拡張現実を日常化させたInstagramフェイスフィルター|AVYSSフェイスフィルター公開

スマホ越しに拡張される感覚

 

model : Dove, Le Makeup, lIlI, JACKSON kaki, yukinoise, stei

 

Text by 高岡謙太郎

 

玉名ラーメンの映像やアートワークを手がける映像作家/デザイナーHana Watanabeが手がけたAVYSSのオリジナル・フェイスフィルターがリリースされた。(※フェイスフィルターはスマホからチェック)

 

これを機会に、今一度フェイスフィルターがどういったものなのか振り返ってみよう。記事の最後にフェイスフィルターのクリエイターをリストアップしたのでチャレンジしてほしい。

 

デジタルメイクアップ、デジタルコスプレイヤーの増加

 

現在、地球上の全人口は77億人。Instagramユーザーはすでに10億人を突破し、7人に1人はインスタグラマーという状況となった。そして近年盛り上がりを見せているのが、Instagramのストーリー機能内にあるフェイスフィルターだ。AR作品としては『ポケモンGO』以上の普及率のはず。

 

フェイスフィルターとは、AIによる顔認識機能を用いた拡張現実(AR)機能で、3DCGの仮面を自分の顔に装着したり、顔を歪ませるデジタルな美容整形が可能となる機能のこと。Instagramの場合は、24時間以内に投稿が消えるという気軽さが参加のしやすさの秘訣だろう。

 

多くのユーザーは、ARが実際に何であるかを理解せずに、メイクアップせずにビデオチャットができるという手軽な気持ちで参加している。そういったライトなユーザーだけではなく、ポスト・インターネットアートやポスト・ヒューマン、ダナ・ハラウェイによるサイボーグ論と交えて語ることもでき、多角的な捉え方ができるのも魅力の要因。まだ語り尽くされていないメディアと言えるだろう。

 

また、若手クリエイターが個性的なフェイスフィルターを制作すると、著名人が使用して拡散されることがあり、名を売るための登竜門になりつつある。まだシーンが黎明期ということもあって、作品が良ければ大勢に使用されるという状況だ。

 

 

フェイスフィルターを振り返る

 

フェイスフィルターの発想の原点としては、ボディアートの一種である、顔に絵を直接描く「フェイスペインティング」に行き着く。そのデジタル版とも捉えられる。古代の宗教儀式から活用され、現代ではサッカーの試合で顔にチーム名を描くサポーターが身近な存在だろう。ただ、実際に顔に塗ることや後処理含めてハードルが高いので、デジタル化されたことによって身近になった。

 

スマートフォンアプリにおけるフェイスフィルター機能のもとを辿ると、2015年にカメラアプリ「Snapchat」に導入された、顔を美しく見せるためのレンズ機能から。ユーザーは、顔検出テクノロジーを使用して、リアルタイムのエフェクトを追加できるようになったことが始まり。2017年には、World Lenses機能を追加。拡張現実技術を使用して3Dレンダリングされた要素(オブジェクトやアニメーションキャラクターなど)を追加できるようになった。また、類似する他社のカメラアプリ「SNOW」が、大量のフェイスフィルターを公開して、盛り上がりに拍車が掛かった。

 

Instagramはそれらに影響を受け、2016年にInstagram Storiesをリリースし、2017年にSnapchatの機能のクローンである拡張現実ステッカーが組み込まれた。その後、Instagramはフェイスフィルターをサポート。そこからユーザーが自分のライブブロードキャストをストーリーに追加するなど、他の機能が拡充されていく。そして、2018年からクリエイターがオリジナルのフェイスフィルターを公開できるようになり、多様な表現がスマートフォン内を埋め尽くしていく。

 

アーティストや企業とのコラボーレート

 

フェイスフィルターは、音楽シーンにも影響を与えている。本誌に馴染みのあるミュージシャンでは、Grimesがフェイスフィルターを使ったミュージックビデオを初期に公開した。それだけでなく、自身のプロデュースしたフェイスフィルターをリリースするほどの熱の入れようだ。

 

フェイスフィルターを制作した有名人では、リアーナやアリアナ・グランデ、俳優のウィル・スミスなど。大手メーカーでは、ペプシやディオールなどが企業プロモーションとしても使う。国内では、渡辺直美がアジア太平洋地域で初めて手掛け、EDMフェスのULTRA JAPANも「ULTRA JAPAN FACE FILTER」を制作し、ファッション雑誌『GINZA』もリリースしている。もちろんこれ以外にも事例は大量にあり、全貌を掴むことが難しい状況になってきている。

 

 

クリエイター主導の文化に

 

Instagramでクリエイターのフェイスフィルターを使用するためには、ユーザーが作成者をフォローすることで、アプリ内のカメラに表示されるようになる。フィルターは無償で提供されるが、クリエイターはSNSで得た知名度を機に新たなチャンスに繋げることができるという仕組みである。つまりフェイスフィルターは、若いデジタルアーティストが作品をアピールできる部分を担っている。そこから拡散されることによって、有名なアーティストとコラボレーションできるチャンスも生まれている。

 

Instagramのストーリー機能がリリースされた際は、縦型の動画の物珍しさもあって、縦型動画を投稿する映像作家が増えたが、今回のフェイスフィルターにおける主役はCGクリエイターやプログラマーだ。制作に関しては、プログラミング知識がなくてもSpark AR StudioLens Studioでフィルター作成できるので参加の敷居は低い。Facebookのグループに参加すれば、制作に関するノウハウが一層わかるはずだ。フェイスフィルターが完成したら、Instagramに申請をすれば公開される。作り手も割と手軽なのだ。

 

新たな挑戦をするフェイスフィルターの作家たち

 

若手クリエイターが世界的に話題になった事例としては、ベルリンに拠点を置く26歳のデジタルアーティストJohanna Jaskowskaが2019年1月に公開した、メタリックでシュール、グロッシーなフェイスフィルター「Beauty3000」が名高い。数多くの有名人が使用し、後にリリースされるフェイスフィルターに影響を与え、2020年1月にはフォロワー80万人までに増加した。

 

国内でも動きはある。日本人初のInstagram ARフィルタークリエイターを称する「bma_japan」は20万人のフォロワーを誇る。フィルターレーベル「IDENT」による「#FACEBOY」は、 顔がコントローラーとなってゲームがプレイできるインタラクティブな内容で刷新させている。また、ARフィルタークリエイターasagiは、ミュージックビデオへの活用や、YOSHIROTTENとのコラボ作品を制作するなど、クリエイティブな可能性を拡張させている。

 

クリエイティブなフェイスフィルターを通すことによって、自己イメージを拡張して自意識が拡張されたり、自分自身がミームになって拡散していく感覚は、現代ならではだろう。とはいっても、良いことばかりではない。Instagramは整形手術効果のあるフィルターをすべて削除した。ごく稀に過剰な表現も混ざっているので、精神的健康に対する負の側面もあるのも忘れないでほしい。

 

最後にクリエイティブなフェイスフィルターを提供するInstagramアカウントを共有する。(もっと知りたい方は、ARクリエイターをリストアップしたウェブサイトLenslistもあるので自分で探してみて)。まずはスマホ越しに拡張される感覚を実際に楽しんでもらいたい。

 

 

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