Luby Sparks interview

深化するオルタナティヴ、ロックバンドが向かう未来

 

 

2018年リリースの1st album「Luby Sparks」で国内外のドリームポップ/シューゲイザーファンから多くの支持を集めた五人組バンドLuby Sparksが、待望の2nd full album「Search+Destroy」をリリース。前作のEP「Somewhere」から3年、そしてErika Murphyがvo.として加入してからは初となるフルアルバムである今作は、コロナ禍の期間を経て深化したバンドのサウンド・プロダクションとソングライティングが際立っている。筆者もDJとして出演した今年2月19日に開催された渋谷WWWXでの自主企画ライブでは、ロックバンドが持つ高揚感とヘビーなサウンドでフロアを魅了していた。ジャンルの垣根を超えてオーバーグラウンドへと向かうLuby Sparksの現在、過去、そして未来をメンバーの3人に語ってもらった。

 

Text by Kota Watanabe (CEMETERY)

Photography by Dai Yamashiro (@dai.yamashiro)

 

 

– 4年ぶりですね、2枚目のアルバム「Search+Destroy」のリリースおめでとうございます。聴きました。すごくいいアルバムでした。

 

一同:ありがとうございます。

 

– 他のインタビューでも言ってるけど、2年間のコロナ禍中予定されていたツアーがなくなってからは製作に集中してた感じですか?

 

Natsuki:そうですね、このアルバム入っている曲もコロナになる前に作った曲と、アルバム用に作った曲が混在していて、作った時期が3、4年間ぐらい違うんですよ。

 

– 昨年の春ぐらいにバンドでレコーディングしたんだっけ。

 

Natsuki:ちょうど1年前ぐらい前にレコーディングして、今回のプロデューサーのAndy Savoursに送ってからプログラミングやミックスをしてもらって、そこからのやり取りに時間が結構、時間がかかってしまったんです。

 

– ああ、そうだね。前にNastukiくんと話したときに、プログラミングの時間がすごいかかるみたいなのを話してましたよね。プロデューサーのAndy Savours、これまでにプロデュースしてるアーティスト陣すごいよね。

 

Natsuki:今までは、ずっとイギリスのYuckMax Bloomがやってくれていたんだけど、マックスは本職はプレイヤーだから、ミックスの質感がYuckっぽくなっちゃう。良い意味でも悪い意味でもインディーロックっぽいところがあって。今回はもう少しメインストリーム寄りな音楽に影響された部分もあったし、ボーカルをもっとはっきり出したものしたくて、今度誰にプロデュースしてもらいたいか考えていたときに、イギリスのSorryてバンドのサウンドが良いなと思っていて。Sorry7inch2 Down 2 Dance」のエンジニア・クレジットにアンディの名前があって。調べたらPains (The Pains of Being Pure at Heart)の最後のアルバムを二枚ぐらい手掛けていて、それでメンバーのKipにすぐ連絡したんです。

 

– あれだよね、BCNRとかもプロデュースやってるんだよね。

 

Natsuki:僕たちからオファーした後にBCNRのリリースがあって。そのファーストがイギリスのMercuryにノミネートされたり。他にもRina Sawayamaとかもプロデュースして、アンディ本人もバンドをやっていたり。それで自分たちの今やりたい、ミックスをしてくれるんじゃないかなと思って。Luby Sparksは、今までインディーロックとかシューゲイザーって言われてきたんだけど、その印象を変えたはっきりしたミックスを希望していることを伝えたんです。

 

– それこそSorryの7inchの曲とか、BCNRのアルバムもそうだけど、インディー的な質感はあるけど音はすごいダイナミックになってる印象はあるから。オルタナっぽいバンドの強度を強くするのが向いてるプロデューサーなのかもね。

 

Natsuki:Sorryも打ち込みと生音の融合みたいなのがすごい良いなと思っていて。そういうのを僕らもやってみたかったから、オファーした流れですかね。

 

– アルバムの出来は、メンバーのみなさんは満足してますか。

 

Erika & Tamio:満足していますね。

 

– Natsukiくんと話していて、ここ何年かでどういう音楽聞いて、変わってきたかみたいな話を結構したとは思うんだけど。僕もLuby Sparksを最初のリリースから聞いてたから、ドリームポップ/シューゲイザーっていう帯が毎回つくのを見ていて。今回のアルバムから最初にリリースしたシングルの「One Last Girl」の音の質感って本当に変わったじゃん。

 

Erika:うん、そうですね。

 

– スマパンの話とbeabadoobeeの話をしたのと、それこそWILLOWのシングル「Transparent Soul」がリリースされた時に、 Natsukiくんとこのノリいいよねみたいな話をしたのを覚えていて。そしたら他のインタビューでTamioくんがHoleめっちゃ好きって言ってるのをみて。なんだろう、グランジとかオルタナが2000年代にポップカルチャーに消費された後のさ、ちょっと廃れてきたときのオルタナの音の質感って今良いなと思ってて。それをすごい今回のLuby Sparksの音でも感じて。アルバムの7曲目「Don’t Own Me」とかワウのギターのリフレインのフレーズとかって、今までのLuby Sparksのイメージにはなかった音だから、驚きもあって…制作に関しては今までと比べて変わった?

 

Tamio:それぞれがやりたいことをあまり制限設けずにやったという意味では、制作の仕方は変わりましたね。例えば「Don’t Own Me」のリフも、今までのLuby Sparksとか関係なく自分のルーツにある音楽から出来たものになります。自分のルーツは、クラシックロックやジミヘンとかにあるので。本当に弾きたいリフを弾いてみたら、あのようになった感じです。

 

– あの曲はTamioくんのギターリフから始まった楽曲なんだね。今までのLuby Sparksの音って概念に縛られずに、みんなで持ち寄ったものをバンドとして昇華していく広げてくみたいな。

 

Tamio:今も新しい曲を作っているんですけど、Natsukiとか僕が最初に種になるようなアイディアを出していって、それをNatsukiがバンドとしてのまとまりがあるようにプロデュースする形でのパターンが増えてきましたね。

 

– バンドとしての楽曲の新しい作り方はいつから変わってきたの?今回のアルバムから?

 

Natsuki:「Somewhere」までは僕が主体で、デモの段階で細かいとこまで作っている事が多かったんだけど、今回だとTamio、Erika、僕の三人で結構作っていって。「Don’t Own Me」「One Last Girl」は、Tamioが土台を作って、僕がアレンジを加えて、Erikaが歌と歌詞を乗せる。その三段階で作って、最後スタジオでそれをまとめるみたいな進め方でした。

 

 

– それはやっぱり、今まで1人でプロデュースじゃないけどさ、バンドの方向性決めていたNatsukiくんとしての変化は結構すごいありそうだね。

 

Natsuki:前の「Somewhere」あたりはとか、バンドの音とか方向性を僕が決め込みすぎていて、メンバーそれぞれの持ち味が出せてないなと思ったりしていましたね。ボーカルがErikaに変わっているのに、今まで通りでやるのはもしかしたら、違うかなって思い始めて、今回が切り替えるタイミングにはなったと思います。

 

– 全体的な音の厚さっていうよりも、バンドとしての強度が上がったみたいな印象はうけましたね。5人でバンドやってるみたいな形がすごいしっかり見えるというか。

 

Natsuki:バンド感を意識したかもしれないです。僕がドラムとかも決めているんだけど、リフとかは任せて、オリジナリティを出してもらったりして。いつも僕らの曲はギターのトラックが多くなってしまんだけど、これは要らないこれは要るってレコーディング前に音作りをギタリスト二人でかなり詰めてもらいました。

 

– それとErikaちゃんが歌って、Erikaちゃんが歌詞を書いてるっていうのが、やっぱりボーカルが作った歌詞っていうのは、響くなって思ったし。ポップスとしてすごくしっかりしてるというか。それはもう、ミックスとかマスタリングでもそうなんだけど、前のドリームポップ期のLuby Sparksって音の雰囲気とかも含めて聴くみたいなのがあったんだけど、今回はすごいポップスとして聞きたいなって思う音楽で、歌詞もすんなり入ってきたというか、それがすごく良かったですね。

 

Natsuki:僕が作るスタイルだと音の響き優先して、歌詞は後みたいな進め方が多かったんだけど。Erikaは自分のパーソナルなところも含めていて。

 

Erika:歌詞を小中学校ぐらいから、書いたりしていたので、ずっと書きたいなとは思っていたんです。

 

– そうなんだ。

 

Erika:今回は自分で書いたことによって、曲もそうですけど、ライブもすごく変わった気がしますね。あと歌もコロナ期間とかに、歌い方を研究したりして、今までの楽曲とは違う声、乗り方になっているんじゃないかなと思います。

 

 

– 「One Last Girl」の、Erikaちゃんが感情的になる映像がすごく良くて、あれはやっぱり自分で作った歌詞だから乗れてるのかなって。

 

Erika:感情移入というか、ちゃんと泣きましたし(笑)。MVの監督してくださった江田明里さん(TOKYO FILM)の熱意に自分も合わせなきゃなと思って。ちゃんと演技しましたね。

 

– MVめちゃくちゃ泣いてたね(笑)。歌詞もらったけど、恋愛テーマの曲が多いんだね。

 

Natsuki:僕が書いたときも恋愛テーマかなり多めだったけど、今回「Depression」とか「Don’t Own Me」はメロディもリリックもErikaで、そこらへんは絶対僕じゃ書けないです。

 

– 歌も音も振れ幅が広くて、アルバム聞いてて面白いなってすごい思ったし、8曲目でNatsukiくんのボーカルリードの曲があるっていうのもいいよね。

 

Natsuki:アルバムを10曲にしたくて、一番最後に出来た曲なんだけど8曲目は。ちょっと休みの部分というか。

 

– 昔のバンドのアルバムちゃんと通して聴いて、1曲リードボーカルじゃない人が歌ってる曲でちょっとダウナーな質感がある曲とかって好きになること多かったな(笑)。

 

Natsuki:それこそスマパンとか。そういうイメージはあるかもしれませんね。

 

– 「Don’t Own Me」で後期スマパンっぽいギターのリフレインのハードな曲の後に、スローでダウナーなテイストじゃん、「Closer」。ああいう流れが来ると90年代とか2000年代とかのオルタナロックファンとしては、おーってなる(笑)。

 

Natsuki:自分の歌い方とかグランジっぽくして。あとTamioと僕で結構その時期研究していたのは、90年代のFailureってバンドですね。地味なサイドのグランジみたいな。すごくかっこよくて、ああいうダウナーなテンションは目指していました。

 

– Luby Sparksのイメージとしては、YuckのMaxがプロデュースやったり、4ADのRobin Guthrie (ex. Cocteau Twins)がRemixしたりさ、イギリスの影響を感じてたんだけど、今回アメリカの音って感じも入ってて、音の印象は変わりました。

 

Natsuki:TamioとErikaの影響でUS感とかは入ったのかな。

 

 

– 2年前に中国ツアーをしようとしたけど、コロナで無くなっちゃったんだよね。そのあとのバンドの動き方って悩んだりした?

 

Erika:うーん、悩みましたね(笑)。

 

– 予定していたツアーがなくなった後すぐレコーディングとか音源制作に切り替えたっていうのはすごいことだと思うんだけど、それはメンバー同士で話し合って意識的に動き方を変えてこうっていうのがあったの?

 

Natsuki:二人が言い出してくれたからですかね。

 

Erika:活動が減ったことによって、自分たちが今何を伝えられるか考えたときに、今だからこそ音源を出すべきだなって思って。みんなとも話し合ってアルバムを出すに至った流れになります。

 

– Erikaちゃん的にはポジティブに切り替えてバンドを動かせたんだね。

 

Erika:私が加入してからの曲よりその前の曲の方が圧倒的に曲数多いんですよ。もっとステップアップするには、自分たちの持ち曲をもっと増やすべきだなって思ってて。

 

– コロナがもたらした良い影響があるとすれば、ライブが少なくなったことで、シーンの横の繋がりを気にせず、自分たちの作り方を見直せる時間ができたということだね。

 

Natsuki:そうですね、どこにもフィットできずにいた部分があったんだけど、それでも何か独自の方向に突き進めて行けたらいいのかなと思いましたし。コロナの状況になったことで、海外の人とかに遠隔でプロデュースしてもらったりとか、実は海外にわざわざ行って録らなくてもこういう形でできるってことがわかっちゃったから。そういう意味で、何にも縛られず多くの人に届けていけたらいいなっていうところで、やっていきたいですかね。

 

– ドカンと売れたい気持ちもある。

 

Natsuki:それはメンバーは全員思っている。

 

 

– Tamioくん的には、この新しいアルバムを通して自分のギタリストとしてのバンドで参加の仕方って変わったりしたの?

 

Tamio:まず、自分はギタリストっていう自覚はあんまりなくて。普通にバンド全体として作曲者みたいな意識です。ギターで参加しているけどギタリストとしての意識はそこまでなかったですね。

 

– それは意外。そういえば最近のMikikiでのインタビューで、TamioくんとErikaちゃんがHoleの「Celebrity Skin」好きって言ってたよね。

 

Erika:好きですね。でもTamioの方が結構聴いているんじゃないですかね?

 

Tamio:僕はもう本当ずっと。中学生のときに聞いて正直全然良さわかんなかったんですよ。あんまり言い方よくないかもしれないですけど、ただのポップスだなと思って別に興味持ててなくて。大学生一年の時にAvril Lavigneとか良いんじゃないかと思って。そのノリで「Celebrity Skin」聴いてみたらすごく良いなと思ったという感じです。

 

– 俺もグランジとかハマって色々聴いてるとき、Holeはちょっとピンと来なかった。パンクのアティチュードでグランジを聞いてたけど、ちょっと斜めにCourtney Loveを見てた(笑)。

 

Tamio:うん。でも、自分はHole好きっていうよりも多分「Celebrity Skin」ってアルバムがすごく好きですね。あの時代にあの感じっていうのが新しいんだと思います。Avrilとか好きな人も聴くと刺さる部分あると思うし。多分Erikaが「Celebrity Skin」好きな理由もそこに通ずるのかなと思っています。

 

– 「Celebrity Skin」が持つ音の新しさは、Holeの他の作品とはどう違うと思うの?

 

Tamio:ギターの音の感じ、その歪ませすぎず、でもオーヴァードライブなんだけど、その中にグランジ的な音の粗さが若干入っている。コード進行もすごい好きなんですけど、使ってる音の感じもなんだろう、まぁ、、そういう感じです(笑)。

 

Erika:(笑)。

 

Tamio:あとまたスマパン。Billy Corganがプロデュースしているアルバムでもあるから、そういう繋がりを結構好きになっている部分もあるかもしれないと思います。

 

– そうなんだね。またスマパンの話になっちゃうけど、ここ数年で後期のスマパンの方が好きだなみたいなのが、俺は個人的にあって。

 

Natsuki:わかる。

 

– 「Ava Adore」とかもそうだけど、ドラムマシーンの入れ方とか。音色の幅の広さとか、ギターの解釈の仕方が、今回のアルバムすごい後期のスマパンの匂いするみたいなのを感じました。なんか、Natsukiくんと話した気がする(笑)。後期のスマパンめっちゃいいよねみたいな。

 

Natsuki:後期の「Adore」と「Machina」とかドラムマシンと生ドラムの掛け合わせや、ギターだけじゃなくてシンセのアレンジや重ね方とか、そういうところが僕は好きで。曲の構成とかよりも、音のプロダクション的なところでかなりこの二枚には影響を受けました。前までは普通に激しい初期のスマパンが好きだったけど。やっとここにきて後半二枚の良さだとか、00年代再評価でY2K流行っているけど、そういうところに繋げる部分みたいな。インディペンデントな音楽が、90年代後半から00年代にかけて商業化して。そこでプロダクションとかレコーディングとかがお金がかかっている音がするというか(笑)。Holeも多分そういうところが、最初グランジだと思って聴いたらなんか全然違うじゃんみたいに受け入れないポイントだったと思うんだけど。でもその商業的な感じのものが、昔は若い頃って結構ロックじゃないって拒否感出ちゃったけど、今ここにきてその良さがわかるというか。お金がかかっている音とか、良い音でレコーディングされている曲って、クオリティが高くて。Avril Lavigneもロックの要素を含んでいるけど、ポップスとして音に厚みがあるみたいな。そういう面を自分達としてやれるとこまでやるのが今回のアルバムかもしれないです。

 

– あの時期のポップスってプロダクションが持つ説得力っていうのが感じられるよね。

 

Natsuki:あと単純にドラム/ベース/ギター/歌だけじゃなくて、そこ以外に入っているシンセとか、アレンジメントみたいなところにプロが関わってできた音だなーみたいなところが、やっぱり大人っぽく感じさせるポイントというか。僕らも、今回そういうところにこだわって作った曲が多いから、成長したと思ってもらえる部分があるとしたらそういうところにも含まれているのかなと思います。

 

– 実際、今後ライブ増えてってさ、1stから聴いていたファン以外の2ndから入ったというか、別ベクトルからLuby Sparksを好きになる人が増えそうだよね。

 

Natsuki:それは理想ですね。最初の方は、ギターポップとかシューゲイザーみたいなものをやっていたんだけど。それもLuby Sparksの一つの形だと思ってもらいつつ、さっきTamioが言ったように、それぞれがこうやりたいものを持ち寄って作ったり、今こういうのやってみたら良さそうだよねみたいな感じで、ジャンルとか音楽性みたいなものを失くして作ってみたアルバムでもあるから。今後も自分たちの幅を自ら狭めないで、ジャンルとしてのオルタナというよりスタンスとしてのオルタナティヴを拘っていけたらいいなと思っています。

 

– バンドとして新しい方向に向かう感じになってきたんですね。

 

Natsuki:そもそも個人的にはこのアルバムの「Search+Destroy」ってタイトルも自分達の新しい可能性を探求しながら、今までのイメージを破壊するみたいなこともダブルミーニングとして込めているんです。

 

 

– 破壊と再生のアルバムなんですね。

 

Tamio:ダブルミーニングなのは初めて知りました。確かに言われてみれば。

 

Erika:前も言ってたよ、それ!Tamioが聞いてないだけじゃない(笑)?

 

一同:(笑)

 

– 「Search+Destroy」って、Iggy & The Stoogesだっけ?そこからのサンプリングも面白いよね、Luby Sparksが絶対サンプリングしなさそうな感じも面白いなと思うけど。

 

Natsuki:結構悩んだんだけど。強すぎるなって。それで「and」じゃなくて「+」って表記に変えたり。探求と破壊の相対的な感じを出しつつ、ただこのタイトル曲はバラード調っていう。歌詞の中では普通に恋愛っぽいテーマなんだけど、アルバムタイトルとしてはそういうスタンスの意味合いも込めているんです。

 

– シングルもアルバムもアートワーク良いね。言葉で説明するの難しいけど、あの質感。

 

Natsuki:ニューヨークのアニカさん(Annika White)という方にいつも頼んでいるんですど、毎回こういう感じっていうイメージを伝えてて、アニカさんのパートナーと二人だけで撮影もしてもらっています。今回のアルバムのジャケットもこんなに完璧なものができるとは思ってなかったし、感動しました。

 

– 毎回さ、Luby Sparksの話聞いてて思うけど、説得力みたいなのを大事にしてるなって思っていて。アートワークもそうだし、プロデューサーや、マスタリングを誰に頼むかとかも。自分たちが作ってる音楽と影響を受けた音楽に対してのリスペクトと、その文脈を繋いでるなっていうのは見てて思う。そういうラインが見えるバンドっていないからすごいなと思います。

 

Natsuki:そこは大切にしてるところです。今までの流れも汲んで、ギターポップから始まって、シューゲイザーだったり、ドリームポップの要素も含んで、ポップな「Somewhere」みたいな曲もリリースして、今回オルタナに行って、流れとしても面白いかなと思ってます。あり得ない、違和感ある、みたいなことはなるべくないようにしてます。

 

– さっきも話した2000年代入ったぐらいの音楽、オルタナポップスみたいなのが流行ってきたじゃん。そういう中でアーティストって質感を大事にするけど、文脈っていうのはどうしても途切れちゃうみたいな感覚って感じていて。Luby Sparksはセカンドアルバムっていうキャリアがあるかもしんないけど、その系譜に乗るというか、存在してたカルチャーの流れが見えて、且つそこに名前が記されるバンドだなとは思います。なんか太いよね(笑)。太いって言い方あってるかわからないんだけど(笑)。

 

Natsuki:それは嬉しいです(笑)。なるべく本質がある感じというか。建前だけ00年代っぽくしてとか、ファッションだけY2Kっぽくしてとかじゃなくて、ストーリーを立てて作ってきました。

 

 

– Robin Guthrieに楽曲のRemixを頼むってさ、オルタナロック好きの夢でもあるし、相当自分の楽曲に説得力なきゃ頼めないぐらいのさもう大御所じゃん。それって自分達の楽曲と音に対する愛情がないとできないと思う。

 

Natsuki:影響与えてくれたアーティストへのリスペクトは常に大切にしています。

 

– パーソナルな部分もちょっと聞きたいなと思って。アルバム制作時期とか、音楽とかカルチャーでもなんでも良いんだけど、みんな何にハマってたりしたの?

 

Natsuki:うーん、このアルバムの構想を練り出したのは本当2年前ぐらい。そのときはファッションとかも、それこそコウタくん(CEMETERY)がやっている古着屋とか、今はちょっとテイストが徐々に変わっているんですけど、その時、確かにとてもいいなぁと思ったし。音楽的にはbeabadoobeeeが出てきたのはでかいかなと思います。2020年代に、Y2Kファッションみたいな文脈だと、彼女が一番の代表だとも思うから。

 

– beabadoobeeってさ、ロンドンのどこら辺なんだろうね?なんか写真の感じとかさ見てるとそんなにロンドンのど真ん中って感じもしないよね。

 

Natsuki:何か屋根裏みたいな家住んでますよね。友達とかとルームシェアしているのかな?

 

– 古着屋の<not just trash>とかそこら辺と遊んでる感じとかも、ちょっと感覚として良いなと思って。

 

Natsuki:古着屋の人たちとかとちゃんと親交ある感じも共感できますね。

 

– ロンドンとか東京とか中心地じゃないところで、自分らの好きなものをのびのびって言い方が正しいかわかんないけど、そういう感じでやれるスタンスっていうのはしっくりくるというか、面白かった。

 

Natsuki:もうlate 00’sじゃないけど、2007年とか2008年とかに流行っていた曲がすごい気になっているかな。ポストパンク的なものとか、Bloc Partyとか。あとは、KlaxonsとかHard-Fiとか。

 

– ちょっとハウス乗りが入ったポストパンクみたいな。

 

Natsuki:ちょうど自分が中高生ぐらいに流行ったから、自分がリアルタイムで聞いていたものがもはやリバイバルに突入するのかなって。自分たちがまだ20代だと、ずっと90年代のものとか好きでもリアルタイムでは通ってないから。逆に、当時ちょっと好きだったものが1一回聞かなくなった、ってなったものがまた聴けるようになるっていう体験しています。

 

– すごい感覚だよね、あれはやっぱり。Tamioくんは製作期間中とかは、どういうものにハマってました?

 

Tamio:アンビエントとか電子音楽を聴いていますね。

 

– 自分のモード的にそういう音楽を聴きたいな、っていうのが増えた感じ?

 

Tamio:いろいろあってそういうものにハマるきっかけがあったんですよね。今もいろんな電子音楽を聴いているんですけど、やっぱりAphex Twinは聴いちゃうんですよ。Aphex Twinが出している別名義とかたくさんあるじゃないですか。Polygon WindowとかAFXだったり。意外と別名義の方が、本気出していると思うんですよね。彼が本当にやりたい少年心みたいな音って別名義の方で表現していて。SoundCloudにも音源をあげていて(user18081971名義)。一旦離れてまたちょっとここ数年間戻ってきたみたいな感じです。飽きないんですよ。まだわからない部分が結構たくさんあるし、やっぱり聴きごたえがあるんです。

 

– 俺も最近Aphex Twin聴いていて、過剰なダイナミックスな演出がないけど、聴き心地や聴き応えがある作品を作るのうまくて、アンビエントにしろ、クラブ寄りの楽曲にしろ。

 

Tamio:クラブ系のトラックって単調になりがちな部分ってあると思うけど、でもその単調なノリっていうのはその音楽の特徴でもあって、そこに若干の複雑性、ランダム性を取り入れる部分の塩梅っていうのがかっこいいと思っていて。やり過ぎちゃうとそれはそれであざといし、そこのバランス感覚が天才的だなと思いますね。クラブミュージックってモード理論があって、基本的にクラブミュージックってモードで作られている印象です。でも、Aphex Twinってモードじゃなくて、バッハとかモーツァルトとかのクラシック音楽の影響が結構強いみたいなんですよ。

 

– それこそ「Selected Ambient Works」とかすごいクラシック感じるもんね。Tamioくん、クラブもよく行くって言ってたもんね。

 

Tamio:最近は行ってないです。友達に呼ばれたらみたいな。夜ふかしすると体調崩すっていうか精神的に不安定になっちゃうから(笑)。たまにErikaにDJやってみたらとか言われるんですけど、手染めてしまうと生活がやばくなりそうになりそうな気がするんですよ。ほどほどにって感じで、はい(笑)。

 

– 1回してみたらDJ。

 

Tamio:結構不器用だから多分ミスするんですよ。途中で音止めそうだし(笑)。

 

バンドでもなかった?ギターの音なんか出ないみたいな(笑)。

 

Tamio:結構ありましたね。最初の方とかNatsukiひどかったもん、弦切れたりとかね、エフェクター壊れたりとか。

 

Natsuki:(笑)

 

Tamio:もう一人のギターのSunaoとか、4年前大阪でライブやったときにエフェクターがほとんど壊れちゃって、オーヴァードライブ一つだけでバトルするみたいになって(笑)。

 

– 逆に潔いね、Luby Sparksの音でオーヴァードライブのみっていうのは(笑)。

 

Tamio:でも彼のギターが上手いから、何とかなりました。なんかめっちゃ喋っちゃった(笑)。

 

– いや、ありがとう(笑)。

 

 

– Erikaちゃんは、どうですか。

 

Erika:ちょっと恥ずかしいんですけど、世代的にディズニーチャンネルがド世代なんですよ(笑)。ディズニーチャンネルとかで流れいてる曲を聴いてました。キャンプ・ロックとか。Demi Lovatoとか。Natsukiも見てたんだよね?

 

Natsuki:見てたわ(笑)。

 

Erika:Hannah MontanaとかSelena Gomezとか。それ以外もありますけど、ディズニーチャンネルド世代なんで(笑)。私テレビっ子だったんですよ。もう毎日ディズニーチャンネル見て、もちろんYouTubeは世代的にもあったんで、YouTubeで曲聴いたりとかで影響を受けることも多かったんです。

 

– なんかジャケとかもカラフルでかわいいもんね、服とかも。

 

Erika:そうなんですよね。あとパリス・ヒルトン、曲出していたんですよ。その曲もあの2000年代のディズニーチャンネルっぽい感じで。あのキャンプ・ロックは2もあるんですけど、踊れるぐらい全部。歌も覚えてるし、踊りも覚えてるぐらいリピートしてましたね。

 

– キャンプ・ロック、1回聴いてみます(笑)。

 

Erika:いや、キャンプロックは私本当に、、、。ちょっと恥ずかしい感じですけど良いですよ。一応ラブストーリーなんですよ。小学校のとき6年間好きやった男の子がいるんですね。その人にキャンプ・ロックのDemi Lovatoが歌ってる「This is Me」、クラス替えになるときに、お別れ会で好きな人にそれを歌ってました(笑)。

 

– それも曲にできそうだね(笑)。

 

Erika:めちゃくちゃ恥ずかしいですよ。だって無視されましたもん。

 

– 失恋したんだね。

 

Erika:ずっと振られていました。

 

– 「One Last Girl」の歌詞もそうだけどさ、私生活の話を出してる感じあるもんね。

 

Erika:あんまタブーにすることでもないかなと思ってね、アイドルやないし。恋愛してますよっていうのを、ちょっと伏せるというか。私の今までの人生を見て、自分のモチベーションになっているのって恋愛だったんですよ。だからそれが一番自分が感情移入して、曲とか歌詞とかのアイディアに一番なりますよね。

 

– 普通にリスナーとしてびっくりしたところもあった。Erikaちゃんのその感情とリンクした歌詞というか、生活から生まれた歌詞で歌うっていうのはアーティストとしての成長を感じる内容でした。せっかく3人とインタビューしたので、みんなの個人的な話聞けるのは嬉しかったです。では最後に、今後バンドとしてどうなっていきたいですか?

 

Erika:英詞で続けるにあたって海外に通用するものがLuby Sparksはあるなって期待しているんで、もっと活動を広げたらなとは思いますね。

 

– Tamioくんはどうですか。

 

Tamio:今回のセカンドアルバムは、よく言われるんですけど、ネクストステージに行った、みたいな。次出す曲とか、もっと普遍的に強い曲を書けるようにしたいですね。今回のアルバムと一番最初に出した「Water」っていう曲、全然違うんですよね。どっちも楽曲としては良いんですけど、比べると成長している感じが半端ないんですよ。良い悪いの話ではなくて。さっきNatsukiが言ったみたいにどれだけ大人の感じを出していけるかみたいな。次に出す曲もう既に作っているんですけど、もっと音を良くしたりとか、音楽的な裏づけができることとか、理論的なことをやって、いろんな人に聞いてもらえるような、普遍的なポップネスみたいなものを出していきたい。多くの人に届けられる音楽ってそれは素晴らしいものだと思うし。自分、5、6年前とか売れてる音楽聞いて、ダサイとか安直に考えていたんですけど、でも多くの人に届けられる普遍的なポップスみたいなものって、すごいものなんですよね。本当にバンドとしてもっと成長してクオリティの高いポップソングを作っていけるようになれればいいなと思っていて。音楽的な意味でも、精神的にも成長していけるようなバンドを目指していきたいなと思います。

 

– Tamioくんのバンドに対する意思を聞けて個人的にめっちゃ嬉しいです。Natsukiくんはどう?

 

Natsuki:本当に二人が話してくれたことの二軸だと思っていて。今回のアルバムで、自分達の新しいスタンスというか、次のステージの扉を開いたばかりな場面に今いると思うから、今この時代にこういうアルバムを出したっていうところから地続きな感じで、次はどういうことをやろうかっていう。僕らも自由なんで、次こういうの出したら流れが綺麗だよねとか、そういうのは囚われないで、良い意味で期待を裏切っていけるような。色んなリファレンスは普段から参照したりすることもあるけども、結局自分達の曲として影響されたものを詰め込んだりすると、何かに似ているというよりは、これがLuby Sparksっぽいみたいなところに繋がっていくんじゃないかなと思っていて。それに英詞でやっている以上、やっぱり海外っていうところも諦めたくないし。Erikaが入ってから今回が初のアルバムなので、ここを今のLuby Sparksのスタート地点として、ジャンルや界隈に縛られず積極的にバンド活動をやっていきたいな、と思っています。

 

– このアルバムがスタート地点っていうのは良いですね。キャリアも重ねながら、バンドの制作方法を変えて今フレッシュな状態で曲を作れている感じが伝わるので、さらに次の作品も楽しみです。

 

 

Luby Sparks – Search + Destroy

Released by AWDR/LR2

Release date : 11 May 2022

https://ssm.lnk.to/SD_LS

 

Tracklist

1. Start Again

2. Depression

3. Honey

4. Callin’ You

5. Crushing

6. Lovebites

7. Don’t Own Me

8. Closer

9. One Last Girl

10. Search + Destroy

 

 

Luby Sparks Presents「Search + Destroy Live」

ACT| Luby Sparks (One Man Show)

DATE| 2022.06.04 [SAT]

OPEN/START| 17:00/18:00

ADV| 3,500 Yen [+1D]

DOOR| 4,000 Yen [+1D]

INFORMATION| WWW X [ 03-5458-7688|https://www-shibuya.jp/schedule/014476.php ]

TICKET| https://eplus.jp/lubysparks0604

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