MOMENT JOON、初の著作『日本移民日記』を発売

硬直した社会にくさびを打ち込む

 

 

ソウル出身、大阪在住。移民として生きる経験に根ざし、日本語表現の新たな地平を切り開くラッパーMOMENT JOONが、初の著書『日本移民日記』を岩波書店より11月26日に発売する。

 

MOMENT JOONからみた日本のヒップホップ、「外人」とみなされること、差別語、詩人・金時鐘との出会いなど。日々の経験や思索を鋭く率直な言葉でつづった本書には、その思考のエッセンスや、「耳ヲ貸スベキ」言葉が溢れているとのこと。

 

■編集部からのメッセージ

 

この本にはMOMENT JOONという不世出のラッパーが、日本で十年を過ごすうちに体験し、思考したことが詰まっています。

 

ヒップホップには「セルフボースト」と呼ばれる文化があります。一言でいえば「自分であることを誇る」ということです。ただし、抑圧された人間が「自分であることを誇る」ためには、多数派で構成された社会から、自分の声、自分の表現、自分の歴史と呼べるものを見つけ、再定義し、奪い返さなければなりません。

 

2020年発表のアルバム『Passport & Garcon』は、MOMENT JOONが「移民」としての自分を表現したアルバムでした。日本社会における排外主義の興隆や差別意識の蔓延、同調圧力、シニシズムといったものを怒りや不安とともに突きつけ、その上で「君が居るから日本は美しい」と歌っています。このアルバムは、これまでの日本のヒップホップでは描かれなかった世界を表現したものとして絶賛されましたが、いっぽうで作品そのものに向き合うことなく、「社会派」や「シリアス」といった狭い領域に押し込めてしまうような批評も散見されました。

 

それは作品に原因があるのではなく、差別や排外主義について真正面から語られたときに、その当事者の言葉を及び腰にしか受け止められない、この社会の側に問題があると私は思っています。

 

帯の惹句には「日本語表現に新たな地平を切り開く」と入れました。日本語の外の世界で生まれ育って、日本社会に来た経験を持つMOMENTの言葉にぜひ注目してほしいです。それはたとえ耳が痛い指摘であっても、この社会の狭さを改めて気づかせてくれるものであり、大きな希望であると考えています。

 

連載では十年間考えてきたことを惜しげもなく吐き出してくださいました。これは日本のヒップホップに金字塔を打ち立てたアルバム『Passport & Garcon』とあわせてこれまでの経験の総括であり、これからさらに活躍が見込まれる表現者の今後の十年にとって、大きな出発点になる本だと思います。ぜひご一読ください。

 

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MOMENT JOON – 日本移民日記

刊行日:2021/11/26

定価:1,870円

予約:https://www.iwanami.co.jp/book/b593245.html

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