JUMADIBA Interview|自分らしく、地図を広げて

“自分だからこそできることをやる”

 

 

1st Mixtape『Kusabi』を発表し、切れ味のあるアティチュードを柔軟なセンスで披露した作品性で話題を呼んでいる新鋭ラッパー・JUMADIBA。東京都杉並区を拠点に活動する若き彼の眼光に秘めたる美学は、このたびアンダーグラウンドシーンにて大きく狼煙を上げた。間違いなくJUMADIBAは2021年のシーンにおいてキーマンとなりえるだろうーその確信を深めるべく話を訊いたところ、奥深き趣のある彼らしいロードマップが広がっていた。

 

text by yukinoise

Photo by ミツタロウ(WATER DAWGS)

 

– 1st Mixtape『Kusabi』のリリースおめでとうございます。本作はもちろんのこと、〈K/A/T/O MASACCAR〉とのコラボリリースパーティー〈K/U/S/A/B/I MASSACARE〉もとても良いパーティーで衝撃的でした。ご自身の手応え的にはいかがでしたか?

 

JUMADIBA(以下:J):〈K/U/S/A/B/I MASSACARE〉は、パーティーを開いたことがなかった自分に、開催するにも難しい時期だけどカトーさんがきっかけをくれたことで実現できたと思います。今まではどれだけリスナーがいるのか数字を見ることでしかわからなかったけど、来るにも難しい時期なのに東京だけでも実際100人くらい来てくれたので、自分の音楽を聴いてくれる人がちゃんといるんだなって目に見えて実感できたパーティーでした。

 

– 〈K/A/T/O MASSACARE〉には以前も2回ほど出演されてましたよね?

 

J:そうですね、最初はMare Internoの客演で出てます。当時も次もオンライン限定で無観客配信だったので身近な人からのレスポンスだけでした、今回は自分がミックステープを出したのもあってか全く知らない方が反応してくれることが多くて、段々実感できるようになりました。

 

– 同じくリスナーもJUMADIBAの可能性を感じられたリリースパーティーだったと思います。他の出演者もかなり見応えのあるアーティストが揃ってましたが、どのようにブッキングを決めましたか?

 

J:嬉しいです。今回は自分が好きな人や、全然違うことをやっていても自分とどこか共鳴する部分がある人を呼ぶことができました。今までそんなに頻度多くクラブやパーティーに遊びに行く方ではなかったけど、コロナが始まって人と会う機会が減っちゃった分、音楽も好きだしいろいろなパーティーを見にいくようになって。その中で自分が好きだった人たちに声をかけさせてもらいました。

 

– UKロック好きとも耳にしていたので、共鳴するアーティストの中にバンドがいたのも印象的でした。音楽に触れた最初のきっかけを教えてください。

 

J:物心つきたてくらいのときから、家でThe BeatlesやOasisが流れてる環境にいたのが大きいかも。そんなに意識して聴いていたわけじゃないけど、気づいたら自然にUKロックを耳にしていたのが音楽を好きになっていった理由かと。

 

– 他にはどのような音楽を聴いて育ちましたか?

 

J:Oasis、U2、Radiohead、あと宇多田ヒカルの『Ultra Blue』ってアルバムをひたすら聴いてました。あとはいわゆる日本の流行りのもの聴いてました。それと日本のMUTE BEATていう80年代のバンドとか今になってこれ全部聴いたことあるじゃんて。なぜか今でも聴きたくなるのが、ロナウジーニョが参加していたブラジルの不思議なコンピレーションアルバム。サンバノリの変な作品。

 

 

– その頃はまだヒップホップには触れてこなかったんですね。

 

J:小中学生の頃はヒップホップには全然触れてこなくて、ロックの存在のほうが大きかったですね。ヒップホップに触れたのは中学時代にBlack Eyed Peasを聴いたのが最初で、たぶん母親が聴いてて家にCDがあったから。今までヒップホップを耳にしていたものの聴きづらい部分もあって、でもBlack Eyed Peasだけは聴けました。そこからWill I AmやDr. Dreに行きついて…。

 

 

– 素敵なお母さんですね。当時は自分もラップしようと考えたりしましたか?

 

J:もう全然、中高生の頃は自分がやるだなんて思ってなかったですね。ラップを始めたのもだいぶ後だし、なんならここ2年前くらいのことなので。

 

– では、当時はどのような学生生活を送ってました?

 

J:あんまり覚えてないけど、学校行って寝てサッカーしてみたいな感じであんまり自主的に動いたりせず身を任せるみたいな生活でした。でも、通学中とかに音楽を聴く時間が好きだった気がします。サッカーを辞めた後自分はこうゆうものが好きなんだなと少し客観視できるようになりました。わかんないけど音楽のおかげだと思います。

 

– その頃にはもう音楽で培った感性で自分を見つめることができたんですね。サッカーを辞めたのはどうしてですか?

 

J:そうかもしれないですね。なんか足も痛かったから続けらんないてのもあったし、周りも受験モードみたいな感じになったから流れで辞めました。今思えば自主性ないなと思うけど自分の好きなものがちゃんと見つかり出したから辞めてよかった。チベットのトラディショナルな民族音楽とかケルトミュージック聴きつつも、A$AP RockyとかKendrick Lamarも聴いたり、EDMみたいなのも聴いたり笑。BjorkのバースデーパーティーみたいなやつのDJのミックスをサンクラで毎日聴いてたかも。衝撃すぎて本当に毎日聴いてました。たしか高校卒業してからBjorkの日本未来科学館でやったDJを母親が連れてってくれて、ずっと聴いてたミックスと近いけど別のセトリを生で聴けてめちゃ鮮明に覚えてます。本人のビジュアルとか動きとかも含め空間として良かった。

 

– 豊かなインプット期間を経たのち、自らがラップをするようになったり制作を始めたりしたのはその後の進学がきっかけでしょうか。

 

J:そうですね。全く音楽やるつもりはなかったけど、大学進学してMare Internoと出会ったからかな。ふと大学で学ぶ映像でやっていきたいと思わなくなって、なんか新しいこと見つけたいなて感じで暇だったしiphoneでRECし始めました。なんかアウトプットの一つとして。

 

– たしかに楽曲からもラップをするってよりかは、JUMADIBAというアーティストの表現手法がラップであるような印象を受けました。

 

J:ラップは自分がやりたいことを見つけたうちのひとつって感じでした。フラッとはじめた割には、やってみたら難しくも面白さがあって楽しいです。最初は真似っこから入って、だんだん自分しかできない組み合わせや言葉の並びを見つけていって…続けてたら自分にしかできないラップとか音作りをしたくなってきた。まだまだだけど。

 

– 巧みなワードセンスの中には、ラップゲームに参加するのとはまた別のオリジナリティが光ってると思います。リリックや言葉のインスピレーション源になってるものが知りたいです。

 

J:日々、友達や街とか、自分の生きている時間全部だと思います。当たり前だけど。自分が感じた違和感とか不満や怒りとかも含みつつそれだけにならないように情報を取捨選択することも大切だなと最近は特に感じます。今はそう思える環境に感謝しつつ、出来ることからやっていこうて感じで。そんな簡単に現状は変えられない気がするから。

 

– 街といえば、出身地で活動拠点でもある「杉並」というワードがよく登場してますよね。杉並区はいくつかの区と隣接しているように、生活感もあれば商業的な面やカルチャー的な面があったりする独特な街だと思います。ご自身で杉並をレペゼンしてる意識はありますか?

 

J:そこが結構難しいところで。育った場所への愛はあるけど、ストリートにいた人間でもないから。自分がいるエリアは杉並の中でも下の方で、世田谷も近いしいろいろ混ざってるいわゆる杉並っぽいところじゃない。でも地図的に見たときには、自分はここにいると記しておきたくて。車の運転が好きなのと同じく、音楽も地図で見るのが好きなんですよ。地図を広げて、あの街やこの辺にはこんなアーティストがいるんだって考えるのが。たとえばロンドン行ったときも、この国や街に好きなアーティストがいると思うと、歩いてるだけて気持ちが上がる。だから奈良のコレクティブ・HEAVENも超好きだし、みんなにも東京もしくは杉並に来たらJUMADIBAがいるんだって思ってくれたら嬉しい。

 

 

– リスナーに対して街を強調するのは自分を理解してほしいというメッセージよりかは、日記のように日々を伝えるようなイメージですかね?

 

J:日記を書いたことはないけど、もし日記を書いたらメッセージ性の強い内容を書いてただろうし、自分を伝えたいという想いはある。音だけの楽しみ方も好きだけど、バックグラウンドを知ることも自分は好きだから自分の曲を聴いてもらうときも多少バックグラウンドを感じてほしい。だから杉並ってワードが出てくるんだと思います。

 

– 奈良のHEAVENも、関西という漠然とした括りじゃなくローカルに焦点を当てているのが面白いですよね。いまは都心じゃなくとも主体的に音楽活動はできる時代だからこそローカルな土地柄の魅力がより強くなりますし、はたから見たらアーバンでも自分にとってはローカルな場所として表現が逆もしかりでさらに際立つのかもしれません。

 

J:他の土地に行くと自分との違いに気づいたり戻ってきたときに改めて場所の匂いを感じたりすることができる。ロンドンに行ったときも、日本に帰ってきて電信柱を見たら不思議な感覚になりました。日本にいると電信柱や高層ビル群の密集が嫌だったのに、ロンドンから戻ってきたらなんだか安心感があったし。

 

– ロンドンに行ったのはいつ頃ですか?現地での生活についてもお聞きしたいです。

 

J:2020年の2-3月、留学中の友達の家に泊まってました。中国でコロナが流行り始めたタイミングで、クラブとかもそんなに空いてないしレイヴの見つけ方も知らなかったから、好きな音楽を聴きながら散歩したり、街を感じたりしてましたね。その時も、Sam WiseやFLOHIO、Dave、Stormzy、ロンドン出身じゃないけどslowthaiなど向こうのアーティストの曲を聴くのが結構楽しかったです。滞在中のラスト10日間が実質ロックダウンみたいになったので、『眼光』のMVを撮ったりもしました。ロックダウン中に部屋の中で撮影したからイギリスやロンドンぽさは全然ないけど。外で撮らなかったのも逆に思い出。

 

 

– その話を聞いた後だとMVの印象も変わりそうです。ロンドンに行ったことで制作面や日々の暮らしで心境の変化はありましたか?

 

J:ロンドンから帰ってきて思ったのは、日本にいるからこそ、自分が住んでいる街で自分にしかできないことをやろうと。オリジナルだからこそカッコいいということを特に感じました。まだまだ誰かの作品を受けてるところもあるから、もっと技術的に進化しなきゃいけないし、発想力も使って自分にしかできない表現をしたい。『Kusabi』はロンドン行った後の曲がほとんどで、さまざまなアーティストに影響を受けつつも少しだけ自分らしい作品ができたと思えるようになりました。

 

– 『Kusabi』の制作自体はいつから取り組んでましたか?

 

J:とりあえずコロナ以降作りながら1年くらい経って、曲数もあるからまとめて出しました。複数曲を通して聴く聴き方が好きだから曲数も増やして。

 

– 確かに。本作からはコンセプトやメッセージ性というよりかは、JUMADIBAのポートフォリオのような印象を受けました。日本でしかできない音楽とありましたが、自身を国外のシーンに向けて発信したり繋がったりしていきたい気持ちはありますか?

 

J:日本じゃないとできない音楽を作ってからじゃないと、国外のシーンには行けないなと思ってます。自分らしい作品を出した上では、いつか国外のシーンやいろいろな人と繋がっていきたいという想いはあります。

 

– 自分らしいといえば、JUMADIBAという名前やオリジナリティのある髪型の由来について伺ってもいいですか?

 

J:ネルソンマンデラが好きなので彼の愛称であるMADIBAと、本名にあるJUを合わせてJUMADIBAにしました。髪型は、元々よく坊主にしてたんですけどそれだけじゃつまらないからちょっと生やしてみようと思っていまは弁髪に。アジア感あって気に入ってるけど深い意味は特になくて、強いこだわりもないから気づいたら消えてるかも(笑)。ロンドンにいたとき前髪だけ残してたのは、2002年のワールドカップでロナウドがやってたとの同じ。

 

– あの髪型をしていたロナウド選手は、いま振り返ったら「あれはダサかった、真似してたキッズだちには申し訳ない」と言っていたそうです(笑)。

 

J:なんで(笑)。自分は全然かっこいいと思ってるから。今の髪型も実はアルゼンチンのロドリゴ・パラシオが後ろ髪残していたところからもきてます。髪型の影響はサッカー選手が多いかも。

 

 

– 髪型だけでなくユニフォームやジャージなどサッカー要素があるファッションだったりと、自分らしさがあってカッコいいと思います。

 

J:あんまりぱつっとしたの着れないし、動きやすいからサッカーのユニフォームは好きです。

 

– ラッパーとして活動する上で、自分のスタイルや美学をどのように貫いていきたいと思いますか?例えば規模感を広げる/売れるということを考えると、商業的な事と美学のバランスを考える場面が出てくるかもしれません。

 

J:自分は絶対美学を折りたくはないです。お金がきちんと生まれていく環境を作りたい。商業的なところやメジャーに行かなくてもアーティストとして稼げて生活できる環境もあんまりないから。カルチャーを生活の中に浸透させたり、日本にはない消費的じゃないカルチャーのロールモデルを作ったりしていきたい。

 

– 現在、シングル/アルバム問わずリリースのサイクルが加速しつつあります。サブスクに合わせたりSNSに対するスタンスが似通っていたりと、その一連のサイクルや作品に対する向き合い方がまるでベルトコンベア的な、流れ作業のように感じることがたまにあるのですが、いちアーティストとして消費に対する危機感はありますか?

 

J:その一連のサイクルがあるのも、自分がそこに入ってしまってるのもわかる。入らざるを得ないというか、避けられない道ではないけど通過点だと思ってます。もしお金があればSNSやサブスクに出さず盤だけ制作するってのもしたいけど、いまはお金がないから一連のサイクルに乗っていかないといけないって感覚です。本当はそうじゃないところでやりたいし、サイクルからも抜け出したいから、そのためにはお金が必要になる。

 

– 普段から周囲でそのような話をしたり、感覚が共鳴するアーティストはいますか?

 

J:一番話してて共感するのはLil Soft Tennis。彼みたいなアーティストがお金を稼いでいかないと根付いていかないし、制作を不自由なく続けられるようにすることについても意識してると思います。他には、考え方や見ている場所は違うけど松永拓馬、Le Makeup、Dove、tamanaramenとか。俺は勝手に共感してます。行為としてみたいな。全然違ったらみんなごめん(笑)。

 

– 商業と美学のバランスをうまくとりながらシーンを変えていこうとする流れが今まさに生まれてきているのはとても喜ばしいですし、アーティストだけでなくオーディエンスもこれからさらに意識しなきゃいけない点だと思ってます。

 

J:この話はアンダーグラウンドの音楽シーンだけの話じゃなくて、この島国すべてのことに繋がっているとも思ってます。東京の一部だけどちっちゃな話かもしれないけど、音楽を始めてから感じてたことでもあったし、いまはだんだんそれを自分の力で変えていかなきゃいけない。変わらなきゃダメだよなとは音楽を始める前から漠然と思ってはいたし、とにかくもっといい環境にしていかないと。

 

– JUMADIBAは新たなシーンの担い手になると予感してます、今後アーティストとしてどのようなアプローチをしていきたいか最後に教えてください。

 

J:担っていけたら嬉しい。これからも自分らしい音楽をどんどんやっていきたいです。客演もしたいし、自分の作品にもいいなと思ったアーティストを入れていきたい。その人らしいアーティスト、自分らしい音楽をやってる人たちともっとやっていけたらいいな。それから、今やってることは音楽の枠の中だけど死ぬまでにはそれを飛び越えられるアーティストになりたい。変化し続けたいです。

 

 

 

JUMADIBA – Kusabi

Release date : 18 June 2021

Stream : https://linkco.re/Ddh7MhAV

 

Tracklist

1. Pulse (prod. tuze)

2. SLK (prod. JUMADIBA)

3. it was (prod. taro)

4. 自画像 (prod. JUMADIBA)

5. Spike! (prod. JUMADIBA)

6. PARK THE BUS (prod. JUMADIBA)

7. Stolen (prod. JUMADIBA)

8. pows (prod. JUMADIBA)

9. 1mistake (prod. tuze) 

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