようやく進んでいく感じで。剤電さんから送られてきた音源に対して、すぐに歌詞をつけられたことってないですよね、今のところ。

 

ZIE:でも、待ったぶんだけいいものができると思ってるので。

 

ー かんな子さんの歌詞は、自身の個人的な体験、もしくは身近なところで起こった具体的な出来事を抽象化している感じなのかなと思ったのですが……。

 

かんな子:いや、むしろ自分の経験から書くことができなくて。ただ、歌詞を書くうえですごく気にしてるのは、のちのちライブとかで歌ったりしたときに「私、何を言ってるんだ?」みたいにならないようにすることで。自分で自分の歌詞に嘘っぽさを感じてしまうとあとで自分がしんどくなっていくだけなので、そこは注意して、いつ聞いても実感が持てるような言葉を選びたいと思っています。かといって、自分の実体験をもとに書こうとすると「自分の置かれている状況なんて大したことないのに」って気持ちになって入り込めなくて、いつまで経っても歌詞が生まれてこないんですよね。そもそも自分のネガティブな経験って、そこに至るいろいろな要因がわかってしまい、逆にひとつの視点で捉えられないから難しくて。何年も経つうちに、その経験から想起する感情とかも変わってしまうから。なので、人と話してる最中とか、ニュースを見てるときとかに「あ、その気持ち、ちょっとだけわかるな」っていう些細な共感みたいなものを膨らませて、誇大化して書いていく感じで。結局のところ、自分の内面が反映されていることにはなるんですけど。

 

ー そうなんですね。僕は「Kanna – chan」における「自分が上手くいったからって『こんなふうに生きろ』って簡単に言わないで!」「隙間を埋めたいだけのイミもない質問 もう300(?)回目なの、何回も何回も…うんざりする。つまらなくさせたいんでしょ?? 勝手に私のことをつまらない人間に」といった歌詞の当事者性とリアリティがエグいなと思ったんですよ。

 

かんな子:あ、たしかに「Kanna – chan」では自分の経験を重ねているというか。知人とのやり取りをもとに、自分がその子だったらこう思うだろうということを言葉にした感じですね。だからあの曲だけは、ちょっとリアルかもしれない。でも、ああいう書き方は何回もできないというか、やや批判的なトーンの歌詞なんで、やっぱりそんな自分をさらけ出すのは不安だなって感覚があって。

 

ー ソロとXIANで、歌詞を書き分けるみたいなことは?

 

かんな子:特にはしていないんですけど、最近になってちょっとずつ柔軟な視点で書けるようになってきたかも。ソロの7インチのときは「100%自分を投影させなきゃいけない」「自分はこういう人間であるというのを書かなきゃいけない」と思い込んで、自分で自分を縛っていたんです。でもXIANとかTAMAKIの歌詞を考えていくうちに、そもそも自分というものをひとつの視点で捉えることはできないというか、「自分はこうなんだ」という定義づけみたいなものがひとつだけあるわけじゃないと思うようになって。自分の持っているいろんな側面を切り取っていいし、確固たる1人の自分として歌詞を書かなくてもいいんだという感じに、変わってきてはいるかなと。

 

 

ー かんな子さんの歌詞は、個人的であると同時に社会的でもあるといいますか。歌詞で描かれている人物を通して、世の中の嫌さが浮かび上がってくる感じがします。

 

かんな子:なんか、どうしても卑屈になってしまって。例えばラップみたいに……いや、ラップに限らずですけど、社会に抗議するような歌詞はかっこいいと思うんです。でも、自分はそれがうまくできないというか、何かを批判したとして「そんな自分は何様なんだ?」という気持ちも湧いてきちゃって。なので、結果的に「こんな嫌なことがあるけど、自分自身もそこに与している部分もあって、自分は何もできなくて嫌だな」みたいな感じになっちゃう。

 

ー 卑屈ではないと思いますけどね。嫌な世の中で、自分の形を保つことに難儀している人みたいな、そういう印象です。

 

かんな子:ああ、そうあれたらいいなと思います。

 

ZIE:かんなさんの歌詞は普遍的ですよね。立場関係なく、生きていれば、程度の差こそあれ誰にでも当てはまるっていうか。

 

ー 「共感できる」というよりは、「身に覚えがある」とか「心当たりがある」みたいな感じ。聴き手も若干ダメージを受けるんですよね。そこがいいんですけど。

 

かんな子:すごいうれしい。

 

ZIE:歌詞に関して僕は一切リクエストはしていないんですけど、僕の思った通りというか、たぶんかんなさんが感じたままに書いてくれてる。そもそもXIANに関しては「こういう音楽をやろう」みたいなビジョンとか方向性を、少なくとも僕は持っていなくて。かんなさんと音楽を作るにあたって、どういうやり方が一番かっこいいか、それしか考えていないんですよ。だから、ライブを観たり音源を聴いたりしてくれた人に「○○っぽいね」とか言われると、逆に「あ、そうなんだ?」みたいな。

 

かんな子:うんうんうん。

 

ZIE:人それぞれの感じ方があって、面白いなって思うんですよ。

 

ー 「○○っぽいね」って、その人が聴いてきた音楽によって導き出される感想ですからね。例えば何っぽいと言われました?

 

ZIE:やっぱり80年代のニューウェーブとかポジパンとか、あるいはヴィジュアル系だったら「MALICE MIZERのあの曲を思い出した」とか。あとはウィッチハウスの文脈で聴いてくれる人もいて、そういう感想から発見があることも多いです。それから去年のマサカー出たときに、僕が尊敬してるオートモアイちゃんが観にきてくれて。「今までありそうでなかった、まったく新しい音楽」って言ってくれて……そういうのはすごいうれしいですよね。

 

ー 僕もゴスを感じたのですが、それも意図していなかったと。

 

ZIE:僕に関しては全然してないです。無意識に今まで聴いてきた音楽が反映されたり、手癖みたいなものが出ちゃったりしてるかもしれないけど。

 

かんな子:私も全然ないです。でも、XIANのEPのインフォに「ゴシック・シンセパンク・ユニット」って……。

 

ZIE:SHVさんが書いてくれたんですよね。でもたぶん、何も当てはまってない(笑)。

 

かんな子・SHV:(笑)。

 

ZIE:ただ、XIANはパンクだとは思ってるんですよ、自分の中では。でもゴスかと言われると「まあ、黒い服は好きだけど……」ぐらいの感じで。もちろん、XIANのライブ動画とかをインスタに上げたりすると国内外のゴッシーな人たちが反応してくれて、それはめちゃくちゃうれしいんですけど、別にそこを狙ってるわけじゃなくて。

 

かんな子:そうなんですけど、「ゴシック・シンセパンク」って、ひとつ言語化されることで印象づけやすくなるから。

 

ZIE:そう、そこは本当にありがたくて。あと、今年の3月に下北沢のSPREADで〈Discipline pre.《蜜》〉をやったとき、XIANの紹介文に「ロマンティックかつショッキングなデュオ」って書いてあって。あれもSHVさんが考えたんですか?

 

SHV:そうですね。

 

ZIE:名文だと思います。これがたぶんXIANを一番よく表してる気がするというか、個人的にはそうありたい。

 

SHV:XIANのトラックに関しては本当に「これぞ剤電だな」というか。ZIEさんがたぶん10年以上前から1人で黙々とBandcampとかに上げ続けてた音楽の、特に歌モノっぽいやつの系譜にあると思ってます。だから「ゴスっぽい」とか「ウィッチハウスっぽい」とか、いろいろ言い方はあると思うんですけど、それは特徴のひとつに過ぎなくて。たまたまヤバい2人が出会った結果、変異体が生まれてしまったみたいな。そしてそのヤバい2人の美意識が重なり合うさまが、どうしようもなく僕が思うところの「ゴシック」だなと。メイクやファッションの話じゃなくてね。

 

ZIE:普通に1+1が2になった感じですね。

 

かんな子:何?

 

ZIE:けっこうみんな、1+1が2にならなくて。バンドとかでも、例えば4人編成のバンドがいたとして、なかなか1+1+1+1=4にはならないんですよ。大抵は−1とか−2になる。

 

ー 減っちゃうんだ?

 

ZIE:逆にいうと4になれるバンドが本当にかっこいいというか、4人の個性がバンドの構成要素としてちゃんと生きてるみたいな。だからXIANは1+1が2になっただけの、当然の帰結であり、自然の成り行きなんですよ。

 

ー もはや真にオリジナルな音楽を作るのは不可能に近いと思うんですが、個性と個性の組み合わせ次第で独創的なもの、SHVさんの言葉を借りれば「変異体」が生まれるんだなって。

 

ZIE:僕らは、普通に滲み出てくるものを滲み出させているだけっていうか……わかんないですけど、今までの人生とか精神状態とか、そういうものを。それがたぶん、音楽なんじゃないですかね。すいません、なんか偉そうなこと言いました。

 

かんな子・SHV:(笑)。

 

SHV:D’ERLANGERみたいなことを言いますね。

 

photo by SHV

 

ー 収録曲の話に戻りますが、先ほどZIEさんも言及したように、B面の「天使」はZIEさんが歌詞を書き、歌も歌っていますね。

 

ZIE:「天使」はけっこう前に作った曲で、当時、自分で歌ったバージョンも録音したんですけど、あんまりよくならなくて。でも、曲自体は気に入ってたし、XIANの雰囲気にも合うかなと思って「かんなさん、これ歌ってみませんか?」と提案して、なんか流れで「じゃあ、僕もちょっと声を被せます」みたいな感じになったんですよね。ただ、これをライブでやるか、けっこう悩んだんですよ。「こんな軟弱な曲、やっていいの?」って。

 

かんな子:でも、この曲を「好き」って言ってくれる人が多くて。

 

ZIE:もちろん「好き」って言ってもらえるのはうれしいけど。そもそも「天使」の歌詞には自分の嫌な部分がめっちゃ出ていて……自分が歌詞を書くと、だいたい内省的で、発展性のない感じになるんですよ。逆にかんなさんの歌詞って、僕はすごい前向きで希望的だと思っていて。レコードには歌詞カードも付いてるんですけど、改めてかんなさんの歌詞と自分の歌詞が並んでるのを見て絶望するみたいな。

 

かんな子・SHV:(笑)。

 

かんな子:でも「天使」は、ほかの2曲とはちょっと違って癒しがあるというか、湿度が高いというか。あともう1曲、レコードには入ってないんですけど「朱」という曲があって……。

 

ZIE:まだライブでしかやってない、最近作ったやつですね。

 

かんな子:「朱」も2人で一緒にメロディを歌っている曲で。そういう曲があることでXIANの音楽に奥行きが出るから、すごくいいことだなって。ライブとしてもいいものになる。

 

ZIE:ありがとうございます。

 

かんな子:繰り返しになりますけど、ライブの感想として「あの曲(「天使」)、めっちゃよかった」って、本当によく言われますよね。

 

ZIE:言われるっすね。やっぱりライブの最後にやってるし、2人で歌ってる絵面もけっこうインパクトあるのかも。僕はもともと男女のツインボーカルとか、ツインじゃなくても複数のボーカルがいるバンドが好きだったので、そういうのをやってみたいという気持ちはあったかもしれないです。

 

ー ZIEさんのギターも特徴的というか、XIANをより個性的なユニットにしていると思います。

 

ZIE:もともと僕がギターを弾く予定はなかったんですけど、ライブを想定したときに、僕が手ぶらなのはマズいのかなって。突っ立ってるだけみたいな。それか、なんとなく考えてたのは、トラックを流してかんなさんが歌ってる間、僕はフロアで暴れてるっていう。

 

SHV:初期の清春みたいな。

 

ZIE:そうっすね(笑)。でも、暴れて怪我とかしたくないし、ちょっと冷静になって、ギターを持ってみようかなと。音源にはギターの音を入れてるんですけど、オケに合わせてギターを弾いたことがなかったんで、ライブではギターを弾いてるフリだけしようと最初は思ってたんですよ。でも、それもちょっと違うなと考え直して、練習したっていう。むしろ今はもっとギターを生かしたいと思うようになってきてるんですよ。たぶん、同期流しながらこういうタイプのギターでボーカルに絡む人って、あんまりから。

 

ー 例えばHegira MoyaやUltrafogのように、電子音楽にギターを持ち込むのとも違いますもんね。

 

ZIE:全然違うと思いますね。Hegiraさんとかは基本的にバッキングというか、アルペジオとかディレイを効果的に使ってアトモスフィアみたいなものを出していますけど、僕はけっこう泣きのギターというか……よく言っちゃうとSuedeのバーナード・バトラー的な。リードギター的にメロで絡んでいく感じなんで。だから最初はあんまり前に出過ぎないように、ボーカルと被らないように気をつけたほうがいいかなと思ってたんですよ。でも最近は、ゆくゆくはかんなさんの声とギターがデュエットしてるみたいな感じでやれたらいいな、みたいな妄想をしています。

 

ー その妄想以外に、今後の展望みたいなものはありますか?

 

ZIE:特には……まあ、ずっとかっこいいままでいられたらなって。それだけですね。なんか、あんまり先のことを考えてやっていなくて。人によっては音楽ドリーム的なものがあるじゃないですか。階段を駆け上がっていきたいみたいな。

 

ー 「フジロックに出たい」とか。

 

ZIE:そうそう。僕は今はそういうのが全然なくて。若い頃はそれこそ親を質に入れてでも売れたかったんですけど。かんなさん、あります?

 

かんな子:ない(笑)。

 

ZIE:僕ら、どうしたらいいですか? SHVさんは、KLONNSをどうしたいですか?

 

SHV:いきなりKLONNSの話?(笑) まあ、今よりいい曲を作れたらいいなと思いますね。いい曲ができるといいことが起きるので。

 

ZIE:そうですよね。それ以外に何があるんだろう? 個人的な目標を言わせてもらうなら、ただいい曲だけ作る人になりたいですね。20歳ぐらいのときからずっとそう思い続けてるんですけど、でもなれないっていうブルースがあって。

 

かんな子:これからもXIANを続けていけたらいいけど、いつか私が、例えば歌詞が何も思い浮かばなくなったりして「自分は何もきないんだな」と思ってしまうときが来るんだろうなっていう、不安に駆られます。

 

ZIE・SHV:(笑)。

 

ZIE:そのときはそのときで。XIANを始めるときに「将来的に、お互いに機材を使ってノイズっぽいこともやりたいですね」とか、僕の勝手な願望を話した記憶があるんですよ。だから今はこういうスタイルでやってるけど、続けていくにつれて「なんか、こっちのほうが面白いんじゃない?」みたいな感じで変わっていっても、それはそれでいいんじゃないかな。うん、成り行きに任せます。

 

SHV:僕としては、曲をガンガン出してほしい。ちゃんとパブリッシュするという意味で。別にXIANは〈DISCIPLINE PRODUCTION〉所属とかそういう堅苦しい感じじゃないので、フィジカルでもデータでも、どんな形であれ聴きたいです。

 

ZIE:うん。まだ発表してない曲が何曲かあるんで、それをレコードなりカセットなりCDなりで、近いうちに出せたらいいっすね。

 

かんな子:なんか、自分が「かっこいいな」って思う音楽があっても、自分ではそれができないから、それを目指したらどんどん自己嫌悪に陥ってしまって……。

 

ZIE:たしかに。できることをやりたいですね。

 

かんな子:そう。できることをね。

 

ZIE:できることのなかで最善を選ぶっていうか。逆に、できないことを無理にやろうとして、屈折して「わー!」ってなって、他人を傷つける人とかいるじゃないですか。だから、自分にできることをみんなやったほうがいいかなって思います。たとえそれを見つけるのに時間がかかったとしても。

 

SHV:もう、この2人が一緒にやる時点で「ヤバいだろうな」と思ってたし、実際にヤバいものができあがったので、リリースに協力できて光栄です。

 

ZIE:いやいやいや。こちらこそ、ありがとうございます。〈Discipline〉のフライヤーとかでいつもお世話になってるKeigo Kurematsuさんがデザインしてくれたジャケットも素晴らしい。

 

かんな子:本当に素敵です。

 

SHV:そうっすね。〈DISCIPLINE PRODUCTION〉は一部を除いて基本Keigo Kurematsuがアートワーク及びデザインを手がけてくれているんですが、彼のフェティッシュで神秘的な作風の新境地というか、炸裂したなと。いつもありがとうございます!

 

 

[DCP007]

artist: XIAN

title: 蝶刻

format: 7inch Vinyl + DL CODE (LTD.250)

release date:2023/08/02

price: ¥1800 (tax in)

 

Side A

1. Mirage (03:05)

2. エレジア (02:38)

 

Side B

1. 天使 (04:01)

 

XIAN are

セーラーかんな子 : voice/lyrics

罪 : sounds

 

Published by DISCIPLINE PRODUCTION

Composed by XIAN

Mixed by 罪

Mastered by Yui KImijima (TSUBAME STUDIO)

Cover Artwork and Design by Keigo Kurematsu

©️&Ⓟ 2023 DISCIPLINE PRODUCTION

 

 

Discipline #43 -XIAN & Golpe Mortal Release Party-

2023/08/26(sat)

at KOIWA BUSHBASH

17:00 start

adv/door ¥2500 / ¥3000 (+1drink order)

(U23 ¥1500 +1d)

 

live:

XIAN

Cristel Bere

NEGATIVE SUN

Wolf Creek

KLONNS

 

dj:

Golpe Mortal

ansui

YNZ VALENTINE

1797071

TIDEPOOL

Lil-D

 

flyer:

Keigo Kuremtsu

 

予約フォーム↓

https://forms.gle/te3q2QtR15mNrgjq9

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