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ACE COOL interview 後編

孤高の男、ここに生きる

 

 

先日、自身の半生を投影した”短編映画的コンセプトアルバム”『GUNJO』をリリースしたラッパー・ACE COOL。ファーストアルバムとなる本作では、内向的な幼少期やヒップホップに出会うまでの過去を遡りながら、孤高の存在としてシーンに君臨する現在の姿までが濃厚に描かれている。今回のインタビューでは、AVYSS GAZE vol.2にも出演したACE COOL本人より、『GUNJO』の収録曲について解説していく。収録曲『REAL』から『CADILLAC / FREE』までの想いやエピソードを紐解いた前編に続き、後編ではラッパーとしての葛藤が描かれた『FAMOUS』から、本作のラストを飾る『FUTURE』までの楽曲群を巡る話を訊いた。

 

Text by yukinoise

 

 

– 7曲目『FAMOUS』あたりから、作品の舞台が徐々に現在へと近づいていった印象です。

 

ACE COOL:もっと外の広い世界に目を向けるようになったというか、活動していくにつれ、数字やシーンなど他者を意識せざるを得ない状況になっていきました。この曲では、シーンの中で有名になりたいという理想と、そうなるために現実で自分はどうしていくべきかという葛藤を描いているので、ネガティブな面も曝け出したリリックになっています。

 

– ネガティブな面を曝け出すことに抵抗はありませんでしたか?

 

ACE COOL:さらにACE COOLの奥行きを見せたかったので、特に抵抗はありませんでした。GUNJOを作る上ではネガティブな面も出さないと他の面の深みが出ないような気がして。浅いところよりもどん底から這い上がったほうが感動的になると思い、人間としてダメな部分も見せてみました。そういった葛藤を抱えて迷いながらも、曲が終盤に近づくにつれ、〈作品を作り続けていく〉という答えに辿り着いていきます。

 

– その答えに辿り着いた理由を教えてください。

 

ACE COOL:一時的に消費されるだけでなく、聴いた人の心にずっと残るようなアーティストや作品が好きなので。自分がずっと聴いている作品だと、ラップを始めた頃にリリースされたKendrick Lamarの『good kid, m.A.A.d city』。このアルバムからラップや作品の重要性を学びました。

 

 

– 8曲目『AM2:00』ですが、この時間にはどんな意味や想いがありますか?

 

ACE COOL:この曲は広島の工場でクレーンに乗っていた時期を題材にしていて、夜2時は当時の飯休憩の時間です。周りの人は自分がラップしていることを知っていたので、休憩所にテレビの深夜番組でヒップホップがかかると「ラップ流れてるぞ~」とよく声をかけられたりしたんですけど、当時流れていたラップってあんまりかっこいいと思えなくて。それを見て自分のほうが上手くできると思ったり、「こんなのヒップホップじゃないですよ」って返したりしてましたが、実際は今いる場所から抜け出せないまま。そういう想いを抱えながら、クレーンの中でひとりリリックを書いていた夜明け前の時間をタイトルにしてみました。

 

– そこから抜け出すきっかけが、AKLOさんのライブだったんですね。

 

ACE COOL:当時の活動に限界を感じていた自分の方向性を示してくれたきっかけが、広島で観たAKLOさんのライブだったんです。 AKLOさんは当時USで流行っていたミックステープを日本でやり始めた方で、フリーのミックステープで有名になったり、巧みなラップスキルで上がっていったりというスタイルは、上下関係が厳しいシーンにいた自分にとって衝撃的でした。広島でライブを観た際、ミックステープから地方でライブするほどまで上がっていった姿に惹かれると同時に、自分の方向性に近いものを感じたのを覚えています。

 

– 『SOCCER』『CADILLAC / FREE』に続き、コーラスで参加されている玉名ラーメンさんを起用したきっかけを教えてください。

 

ACE COOL:制作時に何曲かコーラスを入れたいと思っていたあたりに、ちょうど玉名さんとKATO MASSACERのコラボイベントにオファーをいただいて、彼女の曲をよく聴いていたんです。中でも『organ』を聴いて、アルバムに参加して欲しいと思い声を掛けました。

 

 

– 9曲目『ABUNAI /I KNOW』では、トラックを手掛けたRiouTomiyama(Jinmenusagi)さんが客演に参加されてますね。

 

ACE COOL:〈ソウル行って食うトッポギ〉とリリックにあるように、以前Jinmenusagiとライブで韓国に行ったときの話を入れたり、普段から家でゲームしたりスタジオで曲を作ったりと彼とはよく遊んでいます。

 

 

– RiouTomiyama(Jinmenusagi)さんとどういうゲームをやるんですか?

 

ACE COOL:格闘ゲームのUFCや大乱闘スマッシュブラザース。スマブラのキャラクターだと、自分はよくリュウやネスを使ってます。実はこの曲にネスの声も入っているんです。

 

– 作品に遊び要素も取り入れた一方、後半ではグッと雰囲気が変わりますね。

 

ACE COOL:これは『FAMOUS』の雰囲気に近い、強い自分と弱い自分がひとつになった曲です。ヒップホップのシーンにいると、 周りと比べて自分の立ち位置を考えてしまったり、ブレそうになったりすることがあります。それでも自問自答を繰り返して、やっぱり作品を作り続けて本物のラッパーになる、自分のありたい姿を見つけ出していく。そういったことを後半の『I KNOW』で歌っています。

 

– ACE COOLさんが思う本物のラッパー像を教えてください。

 

ACE COOL:Kendrick Lamar、J Cole。日本だとSEEDAさん、Moment Joonです。

 

– 10曲目『27』では上京後から27歳までの姿が描かれていますが、実際に上京してみてどうでしたか?

 

ACE COOL:1.2バース目にあたる上京して4年くらいの期間は、ずっとライブをしたり知ってるラッパーが出るクラブに行ったりしてました。自分が思う日本のヒップホップシーンと、当時自分がいたシーンとの差に悩んでた頃で、インターネットで発表していたミックステープをCDに焼いて配ったり、出待ちで渡したりしてました。そのミックステープがKEN THE 390さんの手に渡って、DREAM BOYというレーベルに所属する流れになりました。

 

– その期間から27歳まではどのように過ごされてましたか?

 

ACE COOL:まだそこまで世間に知られる前にアルバムを作っていたんですけど、いまは出すタイミングでないとボツになってしまったことがあったんです。その期間を無駄にしないためにも、『RAGE』や『鏡花水月』などMVを出して自分から行動するようにしたら、以前よりもリスナーが増えました。今回の制作に参加しているTOKYOTRILLと出会ったのもこの時期です。

 

 

 

– これまでの積み重ねの結果を実感したのが27歳という年齢だったんですね。

 

ACE COOL:ロックスターは27歳で亡くなることが多いですが、ノトーリアス・B.I.G. や2Pacはもっと若くしてこの世を去っています。彼らはそれまで数々の伝説を残してきたのに、一方自分は同じ歳になっても結果を残せていない。でも27歳になってしまったのなら、若くして死ぬのは美学かもしれないけど、自分はとにかくやり続けていくしかない。そう決意したのと、ラッパーとしての実感が湧き始めたのが27歳の頃でした。

 

– 27歳で死ぬのではなく力強く生きていく姿勢が、11曲目『東京』に表れているようです。

 

ACE COOL:これまでの軌跡を踏まえたうえで、ラッパーとしてのスタンスを示した曲が『東京』です。東京で活動していくうちに、音楽との向きあい方を見つけたり周りを見る余裕ができたりと変化がありました。なので、ラッパー・ACE COOLとしてのスタンスをフックで言ったり、最後のバースに今までの登場人物の名前が出てきたりしています。

 

– 音楽との向きあい方について、以前に比べどのように変わりましたか?

 

ACE COOL:昔は誰よりもいいライブをしたい、勝ち上がっていきたいという気持ちが強かったですが、いまでは自分なりのライブや作品を作ることができればいいと思うようになりました。自分はチェーンや高級車といったいわゆるラッパーのようなスタンスでもないし、語れるほどのストーリーもないごくごく普通の家庭に生まれて育ったただのラップ好き。そういったことで何を歌えばいいか悩んだ時期もありましたが、他と比べず自分のことをそのまま歌えばいいという結論に至りました。

 

 

– ACE COOLさんにとっては普通でも、本作で描かれているストーリーはすべて濃厚でドラマチックだと思いました。ラストとなる12曲目『FUTURE』は、シングルとしてリリースされてましたが、本作の最後に入れたのはどうしてですか?

 

ACE COOL:『FUTURE』はもともとアルバムのために作ったのですが、出来が良かったので先にシングルとしてリリースしました。先に出来ていたこの曲につなげるべく、他の曲を作っていったんです。なので、アルバムとしては『東京』までで、『FUTURE」はその先のエンドロールやあとがきのような位置づけ。過去と現在のことを歌ってきたから、最後は未来のことを歌おうと思って最後に入れました。唯一メロディーがついていることもあり、いままでのACE COOLにないような、一番ポジティブな曲になったと思います。

 

– まさに映画の主題歌のような、『GUNJO』全体のテーマを改めて物語っている楽曲だと感じました。

 

ACE COOL:ずっと自分の中にある言葉「自分の内側を掘ったら普遍的なものになる」というのが、この作品のテーマでもあります。これは漫画家・井上雄彦さんの言葉なのですが、彼の作品「バガボンド」の武士道というテーマと、作品を通し自分と向き合っていくACE COOLの姿勢は重なる部分があると思ってます。誰かのためじゃなく、自分のために歌うというスタンスを最後に肯定することで、これからいい未来に向かっていくんだという気概を示しました。

 

– ありがとうございます。最後に、これから向かっていく未来でやっていきたいことがあれば教えてください。

 

ACE COOL:いまの状況が落ち着いたらツアーをしたり、他の国や大きいところでライブしたりと上のステージを目指していきたいです。今作とは違ったテイストのアイデアもあるし、『GUNJO』よりもさらに完成度の高い作品も作りたい。数年後、未来から見たいまの自分との対話を作品にしてるかもしれません。

 

 

ACE COOL – “GUNJO”

Now on listen

Stream : https://linkco.re/2M0nrX8a

 

= Tracklist =

1 REAL

2 EYDAY

3 RAKURAI

4 SOCCER

5 BOTTOM ft. MuKuRo, Moment Joon

6 CADILLAC / FREE

7 FAMOUS

8 AM 2:00

9 ABUNAI / I KNOW ft. Riou Tomiyama

10 27

11 東京

12 FUTURE

 

参加アーティスト

Riou Tomiyama (Jinmenusagi) 、Moment Joon、 MuKuRo、⽟名ラーメン(tamanaramen)

 

参加プロデューサー

Riou Tomiyama 、TOKYOTRILL、 DubbyMaple、NF Zessho、Atsu Otaki

 

 

 

デジタルリリースされたACE COOL 1st ALBUM “GUNJO”のCDは、本日6月5日(金)よりオンラインショップにて販売開始。

下記リンクから購入可能。

PRICE:¥2,500

LINK:http://acecool082.com/shop/ 

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