
2022/06/02
Ziúrリミックス収録

ポスト・ヒューマン的リアリティは、必ずしも煌々と輝くディストピアやサイバーパンクな夢物語ではない。それは、人知れずネオンが宣伝を続ける静まり返った渋谷の路地裏や、燃やされたプラスチックが溶け固まりできた小石が海岸を覆う神奈川のエコ・トランスレイヴかもしれない。東京を拠点に活躍する MIRA新伝統の二人が最新EP『Noumenal Eggs』のインスピレーションを得たのはそんな情景の数々からだ。この作品は、倒錯した不協和音と進化し続けるテクスチャーから成り立つ、探索的で歪曲した音響的複合物の発掘作業である。
Honami HiguchiとRaphael Lerayの最新作は、性的虐待やトラウマの身体的および心理的な影響を題材とした『TORQUE』(2019) に続くリリースとなる。約20分間の短編映画とサウンドトラックからなる『TORQUE』は、 舞踊家のHonamiが演じる性暴力やセックスワークの経験との対峙と、フランス出身の音楽家であるRaphaelによるアンビエント楽曲からなる1時間のパフォーマンスを再構成したものである。Honamiが自身の人間性と相反する業界の動因と折り合いをつけながらも、暴力やそれによってもたらされたアイデンティティの喪失に耐えてきた姿を描いている。
『TORQUE』がHonamiの過去の傷や現在に及ぶ重い鬱症状を癒す手助けとなったのに対し、『Noumenal Eggs』は他者性と消費経済における単なる資源としての身体という痛ましいテーマを、ポスト・キャピタロセン(資本新世)という広義の文脈へ導いている。”Howling Machines” では、ドゥルーズとガタリの「欲望する機械」が、Raphaelが作り上げた蛇のように蠢く破壊音を通じて鳴り響く。また”Hosting of Inorganic Demon” では、Honamiの絶叫がパンデミック時代に廃墟と化した商業ビルを訪れたときのような非現実感を伴って反響する。このトラックは、イラン出身の哲学者レザ・ネガレスタニが描く、生物のような地域や悪魔のような天然資源が独自の統治機関として存在するセオリー・フィクションの奇妙で不気味な世界から着想を得て制作された。
FMとウェーブテーブル合成を主に使用し作られた”Chronosis “のひび割れるような雑音は、MIRA新伝統が「逆行するくぐもった空間感覚」と呼ぶリバーブのように、時時間が圧縮される感覚を模倣している。対をなすトラックとしてZiúrが手掛けた”Disembodiment” のリミックスも収録。SOPHIEの触覚的なテクスチャーとジェンダー規範的なボーカルの影響を感じさせるこの曲では、Raphaelが高音を歌い上げ、Honamiが低音の唸り声を響かせる。Coil、Psychic TV、Markus Popp、そしてノーウェイブのアイコンであるイクエ・モリらの影響も微かに感じられる。
カバーイメージは、スイス出身のアーティストMaya Hottarekが手掛け、Joelle Neuenschwanderが撮影した。つややかな釉薬に覆われたエイリアングリーンの彫刻は、人間の知覚では捉えることができない物体を彷彿させる。未知の形状は、文化理論家であり、k-punkの名でも知られる故マーク・フィッシャーが定義したようにオルタナティブな未来と想像を超えた新しい自然を示唆している。フィッシャーは述べている。「私たちは、まだ存在せず、どのように、どんなものになるのか分からないものを生み出さなければならない」、と。

MIRA新伝統 – Noumenal Eggs
Label : Subtext Recordings
Release date : 17 June 2022
Pre-order : https://mirashindento.bandcamp.com/album/noumenal-eggs
Tracklist
1. Hosting of an Inorganic Demon
2. Disembodiment
3. Noumenal Eggs
4. Chronosis
5. Howling Machines
6. Disembodiment (Ziúr Remix)
category:NEWS
tags:MIRA新伝統
2022/08/26
FACTのYouTubeチャンネルにて公開 MIRA新伝統が〈Subtext Recordings〉よりリリースしたEP『Noumenal Eggs』より、タイトル曲の映像作品がFACT MAGAZINEのYouTubeチャンネルにて公開。3D/プロット/コンセプトをMIRA新伝統自身が手掛けている本映像には、Sharar Lazimaが出演し、カメラをReiが担当している。 “Noumenal Eggs”とは何なのか? “Noumenal Eggs”は短編の理論的フィクション作品である。渋谷のクラブ街の汚れた路地裏、浮遊する黒い卵。すると突然、未来の可能性が孵化する。これが“Noumenal Eggs” の正体だ。~私たちの知覚の外に眠る未開発の可能性~ しかし稀に、破裂し、それが抱えていた別の現実が偶然にも現象界に拡散され、目撃されることがある。それらは余白に生きる人々や、意識の変容を起こしやすい人々に目撃されることが多い。卵から明かされるのは、灼熱とエントロピーの世界。つまりプラスティグロメレートと粘液の世界のように見える。もしこの未来が本当の未来ではなく、別の場所と時間に私たちを移そうとしているとしたら?新自由主義社会が何十年もかけて温めた卵が、今ようやく孵化し始めたとしたら?私たちの潜在的な未来をすべてキャンセルして、ここにふさわしくない未来とすり替えるになんて、まるでカッコウの卵のよう?私たちが何世代にもわたって暮らしてきたシステムは、巨大なハイパーパラサイトが人類の無意識的な辺獄に働く欲望駆動回路をハッキングし、世界に物理的な場を提供するために、持続不可能で自己利益に反する生産を私たちに押し付けていたのだろうか。入れ替わった卵を探す旅に出よう。今こそ心の奥底に差し込まれた寄生虫の樹状突起から自身を解放し、アップグレードする時ではないだろうか? MIRA新伝統 – Noumenal Eggs Label : Subtext Recordings Release date : 17 June 2022 https://mirashindento.bandcamp.com/album/noumenal-eggs Tracklist 1. Hosting of an Inorganic Demon 2. Disembodiment 3. Noumenal Eggs 4. Chronosis 5. Howling Machines 6. Disembodiment (Ziúr Remix)
2025/10/30
映像作品「The Fall of Metatron」公開 『Mythoplaxy』において、MIRA新伝統は、ディストピア的なクラブ・アクセラレーションの定型や、ギャラリー文脈に縛られたパフォーマンスの慣習からの脱却を提示する。ステージとスタジオの両領域を横断しながら、 彼らは神道に由来する儀礼性と、民衆劇や神話的語りの遊行的・共同体的伝統を融合させた表現言語を育んできた。それは、古代ギリシャのサテュロス劇から中世の宗教劇サイクルにまで連なる形態を反響させながら、ポスト・テクノ資本の崩壊後に広がる幽幻の地形の上で展開される。 本作は、エレクトロニック・バラードから神話生成的な断片まで──11の音響的寓話(ソニック・テイル)によって構成されている。それぞれの楽曲は、象徴的建築の原基として構想され、私たちがこの世界から次の世界へと持ち運ぶべき神話と廃墟を想像するよう聴き手を誘う。その理念は、イタリアの哲学者フェデリコ・カンパーニャの提起と共鳴している。 リリースに合わせて公開される映像作品《The Fall of Metatron》では、二人によって考案された文字体系「Lambdochian(ラムドキアン)」が初めて登場する。このスクリプトは、ラムダ計算の図式とロジバン音韻から導き出された詩的な装置であり、日常的な筆記のための文字ではなく、エジプト象形文字のように神話・儀礼・伝達のための聖なる媒体として機能する。 《The Fall of Metatron》は、「神の書記」と呼ばれる大天使メタトロンの堕落を描いている。彼はグノーシス派やユダヤ=イスラームの伝統に由来し、しばしばエノク本人と同一視される存在である。この映像では、メタトロンの堕落が神話そのものの断裂として演出され、大天使は文化が崩壊へと傾く過渡期において、詩を守るために刻まれた超実体的な書の中へと投げ落とされる。その姿は、神聖な言葉と世界の終焉のあいだに立つ存在として描かれている。 MIRA新伝統 – Mythoplaxy Label : Infinite Machine Album cover photo : Costumes by runurunu Mixed and Mastered by Fausto Mercier Release date : January 16, 2026 https://infinitemachine.bandcamp.com/album/mythoplaxy Tracklist 1. Ignore The Signs 2. The Riddle of Pendeli 3. Cordyceps 4. The Fall of Metatron 5. Terraformers 6. Magic Variables 7. Thesmophoria 8. Circus In Town 9. Riding The Cycles 10. Luna 11.
2026/02/20
日本のアニミズムとギリシャ神話の交差 Raphael LerayとHonami Higuchiによるオーディオビジュアルユニット・MIRA新伝統が、メキシコの〈Infinite Machine〉より1月26日に発表した最新アルバム『Mythoplaxy』の収録曲「The Riddle of Pendeli」のミュージック・ビデオを公開。アテネを拠点とするアーティスト・Alexandra Koumantakiが監督・撮影を担当し、衣装はrunurunuが提供。本情報はAVYSSによる独占プレミアとなる。 「The Riddle of Pendeli」のMVは、『Mythoplaxy』およびMIRA新伝統の現時点でのムードに通底するコンセプトをサイトスペシフィックなダンス作品として映像化したもの。山火事の痕跡が残るアテネ近郊の丘陵地帯と廃車置き場を行き交う身体を追いかけ、開けた地形と洞窟のような陰影のあいだを移動する一方、顔のない人物が夜の中をランタンを掲げて進み、移動する灯台のように画面に現れていく内容。 本作は、ペンテリ山にまつわる牧神パンとニンフのローカルな神話を参照しながら、現在進行中のパフォーマンスおよびアルバム『Mythoplaxy』の一部として制作されたもの。土地に刻まれた神話的記憶を参照しつつ、現在の身体と言語を通して再構成する試みとなっている。 『Mythoplaxy』において、MIRA新伝統は、ディストピア的なクラブ・アクセラレーションの定型や、ギャラリー文脈に縛られたパフォーマンスの慣習からの脱却を提示する。ステージとスタジオの両方を行き来し、神道由来の儀式と大衆演劇や神話物語の共同体的な遍歴的伝統を融合させたパフォーマンス言語を育み、ポストテクノ資本の崩壊という幽霊のような地形を背景に、古代のサテュロス劇から中世のサイクルまでを想起させる。 『Mythoplaxy』はエレクトロニック・バラードから神話的な断片まで、象徴的な建築の原型として構想された11の音の物語で構成されている。本作には、神話を「事実や現実を超えるものと共に生きるための自己反省的な語りの形式」として捉えるイタリアの哲学者フェデリコ・カンパーニャの思想も参照されており、私たちが作り出し、この世からあの世へと持ち帰るであろう神話や遺跡を想像するようリスナーを誘う。 Credits: Direction & Cinematography: Alexandra Koumantaki Editor, colorist: Thanos Tryfonidis Camera assistant: Evelina Kehagia Lighting assistant: Natalie Mariko Costumes: runurunu Release: Infinite Machine Mixed and Mastered by Fausto Mercier Production / Music: MIRA新伝統 MIRA新伝統 – Mythoplaxy Label : Infinite Machine Release Date : January 16, 2026 Buy / Stream : https://infinitemachine.bandcamp.com/album/mythoplaxy Tracklist : 1. Ignore The Signs 2. The Riddle
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