2020/06/15
予告動画公開
Ultrastudioはイタリアのぺスカーラで創立され、アメリカはロサンゼルスにも支部があるアートディレクションスタジオ。これまでに数々の展覧会のキュレーションを手がけており、アート雑誌や専門家より高い評価を得ている。
そんなUltrastudioが東京支部を新たにスタート。代表をMIRA新伝統 (Raphael Leray、Honami Higuchi)が務め、 アジアの前衛芸術シーンに特化した展覧会・イベント・出版物のキュレーションを行なっていく。また、2020年〜2021年はぺスカーラ・ロサンゼルス・東京の3スタジオの共通テーマを”Body”として各地で展覧会を開催予定だ。
〈English ver〉
Ultrastudio is a curational platform originally founded in Pescara, Italy and established a new office in Los Angeles, USA last year. It has curated numerous exhibitions so far and as been regularly coveraged by leading art magazines.
A new branch will now start in Tokyo with MIRA 新伝統 (Raphael Leray, Honami Higuchi) as directors. The Tokyo office will be curating exhibitions, events and publications specializing in the Asian audio-visual and performance scene. Between 2020 to 2021 a global cycle of exhibitions will run across each offices with “Body” as a common theme.
Ultrastudio HP:http://www.ultrastudio.sexy/
category:NEWS
tags:MIRA 新伝統 / Ultrastudio Tokyo
2022/08/03
AVYSSプレイリスト公開 ボディパフォーマー/ダンサー/3DCGアーティストのHonami Higuchiと音楽家/プロデューサーのRaphael Lerayによって結成されたエクスペリメンタル・アートプロジェクト、MIRA新伝統。現代における他者性やポストヒューマニズムといった壮大なテーマと背景のもとにパフォーマンスを行う彼らは、アートスペースだけでなくナイトクラブやアンダーグラウンドシーンから、観る者をさらなるイマジネーションへと誘い込む。この夏、ベルリンのエクスペリメンタルレーベル・SUBTEXTより1st EP『Noumenal Eggs』をリリースしたばかりの2人に、パフォーマンスと作品の真髄から環境問題や政治意見などの社会的事象まで、細部に宿る精神性の奥底を語ってもらった。 text by yukinoise ー 1st EP『Noumenal Eggs』のリリースおめでとうございます。MIRA新伝統はオーディオ・ビジュアル・パフォーマンスアートを制作するユニットですが、活動を始めた経緯について教えてください。 Honami:2018年にRaphaelという1人の音楽家と、Honamiというダンサーが出会って、一緒に何かやってみようとなったところからMIRA新伝統は始まりました。出会った時はまだ2人の共通する概念もまだ決まってなかったけど、活動していくうちにお互いの共通点が見つかっていきMIRA新伝統という名前になりました。わたしが元々舞台やコンクール、ダンスフェスティバルに出ていたので、活動初期は2人とも舞台に上がってパフォーマンスをしてたんです。 ー お二人はどのようにして出会ったのでしょうか? Raphael:わたしはプロデューサーとしてサウンドデザインが複雑な現代音楽やエレクトロニカを作っていて。ライブで再現したり即興したりできないけど、だからといってビート投げっぱなしで機材のボタンを押すようなライブをしてもつまらないと思っていたんです。2010年代くらいにOvalがコンテンポラリーダンサーと組んだ作品を出していたのが印象強く、当時ArcaもMVを出して話題になっていて、音楽とダンスの関係性や重要性を考えるようになりました。自分の楽曲ならダンサーとコラボする意味があると思ってダンサーを探していく中で、Honamiと連絡を取り一緒にプロジェクトを始めました。 Honami:Raphaelの作品には楽曲の背景に想像や空間みたいなものがあるんです。その空間の中に、人間や音楽じゃない何かが存在してる。 Raphael:映画的な想像が背景にあって、それを音楽でビジュアライズして実現させるように作ってます。 ー 着想源の映画的な背景はどのようなものでしょうか? Raphael:超現実的なランドスケープがほとんど。19世紀半ばから20世紀初頭、象徴派 (Gustave Moreau)から超現実主義時代の絵 (とにかくMax Ernst)、またはH.R GigerやMoebiusなどは一番頭に浮かんでる絵を鑑賞すると音楽を作りたくなる。幼少期から好きで印象が強く残っているのもあって、制作プロセスでビジュアライズするときは、そのようなイメージの中ではどのような音楽で踊っているかなど想像しています。最近出演したパーティー・Manaがいい例で、美術作品も置いてあったりパフォーマンスをしたりと、音楽だけじゃなくすベてが組み合わさって面白さが実現できました。 “The Eye of Silence” – by Marx Ernst ー MIRA新伝統としてアートを表現すると、音とダンスが融合したパフォーマンスになるということでしょうか。 Honami:わたしたちのパフォーマンスは音楽家とダンサーがただコラボしているんじゃなく、自分達のビジュアルイメージをできるだけ体現した試みですね。 Raphael:作曲家・ワーグナーから定義された「Gesamtkunstwerk(総合芸術)」のように、音楽もダンサーも物語を構成する一部で、オーディエンスも含め全体的に舞台を構成している感じが近いかもしれません。資本主義が横行する今の時代では、TikTokや短い動画みたいな簡単に鑑賞できて楽しめるコンテンツが人気だけど、1時間の舞台やパフォーマンスにオーディエンスが没入できるものも必要だと思います。最近のアーティストでは、Asian Dope Boysが近いことをやってるかもしれません。 ー たしかに。コンテンツとしてすぐ消費しやすくて大衆にわかりやすいものが今の時代において主流になってますし、そういうものじゃないと受け入れづらいベースもすでに構築されてしまっているようにも感じます。 Raphael:それでもいいんだけど、それだけじゃないよって気持ちがオーディエンスとしてもありますし、プロデューサーとしてもフラストレーションを持っています。あとは、舞台を鑑賞しているとボディパフォーマンスに重きを置いていて、音楽にあまり気を遣われていないように感じることもありますね。 Honami:それはダンサーとしても思うところはあって。音楽に詳しかったりこだわってたりする人もいるけど、そこまで知識が深くなくてただバックミュージックとしてしか見られてないこともあります。 Raphael:どちらも異なるシーンではあるからこそ、そこにどうやって架け橋を作れるか話し合ったりしてるね。 photo by さようならアーティスト / Dag Make-up and face piece by SAKURA “Mana” event – Curation by Soya Ito ー MIRA新伝統としては今までどのようなパフォーマンスをやってきましたか? Raphael:Kazuki Kogaくんが出ていたK/A/T/O/ MASSACREでのパフォーマンスが最初かな。会場のForestlimitはあまり広くないからかなりストイックなパフォーマンスをした後、30分くらい瞑想をしたんだよね。 Honami:ちょうどその頃2人ともヴィパッサナー瞑想のコースに参加した直後で。お客さんも巻き込んだけどゾーンには入れなかったかもしれない。 Raphael:Yves Tumorの来日公演では自分達でビジュアルイメージやアクセサリーを作って、ある程度の物語を立ててアーチェリーを使ったライブをしたり。 Honami:ステージ上にマイクを入れた鉄板を置いて、アーチェリーで撃った音にエフェクトをかけて音楽に仕立てました。 Raphael:アーチェリーで機材やスピーカーを壊したらどうしようって思ったね(笑)。その後もForestlimtの他に小岩BUSHBASHや下北沢SPREAD、パフォーマンスアートもやったり、最近はMUSTANGというハードテクノのパーティーでDJとVJをやってみたりと音楽だけじゃないことも色々やってます。DJやVJまたは毎月ホストをしてるHKCRラジオは我々の好きな世界観を伝えるきっかけにもなるから、作品だけじゃなく普段聴いている音楽やビジョンを共有できたら嬉しいです。 ー 今回AVYSS Playlistを作成いただきましたが、音楽だけに限らずビジュアルやパフォーマンスアートなど、日頃からどのようなものからインスピレーションを受けているか教えていただけますか? Honami:パフォーマンスとしては、儀式的な要素や音楽ともうまく融合しているAnne Imhof’sが好きです。表現の仕方や自分の見せ方の参考になったのはPan Daijing、舞台やダンサーとしてやってきた身としてはPina Bauschからも大きな影響を受けてます。Pina Bauschは振り付けを機能的に踊るのではなく、ダンサーの人間的な感情の元から表現している感じがするんです。Raphaelと組む前にショーパブで働いていた時、彼女の影響を受けた加賀谷香先生のレッスンに毎日通っていたのもあり、表面的なものより本質から湧き出るパフォーマンスが好きなんだと思います。機能的な振り付けもスタイルとしてアリなんですが、ダンサーの内面が反映されている振り付けの方が自分も共感しますし。だからMIRA新伝統の儀式的なパフォーマンスにも、我々の背景や概念が反映されています。特に今回のEPでは、普段お互いに話し合っていた環境問題がバックにあるんです。 Raphael:今回のEPは環境問題、ポスト・アントロポセンに影響を受けていますね。たとえばアントロポセンは、化石を分析したら恐竜がいた時代がわかるように今はカーボンやジャンクを残したものが化石化していって、人間がいた時代を地球にマークしている状況。100年前にはなかったけど近年になって、そういうものが初めて目に見えるようになってきている。そんな状況に対して、我々が地球への影響を考えて長生きできる環境を作れているかというと、できてないどころか逆に自己破壊してしまっている。人間だけじゃなく自然や環境、命を自己破壊してしまっている世界からどうすれば抜け出せられるか考えるようになりました。考える中でマーク・フィッシャーの「資本主義リアリズム」を何度も読み、最後の言葉にも影響を受けたんです。今の状況を乗り越え次のステップにいくには今まで想像してこなかったものを目指し、ポスト・ヒューマン的に超えていくしかないと。未来がどこにいくかわからないからこそ、我々がいる安全なゾーンから離れる必要があります。現在の楽ちんな生活から離れたり、自分たちの身体や機能を変えていくのは恐ろしいことかもしれないけど、実験的にでも何かやらなきゃいけない。人間は高尚な生き物であり性や家庭への概念は絶対にぶれないという考えもあれば、性や家庭を柔軟に捉えるように人間そのものも柔軟に考える方法もある。なら我々は実験的でも後者を選ぶし、まだまだ実現されていない世界を想像して違和感があっても知らない領域を作っていきたいと思っています。なので今回のEPにホラーを感じる人もいるかもしれないけど、我々にとっては全くホラーではないんですよ。 ー ホラーと思ってしまうのは、受け手にとってあまり馴染みがなく違和感があるからこそ恐れを感じ取ったのかもしれませんね。 Raphael:怖いと言っても、初めて暗闇を見た子供が感じるような恐れや怖さに近いですね。暗くて何も見えないから恐ろしいかもしれないけど、その闇の中に危ないものが絶対あるわけじゃない。あるかもしれないですが、怖くても足を踏み入れることが新しい体験に繋がると思います。EPのサウンドデザインでも違和感を感じる音やノイズを入れて、聴き始めは怖く感じても聴いていくうちにだんだん気持ち良くなるようにしました。レイヴでジャンクなものに触れても、ハイになっていくうちに自然と受け入れられるような感覚。その体験もポスト・アントロポセンに繋がっています。変えられない過去を乗り越えて新しい命や生き物の概念を作っていくしかない、大自然には戻れないからこそ人間のミスを認めて、よりいいものを目指していこうと。 Honami:現に人間のプラスチック廃棄物がハワイの島で化石化して、すでにプラスティグロメレートという新種の石として専門的にカテゴライズされるようになりました。人間が生きた証として1万年前の化石があるように、我々の資本主義信仰が確実に化石化してそういう時代があったことを示すのは決定してるから、それをまず受け入れる。 Raphael:ジェンダーを定義するように決められた通りに生きるのではなく、自然が赴くままを認めないで人間から変えていくこと。そもそも我々だって良くも悪くも自然の一部なんだから、その元で人間や未来を考えて動いていかなきゃ。 ー 自然と人間の違いとなると、人間は考え方やアプローチの仕方で物事を変えることができる点だと思います。その利点があるなら、よりよく生きるためにも現状を受け止めて進歩していくべきです。変えていくこと自体も人間としては自然な行いとも言えますよね。 Raphael:そう、だから我々が不自然なことをやってるように見えても実はとても自然な行いをしてます。昔は神様が人間や自然を作りあげたと文化や社会の中で受け止められていたけど、科学や人間が変化を望むならそれが自然のエボリューションであるとも言える。テクノロジーを使った進歩も自然の一部です。 ー
2021/04/23
堕天使が作った地獄の首都 東京を拠点に活動するパフォーマンス・アーティスト兼オーディオ / ビジュアル・プロダクション・デュオのMIRA 新伝統は、共同設立者であるHonami Higuchiの日本での性的虐待やセックスワークの実体験をもとに、2019年にウィーンを拠点とするレーベル〈AMEN〉から初の映像作品「Torque」を発表。その後、ナイトクラブ、ギャラリー等でのパフォーマンス、Hong Kong Community RadioやInternet Public Radioでの自身のラジオ番組のホストも務めており、Yves Tumorの日本公演のオープニングアクトを担当するなど、日本の芸術・音楽シーンの内外で認知を高めている。 そんなMIRA 新伝統が、新曲「Axsys Pandemonium」をMVと共にリリース。今作は幡ヶ谷Forestlimitにて毎週開催されているパーティー「K/A/T/O MASSACRE」が新しい試みとしてNFTオークションを取り入れて行った「N/F/T MASSACRE 001」で初披露されたもの。 Axsys Pandemoniumの背景 パンデミックが私たちの音楽シーンに与えた影響を他の人たちと同様に経験する一方で、東京、特に私たちが住んでいる渋谷では、90年代とY2Kの文化が復活し、主流の消費者主義的なファッションと音楽が中心になっていることを観察していました。 そこで、CCRUやMark Fisher、Kodwo Eshun等に影響を受けた時代の異なる記憶を呼び起こし、それを私たちの現在と結びつけたいと思いました。ほとんど家に閉じこもり、ネットを中心とした生活を送り、外に出て積極的に未来を見つけようとするのを待っているのです。 制作面では、ギャバやジャングルを彷彿とさせるようなビートに、堂々としたデジタルサウンドをデザインすることを目指しました。 タイトルの「Axsys」という部分は、Eshunの生徒が書いた妄言から来ています。”また、”Pandemonium “はミルトンの”Paradise Lost”に登場する堕天使が作った地獄の首都を意味しています。 MIRA 新伝統 – Axsys Pandemonium Release date : 21 April 2021 Buy : https://mirashindento.bandcamp.com/track/axsys-pandemonium
2022/06/02
Ziúrリミックス収録 photo by さようならアーティスト ポスト・ヒューマン的リアリティは、必ずしも煌々と輝くディストピアやサイバーパンクな夢物語ではない。それは、人知れずネオンが宣伝を続ける静まり返った渋谷の路地裏や、燃やされたプラスチックが溶け固まりできた小石が海岸を覆う神奈川のエコ・トランスレイヴかもしれない。東京を拠点に活躍する MIRA新伝統の二人が最新EP『Noumenal Eggs』のインスピレーションを得たのはそんな情景の数々からだ。この作品は、倒錯した不協和音と進化し続けるテクスチャーから成り立つ、探索的で歪曲した音響的複合物の発掘作業である。 Honami HiguchiとRaphael Lerayの最新作は、性的虐待やトラウマの身体的および心理的な影響を題材とした『TORQUE』(2019) に続くリリースとなる。約20分間の短編映画とサウンドトラックからなる『TORQUE』は、 舞踊家のHonamiが演じる性暴力やセックスワークの経験との対峙と、フランス出身の音楽家であるRaphaelによるアンビエント楽曲からなる1時間のパフォーマンスを再構成したものである。Honamiが自身の人間性と相反する業界の動因と折り合いをつけながらも、暴力やそれによってもたらされたアイデンティティの喪失に耐えてきた姿を描いている。 『TORQUE』がHonamiの過去の傷や現在に及ぶ重い鬱症状を癒す手助けとなったのに対し、『Noumenal Eggs』は他者性と消費経済における単なる資源としての身体という痛ましいテーマを、ポスト・キャピタロセン(資本新世)という広義の文脈へ導いている。”Howling Machines” では、ドゥルーズとガタリの「欲望する機械」が、Raphaelが作り上げた蛇のように蠢く破壊音を通じて鳴り響く。また”Hosting of Inorganic Demon” では、Honamiの絶叫がパンデミック時代に廃墟と化した商業ビルを訪れたときのような非現実感を伴って反響する。このトラックは、イラン出身の哲学者レザ・ネガレスタニが描く、生物のような地域や悪魔のような天然資源が独自の統治機関として存在するセオリー・フィクションの奇妙で不気味な世界から着想を得て制作された。 FMとウェーブテーブル合成を主に使用し作られた”Chronosis “のひび割れるような雑音は、MIRA新伝統が「逆行するくぐもった空間感覚」と呼ぶリバーブのように、時時間が圧縮される感覚を模倣している。対をなすトラックとしてZiúrが手掛けた”Disembodiment” のリミックスも収録。SOPHIEの触覚的なテクスチャーとジェンダー規範的なボーカルの影響を感じさせるこの曲では、Raphaelが高音を歌い上げ、Honamiが低音の唸り声を響かせる。Coil、Psychic TV、Markus Popp、そしてノーウェイブのアイコンであるイクエ・モリらの影響も微かに感じられる。 カバーイメージは、スイス出身のアーティストMaya Hottarekが手掛け、Joelle Neuenschwanderが撮影した。つややかな釉薬に覆われたエイリアングリーンの彫刻は、人間の知覚では捉えることができない物体を彷彿させる。未知の形状は、文化理論家であり、k-punkの名でも知られる故マーク・フィッシャーが定義したようにオルタナティブな未来と想像を超えた新しい自然を示唆している。フィッシャーは述べている。「私たちは、まだ存在せず、どのように、どんなものになるのか分からないものを生み出さなければならない」、と。 MIRA新伝統 – Noumenal Eggs Label : Subtext Recordings Release date : 17 June 2022 Pre-order : https://mirashindento.bandcamp.com/album/noumenal-eggs Tracklist 1. Hosting of an Inorganic Demon 2. Disembodiment 3. Noumenal Eggs 4. Chronosis 5. Howling Machines 6. Disembodiment (Ziúr Remix)
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