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「30 BEST BEDROOM POP ARTIST 2019」Vol.1 US編

シンガーソングライター/シンガートラックメイカーを30組を3回に分けて紹介

 

 

かつて宅録と呼ばれたインドア系DIYポップ・ミュージックを指したサブジャンル「ベッドルームポップ」は、今や変節を遂げてオルタナティブ・ポップの新たなトレンドに浮上しつつあります。

 

近年の様々な音楽トレンドの例に漏れず、SpotifyやYouTubeのリコメンド・アルゴリズムとプレイリストがジャンルの枠組やコミュニティ形成に役割を果たすことで、急速にリスナーの裾野を拡げてきたベッドルームポップ。昨今はやや恣意的に感じられるほど、ジャンルの解釈が拡大されてきています。元来のホームメイド・ミュージックという前提は曖昧になり、Mac DeMarcoやTame Impala以降のサイケポップ(これは比較的従来のイメージに近い)を中心に、DIYなアプローチのソウル・ファンク、インディR&Bやチルトラップの一部など多様なスタイルのアーティストを、「レイドバックした気分とローファイなサウンド」くらいの大枠で統べてしまう便利なワード、最新のベッドルームポップの運用実態はそんなところでしょうか。

 

そして2017年以降このジャンルの盛り上がりを牽引しているのが、Tyler, The CreatorやKing Kruleを影響源として掲げる、Z世代のラップするシンガーソングライター(あるいはDIYトラックで歌いあげるラッパー)とシンガートラックメイカーたちです。

 

この夏にはその代表的アーティストであるClairo『Immunity』、Cuco『Para Mi』という両雄のデビュー・アルバムがリリースされ、ベッドルームポップ・ムーブメントも最初のピークを迎えています。

 

個々のアーティストについて紹介される機会は音楽メディアでも増えてきたように感じますが、まだこの新世代のベッドルームポップを網羅的にまとめたテキストは少なく、とくに日本語の記事はまったく見当たりませんでした…。というけわけで、ここでは著者の私見もたっぷりとなりますが、2019年のベッドルームポップ・シーンの主要キャストとなっているシンガーソングライター/シンガートラックメイカーと、彼らに共振している次世代アーティスト30組を3回に分けて紹介していきます。

 

Text by Gikyo Nakamura

 

 

まず第1回の10組は、USを拠点に活動しているアーティスト編その1です。

 

 

Clairo

1998年生まれ。ボストン出身の現在20歳。2017年8月にYouTubeにアップした”Pretty Girl”のバイラルヒットで、一躍ベッドルームポップ界のアイコンに。2018年にTyler, The CreaterやDua Lipaの北米ツアーのオープニングアクトを務め、今年はCoachellaにも出演している。”Flamin Hot Cheetos”のMVにはCuco、Inner Wave、Michael Sayer、Zack Villereなどをカメオ出演させ、昨年のEP『diary 001』ではRejje SnowやSG Lewisとコラボ、今や110万人超のフォロワーを誇るインスタのストーリーで日々おすすめアーティストの楽曲をフックアップするなど、自らシーンの旗手を担ってきた。”Pretty Girl”から2年、8月4日にリリースされた待望のデビュー・アルバム『Immunity』が目下の最新作。

 

 

今回紹介するUSシーンのムードについては、どんなテキストで説明するよりも、ClairoやOmar Apolloがサントラに起用されたガールズ・スケーター映画『スケート・キッチン』(’18)が最高のリファレンス。10代の恋愛や友情といった普遍的な青春模様に、LGBTQ、フェミニズム、移民やブラック・ライヴズ・マターといった人種問題への意識など、Z世代アメリカンの象徴的テーマが詰まっています。Clairoが映画のキャストと撮影した”Heaven”のMVも眩しすぎます。

 

 

Cuco

ロサンゼルスを拠点に活動するCucoは、メキシコ系アメリカンの21歳。英語とスペイン語のバイリンガル・スタイルで作品を発表し、ここでも紹介するOmar Apollo、Lilbootycallなど筆頭に、Los Retros、VICTOR!といった後継が次々に登場しているチカーノ・ポップ・ミュージックを牽引しているカリスマ。今年7月にリリースされた待望のメジャー・デビュー・アルバム『Para Mi』は、甘口のトラップにレトロスペクティブなサイケ・ポップ、ボッサ・テイストまで、抜群に人懐っこいメロディと洒脱なセンスでまとめあげた快作となりました。

 

 

Steve Lacy

カリフォルニア州コンプトン出身、こちらも若干20歳のプロデューサー、Steve Lacy。Odd Future所属のThe Internetの中心メンバーでもあり、Kendrick LamarやVampire Weekendの作品にも参加するなど、今回紹介するアーティストたちの中でも先駆的な存在。今年5月にリリースしたソロ・デビュー・アルバム『Apollo XXI』は、The Internetと共通するオーセンティックでソウルフルな音楽性を、よりメロディアスなソングライティングとローファイなサウンドで聞かせた傑作となっています。

 

 

Gus Dapperton

その印象的な髪型とファッションで、i-D、Vogue,、The Fader、Nylonといったメディアを中心にフックアップされてきた、NY在住の現在22歳。ソングライター&シンガーとしての卓越した才能に加え、ウェス・アンダーソン的世界観で映画スターに扮した”World Class Cinema”など、MVに映えるルックスを含めてヒップスターの資質を備えた天才。ティーンに絶大な人気を誇るNetflixドラマ『13の理由 』サウンドトラックにも楽曲提供。7月にはデビュー・アルバム『Where Polly People Go ToRead』がリリースされており、11月には初の来日公演も控えている。

 

 

Roy Blair

Odd Futureの影響を受けて本格的なトラックメイキングを開始したという、LA在住の現在22歳。BROCKHAMPTONのフックアップでデビュー以前から話題になっていたけれども、実際にKevin Abstract(BROCKHAMPTON)の評価を決定付けた傑作ソロ・アルバム『Amerikan Boyfriend』(‘16)のインディ・ロック・エッセンスは、彼の関与によるところが大きいはず。その翌年にリリースされた自身のデビュー・アルバム『Cat Heaven』では、カラッとした陽性ギターポップ・サウンドと、瑞々しいシンギング・ラップ・スタイルを融合させたエポックな傑作に。代表曲”PERFUME”のMVではMy Bloody ValentineのTシャツがチラリ。

 

 

Omar Apollo

インディアナ州サウスヘヴン出身で現在はLA拠点に活動する22歳。Cucoと同様にメキシコ系アメリカ人で、オルタナティブ・ポップの文脈にもチカーノ・アイデンティティという新風を吹き込む。Neil Youngをフェイバリットに掲げている彼のソングライティングはレイドバックしたR&Bとファンク、フォークが少々。4月にリリースされたセカンドEP『Friends』では、軟弱サイケデリック・ファンク大名曲”Ashamed”、爽快なモダン・ディスコ・ソウル”So Good”というダンサブルな新境地も開拓。さらにファンの裾野を拡げています。

 

 

Lilbootycall

テキサス州サンアントニオ出身でやはりメキシコ系アメリカンの22歳。所謂ローファイ・ヒップホップではなく、Lil Yachty系譜のバブルガムなトラップにKAWAIIモードを展開するラッパーたちの出世頭。日本のアニメやゲームといえばスクール・カースト最下層を表す記号としてUS青春映画のオタク役定番だったけれども、エモラップ以降のタームではむしろ必修科目に。果たしてどこまでをベッドルームポップという括りで扱ってよいか難しいところだけれども、ひとまず彼はCucoとKWE$Tを客演に迎えた”777”という完璧な一曲が免罪符です。

 

 

Still Woozy

カリフォルニア州オークランド出身のSven Gamskyによるソロ・プロジェクト。5月にリリースされた最新EP『Lately』では、陶酔感たっぷりのサイケデリック・ポップ名曲”Lava”や、Omar Apolloも参加したボサノヴァ・テイストの”Ipanema”、トラップ・ビートとローファイなバンド・サウンドを融合したR&Bチューン”Habit”など、多様なアプローチで名曲を連発。ソフィスティケートされているけれども、MVで見せるコミカルで人懐っこいキャラクターも魅力の脱力系ポップ。人気急上昇中。

 

 

UMI

シアトル出身のTierra Umi Wilson、20歳によるプロジェクト。大学に通いながら制作した”Frindzone”や”High School”のMVで展開されるキラキラとした放課後の眩しさに涙。バラッド”Remember Me”のMVは1,000万再生に迫るバイラルヒットでも注目を集めた。Frank OceanやD’angeloをフェイバリットに掲げるソングライティング、ローファイなサウンドと親近感を抱かせるフレンドリーなキャラクターが揃った稀代の才能で、今後発表されるアルバムでブレイクしそうな予感。個人的にはコチラも注目しているDeaton Chris Anthonyと共演した”Sonshine”が目下の最新リリースです。

 

 

Zack Villere

現在はLAを拠点に活動する23歳。Tyler, The Creatorの呟き一発でバズった名曲”Cool”のMVに登場する、どうしたって映画『ナポレオン・ダイナマイト』(旧邦題『バス男』)状態のナードで天邪鬼な眼鏡キャラクターはインパクト大。サウンド的にもOFWGKTAと90年代後半のUS宅録インディの間の子のようなバランスで、当時ならGrand Royalとかから出ていそうなオルタナとヒップホップの折衷感覚が絶妙。ベッドルームポップのシーンとも親和性が高いナード・ラッパーTobi Louの昨年アルバムにもフィーチャリングされていました。

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