
2021/09/24
melting botによる新企画〔PERSONAL CLUβ〕始動

京都のアップカミングE.O.Uが自然のダイナミズを描いたパーソナルなミックステープEP『E21』を自身のレーベル〈PAL.Sounds〉より発表。パンデミック下において制作された今作は、近年世界的なサブ・カテゴリーとして発展したハイパーポップや強大なヒップホップの躁的なエネルギーを背景とした前作に対し、それぞれのタイトルが示すように光や水、風といった自然のエレメントを通してそれらのダイナミズムへ溶け込むような”動”から”静”へとパーソナルなモードを昇華させたパワー・アンビエンス。
また、合わせてシリーズ・パーティ〔Local World〕を軸に活動する〈melting bot〉によるリリース・イベントにフォーカスした新企画〔PERSONAL CLUβ〕が始動する。
10月16日と17日の2日開催される〔PERSONAL CLUβ〕、1日目にはE.O.Uの新譜『E21』をフィーチャーしたシークレット野外集会、2日目にはPARCOの文化プロジェクト〔P.O.N.D.〕を介し、パリ在中のエレクトロニカのレジェンドTujiko Norikoをゲストに、”TENDER”をテーマとした各出演者のビデオ作品発表+トークを行うライブ配信イベントが開催。
各々の有機的な感傷のムードを通じ、秋の鑑賞へと誘う、静なる夜へ。
E.O.U – E21
Label : PAL.Sounds
Release date : 25 September 2021
Stream : https://linkco.re/B45NrBTa
Tracklist
1.Watch星
2.つぼみ
3.@Ease
4.光風
5.Shower
6.UnderSea


PERSONAL CLUβ 16-17 OCT 2021
E.O.U – E21 release secret gathering
SAT 16 OCT 25:00 somewhere in park, Tokyo
ADV only ¥2,000@RA*LTD50
LIVE: Dove / emamouse / E.O.U
DJ: Ichiro Tanimoto
PA: P&S Caresystem
stylist: Baby Loci + sudden star
– チケット購入者のみに開催場所が通知されるシークレット野外イベントとなります。後日メールで送られてくるイベントの詳細と内容をよく理解の上、ご参加下さい。本イベントはダンス・ミュージックを主体としたレイヴ・パーティではございません。
TENDER X
SUN 17 OCT 20:00 JST
Live Streaming at Gallery X
VIDEO & TALK
Baby Loci + sudden star
Dove
E.O.U
Tujiko Noriko [Paris/PAN/editions MEGO]
streaming: JACKSON Kaki
artwork: Sui / layout: D/P/I
directed by melting bot [Local World / WWWβ]
Shibuya PARCO presents
Cultural Event <P.O.N.D.2021>
@Shibuya Parco+Web
10/8 FRI-10/17 SUN
IG: https://www.instagram.com/p.o.n.d.official/
【前売リンク】https://ra.co/events/1466880

解放新平 [melting bot / Local World / WWWβ]
2011年に海外リリースを主とした流通/レーベルとしてmelting botを設立、その傍プロモーターとして多数の日本ツアーや東京公演をオーガナイズ。2016年に渋谷のライブ・スペースWWWに拠点を移し、クラブ・オルタナティブをテーマにWWWβ(休止中)を始動。現在は時代のモードにフォーカスしたパーティ・シリーズLocal Worldを軸に活動、東京の新しいクラブ・シーン形成の一端を開拓。

Baby Loci
etherの共同オーガナイザー/DJ。オーガニックな構造でつくられる人間性豊かな環境をクラブカルチャーに取り入れるべくDJとしてもラジオ番組adults play radioを月一で発信。秋にエーテル主催のグループ展+オープンディスカッション+コラボアフターパーティを企画中。
sudden star
東京拠点のether、adults play radio(HKCR)共同オーガナイザーのDJ/デザイナー。DJとしての活動を中心に、グラフィック、ファッションデザインをしている。9月にGR8でポップアップを行った。

Dove
シンガー/プロデューサー。これまでに2018年に1st EP”Femm”、2019年に2nd EP”Irrational”をリリースしている。その他にもEternal DragonzでMIXやコンピレーションへの参加をしている。最近ではOrange Milk RecordsからリリースされたNTsKiの1st albumへ参加しており、9月21日からストリーミングサービスを開始するMarine Snowより3ヶ月間限定でシングルを先行リリース予定で、現在はEPと1st albumを制作中である。また、自主レーベルPure VoyageはLe Makeupと共に主宰している。

emamouse
現代アート的電波アイドル風ハードコア調シンガー・トラックメイカー。現実逃避で没入したゲームの世界(仮想空間)を、仮装することで現実世界とアイデンティファイしている。つまり皮膚という設定のマスクを被って2015年よりLIVE活動を開始。自身をモチーフとしたイラストレーションや漫画、アニメ、ドラマ、架空のゲームのサウンドトラック等を制作。様々な国のレーベルからアルバムやDJ mix、動画、顔写真素材、偽ラジオ等をリリース。2021年現在は主にitemLabelという会社のPeepyというぬいぐるみたちのテーマソング制作をしている。

E.O.U
2000年生まれのアーティスト。音で表現される様々な事象を楽曲、DJ、Live Setを通して表現する。京都市在住。

Ichiro Tanimoto
東京のオーディオ/ビジュアル・プラットフォーム <Mizuha 罔象> のサウンドキュレーター、実験トランス・パーティー・クルー<みんなのきもち>の一員であり、DJと作曲の活動も行う。

Tujiko Noriko [Paris/PAN/editions MEGO]
ミュージシャン、シンガー、ソングライター、映像作家として活躍。故Peter RehbergとChristian Fenneszが彼女のデモテープを発見し、彼らのレーベルMegoからアルバム「Shojo-Toshi」でデビュー。前衛的なエレクトロニカの分野で高い評価を受け、Sonar、Benicàssim、Mutekなどの世界的なフェスティバルに出演。これまでにMego、FatCat、ROOM40、PANから18枚のアルバムをリリースし、高い評価を得ている。2005年に初の短編映画「Sand」と「Mini Hawaii and Sun」を制作。この2つの作品は、パリのカルティエ財団や東京のアップリンクなどで国際的に上映される。2017年には長編映画『Kuro』の音楽と共同脚本を担当し、この作品はSlamdance 2017でプレミア上映され、2018年にMUBIからリリース。最近の作品としては、2020年にSundanceとベルリン国際映画祭で上映されたAneil Karia監督の長編映画『Surge』のオリジナルスコアがあり、現在はサウンド作品がレイナ・ソフィア美術館で開催されている「Audiosphere / Sound Experimentation 1980-2020」展に展示中。
category:NEWS
tags:E.O.U
2024/07/11
8/3 幡ヶ谷Forestlimit 2022年10月に始動し、通算6回目の開催となる我々「memoir」。今回はAiri Kawakami、Kotomi Noji、Yukino Yamanakaから成る「Painter gals carandsex」との共催で特別なサマー・パーティーを提案します!@ 8/3(土)18:00 open, 幡ヶ谷Forestlimit ♢♤ (Text by Kenji) 「Painter gals carandsex」はAiri Kawakami、Kotomi Noji、Yukino Yamanakaの3名から成るペインターグループです。2022年にはGALLERY ROOM・Aにてグループとして展覧会「palpebra」を開催。また、同年のARTISTS’ FAIR KYOTOにてライブペイントパフォーマンスを行いました。生まれ育った土地、現住の環境、制作のアプローチやスタイル、絵画に対しての捉え方もそれぞれ異なる3人ですが、京都芸術大学の同級生だったという関係性から、グループ活動をすることに至りました。そこに端を発し、新たな生活や時間を経て、ゆるやかに、そして交友譚としての機能も持たせながら、個人の活動と並行してグループの歩を重ねています。三者三様の立場から描かれる絵に(偶発的にも?)共鳴するものが生まれたとき、打算的では決して生成できないグルーヴやうねりのようなものを筆者自身、「palpebra」の展示会で感じました。展覧会自体は決して規模の大きいものではなかったのですが、3人組・絵・どん!みたいな。単純にエネルギーが凄いというか、様相や人間関係がかっこいいなと。 Painter gals carandsex / 左からKotomi Noji, Yukino Yamanaka, Airi Kawakami そんな経験から約2年が経過し、memoirも文化的に多面な自立をし始めた今、Painter galsとのコラボレーションで何か出来ないだろうかと提案したところ快諾!memoirはなるべくサポート役に回り、3人のアイデアや人選を中心にオーガナイズしていきました。3人の作風や普段の佇まい、打ち合わせたときの発話の印象であるとか、いろいろなものを勘案したときに凄く人間臭いものを感じ取り、感情、血や汗、手垢のようなものに対して否定的でないようにしようと考えました。良い意味のぶつかり合いがあってほしい!そして何より、夏だしパーっと一緒に楽しむほうがいいよね、とも。 今回の「memoir meets Painter gals carandsex」ではPainter galsによるOPEN-CLOSEなライブ・ペイントを核とします。それらに纏うダイナミズムをLapistar、Rosa、RYOKO2000、食品まつり a.k.a Foodmanといった間違いなしなDJ陣がブーストさせる関係性を試みます。そこにシリアスな空気感は期待せず、絵を描くことの喜びにフォーカスし、観客と表現者の距離をなるべく近いものとします。また、ハイソカルチャーの象徴とも言えるヴァイオリンを新宿の路上や代々木公園などで演奏する音楽家・Junya Violinも唯一のライブアクトで招聘し、非スノビズム的態度を持つPainter galsとの同期性をそこに見出します。フィラーの役割としては、数多のパーティーが狂騒的に開催され、今年春に惜しまれつつ幕を閉じた岡崎市のヴェニュー「ひかりのラウンジ」店主・fri珍による人生相談のほか、「GEISAI#22&Classic」でのタカノ綾賞受賞などでも知られる新進気鋭の美術家であり、Painter galsメンバーの友人でもあるnn/miokaによるふわふわタイプかき氷出店など何かと面白いこと間違いなし!絵を描きたいし、踊りたいし、人生悩む事ばかりだし、暑いから冷たいもの食べたいし。 しかも!memoirが終わった24:00からは、関西拠点のast midori、109taksea、春麗がレジデントを務めるテクノ性を軸としたダンスミュージックを標榜するパーティー’field’が東京初開催。memoirからのハシゴの場合はなんとエントランスフリー。もちろんナイトのみ遊ぶこともオススメ(その場合は別途door代発生します)です。何が言いたいかっていうと8/3(土)の夜は幡ヶ谷Forestlimitで過ごそうぜ!という話です💥🌋すべての言い訳を「夏だし」の一言に預ける感じで。 — 𝙢𝙚𝙢𝙤𝙞𝙧 𝙢𝙚𝙚𝙩𝙨 𝙋𝙖𝙞𝙣𝙩𝙚𝙧 𝙜𝙖𝙡𝙨 𝙘𝙖𝙧𝙖𝙣𝙙𝙨𝙚𝙭 2024 AUGUST 3RD (SAT) 18:00 – 24:00 DOOR: ¥2,300+1DRINK=¥3,000 AT FORESTLIMIT, HATAGAYA 𝗟𝗜𝗩𝗘
2025/11/20
最新作『Euphoria』の世界観を克明に描いた 京都を拠点とする音楽家・NTsKiが先日3rdアルバム『Euphoria』を〈Orange Milk〉よりリリース。DJとしても精力的な活動を続けてきた経験の蓄積を活かし、テクノやドラムン・ベース、UKガラージやハードコアを横断した9曲入の作品で、タイトル通り「多幸感」が溢れる内容に仕上げられている。 そうしたクラブ・ミュージックのエネルギーを色濃く投影しつつ、自身の持ち味でもある実験性とアンビエンスを織り交ぜ、有機的なサウンドスケープを描いた。NTsKiは〈ishinoko〉に代表されるオーガニックな野外フェス、レイヴでの活動にも意欲的で、そうした体験を通過した感覚が瑞々しく現れた作品だったともいえる。 今回AVYSSではNTsKiの最新作『Euphoria』の世界観を克明に描いたリリースパーティーへの取材を敢行。CIRCUS TOKYOのフロアを森林のような装飾で彩り、静謐さと高揚感のダイナミクスを浮き彫りにした没入感あふれる舞台となった。 Report : NordOst / 松島広人 Photo:toshimura 会場に到着すると、SEのかわりに音楽的な意味でのアンビエントではなく、森のざわめき、川のせせらぎのような環境音がかすかに流れていた。そこでまず、デバイスの画面や雑踏の情報量を洪水のように浴びてきた心身を落ち着かせられた。「セットとセッティング」という概念があるが、まさしく『Euphoria』と本回に向けたチューニングがなされているように思えた。 ラウンジからフロアへ降りると鈴の音か鐘の音か、か細くも芯のある音色が耳に入ってくる。観客の階段を駆け下りる音や息づかいが加わり、サウンドスケープが広がっていく。鐘の音を鳴らしていたのはNTsKi本人。環境音から、気づけばリリース・ライブが始まっていた。シームレスな演出に唸りつつ、照明の落とされたフロアの暗がりのなかで没入感に浸る。しかし張り詰めた緊張感はなく、空気が澄んでいくような、研ぎ澄まされていく感覚があった。抜群のセッティングだ。 ほどなくして登場したのは身体表現者・田村虹賀。NTsKiの棲む森を訪れた精霊のような佇まいで、フロアの暗がりを懐中電灯で照らしてみたり、ステージに広がる草原で眠ってみたり、歌い上げるNTsKiと向き合ってみたりと自由闊達に動き回り、ダンスの枠組みの外側へ飛び出すようなパフォーマンスでライブを彩った。 虹賀がサーチライトのように照らしていくうちに、本日の舞台があらわになっていく。普段の無機質なクラブのステージには芝生や植物が随所に張り巡らされており、森林の奥に広がる湖畔をたまたま訪れたような錯覚を覚えた。 イントロパートを経て、アルバムの1曲目を飾る「Mabinogi」がプレイされる。繊細なサウンドスケープと浮遊感を帯びた歌声が広がり、続く「Blackberry」「K」への展開に際してドローン・アンビエントを想起させられる音像が立ち上がる。そこから轟音が広がっていき、サウンドスケープは音楽の形を体得していく。ダイナミクス、抑揚、コントラストの効いた素晴らしい流れだ。 DJ機器やシンセサイザーの奥からNTsKiがステージの前へと移動し、徐々に暗闇が開けていく。サポートメンバーを務めるのはミニマル・メロウというコンセプトからスタートしたバンド・D.A.N.のメンバーとしても知られるJinya Ichikawa。チェロとシンセサイザーを手に、『Euphoria』の世界観をサウンド面から下支えしていた。 展開が進むにつれ、NTsKiのユーフォリックな声色が深くリバーブの効いたマイクを媒介に会場へ溶け出す。その過程で声の倍音成分だろうか、イヤホンを通した聴取ではけっして感じられない艶と厚みが広がっていく。CIRCUS TOKYOの売りといえばVOID Acoustics製のパワフルなサウンドシステムだが、こうした力強いクラブ的な音響が繊細さを伴う公演の美しさを補強していたように思える。ライブハウスではなく、クラブやレイヴに軸足を置く彼女ならではの聴取環境へのこだわりが伝わってきた。 実験音楽とポップスの境界線上に立つような静謐さを帯びた空気が、デコンストラクテッド・クラブとトラップを行き来するかのような「If (Remix)」「Fig」で一転し、流れが変わっていく。艷やかなサブベースの膨らみに虹賀のダンスを越えた身体表現が加わり、人工美と自然美が調和する。植物園を歩いているときのような柔らかい陶酔感に、しばし目を閉じて浸った。 後半にはCVN、Princess Ketamineとの共作曲「Hikari」や筆者が『Euphoria』収録曲でも殊更に愛聴しているナンバー「246」がプレイされ、観客はおのずとNTsKiと虹賀を囲むようにステージへ近づいていく。全編を通してレフトフィールドなハウス・ミュージックやキッチュで楽しげなUKベース・ミュージックに着想を得たトラックが心地よい。没入することも、ただ踊って楽しむことも、観客各々の感覚に委ねられている。圧倒的な表現を振りかざす力強いライブアクトとは一線を画す、たおやかな表現だ。 MCとともに、クライマックスでは『Euphoria』収録曲でも殊更レイヴ・ミュージック感覚を強めた「Id (feat. Yem Gel)」「Journey 2 Euphoria (feat. Yem Gel)」「2co1」を立て続けにプレイ。それぞれ現代的なサウンドデザインのドラムン・ベース~ブレイクスやUKハードコア~ハード・トランスを独自解釈したバンガー・トラックとともに、溜め込んだエネルギーを一気に放出していく。 ストロボが強烈に明滅する演出、レイヴ・スタブやスーパーソー、ガバキックをふんだんに盛り込んだ攻撃的なサウンドながら、どこか牧歌的な感覚を残していたのが印象深い。多幸感にあふれながらもけっして我を忘れることなく、刹那的ではない連続性をたたえた感覚にNTsKiの表現者としての矜持と心遣いを感じた。クライマックスでは虹賀とNTsKiが向き合い、最前列の観客たちへ存分に愛を送っていた。 そうして「NTsKi 3rd Album “Euphoria” Release Party」は終演。灯りがついて現実に戻ったフロアを改めて見渡すと、人工的ながら緑化されきった場内の雰囲気に癒やされる。余韻とともに佇む観客たちは、まるでピクニックの終わりを惜しむような雰囲気だった。どうやら本回の来場者の多くが〈ishinoko〉を経てここにたどり着いたようで、同フェスが多くの人に新しい感動を与えていたことがうかがえる。自分もいつか行ってみたいな、と強く思った。 そうした残り香を探してか、終演後ラウンジに上がるとE.O.Uとvqがサブフロアの機材で気ままに遊んでいて、ついもう一杯注文して彼らにとっては珍しいオーガニックなハウスをプレイする様子を楽しんだ。強固な世界観をたたえたワンマン・ライブでありながら、小箱のいいパーティーの終わりごろのような優しい余韻を胸に、会場を後にした。 2025.10.17 (Fri) NTsKi 3rd Album “Euphoria” Release Party SETLIST 1. Mabinogi 2. Blackberry 3. K 4. ESC 5. If (Remix) 6. Fig(独奏) 7. On Divination in Sleep (Remix) 8. Hikari 9. 246 10. Id 11, Journey 2 Euphoria 12. 2co1 Members & Staff : Vo &
2025/09/24
コミュニケーションから始まる楽曲制作 最新アルバム『caroline 2』を発表し、世界中からラブコールが飛び交うロンドン拠点の8人組バンド・caroline。圧倒的なアンサンブルから感じる、生活の足跡や時の流れの愛おしさ、命の鼓動。そんな、身近であって広大なイメージを冒険する鮮烈なステージとなった初来日公演の前日、メンバーであるMike O’ MalleyとMagdalena McLeanに普段のコミュニケーションやインスピレーションについて話を伺った。(撮影にはJasper Llewellynも参加) interview : 奥冨直人(BOY) Photo : 添田ゆかり ──『caroline 2』、このアートワークやレコーディングされた作品には、開けた景色のような広大なイメージと繊細で孤独なイメージ等、対比されるものをフラットにさせるような世界観があって、自分的にはそこに優しい作り方というか、歩み寄りを感じています。同じようにレコーディングは計画性も実験性も感じて、あくまで自然体で生まれている作品は、一体どういうコミュニケーションをメンバーでとって作っているのかなというのが一番気になったところです。バンド間で一緒に曲を作っているムード、普段の雰囲気というのを教えていただけたらな、と思います。 Mike O’ Malley (Mike):ありがとう。やっぱり、会話がすごく大事になっていくかな。いきなり曲がバンってできるわけではなく、誰か1人がコンセプト、たとえばこういう感情を考えてるんだよね、とか、こういう風に聴こえるとか、こういう環境でとか、そういうふわっとしたイメージを持ってきて、そこから大人数で、みんなでどんどん作り込んでいって、長い時間をかけてようやく曲になるという感じ。だいぶ高度なコミュニケーションが要求されてる(笑)。 ──そうですよね。聴いていて、すごく映画や旅のような、長期的なものを感じさせる作品だと思いました。それってバンドをはじめたときからみんな、そういうイメージを伝えようみたいな考えを持っていたんですか? それとも、聴き手がそう思っているだけなんでしょうか。 Mike:昨日もバンドで話したんだけど、一応「こうしよう」という意図みたいなものはあっても、それを無理矢理選択していくというよりは、今となってはバンド内に暗黙の了解のようなルールみたいなものが出来上がっていくんだよね。どこを開拓してどこを開拓すべきじゃないか、というようなことがわかっていくというか。それはバンドじゃなくても、グループで一緒に過ごす時間が長ければ、その中でルールが自然と作られていくと思うんだけど、それがどんどん発展していったり、形になっていったりような感覚で、carolineもバンドとしてそういう状態になってきた。なので、そういう考えやイメージは無意識的(に形成される)というか。一応共通するそういったアイデアはあって、昔はもっといろいろと説明をしていたけれど、いまはそれが自然に共有されている状態で。シェアード・ブレインというか、脳が共有されているかのような感覚。 ──普段の生活感というか、『caroline 2』の開けた光と影のイメージの中には、もっと日常の延長線上みたいな音楽のインスピレーションがあるかと思いまして、普段はどういう暮らしの中で、どういう風に身体を休めたりとか、どういう音楽のインスピレーションがあったりするのかな、ということも気になります。 Magdalena McLean (Magda):基本的に日常生活の中で音楽を聴くのは電車に乗っているときか散歩しているときぐらいかな。ただ、普段電車に乗っている時間は多いから、一日の中では結構音楽を聴いてると思う。 Mike:70年代ごろの昔の考えで、すべての音が音楽であるという概念があるよね。たとえばサウンド・アートとかミュージック・コンクレートとか。それがポップスの文脈にも流れていると思うし、今でも私たちの頭の片隅に常にあるかな。なので、フィールド・レコーディングとか、いろいろな音のレイヤーを重ねていって音を作り上げるみたいなアプローチにも興味があるし。実際、東京も同じだと思うけど、私たちは大都会に住んでいて、常にいろんな音に囲まれているわけだよね。そういったいろんな音が重なっている環境に住んでいること自体が、やっぱり自分たちの作曲に自然に浸透しているのではないかな、と思う。 ──すごく納得します、僕も東京に住んでますし。僕は逆に移動するときは音楽を聴かず、家やお店が中心で音楽を聴いているから思うんだけど、たぶん東京の街中にも新しい音の出会いがあるんじゃないかなと思います。 Mike:代々木公園で、たぶん何かしらの生き物だと思うんだけど、聴いたことのない音でなにかが4回ぐらい鳴いてて。鳥ですか?って聞いたら違うみたいだったんだけど。リング・モジュレーターとかフィルターみたいな、ちょっと機械っぽい音がして。 ──蛙ですかね(笑)。 Mike:木のところから聴こえるから、機械じゃなくなにかが生きてるんだと思うけど(笑)。(編注:蝉の鳴き声でしょうか?) ──なるほど。ちなみに日本に来るのはプライベートでも初めてですか?来日公演は初めてだそうですが。 Mike:日本は初めて。素晴らしいね。 ──日本に来て楽しみにしていたことはありましたか? Magda:とにかく歩き回って、美味しいものをたくさん食べたいなと思ってた(笑)。(海外公演時は)街を歩いたり、景色を見たりして、建物や家の感じを見るのも大好きで。やっぱり全然違うから。私たちは旅先で何をしたいかって感覚も似てるんだよね。 ──日本に対してのイメージってそれまではどういう感じでしたか? Magda:うーん。 Mike:たとえば渋谷のスクランブル交差点とか。東京に限っていえば、とにかく大都会で、人混みでいっぱいで。その象徴。 Magda:渋谷の近くに滞在してるから、やっぱりそういう感じの印象はあるかも。 Mike:実際に日本に来ちゃったから今までのイメージを忘れちゃった(笑)。実際来てみたら、音楽を聴く環境が至るところで整っているなと感じた。たとえばDJバーとか。別に音楽をメインにした場じゃなくても誰かがレコードをかけていたりとか、そういう環境がすごく素敵だなと思った。あと自然が結構豊かで木々がきれいだな、とか景色もいいな、と。来る前にあまりイメージを膨らませず日本に来ようと思ってて。やっぱり日本って一番不思議というか、謎の多い場所だったからすごく楽しみにしてたんだよね(笑)。 ──なるほど。ポジティブなイメージで良かったです(笑)。アルバムとバンドの話に戻りますが、『caroline 2』のリリースから4ヶ月ほど経って、いろいろなリアクションがあったと思うんですが、それを受けてバンド内になにか変化は生じましたか? Mike:バンド内ではとくに無いかも(笑)。でも、ライブへの反響は変わってきてる。 Magda:このアルバムが出てから初めてライブをやったとき、今までと違うなという感覚があって。私も別にバンド自体の変化はあまりないと思うけれど、やっぱりライブをやったときの反応は明らかに変わったと思う。それは単純に、アルバムが今までよりたくさん売れて、会場が広くなって、お客さんがたくさん来てくれるようになったからで。ソールドアウトのショーができたという感動もあるし、そこはすごく分かりやすい違いだったかな。 Mike:ああ、そうだね。あとは、最近のほうがバンドらしく感じるというか。1stアルバムの頃は、まだバンドとしてはもう少し曖昧な感じだったから。もちろんバンド形態ではあったけど、活動も演奏もちょっとぼやけている感覚やイメージが僕らの中にあったんだけど、今は本当に「carolineというバンド」でギグをやる、みたいな確かな手応えがあって。もちろん新作を出したからというのもあるけど、やっぱりお客さんたちからのリアクションが大きくて、みんなが聴いてくれていることが伝わってきて、carolineをバンドとして確立できたな、という実感が湧いてきた。すごく楽しいし、新鮮な感覚でもある。 ──制作期間も長かったからこそ、バンドのグルーヴもすごく高まった状態でのリリースだったのかなというのが、また前作からのムードなのかなと思いました。今年はそういうリアクションもあった大きな年になりましたが、来年以降はバンドとしてどういう風になっていくかのイメージはありますか?共有しているイメージでも、個人的な考えでも。 Mike:実際、アルバムをリリースしてからまだ6公演ほどしかライブをしてないんだよね。まだまだ演奏し足りないから、今はもっとたくさんライブをやっていきたいって感じかな。来年以降どうするかというよりは、今はまだまだこのアルバムをどんどんいろいろな場所で演奏していきたいと思ってる。1stアルバムのときも、あれが出てから2年ぐらいはツアーをやってたしね。ライブでの演奏を通して、やっぱり収録曲の演奏の仕方はどんどん変わっていくし、それに応じてバンドの感じも変わっていくから。まるで生き物のように成長していくような感覚があって、事実1stアルバムが出てすぐの頃と2年後にツアーが終わったときの僕らは全然違う状態になってたし。今回も『caroline 2』がリリースされて、ツアースケジュールが来年の終わりくらいまではずっと続くから、その間バンドがどのように成長して変化していくのか、僕たちもすごく楽しみにしてる。やってみないと分からないからね。 Magda:本当にまだ始まったばかりだと思うし、これからバンドとしてもどんどん変わっていく気がする。たとえば1stアルバムの曲を今ライブで演奏しても、当時の感じとは違うアレンジになるし。別に意図的にそうしてるわけでもなく、ただ自分たちがその曲に慣れ親しんできて、改めて自分のものにすることができたから自然に変わっていってるというか。(アレンジを)自由に変えてもお互い大丈夫、みたいな安心感があるし、自信がついてきたんじゃないかと思ってる。悩みもあったけど、とにかくバンドの一体感が強まっているような感覚があるので、今後の歩みもすごく楽しみ。 ──音楽を好きにいろいろ聴いているんですが、特になぜバンドが好きなのかと言うと、人が生んだものを一緒に育つ過程を見てるみたいな感覚があるからで。いろんなバンドを観に行っているんですが、1年後、2年後にもっといい景色を僕たちに体感させてくれるような感覚がいつもあって。(carolineは)空気や距離、時間のようなものを感じさせてくれるバンドなので、すごく嬉しい言葉でした。 Mike:最初のライブに友人が来たとき、「とてもprecarious(不安定、おぼつかない状態)だね」と言われて。まだ危うさがあって、コントロールしきれていない不完全さがあったみたいなんだけど、それは実は良いことだと思っていて。ここから伸びしろもあるし、変わっていけるという意味でポジティブに捉えたんだよね。その危うさや変化を感じさせる意味での不安定さは、自分たちに当てはめられても嬉しいし、他のバンドを観に行ってそういった要素を感じるのも楽しみではあるし。そこにはバンドらしさが出るし、可能性も感じられるからエキサイティングだと思う。 caroline – caroline 2 Label : Rough Trade Records / Beat Records Release date : May 30, 2025 https://caroline.ffm.to/caroline2 https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14915 Tracklist : 1 Total Euphoria 2 Song Two 3 Tell Me I Never Knew That (ft. Caroline Polachek) 4 When I Get Home 5 U R UR
No Busesなど4組が追加
more
4thアルバム『Reflect』リリース
more
1/23 DAY & NIGHT / 渋谷 5会場・7フロア使用
more