
2023/04/07
無条件の壮大さと狂喜の賛歌

“Symchtchonia”(シンンクトニア) は、古代ギリシャ語の συμ-シン(共に)とχθών- クトニア(大地・土)から派生した言葉。哲学者のDonna J. Harawayによる造語で「地上のものが一緒になること」を意味する。
またポストアントロポセンに関する芸術的実践、想像力、理論的言説の交差に興味を持つ人々の集いの場として作ったDiscordサーバーの名前でもある:https://discord.com/invite/yfM3b3YJ4p
MIRA新伝統が〈Subtext Recordings〉から昨年リリースされたEP『Noumenal Eggs』は、資本主義やエントロピックのカタストロフィーの概念をめぐる音と映像の理論フィクションを探求した。その後の「Symchthonia」は独立したシングルリリースであり、Donna J. Harawayが「Camille Stories」で述べた、未来の地球上の生命体による共生コミュニティに対する無条件の壮大さと狂喜の賛歌。
「Camille Stories」でDonna J. Harawayが描いた、あらゆる性別や民族の人間のグループが、絶滅に直面している種と直接的、共生的、人工的に強化された共依存関係を築くことによって、来るべき世界を生き残るというもの。
この短い賛美歌は、恍惚とした逃避行や奢ったディストピアではなく、私たちの現実に根ざしたものにしたかったので、作曲は都市のフィールドレコーディングと合成サウンドデザインの間でバランスをとっている。指数関数的なリズム、吠えるような声、牧歌的なインストゥルメンタルが、溢れかえる下水道の中で戦い、やがて大空に花を咲かせる。
「Symchtchonia」のカバー画像にある錆びたプレートは、2023年2月に開催されたアートフェア「EastEast_Tokyo」で発表したパフォーマンス/インスタレーションから由来したもので、金属製のプレートには、John B.Calhounによる図式が刻まれており、混沌と絶滅に至ったネズミのユートピア実験 “Universe 25” から差し引いた社会構造におけるニーズ、条件、適応の緊張と因果関係を示している。“Universe 25”は、集団主義や平等主義のアプローチに対する反動的な議論として使われることがあまりにも多い。しかし、ここでは、錆びたプレートに植物が刺さっており、ネズミの社会を根絶やしにしたのは、豊富な資源や直接アクセスではなく、生態系の予測不可能性やその多様性から人為的に強制的に隔離されたことかもしれないと示唆している。

MIRA新伝統 – Symchthonia
Release date : April 7 2023
Bandcamp : https://mirashindento.bandcamp.com/track/symchthonia
category:NEWS
tags:MIRA新伝統
2025/06/26
断片化されたシネマティック・バラード 2018年に東京で結成、現在はアテネに拠点を移し活動するRaphael LerayとHonami Higuchiによるエクスペリメンタル・プロジェクト、MIRA新伝統が新曲「Stalemate, Altered」を6月26日にリリース。 「Stalemate, Altered」はテクスチャー的で断片化されたシネマティック・バラードとして構成されており、現代の政治的不安を背景に、ロアコア(lorecore)、SNS疲れ、アルゴリズム疲弊といったテーマを描いているとのこと。lorecore=伝承を意味するロア(lore)のコア(core)化とは、個人が自らをキャラクター化し、自身の生活を物語化する欲求に駆られる、もしくは必要性に駆られるという、SNS以降の現代社会の歪みを表したもの。 なお、MIRA新伝統は2025年秋に最新アルバム『Mythoplaxy』を、ポスト・クラブ的な作品を主とするメキシコの〈Infinite Machine〉よりリリース予定とのこと。詳細については追って発表される。 MIRA新伝統 – Stalemate, Altered Release Date : June 26, 2025 Stream : https://li.sten.to/b5fqhdao Bandcamp : https://mirashindento.bandcamp.com/track/stalemate-altered
2026/02/20
日本のアニミズムとギリシャ神話の交差 Raphael LerayとHonami Higuchiによるオーディオビジュアルユニット・MIRA新伝統が、メキシコの〈Infinite Machine〉より1月26日に発表した最新アルバム『Mythoplaxy』の収録曲「The Riddle of Pendeli」のミュージック・ビデオを公開。アテネを拠点とするアーティスト・Alexandra Koumantakiが監督・撮影を担当し、衣装はrunurunuが提供。本情報はAVYSSによる独占プレミアとなる。 「The Riddle of Pendeli」のMVは、『Mythoplaxy』およびMIRA新伝統の現時点でのムードに通底するコンセプトをサイトスペシフィックなダンス作品として映像化したもの。山火事の痕跡が残るアテネ近郊の丘陵地帯と廃車置き場を行き交う身体を追いかけ、開けた地形と洞窟のような陰影のあいだを移動する一方、顔のない人物が夜の中をランタンを掲げて進み、移動する灯台のように画面に現れていく内容。 本作は、ペンテリ山にまつわる牧神パンとニンフのローカルな神話を参照しながら、現在進行中のパフォーマンスおよびアルバム『Mythoplaxy』の一部として制作されたもの。土地に刻まれた神話的記憶を参照しつつ、現在の身体と言語を通して再構成する試みとなっている。 『Mythoplaxy』において、MIRA新伝統は、ディストピア的なクラブ・アクセラレーションの定型や、ギャラリー文脈に縛られたパフォーマンスの慣習からの脱却を提示する。ステージとスタジオの両方を行き来し、神道由来の儀式と大衆演劇や神話物語の共同体的な遍歴的伝統を融合させたパフォーマンス言語を育み、ポストテクノ資本の崩壊という幽霊のような地形を背景に、古代のサテュロス劇から中世のサイクルまでを想起させる。 『Mythoplaxy』はエレクトロニック・バラードから神話的な断片まで、象徴的な建築の原型として構想された11の音の物語で構成されている。本作には、神話を「事実や現実を超えるものと共に生きるための自己反省的な語りの形式」として捉えるイタリアの哲学者フェデリコ・カンパーニャの思想も参照されており、私たちが作り出し、この世からあの世へと持ち帰るであろう神話や遺跡を想像するようリスナーを誘う。 Credits: Direction & Cinematography: Alexandra Koumantaki Editor, colorist: Thanos Tryfonidis Camera assistant: Evelina Kehagia Lighting assistant: Natalie Mariko Costumes: runurunu Release: Infinite Machine Mixed and Mastered by Fausto Mercier Production / Music: MIRA新伝統 MIRA新伝統 – Mythoplaxy Label : Infinite Machine Release Date : January 16, 2026 Buy / Stream : https://infinitemachine.bandcamp.com/album/mythoplaxy Tracklist : 1. Ignore The Signs 2. The Riddle
2022/06/02
Ziúrリミックス収録 photo by さようならアーティスト ポスト・ヒューマン的リアリティは、必ずしも煌々と輝くディストピアやサイバーパンクな夢物語ではない。それは、人知れずネオンが宣伝を続ける静まり返った渋谷の路地裏や、燃やされたプラスチックが溶け固まりできた小石が海岸を覆う神奈川のエコ・トランスレイヴかもしれない。東京を拠点に活躍する MIRA新伝統の二人が最新EP『Noumenal Eggs』のインスピレーションを得たのはそんな情景の数々からだ。この作品は、倒錯した不協和音と進化し続けるテクスチャーから成り立つ、探索的で歪曲した音響的複合物の発掘作業である。 Honami HiguchiとRaphael Lerayの最新作は、性的虐待やトラウマの身体的および心理的な影響を題材とした『TORQUE』(2019) に続くリリースとなる。約20分間の短編映画とサウンドトラックからなる『TORQUE』は、 舞踊家のHonamiが演じる性暴力やセックスワークの経験との対峙と、フランス出身の音楽家であるRaphaelによるアンビエント楽曲からなる1時間のパフォーマンスを再構成したものである。Honamiが自身の人間性と相反する業界の動因と折り合いをつけながらも、暴力やそれによってもたらされたアイデンティティの喪失に耐えてきた姿を描いている。 『TORQUE』がHonamiの過去の傷や現在に及ぶ重い鬱症状を癒す手助けとなったのに対し、『Noumenal Eggs』は他者性と消費経済における単なる資源としての身体という痛ましいテーマを、ポスト・キャピタロセン(資本新世)という広義の文脈へ導いている。”Howling Machines” では、ドゥルーズとガタリの「欲望する機械」が、Raphaelが作り上げた蛇のように蠢く破壊音を通じて鳴り響く。また”Hosting of Inorganic Demon” では、Honamiの絶叫がパンデミック時代に廃墟と化した商業ビルを訪れたときのような非現実感を伴って反響する。このトラックは、イラン出身の哲学者レザ・ネガレスタニが描く、生物のような地域や悪魔のような天然資源が独自の統治機関として存在するセオリー・フィクションの奇妙で不気味な世界から着想を得て制作された。 FMとウェーブテーブル合成を主に使用し作られた”Chronosis “のひび割れるような雑音は、MIRA新伝統が「逆行するくぐもった空間感覚」と呼ぶリバーブのように、時時間が圧縮される感覚を模倣している。対をなすトラックとしてZiúrが手掛けた”Disembodiment” のリミックスも収録。SOPHIEの触覚的なテクスチャーとジェンダー規範的なボーカルの影響を感じさせるこの曲では、Raphaelが高音を歌い上げ、Honamiが低音の唸り声を響かせる。Coil、Psychic TV、Markus Popp、そしてノーウェイブのアイコンであるイクエ・モリらの影響も微かに感じられる。 カバーイメージは、スイス出身のアーティストMaya Hottarekが手掛け、Joelle Neuenschwanderが撮影した。つややかな釉薬に覆われたエイリアングリーンの彫刻は、人間の知覚では捉えることができない物体を彷彿させる。未知の形状は、文化理論家であり、k-punkの名でも知られる故マーク・フィッシャーが定義したようにオルタナティブな未来と想像を超えた新しい自然を示唆している。フィッシャーは述べている。「私たちは、まだ存在せず、どのように、どんなものになるのか分からないものを生み出さなければならない」、と。 MIRA新伝統 – Noumenal Eggs Label : Subtext Recordings Release date : 17 June 2022 Pre-order : https://mirashindento.bandcamp.com/album/noumenal-eggs Tracklist 1. Hosting of an Inorganic Demon 2. Disembodiment 3. Noumenal Eggs 4. Chronosis 5. Howling Machines 6. Disembodiment (Ziúr Remix)
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