偽陽性企業アンビエントに対して|Tim Heckerがアルバム『No Highs』をリリース

緊縮と曖昧、煉獄と船酔い

 

 

カナダの作曲家Tim Heckerの最新作『No Highs』は、現在流行している偽陽性の企業アンビエントに対して、不安の標識となるもの。警告と取るか、約束と取るか、『No Highs』はそれを実現する。これは緊縮と曖昧さ、煉獄と船酔いの音楽。薬漬け時代のギザギザした抗リラックス剤であり、荒削りで未定義である。

 

モールス信号のパルスプログラミングが救難信号のように明滅し、ストリングス、ノイズ、ローエンドの嵐が遠くのほうに迫ってくる。エレクトロニクスは、ひび割れた電圧、マントリックホーン、大聖堂キーボードなどのピッチシフトの集合体に対して震え、作品全体を通して、ドラマを生み出し、また回避し、クレッシェンドよりも引き潮を意識している。Tim Heckerは「否定」をミューズの一種として挙げている。大げさでなく騒々しいという感覚、縛られたエクスタシー、逃避からの逃避。Tim Heckerの作品は、無愛想でありながら蠱惑的であり、解決策を持たず、リスナーをそのグレースケールの不穏な錬金術の中に深く誘い込む。

 

 

Tim Hecker – No Highs

Label : kranky

Release date : April 7 2023

Bandcamp : https://timhecker.bandcamp.com/album/no-highs

 

Tracklist

1. Monotony

2. Glissalia

3. Total Garbage

4. Lotus Light

5. Winter Cop

6. In your Mind

7. Monotony II

8. Pulse Depression

9. Anxiety

10. Sense Supression

11. Living Spa Water

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